剣士汁でまくりやねん。

剣士汁でまくりやねん。

<7.逢いたい>


ギルドバトルを終えてから月日が流れていた。
ギルドホールには以前のような明るさは無く、静まり返っていた。
ギルドバトル直後は、ヒロが、汚ねえ戦いしやがって!と、ぶちギレて物にあたり
まくっていた。そこで、火に油を注ぐかのように、何も考えずに突っ込むからよ
。皆単細胞だから仕方ないわと、エデンが余分な一言を言うと、ヒロの怒りは燃
え上がり、その後二人の言い争いは絶えなかった。

それを見かねたギルドマスターのクロノスが、当分ギルドホールへの二人の立ち
入り禁止を命じた。


先日行われたギルドバトルは、完全にこちらの負けだった。相手のギルドは砂漠
のフィールドを知り尽くしており、狭い通路を利用した見事な作戦で勝利した。
負けたのは悔しいが、仕方ない。

「あの二人がいないと、静かだな。」

図書室で分厚い魔法書を読んでいたクロノスが口を開いた。

「そうね...」

ここのところずっと、狩りに行く時はヒロと一緒だったから、ヒロがいなくなり
、なんとなく私は出掛ける気分にならなくて、時間をもてあましていた。
ユナとたかちゃんとシュンは、わりと一人で行動するのが好きなタイプなので、
既に朝早くからそれぞれ出かけていた。

私も見習わなきゃ
皆強くなろうと頑張ってるんだから

私はふらっと立ち上がると、ちょっと出かけてくると言い、ギルドホールを出た。


外に出ると、日差しが眩しかった。私は無意識に目を細めた。

特に、行くあてはないんだけど...
そうだ、アークが言ってた廃坑に行ってみようかな。

私は方向も分からず、野良猫のようにふらふらと町をさ迷った。


町の噴水広場の傍に、木の束を背中にしょった道案内を仕事にしているおじさん
がいた。私はその人に廃坑に行く道を聞いた。

「廃坑ならほれ、町を出て南へ行くんじゃ。中には強いモンスターがうじゃうじゃ
いるから、ポーションを多めに持って行きなされ。」

廃坑は、案外ここから近かった。私はお礼を言い、情報料としてお金を少し渡す
と、言われた通りポーションを沢山買い、南へ向かった。


私は薄暗い坑道を進んでいる。
所々、壁にクリスタルが埋まっているが、これが明かりの代わりになっているようだ。
この中に入っている石には魔力があり、武器や防具によく埋め込まれている。
鍛冶屋の間で、高く取引されている貴重な石である。

廃坑は地下9階まであると聞いた。
ようやく地下3階まで来たが、アークにはまだ会っていない。

私、馬鹿みたい
今日アークがここにいるとは限らないじゃない

それに、会ってどうするの

私は急に恥ずかしくなった。ただ、なんとなく会いたくてここまで来てしまった。

地下に行けば行く程、モンスターが強くなっていってる気がする。さっき遭遇したゴーレムは、
防御力が高いうえに攻撃力もあり、ポーションを飲みながらやっとの思いで倒すことができた。
攻撃を受けた肩が、ズキズキ痛む。
服が破れ、傷口から血が滴る。
多めに購入しておいたポーションは、もう底を尽きそうだった。

坑道をゆっくり進むと、今度は巨大な蜘蛛がいた。蜘蛛は大きな足を動かし、早
い動きで私に迫ってきた。私は剣を抜く暇もなく、蜘蛛が飛び付いてきたため、
とっさに両腕で身体をかばった。

「痛っ...!」

ピリッと電撃が走る。私は蜘蛛に噛まれていた。
蜘蛛はなかなか離れない。

「この...!」

私はようやく片手で短剣を抜くと、蜘蛛の背中にブスリと刺した。
「ギーーッ!!!!!!」

蜘蛛は悲鳴をあげ、ようやく私の身体から離れ、床に落ちて青い液体を背中から
流し、息絶えた。

ハァハァ
息がきれる。

私のレベルでは、この階までが限界かも。

アークに会いたかったが、これ以上地下に降りるのは命を落としかねない。
私は身の危険を感じ、来た道を戻ろうとしたが、

あ、あれ...

身体に力が入らない。手足が痺れており、身体がだるく、眠気がする。

な... んで...
まさかさっきの蜘蛛、毒を持ってたんじゃ...
私は消えかける意識の中で、そんな事を思った。

も... ダメ

私は目の前が真っ暗になり、その場に倒れこんだ。


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