11月28日(木)
「短歌セミナー」(抜粋:後藤)(7)
著者:馬場あき子(短歌新聞社)
発行:平成二十一年十月十日
3.抒情について(1)
子規のことば:「詩歌に限らず総ての文学が感情を本とする事は古今東西相異あるべくも無之」
感情の「情」、抒情の「情」を万葉集では「こころ」の訓を当てています。
「情(こころ)」が動いていないのにうたうことは出来ませんし、うたったとしてもそれは誤りです。
< 気分>とか、<情緒>とか、頼りないものへの真摯な探求が大切です。
いまだ背の低き煙草が伸びやかに返り葉をひらく北へきにけり 倉片みなみ
煙草の成育の遅れや、にもかかわらず、「伸びやかに反り葉をひらく」やわらかな表情に、北の風土の新鮮さをうたいあらわしています。
抒情するとは、基本的にはこうした新鮮な感銘に心を動かすことです。
ポップコーンがはじけるやうに白梅の花すこし増ゆ今日も曇り日 石川不二子
「ポップコーンがはじけるやうに」軽やかにさいてしまう梅の花の白が、「今日も曇り日」であることゆうえに少しく物がなしい花やぎとして表現されています。一首の抒情性は、上句に用いた比喩表現の作用によって生まれているのであり、それによって、決して単純に晴々しいのでもなく、華やかともちがう、白梅の咲き増してゆく日々の気分を伝えます。 (つづく)
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