JEDIMANの瞑想室

JEDIMANの瞑想室

第1章 抵抗




「だーかーら、お前はガサツすぎるんだよ!あんな風にアタックしたら、誰だって引く!」
レイはイライラとアランに言った。
アランが不服そうに口を尖らせる。
「お前は静かすぎるんだって。あんな風に黙ってちゃ、女の子達だって盛り上がるに盛り上がれないだろーが」
2人のやり取りを聞いていたリ・シュンハが、いつもの笑顔を絶やさずに場を収めようとする。
「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。いつかはちゃんと彼女ができるさ」
「「モテモテのお前が言うな!!」」
レイとアランはビシッとシュンハを指さし、見事にハモった。
爽やか&性格良好&イケメン=モテモテなシュンハは、2人に言われてタハハと頭をかいた。
次の瞬間、凄まじい音をたててロッカールームの扉が開いた。
「き、さ、ま、らあああああああ!」
そこには怒髪天のスーパーサイヤ人、もといシュナイダーがいた。
こめかみが怒りでひくついている。
「「ヤバ」」
レイとアランは再び見事にハモった。
「聞いたぞ、レイ、アラン…………。合コンに行くなど、この軟弱者!!」
シュナイダーは足音も荒くロッカールームに踏み込んできた。
「い、いや、俺達は女の子達と親交を………」
アランが完全にパニクって、意味不明なジェスチャーをしながら言い訳しようとする。
しかし、完全にキレたシュナイダーには逆効果だった。
「貴様ら、そこになおれっ!!」
「はいっ!」
レイとアランは一瞬で直立した。
シュナイダーはこうなったら誰にも止められない。
彼は日本流の厳格な家で育ったため、合コンなどはまことに忌むべき行為なのだ。
「軟弱な貴様らに、漢<おとこ>を叩き込んでやろう………」
シュナイダーは凄まじい<気>を放ちながら、ボキボキと拳の間接を鳴らした。
目は血走り、血管が浮き出ている。
レイとアランは、最終手段を使った。
ため息をつき、覚悟したのだ。
その後しばらく、<SAF>のロッカールームからは、悲鳴が聞こえ続けていた。


「うー………イテ……」
レイは間接技を極(き)められて曲がった体を、正常な位置にゆっくりと戻しながらつぶやいた。
少し動かすだけでも、痛みがピキピキとつまさきまで走る。
アランはシュナイダーに窒息寸前まで首を絞められ、地面に倒れ伏している。
気づくまで、まだ時間がかかるだろう。
「ははは、災難だね」
シュンハがロッカールームのベンチに座りながら言う。
「てゆーか、これ完全に暴行罪だろ!」
レイはキレた。
「こんど会ったら、あのカタブツのツラにゲンコを叩き込んで―――」

ピキィッ!

「ミギャアアアアアア!」
レイは叫ぶと再び床に倒れ込んだ。
先程の間接技の影響か、あばら辺りを凄まじい痛みが駆け抜けたのだ。
「…………骨、折れて無いだろうな……」
レイは涙をはらはらと溢しながらつぶやいた。



「全く………レイとアランときたら………」
シュナイダーは足音も荒く<SAF>の本部を歩いていた。
怒りが収まらない。
「おい、シュナイ……」
「ああん!?」
いきりたっていたシュナイダーは、語気も荒く振り返った。
そして、後悔した。
そこにいたのは、ブライ司令官だった。
言わずと知れた、<SAF>の最高権力者だ。
「………やあ、シュナイダー君。君がご機嫌斜めとは珍しいね」
ブライ司令官は眉をひそめて言った。
「こ、これは失礼致しました、司令官!」
シュナイダーは慌てて敬礼した。
ブライは頷くと、再び口を開いた。
「明日、3時にブリーフィング・ルームに来てくれ。重要な会議がある。君のチーム全員だ」
「わかりました。任務ですか?」
シュナイダーの問いに、ブライは頷いた。
「ああ………。レベル・レッドのな」
「レッ………!?」
シュナイダーはブライの言葉を聞いて絶句した。
レベル・レッド。
それは相当重大な任務だ。
任務のレベルは12段階にわけられている。
一番下から順に、レベル・ナイン、レベル・エイト、レベル・セブン………そしてレベル・ワンともなればかなりの重要度だ。
先日の中東でのサダ・アサラディへの攻撃は、レベル・ツーだった。
そして、レベル・ワンより上位の任務は、いずれも国家存亡レベルだ。
レベル・ブラックを最高とし、レベル・レッド、レベル・イエローと続く。
つまり、今回のレベル・レッドは2ランク目に当たる。
非常に重大な任務だろう。
もちろん、シュナイダーはそのようなレベルの任務など初めてだった。
心なしか、ブライの顔も緊張している。
「…………わかりました。隊員達には私が」
「うむ。頼むぞ」
ブライはそう言うとシュナイダーの肩を叩き、司令室の方へ歩いて言った。
シュナイダーはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと歩き始めた。



「よし。計画は完璧だ」
アランの言葉にレイは頷き、にししと笑った。
シュンハはその様子を困ったような、しかしおもしろそうな表情で見ている。
「よし、アラン。シュナイダーを呼んでこい」
「りょーかい!」
アランは張り切って扉を開けた。
その途端、

ゴワン!

タライがアランの頭に落ち、大きな音をたてた。
レイは倒れたアランの体を思い切り蹴飛ばした。
「なに自分が仕掛けたトラップにかかってんだよ!バカ!これじゃあやり直しじゃねえか!」
「ほほう!この罠は何のために仕掛けたのかな?レイ」
「そりゃ、シュナイダーをぎったんぎったんにしてやるためじゃんか」
レイはムスッとして答えた。
「へえ、タライが落ちた後、どうするつもりだったんだい?」
「タライで倒れたシュナイダーをボコッた後、奴からズボンを強奪して逃げるつもりだったんだよ。シュナイダーの奴、上はTシャツ、下はパンツなんていう情けない格好じゃ、ロッカールームから出るに出られないからな!」
レイはそう言うと、クックと忍び笑った。
訳が分からない内にズボンを剥ぎ取られ、ロッカールームの中から廊下のレイ達に『ズボンを返してくれ』と情けない要求をしてくるシュナイダーが目に浮かぶ。
「うん、実におもしろそうだね」
「だろ?だろ?」
レイはたまらなくなって笑いだした。
「最後に質問いいかな?」
レイは笑いながら頷いた。
「君と会話してるのは一体誰?」
レイの笑い声は凍りついた。
そういえば誰だ。
そして、今さらながらようやく気がついた。
タライの攻撃を受けて気絶しているアランの向こうに、ひきつった笑顔を浮かべているシュナイダーがいる事に。



「~~~♪~~~~~♪」<SAF>の1人、ガードナーは、鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。
そしてロッカールームの前に来ると、ちょうつがいに手をかけ、開けた。
閉めた。
ガードナーはしばらくちょうつがいを見つめた後、着替えるのは後にしようと思い、その場を去った。
今着替えるならば、血が飛ぶなかで着替えねばならなくなる。



翌日、午後3時、<SAF>本部、ブリーフィング・ルーム―――

「諸君、非常に重要な任務だ」
ブライはブリーフィング・ルームの椅子に座る、20人の隊員に言った。
シュナイダーのチームだ。
その中には、たくさんの絆創膏を体に貼ったレイとアランの姿もある。
「今回の作戦はレベル・レッド。言わなくてもわかるだろうが、非常に危険だ」
ブライの言葉に場がざわつく。
当然だ。
レベル・イエロー以上の任務など、そうそうあるものではない。
「しかも、シャドー・リクエストだ」
何人かがため息をついた。
シャドー・リクエストは政府からの非公式の任務だ。
だが、次にブライが発した言葉に、皆は今まで以上に驚いた。
「今回の作戦はグリーン・ベレー、<SEAL>、<SAS>と合同で行う事になる」
場が静かな驚きに満ちた。
グリーン・ベレーに<SEAL>、それに<SAS>だって!?
グリーン・ベレーと<SEAL>は、デルタ・フォースと並び、アメリカ最強とうたわれる特殊部隊組織だ。
そして<SAS>はイギリスでトップの特殊部隊組織。
そんな彼らまで今回の任務に………。
「君達には、彼らと合同である人物を護衛してもらう」
「ある人物?」
誰かの問いに、ブライは頷いた。
「バーナード・ブルックベル教授とその娘、リアナ・ブルックベルだ」
「しかし、たかがその人物の護衛の割りには大がかりなのでは?」
シュンハが言った。
ブライが頷く。
「護衛自体は大した任務ではない。問題は、行き先なんだ」
ブライはそう言うと言葉を切り、しばらくすると再び口を開いた。
「教授の行き先は、暗黒大陸である南アメリカだ」



「おい!ローグ!弾薬が足りないぞ!」
「はい!」
ネコ毛の金髪をした少年は、年配の男に怒鳴られ、慌てて塹壕の先にある弾薬庫へ向けて走り出した。
銃撃音がこだまし、弾が地面を跳ねる。
塹壕の中にいるから当たらないだろうが、危険だ。
ローグと呼ばれた少年はアメリカ海兵隊の軍服を汗に濡らしながら弾薬庫に飛び込み、弾薬を満載した木箱を掴むと、再び塹壕内を走り始めた。
木箱の余りの重さにふらつきながらも、ローグは塹壕内をひたすら走り続けた。
耳をつんざくような銃声が鳴り響き、男達の怒号も聞こえる。
「弾……持って……きました……」
ローグは息を荒げながら、年配の兵士の側に木箱をゴトンと置いた。
「おお、助かった。ちょうど切らしたところだったんだ」
年配の兵士が木箱に手をのばす。
と、その時、

ドチュン

音がした。
年配の兵士が動きを止める。
永遠と思える一秒。
次の瞬間、年配の兵士はどさりと地面に倒れた。
「サー!」
ローグは年配兵士の側に慌て屈み込み、叫んだ。
年配兵士は苦しげに胸を押さえ、ローグの顔を見た。
「俺は………もうダメだ……」
「いいえ、サー!大丈夫です!衛生兵を……」
年配兵士は悲しげに首を振った。
「この傷じゃ、もう助からない。ローグ、俺の分まで生き……ろ………」
「サーーーッ!」
叫んだ後、ローグはため息をついた。
「いつまでふざけてるんですか?演習ですよ?」
年配兵士はニカッと笑うと、パンパンと服から埃を払い落としながら立ち上がった。
「なあに、軽いジョークだよ、ジョーク。かくいうお前もけっこうのってたじゃないか」
ローグは否定できなかったので顔を背けた。
上官が演習の終了を叫んでいる。
ローグは足元の演習用ゴム弾を広い上げ、鼻くそを飛ばす要領でどこかに弾いた。
今日の訓練も疲れた。
「ふう……」
ローグはロッカールームのベンチに座り込み、軍服を脱いだ。
次いで汗に濡れたタンクトップを脱ぐと、軍服と一緒にロッカーに突っ込んだ。
汗の臭いが鼻にくる。
ローグがタオルで汗を拭いていると、彼の名を呼ぶ者がいた。
「ローグ二等兵?ローグ二等兵はいますか?」
「あーはいはい、僕です」
ローグは着替え中の筋肉ムキムキな男達の向こうに自らを呼ぶ者を見つけ、手を振った。
「呼んでるぞ」
ローグを捜していた男は、ロッカールームの扉を指さした。
「?」
ローグは不審に思いながらもTシャツを着て、ロッカールームの扉を開けた。
そして―――
「ローグーーッ!」
「どうわ!?」
いきなり誰かが抱きついてきて、ローグは思わず尻餅をついた。
「えへへ……、ビックリした?」
ローグにしがみついたまま、豊かなブロンドの髪の少女がいたずらっぽく笑った。
「ビックリした?ってなぁ……」
ローグは手を顔にあて、ため息をついた。
「リアナ、お前、いいかげん僕につきまとうの……」
「なんだ、ローグ、お前、女がいたのか」
突然、別の声が降ってわいた。
ローグの上司である年配兵士だ。
「ち、違いますよ!そんなわけ無いじゃないですか!」
慌てて否定したローグに、リアナが不満そうな顔をする。
「なによ、そんなに否定しなくてもいいじゃない」
「ていうか!なんで、リアナがここにいるんだ!?」
「あ、そうそう。えーっと、確かここに……」
リアナはそう言うと懐から小さな封筒を取り出し、はい、と笑顔でローグに渡した。
ローグの脳裏を嫌な予感がかすめた。
ローグは恐る恐る封筒を受けとると、まじまじと眺めた。
封筒はアメリカ軍のマークがついたロウで封印されている。
ローグはそれを剥がすと、中から手紙を取り出した。
一番上にはワシをあしらったアメリカ軍のマークがある。
そして、以下には次のように書かれていた。
『アメリカ軍総司令部は、その権限において、海兵隊に所属するローグ・フロスト二等兵に一時的に部隊を離脱する事を命令する。ローグ・フロスト二等兵は、復隊許可が下りるまでバーナード・ブルックベル教授とその娘、リアナ・ブルックベルを護衛せよ』
「……………はい?」
「見ての通りよ」
「なにが見ての通りだああああああああっ!」
ローグは思わずリアナに掴みかかった。
リアナは全く動じずにくすくすと笑い、いたずらっぽくローグの鼻をつついた。
「だーかーら、あなたはわたしとパパの護衛☆」
「わけわかんねえええええっ!!」
基地に少年の声が響き渡った。



「失礼します!」
シュナイダーはそう言いながら部屋に入ると、デスクで何かを書いているブライ司令官に敬礼した。
ブライが顔を上げる。
「やあ、来たか、シュナイダー」
ブライはそう言うと、よっこらせと立ち上がった。
「例の任務の前に、君と会わせたい人物がいる。来たまえ」
そう言うや否や、ブライはスタスタと歩き始めた。
「は、はい」
シュナイダーは慌てて彼の背中を追った。
2人は司令室を出ると、しばらく白い廊下を歩いていた。
そして3回目の角を曲がった時、向こうからやってきたレイとアランにぶつかりかけた。
「うおっと……」
レイはそうつぶやくと素早く脇に寄り、ブライに敬礼した。
アランもすぐに同じようにする。
ブライはレイ達の前を通り過ぎると、振り返らずに話しかけた。
「シュナイダー、彼らも連れていこう。レイ、アラン、来なさい」
レイとアランは顔を見合わせたが、素直についてきた。
「……司令、どこへ行くんです?」
シュナイダーはボソリとブライに耳打ちした。
「なに、じきにわかるさ」
ブライはそう言うと、シュナイダーに微笑みかけた。



「って、ここ………」
レイが辺りを見回しながら言った。
「刑務所じゃないですか!」
「おお、そうだとも」
ブライは先をずんずんと歩きながら言った。
「君達に会わせたい人物がここにいる」
「犯罪者ですか?」
「うむ」
シュナイダーの問いに、ブライは頷いた。
「そして元<SAF>でもある」
突然、ブライはある獄房の前で立ち止まった。
獄房の側にいた看守がブライに敬礼した。
獄房の中には、1人の男がいた。
隅にうずくまり、顔を上げようとしない。
「おい」
ブライは男を呼んだ。
「………なんですか」
男はうつむいたまま言った。
「調子はどうだね?」
「絶好調に見えますか?」
男は顔を上げた。
目は落ち窪み、不健康な色の肌の中で、目が異様にぎらついている。
顔は皮肉っぽく笑っていた。
「おかげさまですこぶる健康ですよ、司令官」
「うむ」
ブライはそう言うと、シュナイダー達に向き直った。
「見ての通り、性格は歪んだ奴だ」
アランが蔑みと哀れみの混じった目で男を見つめる。
「おい、お前、この者達にあの島での出来事を話してやってくれ」
次の瞬間、男は目をカッと見開き、恐ろしい表情で鉄格子に飛びついた。
ガシャンと大きな音がする。
ブライは思わず後ずさった。
シュナイダー、レイ、アランが瞬時にハンドガンを抜き、鉄格子の向こうの男に向ける。
しかし、男はそんな物には物怖じせず、ブライを凄まじいぎょうそうで睨み付けた。
「あの島での事を話せ、だと!」
男は目をぎらぎらさせながら言った。
「あの忌まわしき事件を思い出せと言うのか!」
「落ち着け」
ブライは冷静に言った。
「君の願いを叶えてやれるのかもしれんのだぞ」
とたんに男は黙り込み、ブライの後ろで拳銃を構えているレイ達を舐めるように見た。
「………こいつらは?」
「君の後輩だ。南アメリカに行く予定だ」
ブライの言葉に、男は目を見開いた。
「南アメリカ!?自殺する気か!?」
「おいおい、お前ビビりか?」
アランが軽蔑もあらわに言った。
「確かに南アメリカは正体不明のウイルスがわんさかいる。だけどよ、そんな物は特殊部隊用対ウイルス特別マスクがあれば、どうって事ないんだぜ?」
男は黙って、アランを見つめた。
鋭い眼光がアランを射抜く。
アランは思わずたじろいだ。
「…………司令官」
しばらくして、男が口を開いた。
「このバカは何も知らないのですね?」
「ああ、その通りだ」
ブライはそう言うと、アラン達に向き直った。
「君達には、上層部しか知らない事を話そう。10年前、南アメリカを正体不明のウイルスが制圧した事は当然知っているな?よろしい。だが、真実は違う」
ブライは悲しげにかぶりを振った。
「南アメリカに蔓延したウイルスは、ウイルス・Undead。通称Uウイルスだ。空気感染はしない」
「空気感染はしない?じゃあ、あの異常な感染スピードはなんだったと言うんです?」
シュナイダーが問う。
ブライは懐から数枚の写真を取り出した。
「見たまえ」
「こ、これは―――」
写真を受け取ったシュナイダーは息を飲んだ。
そこに写っていたのは、見るもおぞましいゾンビ達だった。
「グール<食人鬼>だ」
ブライは冷静に言った。
「Uウイルスに感染した者は、脳と筋肉が異常に縮小し、身体組織の腐敗が発生する。そして脳に残るイメージ、戦闘本能と食欲にひたすら忠実に行動する………」
ブライはそこで目を閉じた。
「以前、アメリカ所有のある島にあったそのウイルスは、何らかのアクシデントでブラジル高原に放たれた。そして徐々に感染者を増やし、大挙して南アメリカの街や国を襲ったのだ」
「奴らは何回も撃たないと死なない」
突然、男が口を開いた。
「既に死んでいるからだ」
「な…そんな……これ……マジかよ……」
レイがショックを隠しきれない様子でつぶやいた。
「だがよ、なんでお前がそんな事を知ってるんだ?」
アランが首を傾げて言った。
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺は……そうだな……クロウ<カラス>とでも呼んでもらおう。元<SAF>、そして―――」
男はやつれた表情をした。
「島でグールと戦い、生存した者だ」



「どういう事だよ!?」
ローグは目の前のリアナを激しく問い詰めた。
わけがわからない。
「えーっと、詳しく説明するとね………」
リアナはそう言いながら口元に手を当てた。
「わたしとパパ、今度南アメリカに調査に行くの」
「あの暗黒大陸に!?やめとけ!危ないぞ!」
ローグの言葉に、リアナは顔を赤らめた。
「ローグ、心配してくれてるんだね。嬉しい………」
自らを気づかう言葉が、なんとか南アメリカへ行かない方法を見つけようとしている少年の作戦だとは、その少年にベタ惚れしている少女は知るよしも無い。
「だけどわたし、行くよ!世のため人のためだもん!」
「だからって僕を巻き込むなよ!」
「だって………」
急にリアナが恥ずかしげにうつむき、もじもじしだした。
「護衛でたくさんの男の人が来るんだよ?<SAなんとかとか、そういう特殊部隊の人達。その中に、わたしみたいにか弱い乙女が1人………。しかも長期滞在予定………。護衛の人達だって、人間だし、気の迷いが生じて……その……わたしに手を出すかもだし………。だったら信頼できる人が近くにいてくれた方が…………」
恥ずかしげに言うリアナに、ローグは深いため息をついた。
そんな事で巻き込まれたのか、自分は。
「いや、それは無いと思うよ」
ローグは出来る限り優しく言った。
「特殊部隊の人達は、並みじゃ考えられないような修練をこなしてるんだ。意思はかなり固いはずだ。まさか護衛対象の女の子に手を出すようなマネはしないだろ」
「そ、そうかな………」
リアナは少し安心したように言った。
「それに……」
ローグはジト目でリアナの体を見つめた。
「誰か手を出すのか?こんなガキみたいな貧ny「ここは健全なる小説の場よ!」「スミマセン」
「とにかく!」
リアナは顔を赤らめながらも少し怒ったように言った。
「あなたはわたしとパパの護衛!ちゃんとアメリカ軍司令部も了承してるんだからね!」
「……………よくそんな要求が通ったな……」
ローグは呆れて頭をかいた。
リアナが嬉しそうに頷く。
「うん!ネザル准将って人が、わたしとパパを全面的にサポートしてくれてるんだ!」
「かつて島で……グールと戦った……?」
レイは呆然とつぶやいた。
「それがどうかしたか?」
アランは憮然として言った。
「俺は『バイ〇ハザード』ってゲームをやった事がある。あんな感じだろ。楽勝だぜ」
クロウが凄まじい眼でアランを睨んだ。
「ほう、良いことを教えてやろうか、天下無双野郎。おれと島に向かった連中は素晴らしい戦士ばかりだったが、それでも生き残ったのはおれと、イカれた野郎と、知識欲の深さのあまり、他人を巻き込む科学者だ。ヒヨッコが吼えるな」
クロウの言葉にアランは不服そうに口を尖らせたが、何も言い返さなかった。
「それに、グールよりも恐ろしい存在がいる」
クロウは言った。
「フィアという連中だ。奴らは知力が人間より遥かに高い上、なぜかグールを操れる。奴らはこの世に生まれでてからわずか5年でカタパルトやボウガンを作り出していた。それが10年、ましてや資源の豊富な南アメリカでぬくぬくと進化しているんだ。今じゃ、どれだけの技術を有しているか………」
「…………まじかよ」
レイがつぶやいた。
「最後に1つ、おもしろい話をしてやる。ティータ・ハーモニーという女性の話だ」
クロウはレイ達の顔を順繰りに見ながら言った。
「ある時、彼女は付き合っていた男性からプロポーズされた。彼女はその男を愛していたから、喜んで承知した。しばらくは幸せな生活が続いた。…………だが」
クロウは顔をうつむけた。
「恐ろしい事が起きた。男は毎晩、夢を見ていた。過去に体験した、ゾンビや怪物ヘビに追いかけられ、仲間が死んでいき、最後には自分が食われる悪夢だ。ティータは毎晩、悪夢にうなされる男を守り、慰め、励ました。だが、男の悪夢はちっとも薄れなかった。…………そしてある日、悪夢にうなされる男を起こそうとしたティータを、男は恐怖のあまり首を絞め、殺したんだ!」
クロウは震える両手を見つめ、憑かれたようにしゃべった。
「殺したんだ!この手で!理性など無かった!ただ、目の前に迫るグールが最愛の人物だとも知らず、戦慄の叫びをあげながら、彼女の首を絞めたんだ!」
クロウはガックリと肩を落とした。
誰も、しゃべろうとしない。
「気づいた時、ティータはおれの隣で、シーツにくるまり、冷たくなっていた。おれは、発狂した。ティータの骸を抱き、ひたすら、いつまでも泣いた。自殺を、考えた。冷たくなったティータの骸を抱き、共に死のうと外へ出た。そして、捕まった」
クロウは疲れきったようにレイ達を見た。
「お前達が行こうとしてる南アメリカは、グールやフィアがわんさかいる。忠告しておく。行ったら最後、その悪夢から逃れる術はない」
「その南アメリカ行きだが」
突然、ブライが口を開いた。
「クロウ、君にも行ってもらいたい。そうすれば、君の願いも叶うと思うのだが」
クロウは力無く頷いた。
「やはりそのためにおれを死刑から終身刑に減刑したんですね?………わかりました、行きましょう。こんなところでぐたぐたと生き長らえたくはない。クレイジーは?」
クロウの言葉に、ブライは首を横に振った。
「あれはもう正常な神経は持ち合わせとらんよ。今は精神患者として拘留されている」
「なるほど、やはりそうですか」
クロウは頷いた。
「………クロウ、あなたの願い、とは?」
シュナイダーがクロウに訊いた。
クロウは力無く笑った。
「『一刻も早く死ねますように』、だ」



数日後―――
<SAF>本部施設屋上のヘリポートは、たくさんの人員でごった返していた。
1機の武装ヘリに、20人の隊員を運ぶ2機の輸送ヘリ、そして大量の物資を運ぶ3機の輸送ヘリだ。
「諸君、これを見たまえ」
ブライは整列した隊員達に、南アメリカの地図を見せた。
「諸君の護衛対象であるバーナード・ブルックベル教授は、リオデジャネイロの近郊の街、クリティロに調査の拠点を置く予定だ。教授の率いる調査チームはパナマ沖の空母にいる。そこで合流できるはずだ。グリーン・ベレーや<SEAL>、そして<SAS>とは現地で合流してもらう。さあ、乗ってくれ」
ブライの合図と共に、レイは人員輸送ヘリの1つに乗り込んだ。
アランが続き、シュナイダー、ガードナー、リ・シュンハ、クロウ、他にも4名が乗ってきた。
「May the god,be with you」
<SAF>のスタッフがそう言って扉を閉めた。
ヘリのプロペラが回りだす。
機体がゆっくりと浮き上がった。
武装ヘリがエスコートのため、周りを警戒するように飛ぶ。
「ああ…あの時と同じだ……」
クロウがぼんやりと小窓の外を見つめながら言った。
レイは首を傾げた。
「あの時?」
「10年前、俺たちが島に向けて旅立った時だ」
クロウはゆっくりと答えた。
「硝煙、轟く銃声、食人鬼達のうめき声……。あの悪夢を再び見るとはな」
「…………悪夢、ねぇ……」
アランがぼそりとつぶやいた。
ヘリはスピードをあげ、ニューヨークを飛び出した。



「こちらグリフォン1。グリフォン2、応答せよ」
『こちらグリフォン2!調査チームを乗せたオデュッセウスチームを確認!』
コクピットから無線が聞こえてきた。
『こちらオデュッセウス1。ブラジル本土の海岸を確認。あの海岸の少し奥にクリティロがある。建物が見えるか?』
「こちらグリフォン1。肉眼で確認した」
『こちらオデュッセウス1。降下体勢をとる。グリフォンチーム、我らを護衛する位置に移動してくれ』
「こちらグリフォン1。了解」
パイロットはそう言うと、隊員達を振り返った。
「まもなくブラジル上空に入る。降下準備しろ」
「聞いたな、準備しろ」
シュナイダーが言った。
レイは頷き、素早く装備をチェックした。
「よし、やってやるぜ!南アメリカを潰した奴らを狩ってやる!」
アランが鼻息も荒く言った。
普段はヤンキーか何かみたいなアランだが、正義感は人一倍強かった。
ガードナーやシュンハ、そして他の隊員達が緊張して武装を点検する。
反面、クロウは物凄く落ち着いていた。
彼はこの任務で死ぬのが本望なのだろう。
苦しみから解放され、ティータの待つ天国へ行くのを待っているのだ。
事実、クロウの顔から疲れが消え、スッキリした表情をしていた。
「そういえば、グリーン・ベレーや<SEAL>、<SAS>は?」
「別方面からクリティロに向かうらしいぞ。危険が無いか偵察をするらしい」
ガードナーが答えた。
ちょうどその時、通信が入った。
『こちらグリーン・ベレー。現在リオデジャネイロを上空から偵察中』
「こちら<SAF>。オデュッセウスチームを護衛し、まもなくブラジル上空に到着します」
『こちらグリーン・ベレー。了解。すぐにそちらに―――』
次の瞬間、爆発音が聞こえた。
ガラスの割れる音や悲鳴が聞こえてくる。
レイは体を硬直させ、通信に耳を傾けた。
「どうしたんだ!?グリーン・ベレー!返事をしろ!」
パイロットが怒鳴る。
次の瞬間、先程より大きな爆発音がしたかと思うと、通信が途絶えた。
雑音が響く。
誰も、しゃべらなかった。
いや、しゃべれなかった。
「――――ッ!司令部、こちらグリフォン1!グリーン・ベレーになにかアクシデントがあったもよう!危険度Aと判断します!emergency!繰り返す!emergency!」
パイロットが我にかえり、インカムに向けて怒鳴った。
レイは小窓から海岸の様子を見ていた。
砂浜の奥には小さな森があり、その向こうには街、クリティロが見える。
その時、レイは森の端で動く物体をちらりと見た気がした。
「………?」
レイは必死に眼をこらした。
次の瞬間、森から何かが飛び出した。
「ミサイル!?」
ミサイルは尾をひきながら空中を疾走し、レイ達が乗っているのとは別の兵員輸送ヘリに激突した。
爆発。
ヘリはギュルギュルと回転しながら海に突っ込んだ。
爆発。
波が塔のように高く上がった。
森から大量の赤い光が飛んでくる。
その光がヘリに当たり、衝撃が走った。
「<L.A.S.E.R>!?」
リ・シュンハが驚きに満ちた声で叫んだ。
「馬鹿な!誘導放出性光増幅兵器はまだ実現していないはず―――」
ガードナーが叫んだ瞬間、パイロットが唸り声をあげ、操縦桿を思い切り引いた。
ミサイルがすぐ側を通り過ぎ、衝撃波をヘリにぶつける。
レイは悲鳴をあげて床に転がった。
機体が制御を失い、凄まじい動きをする。
「こちらグリフォン1!緊急事態!何者かから激しい対空砲火を浴びている!緊急事態!」
パイロットが必死に叫ぶ。
オデュッセウスチームの輸送ヘリが爆発するのが、ちらりと見えた。
武装ヘリがプロペラから火を噴き、ガトリングからめちゃくちゃに弾丸を撃ち出しながら墜ちていく。
しばらくして、武装ヘリの爆発音が聞こえた。
次の瞬間、レイは爆風と衝撃と熱波をもろに浴びた。
機体後部が爆発したのだ。
「ミサイル被弾!制御を保て無い!墜落するーーっ!」
パイロットが悲鳴のように叫ぶ。
爆発、炎、そして恐怖の絶叫がレイの耳を揺さぶる。
次の瞬間、凄まじい衝撃と共に、レイの視界はブラックアウトした。



銃声。
レイの意識は急速に覚醒した。
ヘリは浅瀬に墜落していた。
森から海岸に大量のモンスターが現れ、手にした銃から赤く熱いレーザーを次々に放った。
レーザーが海水に当たり、水が蒸発する。
「フィアだ!」
クロウの声が聞こえた。
「残骸を盾にしろーっ!」
シュナイダーの指示も聞こえてきた。
空は対空砲火の嵐が吹き荒れ、残ったヘリを叩き落とそうとしている。
「く………」
レイはヘリの残骸の中からなんとか立ち上がると、アメリカ軍正式銃のサブマシンガンを構え、海岸からこちらに向けて撃ちまくってくるフィア達に応戦した。
<SAF>の1人が悲鳴をあげて倒れる。
浅瀬にはあちこちにヘリが墜ち、炎を噴き上げていた。
「数の差が圧倒的すぎる!」
ガードナーが残骸から敵をうかがいながら叫んだ。
「しかも奴ら、銃弾を受けてもなかなか死なないぞ!」
「そりゃあ、フィアだからな」
クロウはそう言うと、ヘヴィマシンガンを手にし、フィア達に向けて撃ちまくった。
耳をつんざくような銃声がけたたましく響く。
彼は墜落した物資輸送ヘリに向けて顎をしゃくった。
「走れ!奴らは火に弱い!ロケット・ランチャーや手榴弾をあそこから持ち出せ!」
アランとリ・シュンハ、それにガードナーが頷き、走っていく。
墜落したオデュッセウスチーム、つまり調査チームの生存者達も、ささやかな抵抗を行っている。
だが、科学者ばかりなので役にたちそうに無い。
次々に撃たれ、浅瀬に倒れていくのが見えた。
フィア達はじりじりと浜辺を前進してきていた。
手にした銃からレーザーが吐き出され、残骸の陰から応戦するレイ達を狙う。
「ダメだ!圧倒的すぎる!」
レイの言葉に、クロウがオデュッセウスチームの生き残りを指さした。
「彼らと合流しよう!軟弱な科学者達でも、わずかに戦力になる!おれが奴らの気を引く!」
「了解!頼んだぞ!」
シュナイダーはそう言うと浅瀬を走り出した。
レイも慌て続く。
海岸にはたくさんの死体があった。
<SAF>や科学者ばかりだ。
フィアの死体はほとんど無い。
輸送ヘリからロケット・ランチャーを取り出したガードナーが弾を込め、放った。
ポータブル・ミサイルが尾をひいて飛び、フィアを吹き飛ばす。
その間に、シュナイダーとレイはオデュッセウスチームのヘリの残骸の1つの陰に駆け込んだ。
アメリカ海軍<ネイビー>の軍服を着た少年が、アメリカ軍正式銃であるサブマシンガンでフィアと戦っている。
男性と少女がその近くで震えていた。
「ブルックベル教授はいますか?」
シュナイダーは怒鳴った。
震えていた白髪の男が手をあげる。
「わ、私だ。こ、こいつらはフィアだ!私を守ってくれ!」
「なら、黙って隠れていて下さい!」
シュナイダーはそう言うと、戦っている少年の側で銃を撃ち始めた。
「君は!?」
シュナイダーの言葉に、少年が振り返った。
「ローグ・フロスト。二等兵です」
「よし、ローグ、君はブルックベル教授とそこの娘を連れて、戦闘から離脱しろ」
「無理です」
妙にパニックになっているシュナイダーと違い、ローグは状況を冷静に観察していた。
「完全に包囲されてます」
シュナイダーはようやく気づいた。
正面や側面からはフィアが迫り、背後には海しかない。
「他に生き残りは!?」
「オデュッセウスチームはぼくとリアナ、それに教授だけです。そちらは?」
「僕を含めて7人!」
シュナイダーはフィア達を一瞥した。
100体はいるだろう。
「……絶望的だな」
レイがぼそりとつぶやいた。
フィア達は銃からレーザーを撒き散らしながらじりじりと進撃してくる。
全滅は目前だった。
「くそっ………。the endか!」
ローグが悔しげに叫んだ。
その時。
爆音が響いた。
ドリフトの音が響き、ジープやバギーが5台、それに武装トラックが浜辺を突っ走ってきた。
「な、なんだ!?」
バーナードが狼狽して叫ぶ。
フィア達が一斉に雄叫びをあげ、向かってきた車団に銃を向けた。
バギーやジープの後部に取り付けられた銃座のマシンガンが轟く。
たちまち、激しい銃撃戦が始まった。
「人だ!」
レイが叫んだ。
確かに、突然現れた車団に乗っているのは人間だった。
ジープが砂を撒き散らしながら砂浜を走り、フィアをはね飛ばす。
武装トラックから銃を構えた男達が転がるように飛び出し、フィアと交戦を始めた。
武装ジープや武装バギーが砂を高く巻き上げ、フィア達を翻弄する。
「味方か!?」
シュナイダーは怒鳴った。
「味方だ!」
武装トラックに乗っていた白人の男が、銃を掲げて叫んだ。
「急いでトラックに乗れ!援護する!」
「よし」
シュナイダーは頷くと、再び怒鳴った。
「アラン、ガードナー、シュンハ、先に行け!教授と娘さん、レイ、ローグは僕に続いて。クロウはしんがりを務めてくれ!」
「Yes Sir!」
アランが叫び、ライフルを撃ちながら、浜の武装トラックに向けて浅瀬を走り出した。
ガードナーとシュンハが続く。
フィアがバギーに吹っ飛ばされ、空高く舞い上がるのが見えた。
アラン達が浜辺の戦線に加わり、敵に銃撃を浴びせ始める。
「よし、続け!」
シュナイダーは叫ぶと走り始めた。
レイ、ローグ、バーナード、リアナが続く。
レーザーが時折、海水を蒸発させた。
リアナが悲鳴をあげる。
「足を止めるな!」
クロウが銃を撃ち、退却を援護する。
「早く!」
レイが叫んだ。
バーナードが武装トラックの荷台に転がりこみ、リアナとローグもすぐに乗り込んだ。
「救援、感謝する」
シュナイダーはフィア達と交戦している男に言った。
「助かったよ」
「なら、急いで脱出しよう」
男はシュナイダーの言葉に頷きながら言った。
「スコット!撤収だ!」
「りょーかい!」
フィアに向けて銃撃していた別の白人の男が、ややふざけたように敬礼した。
「ところで見たか?俺、奴らを30体倒したぞ!このスコットさまに勝とうなんざ100年はや……」
「スコット、早くしろ!」
男がいらいらと叫んだ。
「あと、30体倒したなんてハッタリはやめろ。奴らを1人で30体倒せるなら、誰も苦労しない」
「へーへー。わかりましたよ、ネイオ様。おい、引き上げるぞ!」
スコットが言い、銃を撃っていた男達は次々に武装トラックに乗り込んだ。
武装トラックは後ろのコンテナを積載する部分を兵員輸送ベイに改造し、鉄板で盾をつくり、マシンガン等を設置してある。
レイやアラン達はその兵員輸送ベイに乗り込んだ。
ネイオと呼ばれた男やスコットも飛び乗る。
「撤収だ!全速力!」
ネイオが怒鳴った。
トラックが動きだし、砂を撒き散らしながら走り出した。
タイヤにチェーンが巻いてあるため、砂浜でも走れるのだ。
バギーやジープもついてくる。
フィア達が次々に怒声をあげた。
トラックは海岸線に沿っている小さな森に飛び込んだ。
バキバキと枝を折りながら突き進んでいく。
鳥が驚いて飛び立った。
すぐに森を突っ切った。
目の前には舗装された道路があった。
武装トラックはそれに乗り、快適に走り始めた。
バギーやジープが追いつき、トラックを護衛するように展開する。
「で、あんた達は何者だ?」
スコットが腰のマガジンをサブマシンガンに付けながら言った。
「装備や物資の量からして、アメリカ軍か?」
シュナイダーは頷いた。
「アメリカの特殊部隊<SAF>だ。バーナード教授率いる調査チームを連れてクリティロに向かう予定だったが、あの海岸で奴らから対空砲火を受けて、僕達以外は全滅した。………ところで、奴らは何者だ?」
「フィア<恐怖>だ」
答えたのはスコットではなく、クロウだった。
「15年程前、アーサー・ホーク博士に発見された新生物、グール<食人鬼>から進化したと思われる種だ。知力が異常で、人類を遥かに上回る知力を持っている。あの<L.A.S.E.R>技術が特にいい例だろう」
「ああ、そのとおりだ」
ネイオが頷いた。
「奴らはレーザー・ガンを使い、異常な耐久力を誇り、しかもUウイルスに感染した他生物を好きなように操れる………」
「………ところで、あんた達、いったいなにもんだ?」
アランが疑いもあらわに言った。
「南アメリカには、もう人間はいないと思ったぜ」
スコットが頷く。
「ああ、大部分の人間はグールと化した。だが、まだしぶとく抵抗してる人間もいるのさ。俺はスコット・アンティリーズ。こっちはネイオ・ワークだ。俺達はアメリカのある特殊部隊の一員だ。ブラジルに現れたとかいう謎の生物を調査するために送り込まれたんだが、あれよあれよというまに南アメリカが完全封鎖されてね。置いてけぼりをくらったのさ。だが、むざむざフィアに撃たれ、グールに貪り食われる気は無い。俺とネイオは生き残っている人間を集め、フィアに対抗する数千人の戦闘組織をつくりあげた。そう、俺達は―――」
スコットはにやりと笑い、固く拳を握った。
「レジスタンス<抗う者達>だ!!」

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