余生

余生

遺言シリーズ5



巣鴨に行ったのは墓参のためだった。
電車に乗る前に売店で文芸春秋を買って(芥川賞の掲載号だったので)、墓に着いて父は毎月読んでいたなと思い出した。
父の好きだったお酒を供えて、ついでに「お父さん読む?」と文芸春秋も供えて、調子に乗って途中買った詩の問題集も「見てみる?」と供えた。
もちろん本は全て持ち帰ったけれど。

父は私が結婚するより前に亡くなった。
夫と初めて会った日に夢に出てきて、「お前はあの男と結婚するのか」と聞かれた。
その頃は私も夫も別の恋人がいたし、荒唐無稽な夢だと思ったのだけれど、変に意識するようになって、気がつけばそういう方向に向かってしまって、現在に至るわけで。

私は勝手に詩は父の生まれ変わりだと思っている。
父がもう一度生まれてくる先として、私を夫と結婚させて詩になって我が家にやってきたと。
そう私が思うようになったのには、いくつかの出来事があったのだけれど。

父が生き直すために詩になったとすれば、どんな人生を今度は望むのだろう、詩の将来、詩の幸せは?と考えるとき、父と詩をごっちゃにして考えている。
妄想かあさんでごめんね、詩。



Last updated February 14, 2006 13:42:08

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