JEDIMANの瞑想室

JEDIMANの瞑想室

第3章 決死の罠 <2>


リッドはドミニクをおぶっり、裏路地を走っていた。
重機関銃を腰に構えたローラナもすぐ後ろを走っている。
ドミニクは先ほどから、さいなまれたように唸っていた。
「あと少しだ………。あと少しだからな………」
リッドは汗を流しながらつぶやいた。
突然、通信機が鳴り出した。
『ガー……………。中国軍が攻撃座標を設定した。5分後に攻撃を開始する。自衛隊は退避せよ』
「もうしてるっての」
リッドはいらいらとつぶやいた。
その次の瞬間、轟音と共に近くの建物が崩れ落ちた。
ローラナが悲鳴をあげる。
瓦礫から顔を覗かせたのは、ヴェノムだった。
「ちっ…………」
リッドは慌てて走り出した。
ローラナが続く。
ヴェノムはすぐに追いかけ始めた。
ガトリングから放たれたレーザーが、アスファルトに炸裂する。
リッドは必死に走った。
ヴェノムの駆動音が裏路地に響く。
「リッド、こっち!」
ローラナがどこかの民家の裏口の扉を開け、リッドを呼んだ。
リッドは頷き、飛び込んだ。
ローラナがすぐに扉を閉め、鍵をかける。
「意味無いんじゃないか!?」
「ええ、せいぜい気休め程度よ。早く奥へ行って!」
彼らは裏口のあるキッチンからリビングへと出た。
その瞬間、壁をぶち破り、ヴェノムが侵入してきた。
家が一気に安定を失い、崩壊しだす。
ヴェノムはリビングにいるリッドとローラナを見つけ、ガトリングを向けた。
次の瞬間、ヴェノムは撃たれていた。
一瞬で爆発したヴェノムの破片が飛びまくる。
「う、うわっ!」
リッドは慌てて伏せた。
ヴェノムは砲弾にやられていた。
富士宮港に潜んでいた中国南洋艦隊が、富士宮に向けて大量の砲弾を放ち始めたのだ。
そう、ブライドンの作戦は、富士宮の街を犠牲に、街に侵入したフィアを徹底的に中国南洋艦隊に叩かせるというものだったのだ。
しかし、リッド達はまだ富士宮から出ていなかった。
次々に辺りに砲弾が炸裂しているようだ。
地面が激しく揺れる。
天井にひびが入った。
リッドはリビングの隅に座り込み、丸くなった。
ローラナも隣で座り、丸くなる。
「死ぬんだな」
「うん」
「天国は働かなくていいのかな」
「だといいね」
「じゃ、天国で会おうぜ、ローラナ」
「うん」
次の瞬間、リッドとローラナ、そしてドミニクの上に天井が、家が落ちてきた。



クロウは素早く立ち上がり、振り向くと、スナイパー・ライフルを構え、一瞬にしてリッカーのみけんに銃弾を撃ち込んだ。
リッカーが一瞬のけぞる。
クロウはすぐに次弾を装填し、再び放った。
命中。
クロウは再び装填しようとした。
が、無理だった。
「ジャム<弾詰まり>か………」
クロウは舌打ちし、スナイパー・ライフルを捨てると、ハンドガンを抜いた。
リッカーが舌なめずりをして、にたあと笑う。
よだれの塊がぼとりと地面に落ちた。
「………下品だな」
クロウがつぶやいた次の瞬間、リッカーが飛びかかった。
クロウは華麗な身のこなしでリッカーの必殺の爪を回避すると、グルカナイフを抜き、リッカーの肩に深く埋め込んだ。
リッカーが悲鳴をあげる。
クロウはそのナイフを足がかりにしてリッカーの背中に駆け登ると、剥き出しの脳にハンドガンを連発した。
リッカーがつんざくような悲鳴をあげ、身悶えする。
クロウは素早く飛び降りると、ハンドガンをさらに撃った。
銃弾が次々にリッカーに炸裂する。
しかし次の瞬間、クロウは足を何かに絡め取られ、転んでしまった。
リッカーの舌がクロウのくるぶしに巻きついたのだ。
リッカーが舌を収納するに連れて、クロウの身体もずるずると引きずられていく。
「くそっ!」
クロウはハンドガンを舌に向けると、トリガーを引いた。

カキン

まさかの弾切れだった。
「そんな……」
絶望に支配されたクロウに、リッカーが爪を振り上げた。



「ゴリアトは手勢と共に、分岐点で待機しています」
オペレーターの言葉に、ブライドンは頷いた。
「<ゴッド・ハンマー>、スタンバイ」
「了解。<ゴッド・ハンマー>、スタンバイ」
オペレーターが復唱する。
「<ゴッド・ハンマー>?」
森内は首をかしげた。
「なんです?それは」
森内の問いに、アローが答えた。
「STARWARS・Projectによって開発されたサテライト・ミサイル<長距離ミサイル発射用軍事衛星>です」
「撃て!」
ブライドンが叫んだ。
日本上空に来ていた<ゴッド・ハンマー>の発射口が開いた。



ローグは信じられない物を見た。
天から降ってきた大量のミサイルがゴリアトや敵に降り注ぎ、一瞬にして敵を焼き尽くしたのだ。
「すげぇ………」
ネイオが息を呑む。
しかし、煙が晴れた時―――

ゴリアトはまだそこに立っていた。



「敵、健在!」
オペレーターの言葉に、ブライドンは絶句した。
「バカな!あれほどのミサイルを受けて………」
「ゴリアト、進軍開始!目標はここ、富士自衛隊基地だと思われます!」
「くっ………」
ブライドンは唇を噛んだ。
「もう策は尽きたぞ………」



ビッドのスナイパー・ライフルが、リッカーの舌を撃ち切った。
リッカーが舌から血を流し、悲鳴をあげる。
「クロウさん!」
ハンドガンを構え、駆け寄ってきたカトリーナが、別のハンドガンをクロウに投げた。
クロウはそれを素早く受け取ると、一瞬の間も置かず、カトリーナと共に撃ちまくった。
リッカーが大量の銃弾を受け、悲鳴をあげる。
しかし、すぐに2人の銃弾は尽きた。
リッカーが怒りを十二分に放ちながら、2人に歩み寄ってくる。
クロウとカトリーナはゆっくりと後退した。
「どうする?」
「どうするって………」
クロウの問いに、カトリーナが弱気の声を出す。
「助けて欲しいか?」
突然、別の声が割り込んだ。
次の瞬間、リッカーはポータブル・ミサイルを受け、吹っ飛んでいた。
「ビッド様、華麗に参上」
ビッドがバズーカを手に、片足を石にかけ、爽快に笑っていた。
「ってな♪カトリーナちゃん、俺に惚れちゃったかい?」
「おもしろいギャグですね」
カトリーナに一瞬で拒否られたビッドは、ガックシと肩を下げた。
リッカーはいつの間にか逃げ去っていた。



ゴリアトが地響きをあげながら歩いていく。
ローグはゴリアトと手元のバズーカを見比べ、頷いた。
「ネイオ、ここを頼むよ」
「へ?お、おい!?」
ローグは走り出していた。
ゴリアトが富士基地を襲えば、あの圧倒的戦力の前に、人間は歯が立たないだろう。
自分が止めるしかない。
ローグは近くに自衛隊のバイクが転がっているのを見つけた。
持ち主の死体らしき物が近くに転がっている。
ローグはバズーカを背中に回すと、バイクを起こし、アクセルをふかした。
「まだバイク免許はとってないけど(17歳)、大丈夫だよな」
ローグはバイクに乗り、悪路を走り始めた。
ゴリアトが彼に気づき、ゆっくりと振り返る。
ローグは舌打ちした。
ゴリアトは機体の背中に巨大な灰熱タービンを備えている。
それを破壊すれば、リアクター<反応炉>の熱で自爆するのではと思ったのだ。
ゴリアトからミサイルや砲弾が飛んでくる。
それらは次々に道路に炸裂し、ローグの身体を揺さぶった。
「容赦無いな………」
ローグは必死にバイクの制御を保ちながらつぶやいた。
まさに、巨人<ゴリアト>に、石つぶて数個(バズーカ)を武器に挑むダビデのような気分だった。
バイクが砕けたアスファルトの悪路を走り抜けていく。
次の瞬間、バイクのすぐ後ろにレーザー砲弾が炸裂した。
ローグは勢いよく吹っ飛ばされ、地面に思い切り叩きつけられた。
壮絶な痛みが身体を襲う。
肋骨の2、3本は折れただろう。
「ち、く……しょ……」
ローグは痛みにかすんだ目で、ゴリアトを見上げた。
巨大なゴリアトが、ローグを見下ろしている。
「どうせ……死ぬなら……」
ローグはバズーカを手にした。
「最期……だけでも……」
彼はバズーカをゴリアトに向け、トリガーを引いた。
ちょうど同時に、ゴリアトからローグに向けてミサイルが放たれた。


「…………う……」
リッドは目を開けた。
最初に目に飛び込んで来たのは、ローラナの顔だった。
「………どうなったんだ……?」
その時、リッドはようやく気がついた。
おぶっていたドミニクの身体が、リッドとローラナに瓦礫が直撃するのを防いだのだ。
ドミニクはもう、冷たくなっていた。
「………ドミニク……」
リッドは震える声でつぶやいた。
「ありがとな………」



バズーカから放たれたポータブル・ミサイルは、まっすぐゴリアトの頭部にある司令室へと向かっていた。
フィアの将軍はビューポートからこちらに向かってくるポータブル・ミサイルを見ても、恐怖など全く感じなかった。
このトランス・パリスチールはあのようなちっぽけなミサイルなどでは壊れない。
しかし次の瞬間、フィアの将軍は我が目を疑った。
ニンゲンに向けて放たれたはずのゴリアトのミサイルが急ターンし、ポータブル・ミサイルを追いかけ始めたのだ。
「ま、まさか、あのミサイル、熱源追尾ミサイルなのか!?」
ポータブル・ミサイルがビューポートに命中した。
ビューポートは壊れなかった。
しかし、ポータブル・ミサイルを追ってきたフィアの熱源追尾ミサイルはビューポートを粉砕し、司令室を紅蓮の業火で焼き尽くした。



「ご、ゴリアト、活動停止!」
オペレーターが信じられないというように叫んだ。
「敵戦力、壊滅!我が軍の…………人類の勝利です!」

静寂―――

次の瞬間、司令室の者達は大歓声をあげ、互いに抱きあった。
帽子が宙を舞い、喜びの声が部屋に満ちる。
ブライドンは微笑を浮かべた。
人類の、大勝利だった。



数日後、富士自衛隊基地、医療室―――

「やっぱお前が死ぬわけないよな」
ネイオは憎まれ口を叩きながらも、満面の笑みでスコットに言っていた。
「ははっ、俺は不死身さ!」
胸に包帯を巻きながらも、スコットが元気そうに答える。
ローグは微笑を浮かべた。
「良かったよ。スコットもシュナイダーも元気で」
「お前には世話になったな」
シュナイダーも笑顔で言った。
「命の恩人だよ」
「そ、そんな―――」
突然、部屋の扉が開いた。
入ってきたのはリアナだった。
「みんな、聞いて」
リアナは静かに言った。
「フィアを倒せるかもしれないわ。可能性は1%未満だけど。どう?わたしとアーサー、それにリードに賭けてみる?」

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