ちょっと本を作っています

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第四話 土木から資格試験へ

第四話 土木から資格試験へ




幾らでも企画が出てきた理由

意外に思われるでしょうが、私が最初に手掛けたのは土木・建築の専門書です。

たまたま入った出版社が土木・建築の専門書に強かったのです。

でも私は、法学部出身です(それもほとんど勉強しなかった)。


最初は本当の専門書、土木工学だとか浮体構造物なんて本を手掛けました。

そのうちにより現場に近い本を作りたくなったのです。

大学の先生よりも工業高校やゼネコンの人たちと話すことが多くなりました。


ちょうど様々な管理技士制度が出来た時代です。

そちらも手掛けました。

「土木施工管理技士」「管工事施工管理技士」「下水道技術検定」などなど。

先ずはその試験問題と解答集を出しました。

毎年の分です。

これを、毎年一番新しい問題と解答を付けて、一番古い年度を削るのです。

ほぼ過去三年間の問題と解答が、毎年新刊として出せます。

いわゆる「過去問」です。


作業的には一冊の本の3分の1の新原稿だけです。

それも最初の年は1級・2級と分かれたランクも一冊にまとめます。

年度を経てくると級ごとに分冊です。

ほらこれで出版点数は倍になります。


このようなことは、どの出版社も考えます。

事実、類書がどんどん出ました。

でもそれだけじゃダメなんだよね

このような手抜きは私の得意とするところです。

私の作った本が売れたと聞いて、同じような本を出した出版社は多数あります。

でも軌道に乗ったのは私の手掛けたシリーズぐらいでした。


二つ理由があります。

一つは著者の問題です。

私は先ず、試験を行う機関の関係者を監修に持ってきました。

権威付けです。

次に工業高校の先生など、出来るだけ多くの先生方に解説を頼みました。

出来上がった本を、教科書採用してもらうためです。


まー、よく飲み歩きました。

著者打ち合わせの名目です。

でも打ち合わせなんて何も必要ありません。

ただ飲むだけです。

その場にほかの先生たちを呼んでもらいます。

一冊の本を作るのに十人くらいの先生を巻き込みました。

著者の数に比例して教科書採用はどんどん増えました。


今もそうですが、授業の進め方や子供たちのことに悩む先生は多いのです。

私は愚痴の聞き役と、先生たちを慰めたり、励ましたりでおおわらわでした。

でもいつの間にか、はるか年下の私に相談してくる先生方が増えました。



受験者数と本の売上げは比例しない

ここで一番大切な問題は、印刷部数です。

受験者数と読者数は一致しません。

当然です。潜在受験者がいます。

この数字をどのように読むかが要点です。

試験によっては受験者数の六倍の本が売れたこともあります。


このことは同業他社も気が付いたようです。

気付くのは時間の問題と私も思っていました。

それでも私の弾く数字とは大きな落差があったのです。

過去のデーターを持っているのは私だけではありません。

他社も同じです。

問題はデーターの読み方です。

本屋さんごとの配本のバラつきをどのように読み込むかです。


ある本屋さんは、品切れになっても補充しません。

ある本屋さんは、多く注文し過ぎて売れ残り、返品します。

データーに残るのはその最終的なトータル数字だけなのです。



やっぱり現場百遍なんですよ

前年の数字よりもっと多く配本すべきなのかどうか。

これは本屋さんの状況を掴んでいないと分からないことなのです。

そのようなこともあって、私は本屋さんを徘徊していました。

さらに毎年本屋さんに「おたくの適正部数はコレ」って指示していました。

だって本屋さんは一年前の試験直前期のことなどほとんど覚えていません。

そのうち本屋さんから「何冊入れようか」と電話が架かるようになりました。


ベースの数字は著者の先生方の採用で固めても、あとは店頭勝負です。

受験書は販売期間が短いので、一発勝負です。

数字の読み違いは大量返品にも、時にはチャンスを逃すことにもなります。

このような土木や建築に関する様々な受験書を作りました。

数十種類にのぼりますが、それぞれほぼ三年で適正部数まで調整しました。

あとは遊んでいても本は売れてゆきます。

ロスはほとんどありません。


実は私が20年以上前に作った本が、いまだに改定を重ね、売れています。

本屋さんに足繁く通うようになった一因はこのような受験参考書を手掛けたからです。

継続性のある企画を追いかけたことが本屋さん通いの出発点です。

でも同じようなことは単発企画でも失敗は次に活かせると確信を持ちました。



第五話 工学書転じて実用書に


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