剣士汁でまくりやねん。

剣士汁でまくりやねん。

<9.夢と現実の間2>


ああ、良かった。
皆こんなところにいたのね。

私が目覚めたのは、ギルドホールのベッドの上だった。

「アヤカ!」

ユナが私の発した声を聞き、駆け寄ってくる。

「良かった、心配したわ!3日も目を覚まさなくて!だいぶ、うなされてたの~!
本当に良かった~!」

3日...もう、そんなに経つんだ...

ユナは、私の身体にすがると泣き始めた。
「ユナ、ありがと。」

嬉しかった。
ユナの目の下には、くっきりとクマができていた。
ろくに眠らず、看病してくれていたのだろう。
私は起き上がろうとして、身体を動かそうとすると、ピリッと全身に痛みが走っ
た。

「痛っ..!」

「あ、まだ動いたらダメ。アヤカすごい怪我してて、毒が全身に回ってたの!
廃坑に行ったでしょう?」

はいこ...う

呼んでくれたら、私も一緒に行ったのにぃとユナは悪態をついた。

「そう、私廃坑で...」

記憶が蘇る。

「そこで確か、蜘蛛に噛まれて...
私、なんで助かったの...?」
ユナに問う。

「アヤカと仲がいい剣士さんが、ギルドホールまで背負って来たのよ。」
ユナは答えた。

「仲がいい剣士...?」

「ほら、ギルドバトルの会場で会った、エンジェルの人~!!」

「も、もしかして、アーク?!」

また、助けてくれた。
お礼を言わなきゃと思い、私は再び起き上がろうとしたが、それは叶わなかった。

「痛っ!」

「アヤカ~!毒が完全に抜けるまで無理だよぉ!解毒剤を飲んだのも遅かったみたい
だし~!」

そういえば、解毒剤なんて、私は持って行かなかった。
じゃあ誰が?

「ユナが飲ませてくれたの?」

ううんと、ユナはかぶりをふった。

「解毒剤を飲ませたのは、アークさんよ。ひとつしか所持してなかったみたいで、
アヤカに口移しで飲ませた後、アークさんにも少し毒が回ってしまったみたいだ
けど、あの人体力あるし、大丈夫だったみたい~!」

「口移し...」

私の顔はみるみるうちに、赤く染まってゆく。私は思わず、唇に手をやった。

「ヒロが聞いたら激怒するわねw」
と、ユナは楽しそうに言った。

ヒロはエデンと共にギルドホールへの立ち入り禁止を命じられており、今回の出
来事は知らない。

「クロノスはエンジェルのギルドホールへお礼を言いに行ったとこ~さっきまでい
たんだけど...」

いろんな人に迷惑をかけてしまったな...
私はまだはっきりしない頭でそう思った。


それから2日ぐらいして、大人しくしているしかなかった私は、ようやく身体を動
かせるぐらいにまで回復した。

クロノス、たかちゃん、シュン、特にユナには迷惑をかけた。
シュンは、信じらんねー!廃坑に一人で行くなんて。自分のレベル考えてみろよ!
二度と一人で行くな!!行くなら俺を誘え!!と強い口調で私を責めた。
だけど、それも優しさの裏返しだ。
たかちゃんは、アヤカの看病してる間に、どこ触ってもおk?とニヤニヤして、ユナ
に張り倒されたようだ。


もう大丈夫。
私はふらふらとベッドから立ち上がった。
痛みも、もうない。
少し指先に痺れが残っているが、じきに無くなるだろう。

ベッドの傍には、クロノスがイスに腰掛けており、杖の手入れをしていた。
「お、アヤカ起きたのか。」

クロノスは顔をあげた。

「心配かけてごめんなさい。私、アークに会ってくる。」

「アヤカ、エンジェルのギルドホールの場所知らないだろ。送っていく。」

クロノスはそう言うと立ち上がり、ふらつく私の手を引いた。



エンジェルのギルドホールは町の北にあり、城のように大きかった。
人数も多いし、これぐらいじゃないと皆入りきらないらしい。

クロノスに手をひかれながら、私は少し緊張してそこに足を踏み入れた。


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