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第四章
コムスン問題を例に
コムスン商法と呼ばれる手法は、一言で言えば民間企業で広く用いれらている経営手法の直接的導入である。
問題は、単なる不注意によるものではなく、意図的・組織的な行為と思われるものが少なくなく、一部の悪質な事業者による王位であるとして済ますわけには行かないほど日常化している。
当初から怪しさを指摘されていたコムスンが大手として台頭してきた背景には、介護事業をビジネスの場として育成を図ってきた、市場化・営利化の動きがあったことを見逃すわけにはいかない。
介護事業のビジネス化の本格的な展開を可能にしたのが、他ならぬ介護保険であった。
介護保険は、措置制度を契約方式に変えて市場の仕組みを導入するとともに(市場化)、事業者の指定に当たっては、営利・非営利を問わない方式をとり、営利法人の参入を可能にした(営利化)。
コムスン商法はコムスン固有のものではなく、実際には程度の差はあれ、営利法人の営業スタイルそのものであった。
何よりも「コムスン的なるもの」の温床を作り出してきた、政府・厚生労働省による介護事業の市場化・営利化そのもののもつ問題と責任が問われなければならない。
とりわけ、営利・非営利の区別をあいまいにして介護事業を営利の食い物にしてきたこと、市場と競争の強化がサービスの質を高めるとの立場から、サービスの質の確保への責任を事実上放棄してきた責任は、厳しく問われなければならない。
さらには、公共サービスを市場に委ね、次々と営利の対象に変えていった規制緩和・「構造改革」路線そのものの同時に問われなければならない。
政府・厚生労働省の対応が、介護褒章を引き下げるなど費用の抑制を図ったものであったことが、事業者の生き残り競争に拍車をかけ、営利主義への傾斜を一段と強めた。
介護報酬の問題、その根源にある介護保険財源の問題の改善にも取り組む必要がある。
公費の負担割合を引き上げ、利用料の廃止もしくは応能負担に切り替え、利用と負担をリンクさせない仕組みに変えること、その上で、人員基準と介護報酬を引き上げ、人件費部分については別立てで基準を確保できる費用を事業者に保障することが検討される必要がある。
介護報酬の低さは、介護労働者の賃金・労働条件を劣悪なものとし、その結果として人材の流出、人材確保の困難をもたらし、事業自体の持続可能性さえ奪おうとしている。
ただし、介護報酬の低さゆえに不正が生じたとの理解は、
不正行為を場合によっては免罪する事になりかねない。
介護報酬が引き上げられれば、その成果が再び営利主義の手に絡めとられる危険性を見過ごしてしまう。
不正を営利主義の問題として捉える視点が弱くなる。
介護報酬の引き上げが、利用できるサービスの拡大と介護従事者の労働条件の引き上げを、確実に実現できる事業環境の整備がセットにならなければならない。

「健全な介護市場」を確立することが「健全な介護システム」をもたらすことにはならないということ、更に言えば「健全な介護市場」などありえない、ということを明らかにしたい。
介護保険の健全な発展を願う少なくない人々が、今回の事件を前にして、営利組織の参入を規制すべきとの声を挙げてはいない。
それは、営利組織の参入を前提とした「健全な介護市場」が可能だと考えているからに他ならない。
営利企業は利益をあげるために労働者の処遇の切り下げに向かわざるを得ないから、サービス提供の非営利化が「介護保障」のためには不可欠である。
「健全な介護市場」という想定は、介護は民間企業によるビジネスモデルが十分成り立つ市場であるということでもある。
かかるビジネスモデルとは、「企業的な手法を用いて効率的な経営を行なえば、低いコストで質の高いサービス供給を実現でき利益をあげることもできる、同時に、国民も必要で十分なサービスを確保できる。」というモデルだと考えてよい。
しかし、「民間企業による介護ビジネスモデルは、介護市場への基本的な錯覚から生じたもの」
「安価な労働力が潤沢に存在することを前提としたビジネスモデルであり、一時的な失業率の高まりによってもたらされた幻想に過ぎなかった」
保険が適応される介護サービスと保険外の自由契約による介護サービスの一体利用も「本来、公益的介護供給の補完物としてしか成立しないものであり、これも大きな幻想に過ぎなかった」
民間企業の介護保険ビジネスモデルは、「出来ないことを出来るとして、制度に組み込んだことから発生」しており、市場原理の幻想による「制度設計のミス」
自由な価格設定は介護サービスの普遍的な利用を困難にするし、安価な労働力の利用はサービスの質の向上とは両立しがたい。
つまり、介護ビジネスモデルを成立させる「健全な介護市場」は、現行の介護保険の元ではありえない。
介護報酬が引き上げられれば「健全な介護市場」が実現できるかのように考えることも、幻想に過ぎない。
企業的手法による効率的経営の元では、引き上げられた報酬が企業の利益を拡大することはあっても、サービスの質の向上や介護労働者の処遇改善、国民の介護ニーズの充足を何ら約束するものではない。
「介護がビジネスとなり競争となる中で、サービスの質を上げ、かつ増収を図らねばならない矛盾構造を維持するには、嘘をつき、嘘を重ね、人件費の抑制を図るほかなく、問題の発生はむしろ当然だったといえる。」

制度の抜本的見直しの課題
指定基準に営利を目的としない組織である旨を盛り込み、非営利原則を確立する。
ケア・マネージャーが特定事業者に属していながら、中立性を保ち、利用者の利益を優先する立場を貫くことは、実質的に困難であるので、公的機関を設けて、専任職員とする。
一割負担方式を廃止して当面は収入に応じて負担する方式に変え、将来的には廃止する。
見直された人員基準に見合う人件費が確実に確保できる仕組みを設ける。
介護報酬の引き上げが保険料の引き上げを招かないために、財源構成を見直して国庫負担の割合を引き上げ、保険料の負担割合を引き下げる。