余生

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遺言シリーズ2


大昔のクリスマスに父に貰ったケストナーの「飛ぶ教室」を引っ張り出して読んだ。詩が生まれてから、その年頃に自分が読んだ本を読み返すことが多くなった。

初めて読んだ時には、前書きがいつまでも続いてまどろっこしく感じたものだったが、今はその前書きが沁みる。
「子どもの頃を忘れない大人になって」と語りかけるケストナー、私は子どもの頃を忘れずにきたように思う。しかし、大人にはなれたのだろうか。大人の自覚のない50歳になりそうな気もしたりして…。

学校説明会に行っても、ここが詩のヨハン・ジギスムント高等中学になるのだろうか、なんて考えてしまう。
ここでマルチンやヨーニー、マッツ、ウーリーと出会うのだろうかなんて。
詩は偏屈で理屈屋のゼバスチャンのような少年になるだろう。

女の子の話で盛り上がる周囲の中で一人その話に参加せずに、「詩ってこういう話しないんだよなあ、こういう奴が意外にすけべなんだぜ」なんて言われたりして。

母の妄想は果てしない。
「詩のヨハン・ジギスムント高等中学はどこなんだろうね」という夢見る母に、夢見る息子が返した、「ホグワーツをさがしてくれよ」
だめだこりゃ。

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