「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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JEDIMANの瞑想室
第1章 インフェルノ<灼熱地獄> <1>
ニューヨーク陥落の数週間前―――
カルフォルニア沖に戦艦が停泊していた。
アメリカ国旗が翻っている。
その艦の甲板の上で、1人の男性が潮風を浴びるのを楽しむかのように目を閉じていた。
老齢に近いながら筋肉質な体。
皺の刻まれ始めた顔は、凄まじい威厳を発している。
男―――アーノルド・ブライドンは、しばらく潮風を浴びると、甲板前方の主砲に鋭い視線を向けた。
3つの砲門を揃えた主砲を、エンジニア達がせっせと整備している。
「ニック!装填セクションと撃鉄セクションは念入りにな!」
ブライドンが大声で言うと、エンジニアの1人が返事をするかのように笑顔で手を上げた。
ブライドンは晴れやかな蒼天を見上げた。
アメリカ国旗が立派に翻っている。
だが、ブライドンは気がついた。
アメリカ国旗と旗塔を結ぶ紐が緩んでいる。
紐の緩みは風が吹く度にどんどん大きくなり、ついにアメリカ国旗は旗塔を離れ、空中に舞い上がり、海に滑り落ちた。
「……………不吉だな」
ブライドンは一言つぶやくと、大声で部下を呼んだ。
すぐに代わりの国旗をつけねば。
部下が甲板に飛び出してくる。
ブライドンは海面に落ちた国旗を指した。
「トルーマン、代わりの国旗を………」
「副艦長、大変です!」
トルーマンと呼ばれた部下は、明らかに慌てながら叫んだ。
ブライドンは自らの言葉が遮られた事に少しムッとしたが、すぐに聞き返した。
「何事だ?」
「南アメリカから来た正体不明の怪物達が、パナマ陸峡を北進しています!」
「……………」
ブライドンはため息をついた。
「トルーマン、私はお前が優秀な部下だとずっと―――」
「副艦長、とにかくブリッジへ!」
トルーマンは身を翻した。
「大事変です!」
ブライドンはしばらく黙って突っ立っていたが、あきらめてブリッジへ向かった。
「遅いぞ!ブライドン、どこで油を売っていたんだ!」
ブライドンがブリッジに入るなり、指令席にふんぞり返ったデブ男が叫んだ。
男の額は汗で光っている。
ワイロを使う事だけはうまい能なし艦長、オゼル・ディラスだ。
「………もうしわけございません」
ブライドンはそう言うと自らの席につき、コンピューターを起動した。
彼の席はオゼルの嫌がらせで、ブリッジの端にある。
オゼルはブライドンに地位をとってかわられないかと戦々恐々としているのだ。
「副艦長、これが問題の通達です」
トルーマンがブライドンのディスプレイにデータを送った。
ブライドンのディスプレイにウィンドウが開く。
「なんだ?これは。メールか?」
「ええ。数時間前にパナマからアメリカやメキシコ、カナダなどのあらゆる電子端末に送られたメールです。そうとうせっぱつまっていたんでしょう。宛先を特定してませんしね」
ブライドンはウィンドウに書かれた文章を眺めた。
文体構造が乱れている。そうとう慌てていたのだろうか。
ブライドンは頭の中でまとまりのない文章を整理しながら読み始めた。
「こちらパナマ。北アメリカ各国に、緊急事態を宣言する。正体不明の怪物達が南アメリカより現れ、国境警備隊が撃破された。我々の軍事力では奴らを止められない。確認できた限りの情報だと、奴らは銃に撃たれてもなかなか死なず、しかも未知の文明を有している。とにかく急いでくれ。いまこの瞬間にも奴らがこのパナマの首都で暴れている。いつ部屋に踏み込んできてもおかしくな―――」
そこで文章が途切れていた。
おそらく、怪物がメール作成者の部屋に押し入り、メール作成者は慌てて宛先を特定せずに北アメリカ全ての電子端末に送信したのだろう。
「ふむ………」
ブライドンは腕を組んだ。
オゼルが、本国に確認を取れ、と大声で部下に叫んでいる。
「怪物、ねぇ………」
ブライドンは興味無さげにつぶやいたが、実際は彼の心はかき乱されていた。
「オゼル艦長、本国より通達です」
通信士官が口を開いた。
「『アメリカ国防省より。問題のメールの真否を確認するため、一時警戒態勢を敷く。南アメリカ方面から来る身元不明機は、警告無しに必ず撃墜せよ』です」
「わかった」
オゼルは額の汗を拭きながら答えた。
「すぐに警戒態勢を―――」
「レーダーに反応あり!」
突然、レーダー士官が叫んで。
「数、4!その内2機は完全に身元不明機!残り2機はアメリカ軍ヘリのようです!ただし、認証パスワードを発していません!身元不明機です!」
「よし」
オゼルはタバコを取り出すと、大声で叫んだ。
「全機、撃墜しろ!」
「なっ………!艦長!」
ブライドンは驚きにうたれ、オゼルを見た。
「全くの正体不明機はともかく、残る2機は認証パスワードを発していないとはいえ、味方のヘリですよ!?それを撃墜するのは―――」
「黙れ!ブライドン」
オゼルはタバコに火をつけながら怒鳴った。
「本国は身元不明機は警告無しに撃ち墜とせと言っている!それに、この<サラマンダー>の動向を決めるのはお前ではない!このわしだ!」
ブライドンは押し黙った。
クルー達が息を詰め、2人を見守っている。
「………わかりました」
ブライドンはそう言うと、腰の拳銃を抜いた。
「ですが、あなたの言葉は受け入れられません。この拳銃があなたの脳天に向けて火を噴く前に、撃墜命令を撤回し、救出態勢を整えてください」
オゼルの顔が驚愕に歪んだ。
「なっ………!ブライドン、貴様、反逆罪だぞ!」
「私には味方かもしれないヘリを撃墜する方が反逆罪に思えますが」
ブライドンは涼しい顔で言った。
「さあ、早く撤回命令を」
「ぐぬぬ………」
オゼルはブライドンを睨むと、しばらく後、ヘリを救出するよう指示を下した。
「ブライドン、貴様、軍法会議は免れないぞ……」
オゼルはブライドンを睨んだまま言った。
「そうですか。では、覚悟しておきましょう」
ブライドンはそうとだけ言うと、拳銃をしまい、甲板へ出た。
水兵達が南から飛んでくるヘリを指さし、大声で叫びながら甲板を走り回っている。
対空砲が稼動し、砲門をヘリの方角へ向けた。
「あれは………」
ブライドンは息をのんだ。
2機のアメリカ軍ヘリが、昔見た映画、STARWARSのTIEファイターにそっくりな戦闘機に追いかけられている。
「なんなんだ?あれは………」
ブライドンがつぶやいた次の瞬間、ヘリの1機がTIEファイターの攻撃を受けて爆発した。
残る1機が<サラマンダー>に向かって必死に逃げてくる。
「構え!」
ブライドンは対空砲の砲手達に向かって叫び、片手をあげた。
ヘリが<サラマンダー>の直上を勢いよく通りすぎた瞬間、ブライドンは上げていた手を振り下ろした。
「てぇい!」
対空砲火が空を埋め尽くした。
TIEファイター達が凄まじい砲火を浴び、爆発する。
「っしゃあ!」
砲手の1人がガッツポーズした。
ぼろぼろのヘリが旋回し、<サラマンダー>の後部に着床した。
扉が開き、数人の者達がおりてきた。
「ようこそ、<サラマンダー>へ」
ブライドンは進み出ると、そう言いながら片手をさしだした。
「どうも」
汚れた長い黒髪に、ぼろぼろの服をまとった男がブライドンの手を握った。
「クロウと呼んでくれ。伝えなきゃならない事が山程ある」
「…………なるほど」
クロウの話に、ブライドンはゆっくりとうなずいた。
「信じられんな!嘘も大概にしろ!」
オゼルがいらいらと怒鳴った。
「あんた、能なしだな」
クロウはズバッと言い放つと、デスクに拳を叩きつけた。
「早く国防省に連絡しろ。フィアの行動は迅速だ」
「黙れ!」
オゼルがわめいた。
「この艦の動向はわしが決める!文句は言わせ―――」
「キャンキャンわめくな」
いつの間にかクロウの手にはハンドガンが握られていた。
銃口は見事にオゼルの心臓を狙っている。
「き、貴様!わしは艦長だ!反逆罪で―――」
「あいにく、オレは軍属じゃないんでね」
クロウはひらひらと手を振った。
「オレの言った事を包み隠さず上層部に連絡しろ」
「この―――」
「今すぐだ!」
クロウは撃鉄を起こした。
「ひ、ひいいい!」
オゼルは思わずしりもちをついた。
「わ、わしは認めんぞ!わしが艦長―――」
「10」
クロウが静かにカウントした。
「9、8、7」
「こ、この下等生物が―――」
「4、3」
「き、貴様みたいな奴のざれごとに付き合っている暇など―――」
銃声が轟いた。
部屋の隅にあったワインが銃弾を浴びて粉々になり、中にあった赤ワインが、鮮血のごとく壁に飛び散った。
薬莢がカラーンと音をたてて床に落ちる。
「どうする?」
クロウは小首をかしげた。
「死ぬか?それとも無駄に生き長らえるか?」
オゼルはしばらく呆然としていたが、立ち上がると、よろよろと部屋から出ていった。
「この臭い………」
クロウの後ろに立っていたローグが顔をしかめた。
「奴、失禁しましたね」
「はっ!情けない奴だ」
クロウはそう言うとハンドガンを指でくるくると回し、ホルスターに収めた。
「もう少し話を詳しく聞かせてくれないか?」
ブライドンが腕を組んで言った。
「え~と、そうですね」
ローグの隣にたった少女が、考え込むかのように人さし指を頬に当てた。
「Uウイルスは人をグールにし、フィアはグールから独自に進化した種。彼らはわたし達が<ブラスター>と呼ぶレーザー・ガンを用い、さらには人類を超える未知の科学力を有しています。それに、フィアはなぜか他のUウイルス・クリーチャーを操れる……」
「なるほど……」
ブライドンは席を立つと、小窓から外の海原を眺めた。
正直、彼はこの者達の話を信じる気になれなかった。
南アメリカから脱出してきたなど、狂気の沙汰だ。
だが、この異常な状況下では―――
「信じるしかない、か……」
彼はそうつぶやくと、クロウ達に向き直った。
「よろしい。私が本部に連絡しよう」
数時間後―――
「奴らは既にメキシコに侵入している、だって!?」
イギリス人の青年、ドイルが叫んだ。
ブライドンが頷く。
「ああ。アメリカ政府もその存在は確認した。現在、撃退のために高速戦闘機の派遣が検討されている。君達の話も受け入れられたよ。ロサンゼルスに向かうぞ」
「ロスか………」
シュナイダーがつぶやいた。
「メキシコ軍は善戦してますか?」
シュナイダーの問いに、ブライドンは首を捻った。
「さあ、どうだろうな。君達の話が本当なら、メキシコ軍の運命も知れたものだと思うが」
「まあ、なんにせよ」
クロウが磨いていたダガー・ナイフをくるりと空中に放り投げ、落ちてきたのをパシッと取った。
刃先がギラリと光った。
「ロスへ急ごう」
数時間後―――
「か~っ!うまい!」
ローグが涙を流さんばかりに叫び、シチューをがっついた。
「海兵隊にいた頃は、軍の食事はまずいとばかり思ってたけど、こんなにうまかったなんてな~!」
「ま、このところ非常食ばかりだったしな」
シュナイダーがステーキを切りながらつぶやいた。
「それに比べりゃ天国天国………」
「お、これもらい」
隣でハンバーガーを喰らっていたスコットが、シュナイダーが切ったステーキのひときれをつまみ上げ、口に放り込んだ。
「き、貴様ああああああ!決闘だ!僕のプライドが貴様を許さない!」
シュナイダーがナイフを振り下ろし、スコットはスプーンでそれを受け止めた。
「なにやってんだか………」
リアナが魚のフライをつつきながら、食堂で食器を武器に決闘しているシュナイダーとスコットを見てため息をついた。
「ま、たまにはこんなにぎやかなのもいいんじゃない?」
隣のカトリーナがくすりと微笑んだ。
「ま、そうだろうな」
クロウも笑った。
「お、珍しい」
ネイオがつぶやく。
「なにがだ」
「あんたが笑うなんてな。キャラ違うぞ」
「オレってそんなキャラだっけ?」
「ごもっとも」
「おい、これうまいぞ~」
ローグがフライドチキンをがっつきながら叫んだ。
「さて、馬鹿はほっといて」
クロウは急に真剣な表情になった。
「これからロスだ。<SAS>の2人はどうする?」
カトリーナとドイルは顔を見合わせた。
「…………ま、帰りたくないと言えば嘘になるが……」
ドイルが口を開いた。
「フィアの問題はアメリカだけの問題じゃない。僕はここに居残るよ」
「わたしも」
カトリーナも頷いた。
「本当にいいのか?」
ネイオが言った。
「お前ら2人、影薄いぞ」
「「やっぱ帰る」」
「冗談だって。落ちつけよ」
「やあ、諸君。食欲は満たせたかね?」
ブライドンが食堂に入ってきた。
その顔は微妙にひきつっている。
「悪い、ニュース」
今までずっと黙っていたリードがぼそりとつぶやいた。
ブライドンが頷く。
「そう、悪いニュースだ。奴らはメキシコ軍をこてんぱんにして、メキシコシティに迫っている。アメリカ軍は性急に国境地帯に軍を集中しているそうだ」
「そうなんだ……」
リアナがつぶやいた。
「それに、さらに悪いニュースだ」
ブライドンはため息をついた。
「私は―――」
「アーノルド・ブライドンは反逆罪により、<サラマンダー>副艦長の資格を剥奪された!」
嬉しそうな声が食堂に響いた。
見ると、食堂の入り口にオゼルが立っていた。
脇には、ハンドガンを構えた4人の兵士が立っている「…………と、言う事だ」
ブライドンがため息をついた。
「すまない。これ以上は力に―――」
「手をあげろ、オゼル」
撃鉄を起こす音と同時に、クロウが言った。
彼の手にはいつの間にかハンドガンがある。
だが、オゼルは意に介さず、高笑いした。
「はっはっは、それがどうした!こっちには武装した4人の兵士がいるんだぞ!」
次の瞬間、立て続けに4発の銃声が鳴り響き、4人の兵士達の手からハンドガンが弾け飛んでいた。
「なんだって?」
クロウは銃口から硝煙をあげるハンドガンを構えたまま言った。
4人の兵士達は顔を見合わせると、すたこらさっさと逃げ出した。
オゼルが青い顔をしながらも2挺のハンドガンを抜いた。
「ふ、ふはは、片方の拳銃を吹き飛ばしても、もう片方が貴様の心臓を貫くぞ、カスめが!」
「冷や汗流しながら言ってんじゃねーよ、クソ虫が」
クロウは言い返したが、心中では焦っていた。
「さあ、ブライドンをこちらに引き渡せ」
「あのさあ、オジサン」
シチューを食べ終えたローグが付き合ってられないというように言った。
「たった2つの拳銃で勝てると思ってんの?」
「何を馬鹿な事を!勝てないはずがないだろう!」
「こっちは7つだぜ?」
次の瞬間、ジャキッという音と共に、7つの銃口がオゼルの心臓を捉えた。
「さあ、無駄な抵抗はやめて床に銃を落とすんだ」
シュナイダーが言った。
オゼルはしばらく呆然としていたが、その手から力が抜け、2挺の拳銃が床にゴトリと落ちた。
「さて、どんなコネを使ったかしらんが、そのコネを使ってブライドンの反逆罪を帳消しにしろ」
オゼルが目を見開いた。
「な………っ!そんな、パットン将軍閣下にそんな事を言っても………」
「てめえの金を積め」
クロウは事も無げに言った。
「そうすれば、パットンって野郎の考えも変わるだろうよ」
それを聞いたオゼルはよろよろと立ち上がった。
「しかし……そんな事をすれば……わしの……地位が……権力が………」
「ごたごたぬかすな」
クロウはいらいらと言った。
「オレはお前をこの瞬間にも殺せるんだ」
オゼルは大きなため息をつくと、クロウ達に背を向けた。
「ブライドンの反逆罪を取り消せばいいんだろう……?」
「ああ、その通りだ」
クロウはそう言うと、拳銃をホルスターに収めた。
「これがロサンゼルスか!」
「おーおきーい!」
ローグとリアナはヘリの中で歓声をあげた。
眼下にはロサンゼルスの大都市が広がっていた。
遠くの山に高名なハリウッドの看板がある。
一行は<サラマンダー>からヘリに乗り、ロサンゼルスに来ていた。
「リアナ、フィアの資料は持ってきたか?」
シュナイダーが訊いた。
「もちろん!」
リアナは笑顔で頷いた。
「バリバリ解析して、フィアの弱点を探しあてますよ!」
数日後、ロスのアメリカ軍施設の一室―――
「もー無理~」
リアナは頭を抱え込んだ。
パソコンのディスプレイの明かりのせいで目がちかちかする。
フィアの資料の解析は、彼女にとっても大問題だった。
「無理すんなって」
ローグがリアナのデスクにコーヒーを置きながら言った。
「焦ってもしかたないさ」
「しょうがないでしょ!この光球の正体がわかるまでは寝てなんかいられないわ!」
リアナはディスプレイに映っているあの巨大な光球の写真をビシッと指さした。
「ローグは直接見たんでしょ!?どんな感じだった!?」
「どんな感じって………」
ローグは頭をかいた。
「…………なんか、優しい白光を脈打つように放ってて、ドラゴンがそれを守ってて………」
「そんな事はもうわかってるの!」
リアナはキーッと唸りながら腕を振り回した。
「だけど、それだけじゃこれがなんなのかわからないのよ!」
「僕に言うなよ……」
ローグはうんざりとため息をついた。
「ああ、もう!これがわかればすっきりするのに~っ!」
リアナはいらいらと自らの頭をかきむしった。
「ま、お疲れ……」
ローグはそう言うと部屋を出た。
とたんにドイルとぶつかった。
「わっ!」
「ぐはっ!」
2人はもつれあって倒れた。
「あ、すいません!ドイルさん」
ローグは急いでどいた。
「お、ここにいたか、ローグ」
ドイルはやけに慌てて立ち上がった。
「ローグ、大変だ!ついにニューヨークが陥落した!」
「なんですって!?」
ローグは飛び上がらんばかりに驚いた。
「ニューヨークから逃げた軍や、各地で撃ち破られているアメリカ軍は、皆デトロイトに集結してる。近い内に軍が反攻作戦を繰り出すんじゃないかって噂だ。とりあえず、作戦室に行こう。クロウやブライドンもいる」
ドイルはそう言うと身を翻した。
ローグは慌てて彼の後を走りながら、故郷が理不尽な力に奪われていく不安を感じていた。
「我々は連戦連敗!」
アメリカ軍ロサンゼルス基地の作戦室で、ロサンゼルス基地司令官が怒鳴った。
「カナダはなにやっとる、カナダは!」
「無理もありませんよ」
ブライドンが言った。
「フィア軍の一部はアフリカ大陸に向かい、北アフリカ一帯は完全に敵の支配下にあります。南アフリカ地域はまだフィアに抵抗していますが、あまり長くはもたないでしょう」
「ヨーロッパはどうなっているんだ?」
クロウが訊いた。
「イタリアが散々です。シチリアが陥ち、ローマも奪取されました。北イタリアもまもなくフィアの手に陥ちるでしょう」
「ったく、ヨーロッパ連合はなにしとる!」
司令官がいらだたしげに言った。
ブライドンが頷く。
「フランスがイタリア方面に空軍を派遣しましたが、すぐに壊滅したそうです」
「中東は?」
シュナイダーが訊いた。
ブライドンが首を振る。
「ダメだ。奴らは今、中東大戦の真っ最中だ。フィアも中東に手を出していないし、中東の連中にとっては遠方の脅威より目の前の敵ってとこだろう」
「ったく、手も足も出ないのかよ………」
シュナイダーは頭をかきむしった。
ちょうどその時、作戦室の扉が開き、ドイル、カトリーナ、そしてローグが入ってきた。
「遅いぞ」
クロウはそうとだけ言うと、アメリカの東海岸を指でなぞった。
「東海岸はニューヨークまで全て敵の支配下にあるんだな?」
ブライドンが頷いた。
「その通りだ」
「中央部は?」
「フィアの主力部隊は東海岸にいるが、もちろん中央部も例外じゃない。点在する都市はフィアに次々に撃破されている。これほどまでにフィアの被害を受けていない地は西海岸だけだ」
司令官が口を開いた。
「現在、司令部は反攻作戦のために、アメリカ各地から敗走してきたアメリカ軍をデトロイトに集結させてる。反攻作戦のためにカナダも軍備を整えているらしい」
「だけど、それなら早く手を打たないと」
ローグが言った。
司令官は首を横に振った。
「いや。実は、カルフォルニアからデトロイトに向かっていた大規模な空挺輸送部隊がTIEファイターに似たフィアの戦闘機、<サイクロプス>の攻撃を受けて全滅してな。大西洋艦隊もフィアの北アフリカへの進出の際に手痛い被害を受けているんだ。すぐに反攻作戦を展開するのは難しい」
「だけど、もたもたしていたらフィアが」
ドイルが言った。
「もちろんだ」
司令官は頷き、ため息をついた。
「奴らが、フィアがもし西海岸へ注意を向ければ―――」
突然、司令官の側に置いてあったパソコンがメールを受け取り、けたたましく鳴いた。
「―――そう、反攻作戦までの時間稼ぎができる」
司令官がクロウ達に見せたディスプレイには、『フィアがカルフォルニア・ベースを攻撃した』と書かれていた。
「ん~~~っ!」
リアナは大きくのびをした。
「疲れたなぁ………」
「大丈夫?」
リアナは突然の声に驚いて振り返った。
そこには、リードが立っていた。
「あ、リード。どうしたの?眠れない?」
リアナの言葉に、リードはコクリと頷いた。
「うん……。寝ようとしたけど、父さん達が死ぬ夢をまた見たから………」
「………そう………」
部屋は気まずい静寂に包まれた。
両親が死ぬのを見て以来、リードは暗く沈んでいる事が多かった。
しばらくのち、リアナは無理やり笑顔を作り、リードの頭を撫でた。
「怖いなら、お姉ちゃんがいっしょに寝てあげようか?」
リードは顔を真っ赤にして一気に後ずさった。
「な………!馬鹿言うなよ!そんな―――」
その時、リードはリアナのパソコンのディスプレイに映る光球の写真を見て目を丸くした。
「それ―――」
「カルフォルニア・ベースが………」
「攻撃された?」
ネイオとスコットが呆然とつぶやいた。
司令官が頷いた。
「だが、これはトラップだ。カルフォルニア・ベースのアメリカ軍は、全てこのロサンゼルスに来ている。カルフォルニア・ベースはもぬけの殻だ。突入したフィア達は呆然とするだろうな。そして、基地には兵士達の代わりに、大量の爆弾が設置されている。つまり―――」
司令官がにやりと笑った。
「ドカン!、だ」
「そりゃあいい」
スコットがにやにやして言った。
「奴らにもいい薬になるだろうな」
「だが、問題はこれからだ」
司令官は再び渋い顔をした。
「カルフォルニア・ベースで味方を大量に失ったフィアは、怒り狂ってロサンゼルスに進攻してくるだろう。その防衛準備を整えなければ」
その時、作戦室の扉が開いた。
小太りの男と、精悍な顔つきをした40代の男だ。
「ね、ネザル准将!」
司令官が飛び上がらんばかりに驚いた。
「どうやってここに!?」
「シアトルを経由してだ」
ネザルは部屋の中央に置かれたデスクに歩み寄りながら答えた。
「遠回りだが安全なルートだ。さて、君がクロウだな?私はともかく、アーサーは覚えているだろう」
「……………ああ」
クロウはブスッとして答えた。
「リアナ・ブルックベルはどこかね?」
「………………ローグ、案内してやれ」
クロウはそっぽを向きながら言った。
「オレは奴らの顔など見たくもない」
「…………こちらです」
ローグはそう言うと歩き始めた。
ネザルとアーサーが続く。
彼らはしばらく廊下を歩き、リアナのいる部屋の側に来た。
「この部屋です」
ネザルは頷くと、扉を開けた。
扉が抗議するように軋み、ゆっくりと開いた。
その数時間前―――
「これ、夢で見る光球だよ!」
「え?」
リアナはリードの言葉に慌ててディスプレイを見た。
ディスプレイには光球の写真が映っている。
「夢だよ!よく夢に出てきて、僕にしゃべりかけてくるんだ!」
そういえば、リードやティアは巨大な光球の夢をよく見ると言っていた。
「えと、これが夢に出てくるっていう光球?」
リアナが訊くと、リードは勢いよく頷いた。
リアナはしばらく考え込んだが、いい考えがひらめいた。
「リード、そこに寝て!」
リアナは部屋にある自らにあてがわれたベッドを指し示した。
リードがあっけにとられた顔をする。
「え?なんで?」
「いい考えがあるの。とにかく横になって」
リードはとりあえずベッドに横になった。
リアナは脳波測定器を取り出すと、リードの頭につけた。
ディスプレイに『測定不可能』という文字が出る。
「リード、落ちついて眠って。起きたら、見た夢について教えてくれる?」
「うん………」
リードはそう言うと目を閉じた。
開けた。
「目が冴えて寝れないよ」
リアナは困ったような顔つきをした。
「じゃあ、子守唄でも歌ってあげようか?それとも添い寝でも―――」
「いい。やっぱちゃんと1人で寝る」
リードは慌ててそう言うと目を閉じた。
しばらくして、リードの落ちついた寝息が聞こえてきた。
「さて、と………」
リアナはそうつぶやくと、キーボードを忙しく叩き、脳波測定器にリードの血から採取したさまざまな情報をインプットした。
ディスプレイに安定した脳波が映る。
「よし」
リアナは満足げに腕を組むと、ディスプレイに映る脳波の波をじっと見つめ始めた。
数時間後―――
うとうとしかけていたリアナは、ディスプレイに映った脳波の乱れに慌てて飛び起きた。
脳波がある一定の波動を繰り返している。
リアナは急いでキーボードを打ち込んだ。
「この脳波に似た……人間の脳波……」
と、その時、扉が開いた。
ネザルとアーサー、それにローグが入ってくる。
「後にしてもらえますか?」
リアナは入ってきた者達をろくに見ずに言った。
「今、フィアに関する重大なデータが採れるところなんです」
「なんだって!?」
アーサーが叫び、リアナに駆け寄った。
「どこだ!?データはどこだ!?」
「落ちついてください!今採っているところなんです!」
リアナはそう言うと、満足げに頷いた。
「よし。リード、起きて」
リアナは寝ているリードの肩を揺さぶった。
リードが目をしばたかせ、眠そうに起き上がる。
「………なに?」
「ごめんね、起こしちゃって。なんの夢を見てたの?」
リードはしばらく考えた後、眠そうに答えた。
「あの光球だよ」
それを聞いたリアナは電撃でもくらったような表情をしたが、無理をして微笑んだ。
「そう。ありがとう、リード。おやすみ」
「おやすみ、リアナ……」
リードはそう言うとすぐに眠りについた。
「…………なにかわかったのか?」
アーサーは青い顔をして黙り込んでいるリアナに訊いた。
リアナはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「リードが光球の夢を見ている時のフィア脳波を、人間脳波に換算したんです。そしたら………」
リアナはごくりと唾を飲んだ。
「彼が、リードが光球を見ている時の脳波は、人間が神を崇めている時の脳波と酷似していました」
リアナはアーサーの顔を見つめた。
「あの光球は、フィアの<神>です」
「あーづがれだ~」
ヘリの中でリッドがうめいた。
「アメリカ横断がこれほど大変だなんて~」
「リッド、操縦してる俺の身にもなれ」
コクピットでビッドがうんざりしたように言った。
「眠くて眠くてしかたがないんだぜ?」
リッドは気にした様子も無く、お疲れさーん、と言うと、再びグチをこぼし始めた。
「ったく………」
ドミニクがため息をつく。
「この食いしん坊の怠け者が」
「んだとっ!」
リッドが跳ね起きた。
「ドミニク、てめえ、俺を………」
「待って、ドミニク、リッドはそんなのじゃないよ!」
ローラナが怒ったように言った。
彼女はリッドの昔馴染みなのだ。
「ローラナ………」
「リッドは食いしん坊どころか大食らいの穀潰し。頭悪くて無駄に運動神経が良くて、いっつもやる気が無いものぐさ太郎だよ」
リッドはガクッと肩を落とした。
「ローラナ、それ、フォローになってない………」
ローラナは鼻で笑った。
「あら、もともとフォローする気なんてないわよ?」
「仲がいいねえ………」
マージョラムはヘリの奥で非常食をパクつきながらつぶやいた。
口喧嘩は激しくなっていた。
売り言葉に買い言葉の応酬だ。
リッドはローラナドミニク連合軍に無駄な抵抗をしている。
「こんの………ブス!」
ついにリッドがローラナに叫んだ。
マージョラムはため息をつき、首を横に振った。
「The end」
次の瞬間、リッドの右頬にローラナの拳が炸裂した。
リッドがカエルがつぶれたような声をあげて吹っ飛び、べちゃりと床に倒れた。
ローラナが拳を構え、怒気に満ちた声で言った。
「誰がブスでキモくてオバサンくさいだって!?」
「いや……そこまで言って無いし……」
「五月蝿い!」
「ぐはっ!」
リッドはローラナの蹴り(とどめ)を腹に受け、気絶した。
「怖………」
隅っこにうずくまっていたマットがつぶやいた。
「副大統領、まもなくロサンゼルスです」
「うむ」
アメリカ副大統領、アローは、政府専用機から見えるロサンゼルスの街の灯りを眺めながら頷いた。
今この瞬間にも、どこかの街がフィアに呑み込まれたかな………
アローは心の片隅で思った。
フィアはニューヨークを制圧し、さらにデトロイトへと北上する構えを見せている。
デトロイトにはアメリカ軍が集結しており、さらにはカナダの大部隊も援軍として到着している。
アメリカ軍はデトロイトの大軍を使っての反攻作戦を考えており、準備が整う前にかの地を攻撃されるのは実にいただけなかった。
そのため、西海岸の大規模基地、カルフォルニア・ベース全体を罠にし、大量の火薬、さらには小規模ながらも核までしかけた。
カルフォルニア・ベースに進軍したフィア軍は凄まじい被害を受け、退却したらしい。
フィアは明らかに怒り、大規模な部隊を西海岸に投入する動きを見せている。
攻撃目標は、おそらく―――
「ロサンゼルス………」
アローはひっそりとつぶやいた。
ロサンゼルスにはカルフォルニア・ベースの部隊も集結し、西海岸における重要拠点となっている。
全く。
なぜこれから激戦となる地に自分が送り込まれなければならないのか。
アローはアメリカ合衆国大統領、グラントに命じられ、デトロイトからロサンゼルスに来ていた。
グラントはアローの戦地視察による兵士の士気高揚と説明していたが、目の上のたんこぶであるアローを排除したいという思いがありありとうかがえた。
「全く。腐ったお偉いさんとはどこにでもいるものだな」
アローは声に出してつぶやいた。
ま、民衆から副大統領が『名君』と呼ばれ、自分自身が『迷君』と呼ばれれば怒るのも当然か。
アローは苦笑した。
全く。
自分の提案した民衆重視の良い政策が自分を滅ぼすとは。
「皮肉なものだな………」
轟音をあげ、政府専用機が着陸した。
「へえ、あれがアロー副大統領か」
笑顔で手を振りながらタラップを降りてくる白髪の男を見て、シュナイダーがつぶやいた。
兵士達が歓声をあげ、ロサンゼルス市民が笑顔で手にした小さなアメリカ国旗を振る。
深夜でありながら、名君を一目見ようとロサンゼルス空港には市民が集まっていた。
「へえ、初めて見たぜ」
スコットがつぶやいた。
「ま、ずっと南アメリカにいたしな」
ネイオも頷いた。
「それにしても、あの副大統領も災難だな」
ドイルがつぶやいた。
「このロサンゼルスに送り込まれるなんてさ」
「ああ、その通りだ」
クロウが腕を組み、渋い顔で頷いた。
「グラント大統領はそうとう盲目らしい」
「だが、今の我々にとってはそれでもいい」
司令官がつぶやいた。
「少しでも兵士の士気をあげてくれるなら、それだけでも来てくれた価値がある。これから我々は絶望的な戦いを繰り広げなければならないのだからな」
場が重くなった。
しばらくして、軍人の1人がパタパタと司令官に駆け寄って来た。
「司令官」
「なんだ」
「<SAF>と名乗るヘリが空港への着床を求めています。いかがしましょう」
「「<SAF>!?」」
シュナイダーとクロウが同時に振り返った。
「名前は?」
軍人は首を捻った。
「ええと………ビッドとか名乗ってました」
シュナイダーとクロウは同時にため息をついた。
「「あいつか……」」
「<SAF>………、確か君達の仲間だったな」
司令官の言葉に、シュナイダーが頷いた。
「ええ。ビッドという男は………まあ……キモくてうさんくさいですが、信用できる奴ですよ(たぶん)」
司令官は頷くと、軍人に許可を出すよう言った。
軍人が敬礼し、走り去った。
しばらくして、傷だらけのヘリが空港に危なっかしく着床した。
中から軍服を着た者達が疲れきった様子で降りてくる。
クロウ達は慌てて駆け寄った。
数時間後、ロサンゼルス基地内―――
「よくここまでたどり着けたな」
シュナイダーは清潔な服に着替えたドミニクに言った。
ドミニクが頷く。
「ああ。ニューヨークではマジで死ぬかと思ったがな」
「ストレスのおかげで頭の毛が………」
ぼそりとマージョラムがつぶやいた瞬間、彼の首根っこはドミニクにわしづかみにされていた。
「………あ゛?」
「ちょ……ガハッ!……お、俺が悪………っ!て、手を……手を………離し……っ!」
「聞こえんなあ………」
「ぎゃーーーっ!!」
「まーたバカやってるよ、この2人」
風呂上がりのローラナが、髪からしずくをたらしながらつぶやいた。
「や、シュナイダー、元気だった?」
「ああ。お前も元気そうだな、ローラナ」
ローラナは豪快に笑った。
「もっちろん!あたしが若くして死ぬと思う?」
「その体力なら、100歳になっても死なんと思うがな………」
同じく風呂上がりのリッドがぼそりとつぶやいた。
次の瞬間、彼の顔面にローラナの鉄拳がストレートに入った。
「バカはほっといて」
悶え苦しむリッドを脇に、ローラナが笑顔を全く崩さずに言った。
「西海岸は安全だし、しばらくはゆっくりと休めそうね。ショッピングでも行こうかな~♪」
「は?」
シュナイダーは怪訝そうな顔をした。
「この街に向かってフィアの大軍が進軍してるぜ?」
ローラナの笑顔が崩れた。
「………は?」
「いや、だから」
「え、なに、もうすぐこの街消えるの?」
「ん、まあ、そう」
「………………シュナイダー、あんた、頼むから何も言わずに殴られてよ」
「んな!?は!?なんで!?」
「ちょ、ちょ、マジでお願い」
「いや、待て、は?なんで僕が殴られないといかんの?」
「いや、なんかムカつくから」
「ちょ、待て、マジで、拳振り上げんな!その笑顔やめろ!不気味だ!」
「ごめんね☆」
「ちょ―――ぎゃああああああああ!!」
「あ、あの、困ります………」
「いーじゃん、ちょっとだけよ」
ビッドはカトリーナを壁に追い詰めながら言った。
「知ってるだろ?俺、ここ来たばっかなんだ。通路をどういけばいいかもわかんねえんだ。人助けするつもりでさぁ………」
「だ、だからお風呂はこの先の右に角を曲がって………」
「そんなんじゃわかんねーんだって」
ビッドは壁に手をつき、カトリーナの顎を撫でた。
カトリーナがビクリと体を震わせる。
「案内してよ。いーじゃん、減るようなもんじゃないし」
「で、でも……」
「下心が見え見えなのよっ!!」
叫び声と共に、メリケンサックが装備された拳がビッドの後頭部に炸裂した。
ビッドはたんこぶのできた頭をさすり、逃げていった。
「ったく………あ、ごめんね。あいつ、あんな年のくせして女好きで」
ローラナは固まっているカトリーナに言った。
「大丈夫?変なことされてない?」
ローラナはそう言うと、カトリーナの身体をじろじろ眺めた。
「…………ふむ。上良し、中最良、下良し。なかなか良好ね」
「へ?なにが?」
「い、いや、なんでもないなんでもない」
カトリーナの問いに、ローラナは慌てて言葉を濁した。
「あ、あたしはローラナ。ローラナ・レンシア。あなたは?」
「か、カトリーナ」
「へえ、カトリーナか」
ローラナはそう言うと片手をさし出した。
「よろしく。カトリーナ」
「こ、こちらこそ」
カトリーナはその手を握り返した。
「OK。状況はよくわかった」
スコットはロサンゼルス基地の窓から外を眺め、つぶやいた。
怒号やサイレンが鳴り響き、兵士達が走り回っている。
「なあ、スコット、なにがあったんだ?」
ローグがぶらぶらと歩いてきた。
「なんか凄い騒々しいけど」
「自分の目で確認しろよ」
スコットは窓を指さした。
「ったく、一体何が―――」
そうぼやきながら外を見たローグは絶句した。
ロサンゼルスの街並みの向こうにある遠くの丘の稜線に、巨大な四足歩行兵器が2機、昇ってきた太陽の光を浴びてたたずんでいた。
巨大駆動兵器
「状況はかなり逼迫しているようだな、司令官」
アローの言葉に、ロサンゼルス基地司令官は頷いた。
「かなりまずい事態になっとります。フィアの大軍がロサンゼルスの東に展開してるんです。偵察部隊が見たところ、文句なしの大部隊だそうで」
司令官はそう言うと、地図が広げられたデスクに拳を叩きつけた。
「しかもばけもんみたいな巨大兵器が2機!まるでジャイアントだ!」
「そうだな」
アローは頷き、稜線にたたずんでいたあの巨大戦闘兵器に思考をめぐらせた。
あの巨大さと武装の多さからして、対要塞兵器である事は間違いないだろう。
しかも、多数のヴェノムやフィア、それにうだるような数のグールがいる事は疑う余地がない。
「司令官、守りきれるか?」
「さあ、どうでしょうね」
司令官は地図に様々な事を書き込みながら言った。
「かーなーり、不利ですけどね」
時は流れ、正午―――
フィアは動かず、2機の巨大駆動兵器も不気味に稜線にたたずんでいるだけだった。
「…………あー、もー!」
ネイオが癇癪を起こした。
「どうなってるんだ!?奴らはなぜ動かない!」
「ネイオ、黙れ」
クロウがうんざりしたように言った。
彼らはある通りの封鎖線にいた。
戦車が通りの中心にあり、それを挟むように鉄条網が張られ、小さなトーチカが設置されている。
クロウは辺りを見回した。
以前のメンバーに加え、新参者達までいる。
マージョラムがカトリーナにちょっかいを出し、ローラナに吹っ飛ばされるのが見えた。
「全く、にぎやかなこった」
クロウはそう言うと、遠くの丘の稜線に不気味にたたずむ戦闘兵器を見上げた。
「………ネイオ、スコット、南アメリカにいる間、あんなの見なかったか?」
ネイオとスコットは顔を見合わせた。
「………俺達は見てないが、見たって奴ならいたな」
「ああ。サンパウロから逃げてきた奴だ。確か、何か言っていたな。巨人が来た、とか、<ゴリアト>、とか」
「………ふっ、<ゴリアト>、か。うまい事を言う」
クロウは巨大兵器を見上げた。
「クロウ、<ゴリアト>って?」
ローグが訊いた。
「<ゴリアト>というのは、ある神話にでてくる巨人だ」
クロウはライフルの調子を確かめながら言った。
「天下無双を誇ったゴリアトだが、若かりし頃のダビデと戦い、ダビデの投げた石を眉間に受けて死んだんだ。最強の巨人でも、あの英雄には勝てなかった」
「なるほど」
ローグはそう言うと、遠くの<ゴリアト>を振り仰いだ。
「………石を投げても死にそうにないな」
「くだらん事を考えるなぁ、お前も」
シュナイダーがため息をついた。
次の瞬間、丘の向こうから大量のサイクロプスが飛来した。
「FIRE--------ッ!!」
対空砲が一斉に火を噴いた。
上空に砲弾が凄まじい勢いで撃ち出され、フィアの戦闘機であるサイクロプスを撃ち墜としていく。
サイクロプスはロサンゼルスのビルの谷間に飛び込むと、道路を蠢く人間達に向かって熱いレーザーを放った。
光弾が道路に炸裂し、アスファルトを溶かし、人間を吹っ飛ばす。
次の瞬間、そのサイクロプスは人間の戦闘機のミサイルを受け、爆発していた。
戦闘機が旋回し、別のサイクロプスにミサイルを放つ。
しかし、そのミサイルは目標に到達する前に別のサイクロプスに破壊され、戦闘機もサイクロプスに撃たれた。
片翼を失った戦闘機は歪回転をしながらビルに突っ込んだ。
派手な爆発と共に火が噴き出す。
しかし、間髪入れずに対空砲の十字砲火がサイクロプスを貫いた。
サイクロプスの破片が飛び散り、破片がミラービルの窓を粉々に粉砕した。
その時、ついに<ゴリアト>が攻撃を開始した。
ミサイル発射口から何発ものミサイルやレーザー・シェルが凄まじい勢いで放たれ、次々にビルに炸裂した。
しかも、ビルの根元を狙っている。
根元を完全に穿たれたビルは、不気味に軋みながら崩壊を開始した。
ガラスが雨のごとく降り注ぎ、悲運なアメリカ兵を引き裂いていく。
ガラスの破片の1つが、飛んだ熱い血飛沫を映した。
ビルは周りにいたアメリカ兵の命を奪い、轟音をたてて崩壊した。
塵が大量に飛び散り、分厚い白塵の塊になった。
すると、まるでそれが合図かのように、稜線の向こうからおびただしい数のフィアやグール、そしてヴェノムが現れた。
レーザー・シェルがハリウッドの看板を一瞬にして吹き飛ばした。
戦車から構成された機甲部隊がハイウェイを封鎖し、高速道路から押し寄せてきたヴェノムと激しく砲火を交え始めた。
砲弾同士が高速道路を飛び交い、互いの装甲を粉砕していく。
しかし、明らかにヴェノムが有利なようだった。
ジャンクションに設置された重迫撃砲が一斉に火を噴き始めた。
砲弾が空にアーチを描き、ロサンゼルスに押し寄せてくるフィアやグールの大軍の真ん中に炸裂する。
大量のグールやフィアが吹っ飛んだ。
ゴリアトから放たれたミサイルやレーザー砲弾を食らったビルが崩壊し、再びたくさんの命を奪った。
サイクロプスが地上を逃げ惑う兵士達を次々に始末していく。
それはまさに地獄絵図だった。
「ああ、僕の人生もここで終わりか………」
マットがじめじめとつぶやいた。
「うるさい!くるぞ!」
クロウは怒鳴るとライフルを構え、通りを押し寄せてくるグールに対して銃撃を始めた。
仲間達やアメリカ兵もすぐに攻撃を始める。
グールは不気味によたよたと歩き、数を武器に封鎖線に迫ってきた。
戦車の砲撃を受け、たくさんのグールが焼滅する。
「あれがみんな……アメリカ国民だったんだな……」
リッドがつぶやいた。
「余計な事は考えるな、リッド」
ドミニクが銃弾を装填しながら言う。
突然、グールの最前線で爆発が起きた。
地雷だ。
「死ね!ゾンビ!」
アメリカ兵の1人がロケット・ランチャーを放った。
ポータブル・ミサイルがグールをバラバラに吹き飛ばす。
しかし、グールは底なしだった。
撃てども撃てどもつきる事が無い。
そしてついに封鎖線にたどり着いた。
既に死んでいるグールがトゲだらけの鉄条網を脅威と思うはずもなく。
まもなく、グールに噛まれた人間の悲鳴が響いた。
「ちっくしょ!」
ドイルが銃口を掴み、振り回した。
銃尻がグールの顔に当たった。
グールの首がぐるぐる回転し、ねじ切れた。
「やばいぞ」
ビッドがショットガンを撃ちながら言った。
グールが吹っ飛ぶ。
「くたばれゾンビ野郎!」
ローグは目の前のグールに軍隊格闘を食らわせて倒すと、アメリカ兵にのし掛かっていたグールを撃ち殺した。
グールが戦車にとりついている。
だが、鉄の箱に対してはグールは無力のようだった。
カトリーナは手にしたナイフをネイオと揉み合っているグールの首に突き立てた。
ナイフの切っ先がグールの脊髄を切り裂く。
「大丈夫?」
カトリーナは汗を拭いながらネイオに訊いた。
次の瞬間、ネイオが拳銃を手にし、発砲した。
銃弾がカトリーナの背後に迫っていたグールの脳髄を貫いた。
「そっちこそ大丈夫か?」
ネイオは背後にくずおれたグールを呆然と見つめるカトリーナにすまして訊いた。
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