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最近、東野圭吾さんの作品をずっと読んでいなかったのですが、突然読みたくなって「希望の糸」という作品を手に取りました。「希望の糸」については事前の知識がないまま読み始めたのですが、読み始めてから阿部寛さんのドラマで有名な加賀恭一郎シリーズ作品と気が付きました。加賀恭一郎シリーズでは「嘘をもう一つだけ」という短編集しか読んだことがありませんでしたが、その時はその作品に短編の限界を感じて私としてはあまりピンとこない感じでした。その後、加賀恭一郎シリーズは全く読んでいません。今回読んだこの作品は、加賀恭一郎がメインではなく従弟の刑事松宮脩平が主人公になって話が進んでいきます。親子・夫婦の繋がりと愛情をテーマにした作品で、事件の謎解きを楽しむようなストーリーではありません。それだけに、登場者の心理描写が重要な位置を占める重厚な作品に仕上がっています。震災で二人の子供を亡くした夫婦の再生の物語、松宮脩平の出生の秘密にかかわる物語、喫茶店を経営している女性が被害者となった殺人事件、被害者の元夫の家庭、とバラバラに描かれる物語が後半で一気に収束していきます。そして多くの疑問点が繋がりながら回収されていきます。この展開は見事というしかありません、さすが東野圭吾さんです。間違いありません!ミステリーというよりもヒューマンドラマと言った方が当たっているかもしれません。作品の後半からは一気に読み進め、止まることができませんでした。そしてラストは、あの「容疑者Xの献身」に匹敵するほどの感動が待っていました。号泣です。加賀恭一郎がちょい役でしか登場しない加賀恭一郎シリーズですが、傑作ですね!今までこのシリーズ、読んできませんでしたが読まないとだめですね。希望の糸 (講談社文庫) [ 東野 圭吾 ]
2024.09.09
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半年ほど前に、新聞の書評欄で、女性お笑い芸人ヒコロヒーの処女作を、サラダ記念日で有名な歌人の俵万智さんが絶賛しているのを読んで俄然興味を持ちました。ヒコロヒーさんと言えば、ちょっとクセのある視点で作られたお笑いネタが秀逸で、気になる芸人の一人なので、どんな作品ができたのかと読むのを楽しみにしていました。作品は、10ページ程度の短編が18篇とあとがきで構成されています。ほとんどが男女間の恋愛を描いたものです。交際前の二人、交際中、別れる前、別れた後など様々なシチュエーションの恋愛模様が書かれています。かなり短めの短編ではあるし、複雑な設定もないので、とても読みやすくすきま時間に読む本としては最適ではありますが、ちょっと私の予想とは違いヒコロヒーさんらしい毒がありません。どんでん返しや読者の予想を裏切る展開もありません。「普通の恋愛小説じゃん!」というのが私の感想です。著者がヒコロヒーさんという事で過剰に期待してしまったようです。色々なタイプの恋愛を題材にしていることで、読んで飽きることはありませんでした。恋にあこがれる女性の作品かな、と感じられるような内容でした。けっしてレベルが低いというわけではないのでしょうが、残念ながらあまり感動はありませんでした。この作品で感動するには、歳をとりすぎてしまったようです。最後にあとがきで、この作品を書いたいきさつや作品のタネアカシが書かれていますが、ヒコロヒーさんの正直な思いがわかって腹落ちした感じでした。黙って喋って [ ヒコロヒー ]
2024.09.03
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2006年に公開された「プラダを着た悪魔」という映画、もう公開されてから20年近くが経つのですね。公開時に観てとても面白かったのを覚えています。その後テレビで放映されたり、DVDで観たりと3~4回は観ている気がします。この「プラダを着た悪魔」が Amazon Prime Video で、もうすぐ無料公開が終了するという情報がでていたので、その前に観ておこうと昨日観てみました。何年振りかで観てみると、今回はかなり映画の印象が変わって感じられました。たしかに映画自体は面白いのですが、主人公アン・ハサウェイ演じるアンディの勤務先の上司メリル・ストリーブ演じるミランダの行動があまりにもパワハラ的で観るに堪えないと感じてしまいました。部下には無理難題を命令口調、失敗はけっして許さない、勤務時間外にも平気で仕事の指示を出す、子どもの世話などプライベートなことも押し付ける、等々今の仕事現場では絶対許されないパワハラのオンパレードです。なぜか今話題の某県知事のことが頭をよぎってしまいました。もちろんコメディー映画ですので大きく誇張してあると思い、公開当初はそれほど深刻には感じませんでしたが、今現在ではこの表現は許される範囲を超えた表現かもしれないと感じました。問題は、会社の中の誰一人としてミランダを諫める人もなくミランダに気に入られるように行動するだけです。まさにブラック企業!そして当初はミランダに批判的だったアンディもついにミランダ崇拝者になってしまう恐ろしさ。もちろん映画はアンディのこころの動きと周りの反応を描きたかったのだとは思いますが、やはりこのパワハラ描写にはチョッと引いてしまいます。以前観た時には、ラストでミランダのお気に入りになったアンディがミランダから与えられた連絡用の携帯電話を噴水に投げ捨てるシーンで、「せっかくいいポジションを獲得したのに」というちょっと残念な感じもあったのですが、今回は「よくぞ目覚めた!」という気持ちだけでした。やはり時代の流れは映画を観る目も変えているのですね。プラダを着た悪魔<特別編> [ メリル・ストリープ ]ネットの情報によると、ディズニーがプラダを着た悪魔の続編を製作する予定のようですね。今は時代的にパワハラは許されないでしょうから、どんな内容になるか逆に楽しみです。本当に実現したら、映画館に行ってみたいと思います。
2024.09.01
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