「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ちょっと本を作っています
第十五話 思えば、いろいろやったもんだ
第十五話 思えば、いろいろやったもんだ
時代の風を受け止めたい
少し話が遡ります。
自分の会社を始めたころの話です。
ブックレットシリーズと名付けたスキーの本のデザインを考えていました。
何かヒントはないかと本屋さんのスキー書コーナーをウロウロしていました。
「そうか! 赤と白しかないんだ」
スキー書のカバーの色合いです。
オーストリースキーの影響で、かの国の国旗の色の本ばかりです。
「じゃー、この赤と白をバックにすると何色が目立つかな」
真っ黒なスキーの本を次々と作りました。
スキー書なのに黒が基調です。
目立ちました。
スキー書コーナーの一角に黒い本の山です。
本のカバーの色には流行があります。
他の出版社は流行色を取り入れてデザインしています。
私は常に、その年の流行色を背景にすると何が目立つかを考えました。
流行には敏感になった
たぶん今年はパステルカラーが流行りそうだと思えば原色を使います。
流行を読むけれど、やることは逆を狙いました。
デザイナーには散々文句を言われましたが目論見は当たったと思います。
昨日の日記に書いたディスコダンスの流行。
その前の本邦初のスノーボードビデオと本。
ビデオの普及にいち早く乗ったスキービデオ。
マウンテンバイクやパラグライダーの本も常に先陣を切りました。
私をダンスブームの仕掛け人という人もいますが、流行に乗っただけです。
実はその前にビリヤードブームがありました。
いわゆるポケットビリヤード、ローテーションと呼ばれるゲームです。
それまでは四つ玉と呼ばれるゲームがビリヤードの主流でした。
プールバーと呼ばれる飲みながらビリヤードを楽しむ空間の登場です。
本の形にまとめただけなんだけど
プールバーの仕掛け人は、ある建設会社の社長です。
オシャレ感覚を取り入れて、次々とプールバーを作りました。
このプールバー、一時間、二時間待つのは当り前でした。
またこの待っている時間が楽しいのです。
お酒を飲みながらの観戦です。
サーフィンは波を待ち、パラグライダーは天気を待ちます。
期待しながら待つことの中にも遊びの大切な要素が含まれています。
永岡書店という出版社からプールバーの本を作って欲しいと依頼が来ました。
例によって二つ返事でOKです。
当てなんてもちろんありません。
おまけに、いくら探してもポケットビリヤードの本なんてありません。
ビリヤードにはプロがいます。でもその当時は四つ玉だけです。
それまで、ポケットビリヤードは、日本では商売にならなかったのです。
「ビリヤードには変わりないんだろ」と四つ玉のプロを見つけてきました。
しょうがない、オレが書くか……
さすがにプロです。
ポケットビリヤードでも軽々とこなしました。
ところが文章は丸っきり書けません。
しょうがないので、ともかく写真だけは押さえました。
こうなれば一つひとつ聞きながら私が書くしか方法はありません。
やっちゃいました。
ビリヤードをやったことのない人間が書いたのです。
これが飛ぶように売れました。
続編も頼まれて仕上げました。
「家を建てることが出来ました」
著者の先生。ビリヤードのプロの人は感謝感激です。
それくらいの印税が入ったそうです。
でも書いたのは私です。
私が手にしたのは編集費の百万円だけです。
まー、いいですけどね。
一瞬ですが私のビリヤードの腕もプロ並です。
でも本が出来上がると、すべて忘れてしまいました。
そうそう私が書いたこの二冊の本がそのあと出た本の基礎になったようです。
私の表現方法がほとんどのビリヤードの本で使われていました。
ちょっぴり気分のいいものです。自己満足だけですけどね。
編集者の悲しい性(さが)なんでしょうか
いつもそうなんですよ。
マージャンの本を作るときも連戦連勝です。
でも本が出来上がった後は、連戦連敗です。
点数の数え方さえ忘れました。
何をやらしても一夜漬け。
戦が終われば頭は空っぽです。
後日書きますが地獄の底から這い上がるために芸能本を手掛けました。
でも芸能関係なんて、もともと興味はありません。
歌手の名前も知りません。
すべて一夜漬けの耳学問です。
それでも本は売れてしまいます。
大御所と呼ばれる大物演歌歌手の自伝も書きました。
ゴーストライターです。
でも一度も本人に会わず、取材なしで書き上げてしまいました。
必要項目を書き出して、別の人間にテープ取材をさせただけです。
疲れました。
隠居と称したのもそのためです
書くときはいつも本人に成りきります。
女性の著者のゴーストもやりました。
そのときは完全に女性に成りきっています。
もちろん文章は女性言葉です。
以前日記に書いた韓国の金大中元大統領の自伝をまとめたときも同じです。
涙でグショグショになりながら獄中記や奥さんの死を書いていました。
常に本人に成りきって書く。
実用書でも自伝やエッセイでも同じです。
不思議と成りきれるものなのです、当の本人に。
実用書はともかく、文芸書や一般書まで書き始めたのはこの十年ぐらいです。
そのことをご紹介する前に地獄の閻魔さんと出会った件を書かざるを得ません。
十年ちょっと前のことですが、さてさて、どこまで書いていいものやら。
※ この直後のことは『負けてたまるか』を読んで下さい。
少し整理して書こうと思ったのですが、今はまだ無理なようです。
※ ミュージシャンや俳優さんたちとの出会いもありました。
その一端は『身も心も捧げた女は飽きられる』の第四章にまとめてあります。
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