剣士汁でまくりやねん。

剣士汁でまくりやねん。

<5.ギルドバトル>


「というわけで、皆強くなってきたし、ギルドバトルをやろうと思う。」

いつもの昼下がり、クロノスがジェネシスのメンバーをギルドホールの会議室に
呼び出した。ギルドバトルとは、他のギルドと対戦し、どこが一番強いギルドで
あるかを決める戦いの事だ。強者が大勢参加している。

「やろうぜ!」
ヒロは乗り気だ。

「今やっても、負けると思うけど。」
机の隅で、エデンが呟いた。

「なんでだよ!やってみねーとわかんねーだろ!」
それにヒロが食ってかかる。

「まぁ、一度やってみたらいいんじゃない。どうせ負けるから。」

「なんだと!」

いつもこの調子だ。突進型のヒロと、冷静なエデン。
正反対な二人だ。

「まぁ、落ち着け~」
副マスのたかちゃんが言った。

「たとえ負けたとしても、やってみたらええんちゃう?
今の実力もわかるし、ええ機会なんとちゃう?」

な、俺ええ事言うたやろ!とたかちゃんは隣に座っているユナを覗きこむ。
たかちゃんは女好きだ。

「たかちゃん顔近~い!きもい~」

ユナは仰け反った。

コホン
咳払いをしたのは、シュンである。

「で、どことギルドバトルするんだよ?」

シュンはクロノスを見る。シュンはせっかちな男だ。
どこか冷たいかんじがするのを否めない。

「う~ん、希望かな。レベル的にはいい対戦相手だと思う。」

「よっしゃ!やるからには勝とうぜ!」

ヒロは身を乗り出した。

「うざっ。」
エデンがぼそっと呟いた。


夕方にはギルドバトルの申し込みは終わり、私たちジェネシスは、ギルド希望と
明日対戦する事が決まった。

「緊張する」

ギルドホールで、私は近くにいたユナに話しかけた。

「だいじょぶだいじょぶ!!あたし達、強くなったから勝つ気がするし♪」

ユナは楽観的だ。

「まあ、最強のギルドのエンジェルにはまだまだ敵わないんだろうけどね。」

エンジェル...
アークがいるギルドだ。

「あそこは毎日のようにギルドバトルやってるみたいだよ~動きも軍隊みたいなん
だって。」

「そうなんだ。」

「さ、もう明日に備えて寝よ~♪おやすみ、アヤカ!」

ユナは私に歩み寄ると、頬にキスをした。
どこか外国式である。彼女のスキンシップの取り方なのだろう。

「おやすみユナ。」
私も眠ることにした。


夜が明け、ギルドメンバー達はそれぞれ準備を調えた後、ギルドバトルが開催さ
れるという会場に移動した。

会場は町の一角にあり、中に入ると沢山の人で賑わいを見せていた。露店があち
こちに立ち並び、回復剤や増強剤を中心にアイテムを売っている。いろんなギル
ドの人が会話をしている姿が見える。
活気があって皆表情が生き生きとしていた。

「時間までここで待機するから。」

クロノスはそう言い、公園にあるようなベンチを指さした。
他にもベンチはいくつか用意されており、腰掛けている人が何人かいる。
見渡す限り、対戦相手である希望のギルドメンバーはまだ到着していないようだ。

「緊張するね。。」

昨夜私が言ったのと同じセリフを、ユナはポツリと洩らした。
私は思わず笑ってしまった。

「あ!見て
エンジェルのメンバーよ!」

私はユナの指さす方を見る。

エンジェルのメンバーは二列に整列し、まるで軍隊のように行進し、堂々と受付
を済ませた。ざっと30人はいるだろう。ジェネシスとは規模が違いすぎる。

よく見ると、その中にアークがいた。

「アーク!」

私は思わず叫んだ。
ジェネシスのメンバーが驚いて私を見た。

アークはきょろきょろあたりを見渡し、やがて私に視線が注がれた。

「アヤカ?」

アークの口が動いた。

「なんだ?お前の彼女か~?」

アークは横に並んでいた人物に冷やかされながら、ちょっと行ってくるといい、
列を抜け、こちらに来た。
私はベンチから立つと、アークに駆け寄った。

「アヤカ、久しぶり。」

「名前、覚えててくれたの。」

「俺、記憶力はいいんだ。ギルドに入ったんだね。」

「ええ、今ジェネシスに所属してるの。」

「俺はエンジェルにいるんだ。今からギルドバトルがあって。」

「そうみたいね、頑張って。
こないだは、地下牢獄で助けてくれてありがとう。」

「いいよ、気にしないで。今は狩場変えて、廃坑によくいるんだ。また会った時は
よろしくね。」

「こちらこそ」

私はアークに差し出された手を強く握り返した。
笑顔が眩しい青年だった。

「アヤカはあ~いうのが好みなのか」

「え?」

ヒロがそっぽをむいた。

「アイツ相当強いな。」
アークがエンジェルの列に戻ってから、クロノスが口を開いた。

「なんでわかるの?」
私は問う。

「アイツの装備見たか?まず剣。あれは今一番強いと言われてる有名なものだ。
相場は3億。」

さ、さんおく
ケタが違いすぎる...

「次に鎧。あれも防御力が高い。さらに足。あれはうさぎのように早く走れるシュ
ーズで、どんなに足が早いやつでも追いつけないだろうな。」

短時間の間によく観察している。さすがクロノスだ。

「ま、俺と一対一で戦ったら、俺が勝つけどな。」
クロノスは自慢気に言った。

「なにか策でもあるの?」

「相手が切りかかる前にメテオで焼く。」

クロノスは真顔で答えた。

「クロノスらし~」
ユナは大笑いした。


時間になり、ギルドバトルが行われるフィールドへの道が開かれた。
魔方陣の中に入れば、ワープできるようになっている。
私達は勝利を胸に、魔方陣へ飛び込んだ。


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