剣士汁でまくりやねん。

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<13.消えたユナ2>


消えた...

いや、そんなわけない。疲れているから、そう思うんだ。
外に出掛けただけかもしれないじゃない。


だけど、こんな夜遅くに?

そういえば、ユナの姿は昼間見たことが一度しかない。ギルドバトルがあった
日だからよく覚えている。
夕方から夜にかけてはよく姿を見かけるが、昼間はいつも、何をしているのだろ
う。狩りに出掛けているかとばかり思っていたが、違うのかもしれない...明日ユナ
に会ったら聞いてみよう
そう思い、私はユナの部屋を後にした。
私はなんとなく、クロノスの部屋を見に行った。
クロノスはベッドで眠っていた。同様に、たかちゃんとシュンも眠っているのを
確認した。
良かった、皆いるじゃない。
私は安心して、自分の部屋に戻ると、布団に入った。

夜が明け、私は朝早く目が覚めた。
起きてすぐ、ユナの部屋に行ったが誰もいなかった。

ユナ、まだ帰ってきてないの...

昨夜、ユナが目の前で突然姿を消した事を思い出し、もう二度と会えないんじ
ゃないかと私は不安に思った。
ギルドホールをウロウロしていると、たかちゃんに会った。

「おーアヤカ。おはよ、元気か?」

「う、うん。あのね、ユナって何処行ったかわかる?昨日の夜からいなくて。」

「ユナ?アイツはこの時間いつもインしてへんやろ?」

「い、イン?」

「俺らは廃人やから、いつもインしてるけど、アイツは学生やからなー。学校行か
なあかんし、昼間はインできひんのとちゃう?」

学生?
学校に行く?

あ...ああああ
私は...

「私も学生だった時期があった...」

私は呟いた。

「お、アヤカのリアル話なんて今まで聞いた事ないからレアやな!
アヤカって実際いくつなん?俺は25やで。」

「私は...」

いや、思い出したくない。ここに居させて...!

「え、アヤカ急に何処行くん?!」

気付いたら私は、走っていた。
ギルドホールを抜け出し、自然と足が廃坑に向かう。

私、この世界にいたいの...!

アークに会いたい。なぜ、いつもすれ違いなの。



廃坑に着くと、入り口付近で見慣れた赤いマントの男が、敵に留めを刺した所だ
った。

思いが通じたのか、見間違えるはずもなく、それはアークだった。

「アーク!」

私は叫んだ。
彼は振り返る。

「ア、アヤカ?!」

追いかけて、追いかけて、会いたかった顔がこちらを向いた。


私達は薄暗い坑道に二人、横に並んで座っていた。二人きりだと急に緊張して、
私は何か話さなければと思い、口を開いた。

「こないだは、助けてくれてありがとう」

「気にしないで。アヤカが助かってよかった。」
アークは笑顔でそう言った。

「なぜ、廃坑に?」

「アークがいると思って。その...会いたかったから。」
私は頬を赤らめ、うつむく。

「ありがとう。俺も、アヤカに会いたかった。
不思議だね、俺達そんなに会話した事なかったし。
だけど、自然にお互い惹かれ合ってるなんて。」

「え?アークも私の事気にしてくれてたの?」

「一目惚れかな。ほら、一番最初に地下牢獄で会ったよね?
実は、その時からいいなと思ってたんだ。」

「そ、そうだったの..」

私は顔を上げたが、まともにアークの顔が見れない。

アークが私に一目惚れ?
それは、私がしたのではなかったか。
助けてもらったあの日からずっと、アークは私の心に住み着いている。

「中途半端に言ってごめん...」
アークが私の方を見て、目が合った。

「つまり俺、アヤカが好きだ。」

一瞬、空気がとまった気がした。
アークに真面目な顔をして言われ、私は緊張して口から心臓が飛び出そうだった。

「私もアークが好き。」

私は自分の気持ちに正直に言葉を繋いだ。
アークは肩に手を回し、私を引き寄せると唇を重ねた。

私はこの時、幸せな時間がいつまでも続くと思っていた。


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