月と華と神の酒

そして去る者 残る者 第2話



店頭に並べられた品を満足気に見つめながら、アイスコーヒーの注がれたグラスを口に運ぶ。
ブラックにミルクを注いだだけの、簡単なものだ。
コーヒーとミルクの比率、そして温度を変えるだけで、味はまったくの別物となる。
今回のコーヒーの出来は非常によく、その日の自分はいつになく上機嫌で店頭に並んでいる商品を眺めていた。
並んでいるのは、あの日去っていった騎士の遺品。


そしてその日、店頭に掲げられていた看板は、いつもと違っていた。


自分は本来、看板には品物のタイトルしか並べなかった。
ときおり【特価】など、人目に付く趣向を凝らしていた程度に過ぎない。
ただあの日、あの時に限り、看板に掲げられた文字は、いつもと違っていた。
この世界を去った騎士に対しての、自分なりの手向けだったのかもしれない。


『騎士たちへ 戦場を去る者より』


そして、その日限りの偶然が、更なる偶然と重なった。
誰かが言った。「二つ以上重なった【偶然】は、それは最早【必然】である」と……。
なら、その出逢いも……その先にあった事すらも、すべては必然であったのだろうか?

チャリ~ん
「いらっしゃ…」
「こんちゃぁぁ!!」
「おめっとさ~ん!!」

やたらとテンションの高い女の子が二人、入店してきた。
二人ともマーチャントの姿をし、片方は装飾用卵殻、片方は装飾用花を頭につけている。

「みゅー、あなたの看板が『あなたの露店が一等賞』コンテストにノミネートされましたぁぁ」
「ぷくくぅ、お兄さん、なかなかニクイ看板出すねぇ」

彼女たちとの出逢いが、二度目の『別れ』を経験させることを……あの時の私は、まだ、知らない。

……………To be continued

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