びゆてぃふる・らいふ

びゆてぃふる・らいふ

6・親の顔が見たい

6.親の顔が見たい


このフレーズは、どちらかというとよくない意味で使われることが多い
でしょうか。でも、私はいい意味でそう思っていたのです。

実は私は週一回のペースで、マンションの共有部分の掃除の仕事をして
います。職業に貴賎はないとは言うものの、それはあくまで建前だなぁ
と思うのですが。
汚れてもヘイキな汚い格好で汗を流しながら、他人の出した分別できて
いないゴミ袋をひっくりかえして整理したり、共有廊下や駐車場にこれ
でもか~!と落ちまくっているタバコの吸殻を拾い集めたり、階段に
吐き散らされた痰のこびりつきを柄つきタワシでこすったり・・
こんな私の姿は他人の目にはどう映っていることやら。
あぁやだやだ・・
けれどもこれは家業の一部なので、いたしかたないのです。
開き直ってやっているものの、やはり人目は気になります。

マンションの住人さんたちの態度ときたら、それこそ千差万別!
「ご苦労様です」と優しく挨拶してくれる人も中にはおられます。
でも、汚いものを見るように視線を合わさないようにすれ違う人のほう
が多いかな?
このマンションは、うちの所有物です。つまり私は家主の家の者。
でも、ふだんの管理は管理会社にまかせきりなので、入居者の人の顔も
名前もほとんど私は知りません。相手もそうです。
私は掃除だけに通っているというわけです。
家主と知ってか知らずか、どちらにしても「掃除婦」にはたいていの
人はあまりいい顔を向けてはくれないようです。

そんな中でキラッと光る 一人の若い男の子がいます。
たぶん学生だと思います、うちの息子とおなじような年頃かな。
この子が出会うたびにきちんと明るくさわやかな挨拶をしてくれるのです。
すれ違うわけでもなく、少し離れていても、わざわざ近くまでやって来て!
「おはようございます、お世話になります」
「暑いですね、ご苦労様です」
「いつも大変ですね、ありがとうございます」
・・ちょっとそこのあなた、どこの誰ともしらない掃除婦のおばちゃんに
こんなこと、言います?
最初はびっくりしましたが、今では彼に会うのが楽しみのひとつになって
しまいました。
いや~、いまどきこんな好青年を育てた親っていったいどんな人だろう。
あぁ、「親の顔を一度見てみたいものだ」といつも考えていたのです。

なかなか実現しなかったのですが、つい先日やっとお目にかかれました。
と・こ・ろ・が・・
かの好青年とおなじ部屋から出てきたお母さんらしき人。
あの人は、あの人こそは!
いつぞやゴミ置き場で、収集の日でもないのにヘイキで大きなゴミ袋を
(しかも分別できていない。)置こうとしているので、私が思い切って
「困ります」
と声をかけたあの人ではないか!
平然と「みんな置いてるじゃない」(たしかにいくつか出しっぱなしの
袋がそこにはあった)と口答え?するので、
「だからみんながそういうことすると、困るんですよ。収集の日に出し
てください。それに、その分け方じゃ持って帰ってもらえないから、ち
ゃんと分けてください。」
これだけのことを言うのにどれだけ勇気が必要か。
だって、今の時代、どんな反応をされるかわかったもんじゃない。
怒らせれば いきなりナイフなんか出してこないだろうか、とひやひや
ものなんだから。
彼女は、ナイフこそ出さなかったが、何も答えずに思い切り私をにらみ
つけて袋を持って帰った。
ただし、次の収集日にはこの袋が再びそっくりそのままの状態で置かれ
ていた。・・脱力。

それにしてもねぇ。
あの親にして どうしてあのような好青年が育ったのか。
謎だ~・・

2004・7・11




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