剣士汁でまくりやねん。

剣士汁でまくりやねん。

<4.温かい時間の中で>


ギルドに加入してからというもの、私の生活はガラリと変わった。
まず、今まで住んでいた家を引き払い、ギルドホールに移り住んだ。
そして、一人で狩りに出かける事もなくなった。
いつも、ギルドの誰かがついてきてくれるのだ。

ギルド、ジェネシスのメンバーは私を含め7人いる。
ギルドマスターであるクロノス、副ギルドマスターのたかちゃん、それにユナ
、エデン、シュン、ヒロ。
皆いい人ばかりだ。

「今日も、鉄巨人を狩りに行こうぜ!!」

探検家のヒロが、最近お気に入りの狩場に行く事を提案した。

クロノスがその話を聞き、

「今日は俺も行くか。試したい技もあるし。」

と言った。

「おし、じゃー決まり。アヤカも来るよな?」

ヒロに誘われ、私は頷いた。

最近は、ヒロと狩りに出かける事が多い。
なんといっても、効率がいい。ヒロは遠距離攻撃ができ、一度に広い範囲に攻撃
ができる。私は接近戦で、ヒロがある程度弱らせた敵を斬りつける。
敵はダメージを受けていて動きが鈍く、反撃させる暇を与えない。
私でも容易に倒すことができた。

ヒロと二人で狩りをしていくうちに、私はだいぶ強くなっていた。
新しい狩場に行き、一人で死にかけた事もあったけれど、
それはもう過去の出来事だ。

私達はクロノスと三人で、鉄巨人がいる海岸に移動した。
今日は小雨が降っており、そのせいで視界が悪い。

「おっしゃ~!どこからでもかかってこい!!」
ヒロはそう言うと、近くを通りかかったカニのモンスターにナイフを投げ、一撃
で倒してみせた。

「弱いものいじめか?情けない。」

クロノスはため息をついた。

「よし!アヤカ着いてこいよ!」

「うん!」

私はヒロの後を追って、走りだした。
クロノスが後からのんびりついてくる。

この光景が、なんだか、温かい。

私には仲間がいるんだ。
こんなに心が潤っているのはいつぶりだろう。


だって、私はずっと


アイサレテコナカッタ


オカアサンカラモ

いつだって、誰かと距離を置いた付き合いしかしてこなかった。
だから、今まで特別に仲がいい友達もできなかった。

踏み込まれるのはこわい。
だから私も、人の心に土足で踏み込む真似はしない。

その方がうまくいく。
いつだって私は、そうしてきたもの。

でも...

この人達には心を開いてもいい気がする。

ダケド
コワイ
マタヒテイサレタラドウシヨウ


オマエナンカウマナケレバヨカッタ


あ、頭が痛い...!!
私は頭を押さえて、その場にしゃがみ込んだ。

「お、おい!!アヤカ大丈夫か?!」

クロノスが駆け寄る。
「ごめん、心配しないで。」

「あんまり無理するなよ。」
クロノスはそう言うと、魔法の詠唱を始めた。

長い呪文...

敵が集まってくる気配がする。
先を行くヒロが後ろを振り返り、私のもとへ戻ってきた。
ヒロ一人では倒しきれないほどの数だ。

私たちはあっという間に鉄巨人に囲まれた。
その状況を見て、ヒロが次から次へ、敵に向かってナイフを投げる。

クロノスは詠唱中だ。
「クロノス!アヤカ!逃げろ!!」

ヒロは叫んだ。

その時...
空から地上に向かって赤い隕石が降ってきた。

まぶしい!
私は目を瞑った。

赤い隕石は、私達を囲んでいた敵を一瞬で焼き払った。
敵は、その姿ごと消滅し、影だけを残した。
クロノスは振り上げた杖をおろした。

「間に合ったな。」

助かった...

「い、今のは上級魔法、メテオじゃね~か!クロノスそんなの、いつ覚えたんだ?」

ヒロがわくわくして聞く。

「内緒っ」
クロノスはそっけなく言った。

「クロノス助かった。ありがとう。」

私はお礼を言った。

「気にするな。それより大丈夫か?」

「うん、少し目眩がして。多分、もう、大丈夫。」

「今日はもう帰ろうか。アヤカ!俺が看病してやるよ。」

ヒロは私を背負うと、ギルドホールへ戻る道を歩き出した。



ギルドホールに戻ると、ユナが私の様子に気が付き駆け寄ってきた。

「アヤカどしたの!大丈夫?」

ヒロの背中から降ろしてもらい、ユナの顔がドアップに迫る。

「ちょっと目眩がして。だいぶよくなった。」

ユナは良かったね~!!と笑顔で私に飛び付いた。

「こらユナ!俺にも抱きつけ!」

ヒロの一言で皆が笑う。
私はジェネシスに加入して、本当に良かったと思った。


楽しく過ぎていく時間の中で、アークと再び会いたいという気持ちはしだいに薄
れていった。


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