全243件 (243件中 1-50件目)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、別れたいが別れさせてくれない。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職したが、実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。由美子の父親に会い、慰謝料も支払い問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まったが、女性問題がありタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================「頑張ると言うか、もうされるがままよ。あんなに気持ち良いのは初めて。」「そうかい? じゃー、今夜も、又、やろう!」「又、するの?」「嫌かい?」「嫌じゃーないけど、気持ち良すぎるよ。癖になりそう。」「癖になってもいいじゃないか?」「だって、会社でやりたくなったら困るでしょう?」「うん、そりゃ困るな。どっか出来る部屋はないかい?」「倉庫かなー?」一度結ばれたばかりであるが、大胆な会話である。もう倉庫でする事まで話が進んでいる。チキンも来たがチキンを半分にするのは難しい。骨があるから細切れにしか切れない。ハンサが苦労しながら、骨と身を分けた。「適当につまんで食べてね。」「分かった。食べよう。」ポークもチキンも美味しかった。ビールを飲みながら、それらをつまみに飲む。「今日は大晦日だ。1年の終わりだ。この1年はどうだった?」悠介が聞いた。「う~ん、そうね、前半は元彼と別れて少し気落ちしていたけど、後半は元気を取り戻した。オフィスも日本人が増えて賑やかになったしね。それに悠介に会えたのは今年のハイライトだよ。」「そうか、僕と会えたのが今年のハイライトか。そう言われれば、俺にとってもハンサに会えたのが、今年一番の出来事かな。しかし今年の俺の1年は、激動の1年だったよ。」悠介が語り出した。前半はまだ学生であった。唐橋由美子と別れたいのに別れてくれない、苦しい期間だった。就職して連絡先を告げず、これで別れられると安心していたら、会社の住所を調べて手紙が来る、挙句の果てに自殺未遂。実習中なのに人事ののお偉いさんと謝罪の為、親に会いに行く。話していて、悠介は、確か、もうこの話はしたよな、と思い出していた。「あれ? この話はもうハンサに言ったよね?」「聞いたよ、だから社内恋愛はバレたら問題があるって。」「そっか、今年の大きな出来事だし、誰にも話せない事なので、記憶に大きく残っているのだよ。」「分かった。何度でも話して。そしてその後は?」「その後はさー。」悠介は飲みながら、再び話し出した。鹿沼工場の総務部に配置され仕事に励もうと頑張っていた時、人事部の森本さんと言う女性に気に入られ、上司経由交際を求められた。しかし、唐橋由美子との一件もあるし、結婚したいとも思わなかったので断った。そしたら、冷却期間を置いた方が良いと言う事で、異例であるが、シラチャへの出張を命じられて、ハンサと出会ったのだった。「へぇ~、悠介はモテるんだねー。どこへ行っても周りは女性だらけじゃん?」「そうかなー? 俺自身は全く分からない。でも、確かに付き合っている女性がいなかったのは、今年の4月からハンサに会うまで位だった。変則的な恋愛も含めて誰かが傍にいたね。」「やっぱりね、悠介は、モテるよ。放したく無くなって来た。結婚してくれる?」「悪い冗談はやめてくれ。結婚はしたくないって言ったよね?」「分かっているよ。冗談よ。」悠介はドキッとした。又、ここで結婚を求められたら行き場がなくなる。ハンサとの付き合いは、絶対に内緒で会社に知られてはならないと、強く思った。ここ1年の出来事を話して居たら、時間はアッと言う間に過ぎ去ってしまった。ポークもチキンも食べ終っていた。「帰る?」「うん、ここは出ようか?」歩いて宿に帰る途中、呼び込みに声を掛けられた。ヌードショーのようだ。悠介は入って見たいと思ったがハンサと一緒である。迷っていたら、ハンサが言った。「見たいのなら一緒に入ろう。」、と。それで入場する事にした。中へ入ると、ポールダンスを行っている。上半身は裸である。下半身は小さなパンツを穿いている。ポールを握って、腰をくねらせ色っぽく踊っている。「仲々、色っぽいね。綺麗だ。」「そう? 悠介もスケベだな。」「せっかく入場料を払って入ったんだ。しっかり見ないと。」ポールを掴んだ娘さん達が、悠介たちを見ながら腰をくねらせて踊っている。お客で若い女性はいないので、珍しいのであろう。客はハンサ以外は、全て男性である。しかも年寄りが多い。若い男女の客は悠介たちだけである。踊っている女性は全部で6名。音楽に合わせてそれぞれ勝手に踊っている。踊りが上手な娘もいれば、ただ腰を揺すっているだけの娘もいる。==================================
2024.09.27
コメント(0)
第173回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。===================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、別れたいが別れさせてくれない。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職したが、実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。由美子の父親に会い、慰謝料も支払い問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まったが、女性問題がありタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================愛し合った名残りか薄っすら汗を掻いている。それで交替でシャワーを浴びることにした。一緒でも問題ない広さがシャワールームにはあった。しかし今から愛し合う訳ではないので誘う事なく別々にゆったりと入った。まだ夕食には早いが、散歩に出かける事にした。ハンサによれば、旅行社に行って明日のショーのチケットを買うとの事である。ニューハーフショーである。ハンサがとっても綺麗よって言っていたショーだ。話を聞いて悠介も一度は見て見たいと思っていた。メインストリートと思しき通りに旅行会社はあった。ハンサがタイ語で聴いている、悠介にはさっぱり分からないので、隣に立っているだけである。暫く話した後、何時のショーにするかと悠介に聞いて来た。1日4回ショーがあり、17時、18時半、20時、21時半とあるようだ。食べる前に見るか食べた後で見るかによって、時間が決まる。悠介は、ゆったり食事をしたかったので、夕食前の17時にしたいとハンサに告げた。ハンサも了解した。「海を見に行く?」ハンサが聞いて来た。「そうだね、海みたい。」二人で手を繋いで、海の方面へ向かう。途中、飲み屋街らしきお店が、両側にあった。まだ開店していないようであるが、広いお店であった。10数分歩いたろうか? 海に出た。涼しい海風が吹いて来る。気持ち良い。日陰の縁石に並んで座って海を見つめる。悠介は海なし県で育ったので、海は珍しい。海で泳いだのは、北海道無銭旅行の時の一度だけである。「俺さー、海に入ったのは人生で一度だけなんだ。」「ええー、そうなの? 私は何度もあるわよ。」「ここは綺麗な海だよね?」「綺麗。でも、もっと先にラン島ってあるけど、そこの方が海は綺麗よ。」「ラン島? 行って見たいな。簡単に行けるの?」「行ける、行ける、フェリーが出ている。」「それじゃー、明日行こうよ。ショーは夕方だから行けるでしょう?」「大丈夫行ける。それじゃー、シュノーケリングしよう。」「シュノーケルって?」「メガネ付けて海の中を見ながら泳ぐの。とっても綺麗よ。」「良いなー、それ、やって見たい。」悠介は、思わぬ会話の中で、海を泳げることになって気分が高揚して来た。シュノーケリングと言うのもどんなものか、楽しみである。二人で話していたら、太陽も傾いて来た。まだ夕食には少し早いが、食べに行く事にした。街の方へ戻るが、来た道を戻るのでは面白くないので、違う道を歩く事にした。悠介は出来るだけパタヤを知って置きたい。帰りの道にはお店は少なかった。しかしゲストハウスとか宿のような店はあった。「パタヤで一番の繁華街へ行こう。」ハンサが言って先に歩き出した。もう海から結構歩いたはずである。お店が多い通りに出た。まだ明るいので、ネオンは点っていないが、繁華街らしい。「明日行くショーのある通りは海沿いで人も多いけど、飲んで食べるならこの辺りでも良いでしょう?」「あぁ、どこでも良いよ。」吹き抜けの屋根が張り出したお店に入った。まだ客は少ない。時間的に早いのであろう。ウェイターが席に案内してくれた。通りに面しているテーブルであった。「何食べたい?」「う~ん、何が良いかなー? がっつり食べたいなー。さっき、頑張ったから腹減ったよ。ステーキのようなのはないかな?」「待って。」ハンサがメニューを見つめている。「あるよ、チキンステーキと、ポークステーキ、どっちが良い?」「じゃー、俺はポークステーキにする。ハンサはチキンにしてよ。半分づつ食べよう。」「それは良い考えね。半分づつ、そうしよう。」ウェイトレスが注文を取りに来た。ハンサがテキパキと注文する。頼りになる女性である。ビールも頼んでくれたようである。まもなく、生ビールが運ばれて来た。「乾杯!」「よし、二人の為に乾杯!」ゴクリゴクリと生ビールを飲む。気持ち良いセックスをしてシャワーを浴び、夕陽を見ながら、明日の予定を会話し、そして飲むビール、悠介には最高である。ステーキも運ばれて来た。ハンサがポークを半分に切っている。そしてやや大きめのポークを悠介のお皿に置いた。「こっちの方が大きいよ?」「だって、頑張ってくれたから、大きいのを食べて。」「いや、ハンサだって頑張ったろう?」==================================
2024.08.27
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、別れたいが別れさせてくれない。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職したが、実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。由美子の父親に会い、慰謝料も支払い問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まったが、女性問題がありタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================パタヤには、1時間弱で着いた。11時である。暑いが宿まで歩いた。ハンサも悠介も若い。20分や30分歩くのは何ら問題はない。ホテルに着いたが、まだチェックインは出来ないとの事である。チェックインは15時以降であるが、部屋の清掃が終われば、その前でもチェックイン可能と言う説明を受けた。四角四面でなく親切な対応である。昼食に出かけた。「何を食べたい?」ハンサが聞く。「う~ん、昼食だからなー? カオマンガイとかそう言う奴で良いよ。ガッツリは食べたくない。」「そうね、夜は飲みながら、食べましょう。」二人で、パタヤの繁華街を歩く。適当にあった店で食べようと手を繋いで歩く。シラチャと異なり知り合いはいないパタヤである。堂々と恋人らしく振る舞える。ハンサも嬉しそうであり、悠介にもその気持ちが伝わって来る。ほどなく、屋台に毛の生えたような食堂を見つけた。タイ料理屋のようである。メニューの写真もあり、カオマンガイもあるようだ。「ここにしよう、ハンサ?」「良いわね。ここにしましょう。」カオマンガイを2人前頼んだ。すぐに運ばれて来た。スープも付いている。タレの小皿もある。タレを少しチキンにかけて食べ始めた。美味しい。「美味しいね、好きだよ、カオマンガイは。」「そう? 私も嫌いじゃないわ。後、どんな物を食べているの?」「カオカームーとか、炒飯はタイ語で何と言うの? パッタイだっけ? それにぶっかけ飯位かなー? 後はあんまり知らない。」「知らなくても良いよ、食べたいものを食べればね。」カオマンガイはすぐに食べ終った。まだチェックイン出来ないだろうなー、と暇つぶしにコーヒーでも飲む事にした。繁華街を歩くとお店はあった。「う~ん、落ち着くなー、パタヤも悪くないね。」「夜になるともっと活気が出て来るわ。」「そうなの?」「だってパタヤは夜の街よ。」「そう言えば、おかまさんがいるって聞いたけど、まだ会ってないね。」「そうね、彼らが働くのは夜よ。昼間は寝ているんじゃーないの?」「そうか。」「明日、ショーを見に行きましょう。とっても綺麗よ。」「そう、そりゃー楽しみだなー。行った事がないよ。日本にもあるのかなー? 聞いた事がない。」1時間ほどカフェでゆったりし、ホテルに戻った。もう掃除は終わっていて、チェックインできるとの事である。キーを貰って部屋へ行く。部屋の壁際に沿って大きなダブルベッドがある。その反対側にテーブルがあり、そこで作業も可能だ。テーブルの前には大きな鏡がある。シャワー室も覗いてみたがバスタブはない。シャワーだけである。そしてその隣にトイレと洗面台がある。極普通の部屋だ。一通り部屋を確認し、ハンサを抱きしめる。ハンサも抱き返して来る。口づけをする。もうこれは経験済である。従来のおさらいのように舌をハンサの口の中に押し入れる、ハンサは静かに吸っている。背中からお尻を撫でる。柔らかくていい感触である。この中に白い尻があると思うと早く見たい気がする。唇を離して、「ハンサ、愛しているよ。」と告げる。「わたしも。」ハンサは目を瞑ったまま身体を持たれかけるようにして言った。再び、激しく唇を吸う。気持ち良い。暫く口づけをした後、ハンサをベッドに誘った。ハンサは嫌がりもせず、ベッドに横たわる。悠介はハンサに添い寝してブラジャーの上から乳房を触る。ブラジャーの上からでも、その豊満な乳房が想像出来る。ブラジャーの上からの愛撫はまどろっこい。シャツの下から手を差し入れ、ブラジャーの下に手を入れる。ブラジャーがきつい。背中に手を廻しホックを外す。ハンサは協力的であり。簡単にブラジャーは外れた。乳房が悠介の掌に直接触れる。柔らかい。いい感触である。悠介はシャツをたくし上げた。両方の乳房が現われた。悠介は乳首を吸う。舌で乳首を転がす。右手でハンサの左の乳房を揉む。ハンサの口から小さいうめき声が発せられる。気持ち良いんだろうか? 男にはその感覚は分からない。しばらく乳房と乳首を楽しんだ後、下半身へ手が伸びた。シャツはたくし上げられ、もうパンティ1枚である。パンティに手を差し込むと草叢に触れた。柔らかい恥毛である。剛毛ではない。手に優しい。悠介は良いなーと感じている。初めて触れるハンサの恥毛である。じっくりと撫でまわす。しかしパンティが邪魔だ。脱がせることにした。首に絡みついているシャツも脱がせた。パンティも脱がせた。ハンサは全裸で横たわっている。しっかり目は閉じている。美しい。白い肌に黒い恥毛が映える。なまめかしい。悠介は見とれている。しかしそんな場合ではない。悠介も全裸になった。そして、恥毛の生え際の真ん中に指を伸ばした。==================================
2024.08.19
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、別れたいが別れさせてくれない。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職したが、実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。由美子の父親に会い、慰謝料も支払い問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まったが、女性問題がありタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================「ちょっと聞き難いのだけど、恋人はいたの?」「うん、いた。でももう別れて1年になる。」「そうか。そうだよね。ハンサのように綺麗だったら誰でもお付き合いしたくなる。」「悠介はどうなの?」「俺は、今年の3月まで恋人はいた。いや恋人と言っていいのかどうか分からないけど、会っている人がいたんだ。」「それ、どう言う関係?」「実は、言い難いのだけれど、知っておいて欲しいから言うね。」「なんか、興味深いわね。どんな事?」悠介は、その女性と初めて会った時に深い関係になり、その後、結婚したいと言われて困っていた。結婚できないから別れたいと言っても聞いてくれない。それでずるずると付き合ってしまった。大学を卒業して就職した時に、引っ越し先を内緒にして自動的に別れるようにした。それで安心と思っていたら、会社の住所を調べて、会社宛てに手紙を送って来た事。その後、その女性が自殺未遂をしてその事も会社に連絡がきた。大きな問題になって、人事課長と一緒に彼女の父親に謝罪に行った。そして慰謝料を支払い何とか納得して貰った。しかし彼女には会っていない。そんな事を長々と説明した。「分かったわ。悠介がどうして恋人になるのを怖がっているか。」「分かってくれたかい? 俺はハンサが好きだ。しかし、その関係が会社に知れたら、過去の問題もあるから、問題は大きくなる。それが怖いのだよ。」「大丈夫、私は結婚したいと言わないから。本当の所、結婚して欲しいけど、恋人だけで良いよ。私は恋人もいたし、その数が増えても私の人生に大きな変化はないわ。私は、今の時期、悠介と楽しい時間を過ごしたい。」それを聞いて悠介は安心した。ハンサは本当に迷惑はかけないようだ。「じゃー、ビールを飲もう。」乾杯して飲み始めたビールであるが、過去の説明をしていたら飲むのを忘れていた。もう1本近く飲んでいる。良い気分になって来た。「ねぇねぇ、恋人とHする時、どこでするの?」「そんな事聞く~? あなたはどうなの?」「そうだなー、僕は貧乏学生だったけど、アパートを借りていたから、彼女がアパートに来ていた。お風呂もあったし、お金もかからないからね。就職してからは彼女はいない。問題が起こっていたからそれどころではなかった。タイはどうなの?」「タイも人其々でしょう。アパートを借りている人もいれば親と同居の人もいる。アパートを借りていれば、その部屋に遊びに行けるでしょう?」「そうだな。もしハンサとそう言う仲になったらどうしたら良い?」「そんなの男が決めるものでしょう? 女性が決める事ではない。」「そりゃー、そうだ。ごめん、ごめん。ハンサはなんでも知っているし、もう経験者って聞いたから、教えて欲しかったのだ。」大晦日から正月は、パタヤのホテルをハンサが予約してくれた。そこで深い仲になるのは間違いない。その後シラチャに戻って来てからどこでするかが問題である。自分の部屋に連れ込むのが一番良いが、上司や先輩達が一緒の宿に住んでいる。もし見られたらバレてしまう。それが困る。日本のようなモーテルや、連れ込み宿がシラチャにあるのかどうか、知らない。先輩達に効く訳にはいかないし、ハンサには自分で決めると言われてしまった。困ったなー、と思ったが分からない事は分からない。休みにシラチャの町を歩いて見ようと思った。「31日は、何時にどこへ行けば良い?」「そうねぇ~、バイクじゃないから、ロットゥー乗り場に来て貰わないとね。」「教えて貰えばそこに行くよ。」「じゃ、明日地図と住所を書いて渡すね。」「パタヤまで1時間って言ったよね? 10時頃出発する?」「そうね、向こうに着いてホテルにチェックインして昼食に行く位の時間で良いね。」その夜か、午後には、隣に座っている色白美人のハンサと深い関係になれると思うと下半身が疼いて来た。本日はクリスマス、25日、6泊すると31日でパタヤ行きである。それまでに、仕事も一段落させようと心を奮わせた。あっという間に一週間は過ぎた。大晦日、31日である。ロットゥー乗り場でハンサと会った。ショートパンツにハーフスリーブ、ピンクっぽい白を着ていた。色白のハンサに似合う服装である。美人と待ち合わせって幸せだなー、と悠介は感じた。後部座席に二人で座った。ハンサが膝の上に置いている手に、悠介が掌を乗せた。ハンサは悠介を見てニッコリして手を握り返して来た。まだ身体の関係はないが、唇は合わせているし、既に恋人関係である。手を握り合ってロットゥはパタヤに向けて走る。道路の舗装は悪くない。ロットゥもスムースに走っている。==================================
2024.08.14
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================会社を退社し日本人6人は車2台に分乗し宿に帰った。それぞれ自分の部屋に帰って行った。悠介も勿論部屋に戻ったが、あと30分、18時にハンサが迎えに来ることになっている。部屋に戻っても手持ち無沙汰である。これからどう言う話になるのか、分からない。しかし悠介はハンサと深い関係になったら問題であると本能的な危険性を感じていた。何とか深い関係にならないように話を持って行かねばならない。ハンサは18時ちょっきり悠介を迎えに来た。ハンサの後ろに悠介は乗ったが、腹や腰の周りに手は伸ばさなかった。バイクの後ろの取っ手を握ってバイクの動きに備えていた。バイクは止まった。悠介は初めての店である。タイ食堂と言ったお店である。悠介はこのような店は嫌いでない。どっちかと言うと好きな方である。ハンサが先に歩き悠介はハンサに付いて行った。そんなに広くない店である。4人掛けのテーブルに座った。料理もハンサが頼んでくれた。話が終るまでビールは控えて置こうと悠介は思った。酔った勢いで話すべきでないと思うのである。「私達はもう恋人でしょう?」ハンサが昼と同じことを言った。「それが、我々は同じ会社に勤めている。」「それが何? それがどうしたの?」ハンサの堂々とした受け答えに悠介はしどろもどろになりそうである。「タイは知らないけど、日本では会社での恋愛で問題が起こると仕事に支障が出ると言う事で好ましくないのだよ。」「問題って何?」「結婚するとかしないとか・・・。」「結婚はしなくても良いって言ったでしょう?」「あぁ、そうだね。」「だったら問題にはならない。」「う~ん。」良い説明項目がない。ハンサの言う通り、結婚も望まず、二人の間だけでの恋愛であれば、何ら問題はないのである。悠介は困った。「恋人になっても会社では知らんぷり出来る? 皆さんに知られないように。」「そんなの簡単よ。知らんぷりすれば良いのでしょう?」「そう、先日、僕の事を悠介って呼んでいたけど、会社では駄目だよ。」「分かっている。もう今度の休みはパタヤに行くって両親に言ったし、ホテルも予約した。もうこの話は止めて飲みましょう?」悠介はこれ以上言う事がなくなった。なるようになれと言う気持ちになっている。「じゃー、そうするか。しかし、今の約束は必ず守ってよ。」「分かった、分かった。ちょっとしつっこいよ。」「すまん、すまん。日本で問題を起こしてしまったので、心配性になっているんだ。」「ビール飲むでしょう?」「うん、飲もう。」ハンサがビールを2本頼んだ。ビアーチャ~ンである。「じゃー、二人の為に乾杯!」「乾杯!」なんだかハンサのペースになっている。「パタヤには何で行くの? バイクでは遠いよね? バスはある?」「ロットゥーと言う乗合バンがあるからそれに乗って行きましょう。」{ロットゥーってどんな車?」「10人乗り位の乗り合いバスよ。」「何時間位かかる?」「何時間なんてかからないわ。1時間もかからない。」「パタヤって近いのだね。」「近いよ。バイクで良く行く。ねぇ、ニューハーフショーって見た事ある?」「なにそれ? 聞いた事ない。」「男の人が女の格好して歌ったり踊ったりするの。」「ふ~ん、あんまり興味ないなー。」「それがとっても綺麗なのよ。1回見た方が良いわ。」ビールを飲みながら、料理を食べながら。ハンサの話を聞く。現地の事を良く知っているハンサだから、話も楽しく聞ける。おかまに興味はないが、ハンサが綺麗立ち言うにで見て見ようと言う気にはなっていた。「パタヤに誰と行くと、お母さん言ってあるの?」「友達と行くと言った。」「外泊は問題ない? いつも外泊しているの?」「いつもではないけど、友達と行く事はあるよ。」「それは、男友達とも?」「グループで行く時は、男友達もいる。」「男友達と二人では?」「男友達と二人で行った事はないよ。」==================================
2024.08.06
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================「それじゃー、泊まりで行こう。特にお正月は用事もないし。だけど会社の人には内緒だよ。恋人同士と分かったら、色々と差支えがあるからね。」「いいよ。じゃー、パタヤのホテルを予約するね。幾日から?」「幾日でも良いけど、2泊位?」「じゃ、31日と、1日に泊まりましょう。」「家族に言わなくて決めて良いの?」「問題ないわよ、私はもう大人よ。」悠介はハンサとまだキスもしていないが、もう深い関係の二人のような感じである。この進展の速さに驚いてしまう。しかし過去を振り返っても、深い関係になるまで時間がかかったのは、高校時代の小平由樹枝だけである。北海道に行った時も会ったその夜に関係した。矢代美恵子ともそうだった。唐橋由美子ともそうだった。結婚式であってその夜に関係した。そう考えると悠介はモテる男である。元々、シラチャに来たのも、人事部の森本涼子から付き合って欲しいとの事が問題で出張が決まったのである。悠介はどこに行っても女性に人気がある。唐橋由美子の時は大きな問題となってしまったが、進んでいるハンサならば結婚しなくても良いと言っているし問題にはなりそうもない。悠介達以外の他のカップルも良い雰囲気である。邪魔しないように悠介はハンサと話ながらワインを飲んでいる。2時間ほど経ったら、チャクリから挨拶があった。「この座も盛り上がっていますが、次の店に行く人もいるので、ここはこの辺りでお開きにしましょう。今夜は来て頂いてありがとうございました。」悠介はハンサ以外の誰とも話していない。どこかで会っても分からないかも知れない。このようなパーティーがあるとも思っていなかった。8名のパーティ、しかし、ハンサ以外のメンバーとは全く話もしなかった。このパーティはカップルを作る為のパーティであったようです。悠介はこのようなパーティは初めてであるが、悪い気はしなかった。ハンサと恋人になれたのは幸せであると思った。唐橋由美子とのような関係でなければ、肉体関係のある女友達は願ってもない事である。カラオケのハンサと交渉する必要もない。恋人としてもプロの女性と同じように、若しくはそれ以上にお金はかかるかもしれないが、心の関係があった方がセックスもさらに気持ち良いのは分かっている。パーティはお開きになって、ハンサがバイクで送ってくれる事になった。来る時は、身体を安定する為にどこにしようかと思い、後ろの取っ手を握って来たが、帰りは何の疑問もなくハンサのお腹に手を廻した。柔らかい。しかし、宿泊の宿にはすぐに着いた。悠介がバイクから降りるとハンサも降りてバイクを止めた。廻りには誰もいない。ごく自然に抱き合った。そして口づけを行った。悠介は思い切りハンサを抱き寄せ、腰を自分に引き寄せた。ハンサは積極的である。舌を入れて来た。悠介は思い切り吸ってやった。ハンサは苦しそうである。このまま自分の部屋に連れ帰りたい衝動に駆られたが、上司たちのいるホテルである。ハンサを帰した。自分の部屋に戻り冷静になってこれで良いのか? と自問自答した。ハンサが積極的であり自分から誘った訳ではない。しかし同僚である。このまま深い関係になってしまったら、唐橋由美子と同じような問題にならないか、それが心配である。しかしハンサは結婚は望んでいない。そこは唐橋由美子とは異なる。一緒に遊びたいと言っている。だからと言って問題がないはずがない。シラチャに来た経緯もある。あっちでもこっちでも女性関係で揉めては仕事どころではない。そう考えるとハンサとの付き合いは止めた方が良いという結論になった。一体、どうしたら止められるのであろうか?翌日、会社でハンサにあった。昨夜きつく抱き合った事は忘れたようにあっさりと「お早う。」と言った。ベタベタ来られたら困るなー、と思った事は杞憂に終わった。その後も普通に仕事をこなしている。悠介も仕事に没頭した。思っていたスケジュールより早くリスト作りは進んでいる。ハンサも普通に会話し普通に仕事をしている。これなら付き合いは出来ないと言う必要はないかな、と感じるほどである。しかし大晦日から正月、パタヤに行く事を約束している。パタヤに行ったらもう後には引き返せない。何とか、断らねばならない。しかし理由が見つからない。昼休み食事をしながらどう言う理由で断るか考えた。いい案はない。正直に実態の問題を話すしかないな、と言う結論に辿り着いた。大晦日はすぐである。早めに話さねばならない。悠介は午後、ハンサを資料室に呼び出した。「実は、恋人になる件だけど・・・。」「恋人になるって、もう恋人でしょう?」「まぁ、そう言う行為はしてしまったけど・・・。」「何? 何か問題あるの?」「もし恋人関係が続いて会社の人達に知られたら、社内恋愛は禁止とは聞いてないけど、色々と難しい事が出て来るんじゃー、ないかな?」「何も問題にならないわ。私達の事と会社は関係ないでしょう。」「それはそうだけど・・・。」「そんな重要な話をここで出来ないわ。今夜、食事でもしながら話しましょう。」==================================
2024.03.31
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================「それにしても、日本人でなくて、タイ人の友達も沢山いるのじゃーないの?」「友達はいるけど、恋人にしたい友達はいない。」「えー? じゃぁさ、僕とは恋人になって良いの?」「だから誘ったのよ。勿論、恋人になりたい。」悠介は驚いた。会社でも親しそうな態度で接してくれると思っていたが、それは同僚としての親しさと思っていた。まさか、こんなにあからさまに恋を告白されるとは思っても居なかった。これまでも付き合った人はいるが、先方から告白された事はない。自然とこちらから誘うようになったと言うかさせられたような気がする。「ここでは、貴方が恋人だからね。」ハンサはそう言って悠介の腕に自分の腕を絡ませて来た。他の人を見ると、悠介たちに気を使ってはいない。自分のパートナーと親しそうに話をしながら飲んでいる。悠介ももう気にしない事にした。流れに身を任せて、ハンサと深い仲になっても構わないと思った。アルコールの力かもしれない。色白のハンサを見ているとタイ人のように思えない。日本人に見える。「ハンサ、貴女はタイ人なの?」「え? タイ人よ。どうして?」「だって、タイ人にしては色が白いしタイ人に見えないよ。」「あぁ、良く言われるわ。実はお婆さんが中国人なの。私はお婆さん似と言われているから、中国人に似ているのかも知れないね。」悠介は、そうなのか、と思った。中国人ならば日本人に似ているはずである。「お婆さんは元気?」「もう死んじゃった。2年前よ。最後に中国に行きたいと言っていたけど、結局、行けないで死んじゃった。」「中国のどこ?」「福建省と言っていた。」「ハンサは行った事ある?」「ない。お父さん、お母さんは一度行った事がある見たい。お婆さんの親せきの家で歓待されたと言っていたから。」悠介は機会があれば、ハンサを福建省に連れて行ってあげたいと思った。しかし悠介は中国に行った事はない。何せ海外は今回の出張が初めてなのである。「ねぇ、ワイン飲む? ビールの方が良い?」「そうだなー、ワインにしようか。」ワインは白と赤が置いてあった。余り経験はないが、悠介は白の方が好きだ。「白を貰うかな。」ハンサがワイングラスを2個持って来た。「はい、どうぞ。」「ハンサは、お酒は強いの?」「そんなに強くないけど、ビールとワイン位なら大丈夫。」「ところで、このパーティは誰が企画したの?」「始めに挨拶したチャクリよ。」「彼は幾つ位?」「う~ん、確か25歳かなー? 私達の中では一番年上。早く彼女を作って結婚したいのだって。」「そうか。僕は結婚は考えていないな。結婚はしたくない。良いかい?」「良いわよ。私はまだ21歳だし、私もまだ結婚したくない。色々と遊びたい。」「そうか、そんなら、恋人になっても良いね。」「色んな所へ行きましょう。」ハンサと悠介は意気投合した。1歳違いと言う事も分かった。悠介とハンサの距離は急速に近づいた。「ねぇ、ここの後、どこかへ行く?」 ハンサが聞いて来た。悠介は一瞬考えた。この後どこかへ行ったら、最後まで行きそうである。それは、早過ぎる。考える暇もない。これだけ積極的に来られるとちょっと引いてしまう。「明日、仕事だし今夜はここだけにしようよ。」「そうか、分かった。じゃー、正月休みはパタヤに行こうよ。」「パタヤ?」「そう、パタヤの方がお店が多いし、こことは比べ物にならないよ。アメリカの軍隊が来ているから。もうベトナム戦争も終わったから安全でしょう。」そう言えば、今年の4月、北ベトナム軍が南ベトナムの首都サイゴンを陥落させて戦争が終わったと聞いている。「パタヤかー。行って見る?」「お正月は4日間休みでしょう?」「そうらしい。」「じゃー、泊まりで行きましょうよ。」泊まりで行けばどうなるか、ハンサも分かって言っているのだろうと、推測する。真面目そうであるが意外と進んでいる、経験豊富なのかも知れないと思った。それならそれで好都合である。処女だったりしたら気が重い。==================================
2024.03.24
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================悠介は自分の机に戻って、資料を開いた。建築計画図がある。本社建屋には、社長室があり、各部の広い事務所がある。ここに各部の机を置く事になる。会議室、応接室、給湯室もある。さらには別棟に工場に隣接した工場事務所がある。そこに工場長室や、現場管理を行う各部署を設置する。工場内の備品は製造現場の要員が来てから検討するか若しくは技術部が行うと聞いた。これは、本吉課長か丸山課員に相談すればいい。着替え室やトイレもある。何を準備するのか各部屋ごとのリストアップしようと思った。部屋数が多い。悠介は毎日の仕事もないし暇であったので、退屈していた。このままでは残り2ヶ月半での勤務後、ここに残る事も出来ないと焦っていたのである。それが大きな仕事を貰ったので張り切って仕事に取り組んだ。まずは部屋のリストを作る事にした。キングファイルを開きながら、各部屋のリストを作る。部屋名も分かり易く記載する。根を詰めて仕事をしていたら、ハンサから声がかかった。「何をそんなに一生懸命やっているの?」「あぁ、購入する備品リストなんだ。会社全体、工場全体のね。」「そうなのですか? 私がお手伝いする事は?」「リストを作り終えたら、見積を取らなければならない。その時は業者とか色々と教えて欲しい。」「そんな事なら簡単よ、いつでも言って。」その後、ハンサは小声で言った。「クリスマスイブの日は何か用事ある?」「いや、特にないけど。僕には普通の日だ。」「だったら、私達のクリスマスパーティーに来ない?」「誰が出るの?」「私の友達。6~7人になるかな? 寺本さんが参加して8名になると思う。」「会社の人は?」「会社の人は関係ない。ご招待は寺本さんだけよ。」「えー、僕だけ?」「そう、駄目?」「駄目ではないけど、皆さんタイ語でしょう?」「いえ、皆さん英語が話せるから、大丈夫よ。」悠介は、一瞬考えたが、現地の人達との付き合いも悪くないと思い、参加する事にした。せっかくタイに来ているのだから、タイ人の知り合いがあっても悪くはない。「じゃー、せっかくなので参加させて貰うよ。」「良かったー。友達に日本人が参加すると言っておくね。」クリスマスイブはすぐにやって来た。水曜日である。出来れば休みの前の土曜日が良いな、と思ったが、別に何曜日でも関係ない。いつも通り宿に帰り着替えをした頃、ハンサが迎えに来た。バイクである。悠介はハンサの後ろに乗った。どこに捕まって良いのか迷うがバイクの後ろの椅子を持って揺れに耐えた。ほんのちょっと走っただけである。10分も掛からなかった。小さなお店の前の駐輪場にバイクを止めた。お店のドアを開けると中は広かった。そしてそこを通り抜け奥の個室に入った。「メリークリスマス!」既に6名が集まっていた。悠介たちが最後のようだ。「メリークリスマス!」ハンサと悠介が声を揃えて挨拶した。「ようこそ! いらっしゃいました。」背の高い青年が挨拶を返してくれた。「それでは紹介しましょう。接待者はこちらに並んで下さい。」ハンサも含めた男女4人が、並んだ。「本日、皆さんを招待した4名です。皆さんがお気に入りの方を一人づつ招待した次第です。私はチャクリと言います。私が招待した人は、ニンさんです。」悠介側にいた女性が前に出て頭を下げた。次に男性が又女性を紹介した。どうもペアで参加のパーティのようである。女性が男性を紹介したあと、そして最後のハンサが前に出て言った。「私はハンサです。私が招待した人は日本人の方です。寺本悠介さんと言います。悠介は前に出て会釈した。悠介はペアのパーティとは思っていなかったので驚いた。皆さんでワイワイ飲んで食べるパーティとばかり思っていた。これは普通のパーティとは違うなー、と今後どうなるのかワクワクして来た。「では、乾杯しましょう。」ハンサがビールを注いでくれた。悠介もハンサのコップにビールを注ぐ。「それでは、良いですか? 皆さんの恋が実りますように、乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」それぞれの人がビールのコップを持ち上げて乾杯をした。「それでは、各自歓談しながら、食べて飲んで下さい。」「ハンサ、こんなクリスマスパーティーとは思わなかったよ。どうして大森さんとか丸山さんを誘わなかったの?」「どうしてって、寺本さんが一番良いと思っているからよ。」==================================
2024.03.18
コメント(0)
第165回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。==================================チェンマイに佇む男達 寺本悠介の場合 第166回 ~あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================昨夜から3回もの濃厚なセックスにハンサも悠介も満足仕切って身体を横たえた。二人とも行き絶え絶えである。「良かったよ。」悠介が言った。「私もこんなの始めて。」ハンサが英語で答える。その位の英語は悠介も理解出来る。何ら問題はない。悠介は9か月振りのセックスに、こんなに女性とのセックスは良いものかと女性を見なおしたい気持ちであった。誰としても気持ち良いが、久しぶりであるハンサとの交合は気持ち良すぎた。「もう帰らないと。」ハンサが時計を見ながら言った。もう7時になろうとしている。彼女は身支度を始めた。悠介はどうしたら良いのか分からない。朝食を一緒に食べてタクシーで送らねばならないと思っていた。しかし、ハンサは支度が整うと、「じゃー、又ね。」と言って帰ろうとした。悠介はお金を支払っていない事に気付く。幾ら支払えば普通なのかも分からない、昨日先輩に聞いて置けば良かったと思ったが後の祭りである。分からないが日本円で5000円相当のバーツを渡した。ハンサは嬉しそうに「ありがとう!」と言って受け取った。これで良かったのかどうか?シャワーを浴びて食堂へ行った。大森と丸山が食べている。「お早うございます。」「お早う。昨夜はどうだった?」「良かったです。最高です。先輩方は如何でしたか?」「勿論良かったよ。太陽が眩しい。たまにはな、そう言った事もしないと。」「そうだよ、現地長期滞在には必要な事だ。」大森と丸山が口を揃えたように、必要な事だと言っている。悠介は長期滞在とは関係なく必要ではないかと思ったが黙っていた。「ところで、幾ら位支払えば良いのですか?」「3000円位で良いんじゃないか?」「そうなんですか? 相場を知らないので、5000円払いました。」「そうか、彼女は喜んだろうなー?」「どうなんでしょう。ありがとうと言ってニッコリ笑っていました。」悠介は相場より少なくなくて良かったと思った。「そうそう、羽田協定の件、忘れないでくれよ。」「はい、分かっています。」大森から言われて、当然、誰にも言えない事であると再認識した。皆さんで一緒に出勤した。現地の社員は全員出勤している。日本人より早く出勤するなどと言うルールはない。しかし皆さん早く出勤しているのには感心する。「お早うございます。昨夜の2次会はどうでした?」ハンサが聞いて来た。悠介は、今朝別れたばかりのハンサを思い出してしまう。乱れた肢体が記憶に鮮明に残っている。2次会と聞かれてその事かとドキッとした。「僕はあまり唄は上手でないのでね。」「あら、そうなのですか? 私はカラオケ好きです。私も行きたかったです。」純粋にカラオケだけのお店があるのかどうか悠介は知らない。昨日のような店にハンサを連れて行ったら、間違いなく場違いである。「今度一緒に行きましょう。」ハンサにそう言われて、返事に困った。ハンサは同僚である。同僚と深い関係になったら、煩雑な関係になってしまう。それが問題になったらシラチャーに長く働くことが出来なくなる。性欲処理はカラオケのハンサで問題ない。お金で解決出来るのである。「そうだね、機会があったら皆で行こう。悠介はそう答えて書類に目を落とした。仕事は忙しくない。暇である。従って、1日に1回は現場を見て回った。悠介は建設現場が好きである。やはり大学時代に4年間も現場の仕事をしていたからであろう。「寺本君!」山下課長から呼ばれた。「ちょっと打合せ室に来て欲しい。」「はい、分かりました。」悠介は、メモ用のノートを持って山下課長の後に従った。山下課長から1冊のファイルを渡された。「これはここの工場の完成した図面です。それに組織図も入っている。ここに必要な事務備品を全て挙げて下さい。」「はい。」と悠介は答えたが、何を準備したら良いか、面食らった。一応、本社も工場も新入社員教育で見学しているので概ね想像はつくと考えたら、そう難しい作業でないと思った。「いつまでにリストアップしますか?」「リストアップだけではない、費用も見積を取って全て予算書としてくれ。」山下課長から、一応、ここに滞在する期間内に作成するよう指示された。今回の出張は3ヶ月である。もう半月が過ぎたので後2ヶ月半で作業を終えねばならない。「分からない事があったら大森君に聞いてくれ、それからハンサも上手く使って業者との連絡をさせてくれ。」「はい、分かりました。頑張ります。」==================================
2024.03.03
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================丸山は歌が上手い。フォークソングをしんみりと歌った。彼女達から大声援が飛んだ。丸山も良い気分のようである。ストレスがあってもここなら発散可能である。若い順んだ、と言う声が飛んで、悠介にお鉢が回って来た。悠介は歌は得意でない。カラオケの席にも出た事はあるが黙って飲んでいた事が多い。しかし歌わない訳にはいかない。何にするか迷った。知っている唄も少ない。昨年流行って知っている吉田拓郎が作曲した襟裳岬にした。下手くそでも何とか歌えると思った。「北の町ではもう、悲しみを暖炉で 燃やしはじめてるらしい」何とか歌えた。下手くそでも皆さんから拍手が飛んだ。カラオケの義理である。皆さんが順番に歌っている。悠介は順番が回って来ない方が良いなー、と思いながら聞いていた。唄よりもハンサを触っている方が楽しい。一巡した後、加山所長が言った。「今夜はお持ち帰りにしよう。歌う人はまだ歌ってくれ。悪いが俺は先に帰るぞ。寺本君も同罪だ、お持ち帰りしてくれ。ここの支払いは会社持ちににする。お持ち帰りは自分で支払ってくれ。」「ありがとうございます。」大森と丸山が声を揃えて感謝の言葉を言った。「ありがとうございます。今夜は楽しかったです。」悠介も遅れて言った。「どうだい、まだ歌うかい? 帰るかい?」「帰っても良いですか?」「勿論自由だ。しかし、羽田協定って言葉、知っているよな?」「羽田協定? いえ、知りません。」大森が言うには、羽田から出発して海外へ出た後の事は、カラオケで女性を触ったとか、女を買ったとか、そう言う話は、羽田へ戻ったらすっかり忘れる事だ、と言うのである。要は羽目を外した出来事は海外の仲間内だけにして内緒にしておけ、と言う事らしい。それを「羽田協定」と呼んでいるようだ。「はい、分かりました。」悠介は素直に理解した。悠介も女を買った事などを日本でベラベラしゃべられたら困る。良い協定である。「それでは、帰るか?」山下課長の掛け声で皆さん帰る事にした。所長が一台車に乗って帰ったが、まだ2台ある。女性を含めて8名だが丁度乗れる人数である。女性達はお店の洋服から普段の洋服に着替えて来た。お店の派手な洋服で宿に来られたら悠介たちの客が困るので助かった。車はすぐ宿に着いた。皆さんは女性を伴って其々自分の部屋に向かって行く。悠介もハンサを連れて自分の部屋に向かった。部屋に入るとハンサを抱き寄せた。ハンサも嫌がらず、しなだれかかって来る。口づけをする。悠介は手を彼女の背中に廻して抱き寄せながらキスをする。柔らかいお尻にも手を廻す。興奮して来た。悠介の下腹部はむくむくと頭をもたげた。その一物がハンサの下腹部を押す。ハンサは驚いて腰を引く動きをした。悠介は構わず抱きしめながら、そしてお尻を撫で廻しながら腰を押し付ける。ハンサは動きを止めて口づけに専念する。暫く口づけを楽しみそして身体を放した。「シャワーを浴びる?」「ええ、汗を流したい。」「じゃー、一緒にシャワーを浴びよう。」ハンサはベッドの脇を服を脱ぎ始めた。悠介も同様に脱ぎ始める。ハンサは全裸になった。乳房を手で隠しているが、大きくはないがいい形をしている。下腹部の草むらは濃くない、薄い方ではないだろうか? 悠介はハンサの全裸を見ただけで興奮してくる。久しぶりのセックスである。就職前の3月以来であるから、女性に接するのは9ヶ月振りである。ハンサが悠介のギンギンに興奮した下腹部を見た。「ヤーイ。ヤーイマーク!」と言った。悠介はどこかで聞いた言葉だと思った。確か、洋服を作りに行った時だ。「ヤーイマークってどう言う意味?」「ビッグ、ツービッグ。」一物が大きいと言っているらしいと分かった。初めての女性は皆同じように言う。「こんな大きなのは、私の中に入らない。怖い。」「大丈夫だよ、皆んな入っているから問題ないよ。シャワーを浴びよう。」シャワールームに入って悠介はハンサにお湯をかけてあげた。石鹸を手に付けてハンサを洗ってあげる。脇の下や乳房を洗うとくすぐったいのか身体をよじる。それが妙に色っぽい。悠介は早く入れたいと思ったが、まずは手順を踏もうと身体全体を洗ってあげた。下腹部の秘部はもう一度手を洗い、石鹸を付けた。そして割れ目を洗う。その奥は既に濡れている。準備万端である。割れ目の外側も丁寧に洗う。全て洗い終わり、シャワーで石鹸を洗い流す。すべすべして良い肌をしている。「私も洗ってあげる。」と言ってハンサも同様に手に石鹸を付けた。悠介は手で洗うのでは洗った気がしないので、一物だけを洗って貰う事にした。そのように言うと、ハンサは悠介の足元に腰を落とし、一物を握りしめた。「硬い! 大きい!」そんな事を言いながら、丁寧に擦っている。気持ち良い。==================================
2024.02.18
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================悠介は皆で一緒に2次会に行くのかと思ったが、どうしてメモを悠介に渡したのかと思うと皆でなく二人で行こうと誘われているような気がした。和やかに悠介の歓迎会は終了した。「さぁ、じゃー、2次会に行こうか?」「2次会ですか?」「そうだ、今度は色っぽい所へ行くぞ。」「色っぽい所? ですか?」「まぁ、行けば分かるよ。」所長始め、日本人5名全員が行くようである。歓迎される悠介も勿論参加せねばならない。ハンサからメモを貰った次のお店とは違うようだ。日本人の後ろを歩きながら、ハンサに手真似で皆さんと一緒に行くのでハンサとは行けない、と言う素振りで説明した。ハンサは分かったようだ。手を振っている。もしハンサと2次会に行ったらどんな所へ連れて行ってくれたのか気になったが仕方ない。2次会は歩いて行ける所であった。ドアを開けて入ると、ミニスカートを穿いた女性が出迎えてくれた。凄い数の女性達である。圧倒される思いである。「寺本君、好みの女性を指名してくれ。」「はぁ?」「皆さん、腰に番号札を付けているでしょう? その娘の番号を言えば良いのですよ。」「先輩が先に選んで下さい。私は初めてで分かりません。」「いやいや、遠慮する事はない。今日は歓迎会だからね。それから選んだ娘さんは宿にお持ち帰りもOkだ。むしろお持ち帰りをしないと叱責されるよ。」悠介には初めての事であり、お持ち帰り言われても困ると思った。そんな気がなかったからである。しかしそうしないとよろしくないようだ。「寺本君が遠慮しているから、我々から選ぼう。と言っても、皆さんもう決まっているけどね。」「そうですよ。寺本君が私の相棒を指名したらどうしようかと思ってましたよ。」「そうそう、良い忘れたけど、この店で女性を指名したら、次に来た時もその娘さんにしないと問題が生じる。女の子同士で喧嘩になるんだ。客の取り合いでね。」悠介には知らない事が多すぎると思った。しかし皆さん、女性を連れて出て行った。それで悠介も一人選ばねばならない。愛想の良さそうな娘でスタイルの良い子を指名した。18番だった。その娘がにっこり笑って悠介の脇に来た。手を取って別室へ連れて行かれた。そこはカラオケルームで、皆さん女性を隣に侍らせてゆったりしている。「ここに座ったら良い。」所長が自分の隣の席を開けてくれた。今日はあくまで悠介が主賓のようである。悠介も遠慮しないで、中心に座った。指名した娘さんも悠介の横に座りしなだれかかって来る。化粧の匂いがした。皆さんは早くも肩に手を廻したり、手を握ったり親しい行動に移っている。もう馴染みの客だから親しいのは当たり前である。悠介は彼女に名前を聞いた。英語である。「ハンサです。」と答えた。「えええー!」悠介は驚いた。親しそうにしてくれる事務所の女性と同じ名前である。「本当にハンサって言うの?」「そうですが?」英語はそれほど上手ではないが、どうやら通じる。悠介の英語力も高が知れているので会話するのは丁度良いのかもしれない。タイの経済や世界の情勢を話す訳ではない。名前を聞く位は何とでも会話出来る。「ハンサって名前の女性は多いの?」「そうね。結構いるわ。」「そうか、実は会社の同僚で席が隣の娘さんがハンサって言う名前なんだ。」「そうなんですか? へぇ~面白い。ハンサの意味ですが・・・」「ハンサの意味があるの? 知りたいなー。」「グレイテストハピネス、と言う意味なんです。」「ん? どう言う意味? 偉大な幸せ? って意味?」ハンサも首を傾げている。日本語の言葉は分からないようだ。隣に座っていた大森が言った。「名前の話ししているの? タイ人は本名の他に、何と言うのかなー? ニックネームのような名前を持っているんだ。ちょっと聞こえたけど、ハンサって言う意味は、最高の幸せ、って意味なんだ。それで女の子に多い名前さ。」「あぁそうなんですか、最高の幸せが名前なんて良いですね。今日はハンサの二人に会えました。面白いですね。」悠介もハンサの手を握り、太股を触る。勿論嫌がらない。普通のサービスだ。「歌うか?」技術の丸山が言った。「よーし、丸山から唄え!」上司の本吉課長が大声を出す。もう酔っぱらっているようだ。==================================
2024.02.11
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================悠介の歓迎会の当日となった。シラチャに来て2週間、12月中旬である。もう忘年会と言っても良い時期である。お店は壁のない屋根だけある掘っ建て小屋見たいな所であった。ハンサたちがメニューを見て料理を頼んでいる。悠介たち日本人は同じテーブルに座った。タイ人はタイ人同士である。やはり言葉に問題があるので、日本人、タイ人が交じり合ったようには座り難い。大森が皆さんの飲み物を聞いて頼んでくれた。チャーンビールとリオビールに別れた。悠介はどちらが良いか分からないので、大森に習ってチャーンビールを貰った。大森が各人のコップに氷を入れている。日本ではビールを飲むのに氷を入れては飲まない。宿で飲む時もビールだけで飲んでいる。「氷を入れて飲むので驚くだろう? 飲んでいる内に慣れるよ。」「日本では氷を入れて飲む人はいないですね。」「始めはどうしてだろうと思ったが、慣れて来ると氷がないと物足りない。こちらは暑いからね、氷を入れて冷えたビールの方が美味しく感じるんだ。」皆さんが氷を入れて飲む理由を彼等の考え方で話している。悠介はまだ理由の説明の仲間には入れない。「乾杯しよう!」「寺本悠介君、良く遠くの国まで来てくれました。我らの仲間として頑張って下さい。乾杯!」「乾杯!」「ありがとうございます。よろしくお願いします。」冷えたビールをゴクリゴクリと飲む。美味しい。「では、寺本君、挨拶をお願いします。」「寺本悠介です。1か月前はまさか海外で仕事をするとは思ってもいませんでした。それが急にタイのシラチャ勤務となって驚いています。まだ現地に来て2週間ですが、気候も良いし、料理も美味しいし、シラチャに合っているようです。3ヶ月の出張と言う事で来ましたが、私は是非、完成するまでここで働きたいです。本部長、どうかここで製品が製造されて出荷されるまでここで働かせて下さい。お願いします。」全員から拍手が湧いた。「本部長、本人の強い要望です。是非、希望を叶えてあげて下さい。」山下課長も悠介の希望を支援してくれた。「そうだなー、国内でも色々と事情があるだろうから、希望が叶うかどうかは分からんが、機会があったら、そのような希望を出しておくか。」「ありがとうございます。よろしくお願いします。」又、全員から拍手が起こった。日本語での挨拶なので、タイ人には意味が分からなかったはずであるが、悠介が立って頭を下げているので、日本人に合わせて拍手をしたと思われる。料理が運ばれて来た。「これは空心菜と言う野菜だよ。こちらでは良く注文する。」大森が説明してくれる。早くから来ているので、課長たちよりも現地に詳しいようである。悠介は大人しく聴いている。「そしてこれは、ヤムウンセンと言ってタイ風サラダ。春雨があるでしょう? そしてレタスなんかも入っている。」悠介は薦められて食べて見た。空心菜は少し辛かった。しかし食べられない程ではない。ヤムウンセンと言うのは辛くもなく食べ易い。さらに料理が運ばれて来た。それは悠介にも分かった。アサリである。日本と同じであるが、味付けはタイ風だった。甘辛炒めと聞いたが美味しい。ビールのつまみにピッタリである。「どうですか? タイ料理は?」所長の加山が悠介に聞いて来た。「はい、皆、美味しいです。タイが好きになりそうです。」「それは良かった。食事が合わないと海外生活は難しくなるからね。」「その点、私は大丈夫そうです。シラチャは肌に合っています。」悠介は出来るだけ長くシラチャで働きたいので、好印象である旨力説した。さらに、オムレツと、ポークリブローストが運ばれて来た。これらはタイ料理と言うより、日本食に近い味であった。どちらも美味しい。「ミスターテラモト、プリーズ」ハンサがビールを注ぎに来た。にこやかに笑っている。良い笑顔だ。「ありがとう。」飲み過ぎに注意せねばならないが、ビール程度で酔い過ぎにならない。悠介も酒の席に多少は慣れてどの程度が自分の飲み過ぎかは分かって来ている。ハンサが悠介のすぐ近くにいる。綺麗だなー、と思う。そして彼女は悠介に優しい。悠介は、このハンサと親しい仲になるのではないかと言う予感が湧いて来た。ハンサが自分の席に戻る前に悠介にメモを渡した。悠介が皆に見られないようにメモを見ると、「この後、次のお店に行きましょう。」と書いてあった。==================================
2024.02.04
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================「これはカオマンガイと言ってね、鶏肉だね。このご飯は、鶏肉のゆで汁で炊いてあるのだよ。ご飯だけでも味があるよ。カオマンガイの「カオ」はご飯の意味、「マン」は油、「ガイ」は鶏肉だね。」「はぁ、難しいですね。」「このタレを付けて食べると良い。しかし辛いから少しだけ付けた方が良いよ。」言われた通りスプーンでタレを鶏肉にかけた。そして食べた。「うん、美味しい。美味しいですね?」「美味しいだろう? 日本人にも合う味だよね。」「はい、タイ料理、初めて食べましたが、全然問題ないです。」悠介はそう言って黙々と食べた。ポリ袋に入ったスープも付いていた。ポリ袋から茶碗にスープを開けた。まだ温かい。スープも辛くなく飲み易い。どうも鶏肉を茹でたスープらしい。昨夜は日本食、今朝はパンにコーヒーだったので、今回の昼食が初めてのタイ料理だった。タイ料理に全く違和感はなかった。午後は技術課の丸山が運転手に案内させて工場地帯を案内してくれた。広い敷地の中であるがまだ舗装道路もなく敷地の境界さえ明確でないような所もある。ここに20数社が進出するようである。工事が進んでいる会社もあるが、どこも捨てコンを打った位で、柱が立っている所はない。悠介たちの仮設事務所で使用している電気も水も仮設であり、将来は本設の設備に切り替えるとの事である。こんな広い所に工場が立つのか、と完成後の姿を想像すると心躍る気持ちであった。悠介は3ヶ月の予定で出張であるが、完成するまでここで働きたいと思った。建設途中で帰るのは面白くない。機会を見て課長や本部長に希望を伝えたいと思った。その為には、ここで悠介が必要であると思われねばならない。頑張らねばならないな、と心を新たにする悠介であった。悠介は日記を書く事にした。毎日の感動を毎日書いて置く。そして日本の上司に月報を送ろうと決めた。要求はされてないがその方が自分の纏めにもその後どうしたら良いかなども分かり易い。ただ漠然と毎日を過ごしていては進歩がないと思うのである。「ノートを買いたい。その前にお金を両替したい。」ハンサに言った。先輩の大森に聞いた方が簡単であるが、英語の練習もせねばならない。その為に積極的に女子社員に話かけることにした。そして隣に座っているハンサには話しかけ易い。悠介の右前に座っているチムリンには席が少し遠いので話しかけ難い。英語に自信がないので小さな声でも聞こえる隣の席が良いのである。「じゃー、今から行きましょう。」ハンサが気楽に言った。「今から?」「ええ、何か都合が悪いですか?」ハンサは気楽に言う。外出は自由なのだろうか。「大森さん、お金の両替とノートを買いたいので外出して良いですか?」「あぁ、良いよ。自由に行動してくれ。」「じゃー、洋服屋さんにもよってサイズを計って貰いましょう。」ハンサはハンドバッグを持って今にも出発するようである。悠介も慌ててショルダーバッグを持った。運転手は暇で、いつもメスルームに屯している。ハンサは運転手に仕事を作ってやった方が良いのだ、と言っている。工事現場からシラチャの町まで戻った。まずは両替である。両替へ行ったら、1バーツが15円と言う換算である。この頃は1US$が300円位で円が弱かったのである。1万円を両替して650バーツのお金を得た。その頃の悠介が将来、1バーツが4円を超えて円安で困ると言うような状況は理解の範囲を越えていた。両替をしてからノートを買いに行った。そう大きくない文房具屋である。しかしノートに関しては種類は豊富にあった。長く書いたり短かったりしても書けるように自由欄のノートにした。ハンサが運転手に行き先を告げると運転手は迷いもなく目的地へ行った。慣れているようです。最後に洋服屋である。如何にもやり手と言う人が手もみして迎えてくれた。肩にメジャーをかけている。すぐに肩幅、胸囲を計る、そしてウエストも図りズボンの裾長さを計り始めた。そして、「ほー、ヤイマーク、ヤイマーク」と言っている。悠介には何を言っているのか全く分からない。ハンサは頬を赤らめ横を向いている。寸法取りはすぐに終わった。ハンサが3日後には持って来てくれると言った。やり手の店員さんが何を言ったのか悠介は気になったが、確認する術はない。忘れる事にした。資料を読んだり、気分を変える為に現場を見に行ったりの毎日であったが、1週間はすぐに過ぎ去った。ハンサが親しげに話しかけて来るのが気になっていたが、普通に対応していると悠介は思っています。そして悠介の歓迎会が行われる事になった。幹事は事務所の女性達である。お店はシラチャのタイ料理店を選んでくれた。悠介は招待される側、意見を挟む余地はない。本格的なタイ料理を食べていなかったので、悠介としては有難かった。一度どんなものか食べて見たかったのである。==================================
2024.01.28
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================「グッドモーニング」若い女性の挨拶に遅れて色の黒い青年が英語で挨拶をして来た。皆さん、「グッドモーニング」と返事を返している。悠介はどぎまぎした。大学の講義以外、英語を話した事はない。勿論片言の英語は分かるが、言葉にして発した経験がないので、どうしてもドギマギしてしまう。「社員を紹介しよう。」総務課長の山下が言った。「はい。」「今日から、我々の仲間として働くことになった、ミスターテラモトです。」「グッドモーニング、マイネイムイズ・ユウスケテラモト。ナイストーミートユー。」「ナイストーミートユー。」「マイネイムイズ・ナロン。」青年が言った。それぞれ女子社員も名前を名乗った。ハンサ、チムリン、ナームと言う名前らしい。とても覚えられない。山下課長が悠介の机に案内してくれた。机は両課長が一番前でその後ろに机が4個づつ並んでいる。山下課長の左前が大森、右前が悠介、悠介の隣がハンサ。大森の隣がチムリンである。技術課は同じく本吉課長が前に座り、左前が丸山、右前がナロンである。ナロンの隣がナームである。運転手の机はない。「事務所の中も案内しよう。」山下課長が案内してくれた。事務所の他に会議室が一室、打合せ室が2室、メスルームが一室、給湯室もあった。インスタントラーメン位は作れるようになっている。「コーヒー、紅茶、日本茶は、会社で用意するのでいつでも飲んでくれ。」「はい、ありがとうございます。」「飲む時は、女の子に言えば淹れてくれるからね。」「何から何まですみません。ありがとうございます。」「まぁ、お茶でも飲んでゆっくりしてくれ。まだ仕事も多くないから。」悠介は自分の机に座ると、A4用紙を半分に折って座席表を作った。名前を覚える為である。日本人の名前は覚えているが、現地人の名前は忘れてしまっている。悠介の隣の色白の女性に名前をもう一度教えてくれと聞いた。ハンサと言うので、座席表に書き込んだ。他の現地人の名前も教えて貰って、座席表に書き込んだ、これで事務員は全員である。運転手の名前は分からないが、ボチボチ覚える事にした。そうこうしている内に、ハンサが、悠介のヘルメット、手袋、安全帯、を持って来てくれた。そして安全靴を準備するので、足のサイズを教えてくれと言う、タイのサイズは分からないが、24cmとセンチと答えた。ハンサはそれで分かったようである。注文するので、数日待って欲しいと言われた。それから作業着も準備するので、サイズを聞かれた。サイズと言われても分からない。SかMと言うと、ハンサも困った顔をしている。ハンサは、購入してある予備の作業着があるので、着て見てくれと言う。倉庫に向かった。先ほど案内してくれなかったが、倉庫もあるようである。「これ、どう? 着て見て。」作業着を渡された。着て見ると大きすぎる、ダブダブである。ハンサは悠介が着た姿を見て笑っている。大き過ぎておかしいのかも知れない。まぁ、悠介が小さすぎるのであるが。小さいのがないので、洋服屋を呼んでサイズを計って特注するとの事である。ハンサは色白で仲々、美人だし、愛想も良いし良い娘だなー、と思った。しかし、恋愛で失敗しているので、恋仲にはならないぞ、と心に言い聞かせた。配属されて間もないのに女性問題で海外に出張となった。出張先で同じような問題を起こしたら、もう行く所がない、絶体絶命になると思うのであった。大森から現場工事の資料を渡された。日本で読んだ資料も含まれている。資料は何冊もあった。全部読むのには1週間はかかるであろうという程多い。しかしやる事もないので丁度良かった。日本で読んだ資料を取り出した。あの時は訳も分からず、読んで分かった気がしていた。しかし今、その現地に来ている。内容は同じながら、感じる事は違うであろうし、この工事に直接関わっている先輩方もいる。気になる事は全て聞けるのである。分厚い資料を開ける。まだ新しい。誰も読んでいないのではないかと思った。1ページ目には、タイの地図があった。その南の方に赤く塗られた箇所があった。そしてその次のページに赤く記された箇所の詳細がある。まさにそこに悠介は来ているのであった。昼食になった。弁当が配達されて女子社員がメスルームに弁当を並べ、お茶も淹れてくれる。「さぁ、昼食にしよう。」加山本部長が自分の部屋から出て来て言った。「では、行こうか?」山下課長が悠介を誘う。メスルームに行って見ると、日本人用に1テーブルが準備され、6名分の弁当が置かれていた。その隣のテーブルには、現地採用の4名分の弁当があった。「寺本君はタイ料理は食べた事があるの?」「いえ、全く食べた事ありません。」「日本食もオーダー出来るけど、大体はタイ料理だね。」大森が説明してくれた。==================================
2024.01.21
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用=================================== 料理は、トンカツや鶏の唐揚げ、枝豆やしめ鯖、野菜サラダなど、日本と同じような物ばかりである。悠介はタイ料理を食べた事がなかったので、食べられるか心配していた。しかし、こんな日本料理が食べられるならば、何ら問題はないと安心した。「所で、寺本君、君がシラチャ行きを希望したのかい? 5人体制で暫くはこのまま行くと考えていたし本社にもそう報告して来た。しかし本社の命令で6名となった。こちらが要望をしていないのに、何故、人数を増やしたのか解せないのだよ。」「あのー、希望したのではありません。シラチャで工事をしている事さえ知らなかったのですから。」そう言ってから、新入社員教育で海外の動向と言う説明があったのを思い出した。「あ、いや、新入社員教育の時、海外工場の建設を行うと聞きました。すいません。今、思い出しました。」「君が希望したのではないとすると、どんな事情があったのかなー?」悠介は、本当の事を話さねばならないのか悩んだ。新入社員を現地へ押し込んでくれた、総務部、人事部の部長さん方の顔が浮かんだ。事情は現地には伏せてあったようである。別の工場へ転出させても良かったのに、海外へ赴任とは抜擢も良い所であった。「実は・・・。」「ん? 実は何だ?」「実は、女性問題がありました。」「女性問題? 入社早々、もう女性問題か?」本当の事を話さねば、納得して貰えそうにないので、悠介は説明を始めた。総務部の隣の人事部の女性から上司経由交際を求められたが、まだ実習中であるので、交際は出来ないと断った。それで、その女性を傷つけるのは問題があると言う事で、離れる為に出張を命じられた旨、説明した。「ふ~ん、そう言う事か。君はモテるんだな。羨ましいよ。」「そんな、モテるなんて事はありません。」「いやいや、良いじゃないか、モテるのは。」「所長、そう言えば、ここに赴任してきた5名は全て関西です。それで、鹿沼工場からも人を出したいと言う噂も聞こえてましたよ。」大森が言った。「そう言えば、皆、関西からだなー。我が会社の主力は関西だからそうなったのであるが、関東からも人を出したいと言う事は分かるよ。」そのような事情があるとは悠介は知らなかった。もし鹿沼工場からシラチャへ派遣するとなると、希望者は大勢いたはずである。そんな中で、悠介が指名されたのは、大変、幸運であると思った。そして頑張らねばならないとも思った。会食は楽しく終わった。悠介は皆良い人のようなので安心した。皆さんの名前を覚えねばならないので、宿に帰ってからメモ帳に皆さんの名前を書いた。明日挨拶する時に、名前を言ってからお早うございます、と言おうと思った。会食が終わる頃、加山建設本部長から、「今夜は寺本くんの歓迎会のようだけど、着任当日なので、顔合わせとしよう、正式な歓迎会は別途考えましょう。その時は2次会へも行くので、楽しみにして下さい。綺麗なお姉さんの居る所にお連れしますよ。」と言われた。悠介も勿論綺麗なお姉さんは好きだけど、どんな所なのか楽しみとなった。翌朝、7時に朝食の為に食堂に行くと、昨日会食を共にした、5名の方々が既に食事をしていた。「お早うございます。」悠介は挨拶をした。5名全員がいるので、一々名前を言う機会を失ってしまった。心の中で、本部長が加山さん。総務課長が、山下さん、技術課長が本吉さん。技術課員が丸山さんと心の中で復唱した。総務課員の大森さんは既に覚えていて問題はない。「どうだい、良く眠れましたか?」加山本部長から声を掛けられた。」「はい、ぐっすり眠れました。」悠介は緊張しながらも、5名の方々と同じテーブルで朝食を採った。建設現場の工場へは、2台の車で出勤した。加山工場長と、総務、技術の両課長が同じ車であった。そして平社員の丸山と大森、そして悠介が同じ車で出勤した。悠介は偉い人と一緒の車でなくて良かったと思った。そして1日中、同じメンバーで出勤、仕事、退勤だと苦痛ではないかなー。と心配した。おまけに帰って来てから、食事まで一緒だったら、寝る以外は同じ時間と言う事になる。悠介はどちらかと言うと、独りが好きだった。大学時代も、同級生と群れる事はなかった。バイトして部屋に帰り一人で過ごした。共同生活的な日常は初めてであった。「お早うございます。」事務所に入って大きな声で挨拶した。日本人以外はもう出社しているようだ。「コップンカー。」3名の女性が声を揃えて挨拶した。タイ語のようである。全く分からないので、返事のしようがない。==================================
2024.01.14
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================バンコクからシラチャまで2時間位かかると、大森が説明してくれた。バンコクは大都市だなーと、車窓を眺めながら悠介は思った。車の中で大森が現状を説明してくれた。まだ建設は始まったばかりで、基礎コンクリートを打ち始めたばかりであるとの事、悠介は大学時代に4年間、建築工事のバイトを行っていたので、その辺りは良く承知している。まさかバイトの仕事が役立つとは思わなかった。日本人は所長が1名、総務関係が2名、技術関係が2名の5名、現地社員が4名の総勢、9名との事である。それに運転手が3名いる。この体制になったのは、まだ1ヶ月程前だったと大森から説明された。「1ヶ月以上前は、人数が少なかったのですか?」「そうそう。所長と技術の丸山と3人だった。俺は半年前から来ているけど、宿探しから色々と大変だった。始めは運転手も居なかったし、移動も大変だった。今はずいぶん体制も整って楽になって来たよ。寺本君は良い時に来たよ。」「そうですか、足手纏いにならないよう頑張ります。」シラチャには、2時間で着いた。まずは宿に案内された。新築の宿で清潔であった。居室は8畳程度の部屋であるが悠介には十分である。ベッドと机に椅子も置いてある。トイレと湯舟はないがシャワー室が付いている。日本と比べたら広すぎる位である。「今日は、出勤しないから、ちょっとゆっくりして18時頃食事に行こう。」「はい、お願いします。」悠介はトランクから荷物を出して、衣服を洋服ダンスに整理した。歯ブラシなども洗面室に配置した。作業着も一着日本から持参した。明日は作業着で出勤の予定である。わずかな時間で整理出来た。椅子に座って部屋を眺める。部屋の窓からは、道路が見える。舗装はされていない。まだ発展途上である事が理解できる。悠介は文系であるが、工事とか好きである。捨てコンを打ち、配筋して基礎を立ち上げ、コンクリを流す。4年間もバイトで培った経験がある。そして新入社員であるのに、海外の大工事に携われる事に幸せを感じていた。18時前に、ロビーに降りて大森を待った。「じゃー、行こうか。」18時ぴったり、大森がやって来て声を掛けてくれた。日本食堂へ行くとの事である。そこは歩いて5分程度の近くにあった。「サワデーカー。」若い娘さんが迎えてくれた。まだこの辺りも工事も途中で、店はそう多くない。工事関係の労働者目当ての食堂やレストランがポツポツとある。タイ料理の店も掘立小屋のような店が並んでいた。「もう少し経ったら、皆さんも来るよ。工事現場はここから車で20分位かな?」「意外と近いのですね。」「一応、18時までが勤務時間なので、30分もしたら皆さんが来ると思うよ。」「はい、分かりました。」「ビールを飲んで待とう。飲めるのだろう?」「はい、飲めます。でも飲み過ぎると正体を失うので気を付けています。」「そうかい、正体を失うか? 初めは自分がどの位飲めるか分からないから、失敗もするさ、まぁ、仕事もそうだけど、やっている内に慣れるよ。」枝豆などの軽いつまみを頼み、大森と飲んでいる。車の中から彼の話を聞いて、現状の概ねは理解できている。18時25分、皆さんがやって来た。悠介を含めて総勢6名である。皆さんが席に着き、ビールを頼んでグラスに注いだ。「取り敢えず乾杯しよう。良いかな皆んな?」「寺本君、良く来てくれました。それでは乾杯!」「乾杯!」「ありがとうございます。何も知らないので、よろしくお願い致します。寺本です。頑張って、皆さんのお邪魔にならないよう努力します。」「まぁ、そう硬くならずとも良いよ。まだ少人数のチームだからね。」「自己紹介するとね、私が所長の加山です。もう2年後に定年なので、最後の仕事と思って張り切っています。よろしく。」「よろしくお願い致します。」一人一人が簡単に自己紹介してくれた。所長に総務が2名、技術が2名の5名であった。そこに悠介が加わったのである。「両課長も1ヶ月前に赴任したばかりだ。暫くは5名体制で行く事にしていたが、急に本社から、新人が行くのでよろしくと言われたのだよ。どんな事情があったのか知りませんが、まだそう忙しくないから、大森君と共に気楽にやってくれ。」加山所長がそのように説明してくれた。悠介本人も出張を命じられてから1ヶ月も立っていない。当然、現地も知らなかったはずである。料理が運ばれて来た。いつの間にか大森が注文してくれたようである。==================================
2024.01.02
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。悠介は女性問題からタイのシラチャへの出張が決まった。写真はネットより借用===================================それから5日間、丸1週間かけてキングファイルを読んだ。タイや建設計画の概要は分かった。大規模な建設計画である。何年も前から計画が始まり、建設はまだ始まったばかりである。工場の完成は2年後の予定である。そんな計画に参画させて貰う事ができるので、悠介は気持ちが奮い立っていた。この建設計画を読む前と読んだ後では、シラチャに対する気持ちが全く違っていた。最も読む前は、シラチャに関して何も知らなかったのではあるが。来週はパスポートの受け取りである。その週の日曜日に山脇の結婚式がある。そしてその翌週にタイへ移動する。慌ただしい2週間弱である。この頃はまだ地球の歩き方も創刊されておらず、海外の情報が少ない頃であった。沖縄が変換されてまだ3年しか経っていなかった時期である。何を持参せねばならないか、なども、キングファイルに詳細に記されていた。それらの買物もせねばならない。そんなある日、人事部の森本さんと廊下で会った。会釈して近寄ってくる。「寺本さん、タイに行くのですって?」「ええ、話が早いですね。その話を聞いてからまだ1週間しか経っていないのですよ。」「人事部、総務部の人は皆さん知っていますよ。」「あぁそうですか、今準備で大わらわなんですよ。」「お手伝いしましょうか?」「ありがとう。でも大丈夫です。自分でやらねば覚えられないので、全部自分で準備しようと思っています。」悠介は、買物の手伝いでもされたら付き合っていると思われても困るし、必死でそうならないよう、考えながら応答した。良く見ると森本さんは色が白く美しく優しい顔をしている。どちらかと言えば、悠介の好みである。しかしそう考えないようにした。「帰って来たらタイの話を聞かせて下さいね。」森本はそう言って、人事部の部屋へ向かって歩いて行った。悠介はほっとした。手紙でも下さいと言われたらどうしようかと心配していたのである。時はあっという間に過ぎ去り、山脇の結婚式に参列し、諸々の海外出張の準備を行いタイへ出発の日となった。出張準備の中にはビザの取得も含まれており、慌ただしい毎日であった。ビザの問題もあり、タイへの出発は予定より遅れて12月となった。出張期間は3ヶ月、翌年の2月末に帰国の予定である。悠介にとって海外は初めてであり緊張していた。海外も初めてであるが、飛行機に乗るのも初めてである。吉成課長が出発には良いだろうと友引の日、12月1日の飛行機のチケットを取ってくれた。飛行機は羽田空港から飛び立つ。フライトの関係上、羽田空港近くのホテルに1泊する。よって前日に鹿沼を出発した。総務部の人達が鹿沼駅まで見送りに来てくれた。この日は日曜日であったが、ほぼ全員に近い部員が集まってくれた。汽車が出発前、万歳三唱をしてくれたが、悠介は多いに恥ずかしかった。汽車に乗ると多くの乗客が何があったのかと悠介を見る。なのでさらに恥ずかしさが増した。羽田での1泊は精神が高揚して熟睡出来なかった。今から何もかも悠介にとって初めての事が始まるのである。森本さんに感謝せねばならない。彼女がいなかったら海外派遣の話はなかったに違いないからである。飛行機に乗り込むと綺麗なスチュワーデスさんが笑顔で迎えてくれた。美人ぞろいである。小柄な悠介には狭い機内の椅子でも十分問題はなかった。暫く飛んだら、昼食が準備された。「お飲み物は如何ですか? ビール、ワイン、コーラなど何でもございます。」と勧められた。悠介はビールを頼んだ。タダでビール飲めるって良いなー、と思った。料理は和食であった。ご飯に味噌汁、豚肉を炒めたもの、野菜、それに何か分からないが、2種類付いていた。悠介にとっては豪華な昼食である。スチュワーデスさんが、又、「飲み物は如何ですか?」 と聞きに来てくれた。赤ワインを貰った。いい気持である。飛行機は良いなー。こんな鉄の塊が空を飛ぶなんて信じられないが、居心地は良い、と悠介は思った。バンコクへは7時間弱で着いた。どこへ行って良いのか分からないので、乗客の後を付いて歩いた。パスポートコントロールがあった。パスポートを出すと、何日滞在か? と聞かれた。その位の英語は分かる。入国スタンプを押して貰い問題なく通過した。さらに乗客の後を付いて行って、預けたトランクを受領した。これで空港の外に出られる。出口を出ると迎えの人達が名前を書いた紙を持って待ち受けている。悠介も会社から迎えが来ると伝えられていたので、自分の名前を探した。待っている人達の端の方に自分の名前を見つけた。「こんにちわ。」「やぁー、いらっしゃい、寺本さんですか?」「はい、そうです。」「私は、総務の大森です。よろしく。」「よろしくお願いします。」総務に大森さんと言う方がいるのは日本で聞いて来た。色黒で溌溂とした感じの人である。大森さんは運転手付きの車でシラチャーからバンコクまで来てくれたようだ。何も分からない悠介にとっては迎えは有難い事である。========================================
2023.12.20
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。写真はネットより借用===================================吉成総務課長と人事課長が困った表情で顔を見合わせている。「森本さんも君に熱心でねー、家柄も良いし、ご家族も歴史ある家柄で、資産家と聞いている。お付き合いして見たらどうかな?」吉成総務課長が言った。「寺本君にとっても悪い話ではないと思うよ。」人事課長も吉成に合わせて薦めてくれる。しかしながら、悠介は今、女性と交際するつもりは全くなかった。森本さんと言う女性は話した事はないが、良い娘さんだと認識している。しかしそれは交際には結び付かない。「すいません、森本さんはいつも笑顔で良い人だと思っています。ですが、今は女性とお付き合いすると言う気持ちにはなりません。まずは仕事を一人前になる為に努力したいと思っています。」「そうか、それほど頑なとは思わなかったが、それでは仕方ない。君がそう言うだろうと推測して対策の案を吉成さんと相談してある。」その内容とは、タイのシラチャで建設が始まっているが、そこに暫く出張させると言う事であった。悠介がいなければ、森本さんの心も冷めるのではないかと言うのであった。新入社員でようやく伝票切りを覚えたばかりなのに、海外へ生かせるのは特例であるが、悠介の為にもなると言う。悠介は海外生活は考えた事もなかった。突然降って湧いた話でただ驚いていて返事も出来ない。「どうかね? 悪い話ではないと思うよ。新人で海外へ行けるなんて異例中の異例だ。海外経験は会社の仕事にとっても、寺本君の人生にとっても悪くないと思う。」吉成総務課長が薦める。「海外なんて考えた事もなかったです。一体どう言う仕事をすれば良いのですか?」「今建設工事が始まったばかりで、色んな資材用具が不足している。大物は調達部が調達するが、総務部はこの工場でも同じで事務備品や作業服なども担当する。又、寺本君は担当した事はないが、官庁への届け出や申請も行う。それらを含めて既に要員は現地に派遣されている。寺本君はそのお手伝いをすれば良い。」「タイも、ましてやシラチャと言う町も何も知りません。海外へ行かせて貰えるのは有難いですが、自信がありません。」「まぁ、急な話で気持ちの整理も付かないだろう。会社としても全社をあげて完成に全力を尽くすと言っている。誰も経験のない初めての事業だ。良い経験になるぞ。現地の資料があるから、それらを読んで見てくれ。ある程度の理解は出来ると思う。それからこれは相談ではなく指示であるからそのつもりで準備してくれ。」「何か問題でもあるかな?」「現地の事は、資料を見させて頂きます。それから10月中旬に友人の結婚式があります。その結婚式には参列したいです。」「今日は何日かなー? 中旬と言えばいまから2週間しかない。パスポートも取って貰わねばならないし、ビザの問題もある。現地へ行くのは中旬以降となるだろう。結婚式には出られるよ。」「分かりました。」「君は英語はどうかな? 得意な方かな?」「授業で勉強しただけですから、特別に得意でもありません。現地は英語ですか?」「現地従業員は英語が話せる人材を採用している。作業員クラスは英語は出来なくとも良いとしている。事務所では英語で話す事になるな。」「英語を勉強するいい機会でもある。森本さんには私から良いように言って置くので、この件は聞かなかった事にして貰いたい。」人事課長はそう言って席を立った。席へ戻ると、吉成が分厚いキングファイルを3冊持って来てくれた。シラチャ建設計画と書いてあった。「これを全部読めば、概要は全て分かると思う。こちらの仕事はしなくてもいいからこの資料を読んでくれ。」「はい、ありがとうございます。」キングファイルを開けると、1ページ目にはタイの地図があった。南北に長い国である。南の方は、タイランド湾とアンダマン海に囲まれた細長い部分がある。なんでこんな国境になったのかと不思議に思われるほど狭い所もある。一番南はマレーシアと接している。北は南に比べると広い。日本の国土とどちらが広いだろうか? と思ったら書いてあった。「日本の国土面積は37.8万平方キロメートル、タイ国土の面積は51.3万平方キロメートルで、タイは日本の1.4倍の大きさである。なおタイの国土面積は世界で50位、日本は62位となっています。人口は日本は、1.26億人。タイは6.6千万人で、日本はタイの2倍の人口である。」読んでいると興味が湧いて来た。いきなり工場の事でなく、タイの概況が書いてあったのである。タイの国花の「ゴールデンシャワー」黄色い花である。タイの国鳥は「シマハッカン」写真なども添えられていて、読んでいて楽しい。この本を先輩諸氏が作ったと思うと、その大変さが思い知らされるようである。===================================
2023.12.02
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まった。写真はネットより借用 宮崎新婚旅行===================================次女夫婦の新婚旅行は、九州南部と沖縄だったらしい。とっても良かったと喜んでいる。その写真も持参して見せて貰った。どの写真も嬉しそうな顔をした二人が並んでいる。「悠介は彼女いるの?」長姉の佳子が聞いた。「いないよ。今はそれどころじゃーない。仕事を覚えるのに精いっぱいさ。」事実をありのままに話した。由美子の自殺未遂の件は話せない。どんなに心配されるか分からないからだ。長姉の佳子も新婚旅行の写真を持って来た。長姉夫婦も行先は九州であった。次女と同じようなコースだったらしい。こちらも満面の笑みを浮かべた二人の記念写真が並べられている。結婚とはそんなに良い物なのか? と悠介は疑心暗鬼に思う。悠介は結婚同様な同棲生活を経験している。しかし結婚したいと思って同棲したわけでないので、甘い生活ではなかった。小平由樹枝との仲を戻したくて仕方のない頃だったのである。小平由樹枝ももう大学4年になっているはずだ。彼氏がいると前回帰郷の際に同級生に聞かされた。ほろ苦い思い出となっている。翌々日は、中学の同級生が集まった。いつものメンバーである。三浦が働く寿司屋に集まった。銀行勤めの福田、町役場に勤める山脇、親の家業の床屋を継いだ田島、それに今回は女性二人が参加している。会社勤めの豊島、薬剤師になるという木島の総勢、7名である。三浦もこの日は、仕事を休んで同席している。山脇が皆に言った。「この秋に結婚する。披露宴に参加して欲しい。」、と。「あぁ、そうだったな。正月に来た時、今年結婚するって聞いた。何月?」「10月の半ば過ぎにしようとしているが、まだ日にちまで決まっていない。」「日程が決まったら、知らせてくれ。万難を排して出席する。」皆が口々に同じように言った。悠介は山脇には小平由樹枝の件で世話になっている。事情も全て話してあり、経緯は全て知っていた。振られて別れた事も当然知っている。別れてなかったら、山脇同様、今頃は結婚の準備に追われている頃だったはずだ。一寸先は分からんなー、と悠介は改めて思う。幸せそうな山脇を見ても羨ましいとは思わない。女性は懲り懲りだという気持ちが強い。中学の同級生は気兼ねなく話が出来るのでリラックス出来る。大学ではバイトばかりで心置きなく話せる友人はほとんどいなかった。友人と言えば盛岡から来た高橋位だろうか? 彼は昨年学生結婚をした。悠介が披露宴の司会を頼まれて行った。初めての経験で緊張もしたが恙なく完了して安心した記憶が残っている。そう言えば、その後、諸々の事があり高橋と連絡が途絶えている事に気付いた。手紙でも出して見るか、と高橋の事を考えた。同窓会は、色んな話題が出て楽しかった。同級生の動向が一番話題では多かったと思う。皆、元気に働いているそうである。大学に進学した同級生は少ない。本日出席してくれた木島はその少ない中の一人である。薬剤師になると言う夢を持って勉強を続けて来たらしい。中学の時は目立たず大人しい人であった。悠介も言葉を交わしたかどうか記憶がないほどである。又、山脇の結婚式で会おう、と同窓会はお開きになった。お盆休みも終わり、悠介は鹿沼に戻った。休み前と同様、伝票切りに精を出した。夏の暑さは消え、秋らしい季節となった。9月も過ぎ、10月に入った頃である。人事課長と総務課長に呼び出された。仕事のミスもしていないし、由美子の件も解決したはずであり、何だろうと応接に出向いた。「君は、人事部の森本さんを知っているか?」人事課長が言った。悠介は誰の事か一瞬分からなかったが、いつも笑顔で挨拶をしてくれる優しそうな女性を思い浮かべていた。良い娘だなーと思っていた女性である。「はい、知っています。」「彼女が、君と交際したいと希望しているのだよ。」「えー?」「驚くよなー。君に直接申し込むのは恥ずかしいと言って、私に仲介を求めて来たのだよ。社内恋愛は禁止ではないし、むしろ応援する立場なので、一応、君に確かめたいと思ってね。」「そんな事は考えもしなかったです。ご存じだと思いますが、私は前科一犯で恋愛は禁止しています。まだ仕事も一人前でないしお付き合いするつもりはありません。」人事課長と総務課長は顔を見合わせている。「君の答えはそうなるであろうと推測はしていた。しかし彼女が熱心でね。何か断る理由がないと、精神的に追い詰めてしまう事になる。」「そうなると困るのだよ。」吉成総務課長も言った。「断る理由は、前科一犯で恋愛禁止、仕事に打ち込む、では如何でしょうか?」「それでは弱いなー?」人事課長が首を傾げて困ったなー、と言う表情で言った。===================================
2023.11.14
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。写真はネットより借用===================================悠介の即席歓迎会は、5名の参加であったが盛況に終わった。男性の若い人たちの参加がなく女性ばかりなので、華やいではいたが部内の本当の雰囲気なのか分からなかった。悠介はアパートに住む事にしている。会社の寮でも良いのであるが、大学時代アパートで暮らしていたし、その方が気楽で良いと思っているのであった。会社は会社の人達と一緒、家に帰っても会社の人達と一緒では、気詰まりがすると思うのである。まだ住所も決まっていないので、大阪の寮に荷物は預かって貰っている。今夜から新しいアパートが決まるまで、会社の寮に泊まる事になる。吉成課長が日曜日にアパート探しに付き合ってくれると言う。日曜日になった。吉成が寮まで迎えに来てくれた。約束の10時ピッタリである。悠介は寮の玄関先で待っていた。車に乗ると、不動産会社に行こう、会社からあまり遠いと通勤に不便だから会社の近くの所へ行こうと言う事になった。悠介は車を持っていないので、会社の近くで良いが、自転車を買う予定なので、自転車で通える地区までOKです、と答えた。不動産屋に吉成が連絡してくれていたようで、候補のアパートを3軒準備してあった。3軒見たがどこもあまり変わりなく、6畳一間に風呂とトイレ、キッチンが付いている。どこでも良かったが、比較的新しく、居心地の良さそうな茂呂と言う地区のアパートに決めた。オーナーさんも気さくで親切そうであった。その場で契約となった。会社の紹介でもあり、保証人は不要であった。敷金、礼金、それに3ヶ月分のアパート代も支払った。それから、自転車を買いに連れて行って貰った。新品同様の中古自転車が新品の半値で売っていた。即金でそれも支払った。帰りは自転車で寮まで戻る。吉成にはきちんと礼を言った。準備も万端であったので、午前中で全て完了した。寮に戻ると昼食であった。昼食は寮費に含まれていないが、頼めばインスタントラーメンは作ってくれる。昼食を食べ、大阪の寮に荷物の送り先を連絡した。早ければ、3日後には荷物が届くそうである。この引っ越し費用は会社が支払ってくれる。一連の作業が完了し、寮の部屋でほっとしている悠介であった。もう7月の半ば近い。学生ならば夏休みである。夏休みのない生活は悠介にとって初めてであった。何となく落ち着かない。これからずっと夏休みのない生活なんだなー、と思う。会社生活4ヶ月目であるが実習が3ヶ月あったので、本当の仕事はこれからである。早く慣れて皆さんの役に立ちたいと思う。早く給料分の仕事をせねばならないと思う。貰った作業服はまだ新しい。一目で新入社員と分かってしまう。それがとても気になるのであった。翌日から実務が始まった。まずは伝票切りである。あるデータを転記するだけであるから単調な作業ではある。誰でも出来るなー、と思いつつも真剣に取り組む。初めからミスはしたくない。迷う所は隣の成田京子に聞いた。正確にきっちり教えてくれる。高卒だが頭は良いらしいと悠介は思った。8月に入った。実務も1ヶ月はこなし、備品の発注管理は滞りなく出来るようになった。8月はお盆休みがある。新入社員であっても同様だ。悠介は長野の実家に帰る事にした。5月に2番目の姉の結婚式があったが、実習中であり列席出来なかったのである。実の姉の結婚式に出られないで辛かったが止むを得ないと自分では思っているが、姉に対する申し訳ない気持ちは余るほどある。実家に帰り、結婚式の写真でも見せて貰うつもりだ。お盆休みは、一週間の連休で、9日間あった。途中出勤日はあったが、皆さん休暇を入れて9連休としたのである。悠介は実家に戻った。お盆の日には兄弟姉妹全員が実家に集まった。と言っても長女の佳子と旦那の次郎は実家を継いで住んでいる。なので、長野市に嫁いだ次女の路子と旦那の康弘が実家に来ただけである。父母、長姉夫婦、次女夫婦、それに悠介の7名である。「結婚おめでとう! これ結婚祝い。」悠介が祝儀袋を路子に渡した。「披露宴にも出られなかったのに、。お祝いを貰っては悪いわ。」「いやいや、式に出れなかったお詫びもある。申し訳なかった。」悠介は、入社以来、東京や大阪で実習があり、忙しかった事を説明した。無理すれば休んで結婚式に出られたろうが、実習で後れを取りたくなかったのである。「これが結婚式や披露宴の写真。」母親がアルバムを出して持って来てくれた。親族一同が並んで写真に納まっている。悠介だけがいない。披露宴の挨拶の写真や余興の写真もある。それらを見ながら悠介も式に参列した気分になった。「さぁ、一杯やろう!」次郎がコップを悠介に渡した。婿に入ったのであるが、一家の主人然としている。いつの間にかもう実家に慣れているようだ。「ありがとう。頂きます。」悠介は礼を言ってビールを注いで貰った。皆のコップにもビールが行き渡った。「じゃー、乾杯だ! 良いか? 乾杯!」父親が音頭をとって乾杯した。===================================
2023.11.04
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。悠介は実習も終わり鹿沼工場に配属された。写真はネットより借用===================================悠介の即席歓迎会は、会社から歩いて10分の所にある居酒屋「よしゑ」である。総務部行き付けの居酒屋らしい。「あ~ら、いらっしゃい! 今日は何名? 5名? じゃー、そっちの座席に上がって。」お店はカウンター席が7~8つあり、テーブル席は3つ、そしてその奥に、1段高い小上がりが二部屋あった。ここは間仕切りを外して一部屋の大部屋で使う事も出来るようだ。総務部は、全員集合するとこの大部屋で会食をする事が多いらしい。「寺本君は主賓だから上座に座ってくれ、成田さんはその隣、受付の二人は二人の前だ。俺は、何席と言うのだ? ここに座る。」吉成課長はインテリ風だが、このような宴会の切り盛りも得意なようである。「私、山中和江です。23歳のおばさんです。」「私、島谷頼子です。20歳です。」二人とも受付を任されるように美しい。山中和江はお姉さんタイプである。島谷頼子はぽっちゃりしていて可愛い。「23歳でおばさんはないでしょう?」悠介が言った。「いえ、もう23歳だと皆さん結婚して退職して行くんですよ。23歳で彼氏もいないで勤めているのはおばさんなんです。」山中和江が言った。「ま、おばさんはないだろうが、皆さん結婚は早いね。確かに23歳では大体結婚退職する人が多い。」吉成課長が説明した。「では、私はもうじき23歳になりますのでおじさんの寺本悠介です。よろしく。」悠介が自己紹介すると受付の二人がクスクスと笑った。そうこうしている内にビールとつまみが運ばれて来た。「皆揃ったね、では乾杯しよう。寺本君の総務部参加に乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」全員が声を揃えて乾杯した。コップを下ろして。皆さんが拍手した。悠介は黙って頭を下げた。こんな歓迎をされるのは初めてであろうか? 大学でも歓迎会などでなかった。強いて挙げれば、満腹食堂でおじさん達に歓迎された位であろうか?「ありがとうございます。こんなに歓迎して貰って嬉しいです。」「この人が今度入社した人? あ~ら、ハンサムねー。女子社員が放って置かないわよ、あんた気を付けなさい、ここの会社はね、大卒の新入社員をみんな狙っているのだから。」女将が愛想笑いしながら言った。「どうかな? そう言う娘もいるかも知れないけど、そんなでもないと思いますよ。」吉成課長が女将の後を継いで言った。「私は前科者で、謹慎中です。恋愛禁止なんですよ。」悠介は言っておいた方が良いと思って説明した。「私自身、恋愛は懲り懲りで全く関心がありません。これから仕事一筋で行きますので、よろしくお願いします。」受付の二人がヒソヒソと話している。そして、山中和江が言った。「前科者って、何ですか? 悪い事したのですか?」「ええ、悪い事と言えば悪い事です。お付き合いしていた人の親御さんからから会社に手紙が届きました。それで会社に迷惑をかけたのです。」「どんな手紙?」山中と島谷が興味深そうに聞いて来た。成田京子は黙って聞いている。「個人的な事なので詳細は言えませんが、兎に角会社に迷惑をかけました。実習中に人事部長に呼び出されたのですから。」「それで人事部長を知っていたの? 新入社員がいきなり人事部長に挨拶しているのでびっくりしたわ。」黙っていた成田京子が言った。内心、何かがあるのであろうと疑っていたようだ。「まぁ、その話はこれ位にしていいだろう。寺本君が可哀そうだ。」吉成課長が言ったが、この話は明日中には総務部内に知れ渡るであろう。恋愛の前科者とは格好の噂話である。会社中の女子社員にも数日中の知れ渡るはずだ。悠介としては、誰に何を言われようと気にしないと思っている。この噂が流れて悠介に興味を抱く人がいなくなれば幸いであると思っているのであった。吉成の言葉で話題は変わった。秋に行われる社内大運動会の件である。1年の一番大きな行事であり、準備作業が大変であった。総務部一堂が全員で分担して準備を行うようである。徒競走に玉入れ、綱引き、騎馬戦、借り物競争などなど、大がかりである。悠介も何かを担当して行わねばならないらしい。悠介はそう言うのは面倒だなー、出来れば関わりたくないなー、と思ったが、今はもう学生ではない。気乗りしない事もやらねばならない。それが仕事だよなー、と黙って聞いていた。===================================
2023.10.20
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けてて真っ青になった。大内人事課長と由美子の父親に会い、慰謝料も支払い由美子の心の問題を除けば問題は解決した。写真はネットより借用===================================「君もこの1件で、人事部では有名になった。まぁ減点ではあるが、真面目に働いてこの減点を早く取り戻す事だね。」「汚点を残しました。肝に銘じて今後は注意致します。」「全くもてないより、モテた方が良いが、上手くやらないとな。女は恐ろしいぞ。」1泊2日で大阪に戻った。一応欠勤ともならず、30万円の見舞い金だけで当面の問題は解決して悠介はほっとした。もう2度と女には近づかないと思った。こりごりである。しかし今まで自分から誘ったのは、小平由樹枝だけである。その他は、騙されたり女性からアプローチがあって付き合うようになったのである。身長は低いが彼はモテるのである。大阪での実習も終え、配属先も決まった。悠介は希望通り、栃木県の鹿沼工場勤務となった。本社勤務の者たちは喜んでいたが、悠介は全く羨ましくなかった。元々、トップで走りたい性格ではないのである。大学進学も早慶も合格圏内であったが無理をせず。そのワンランク下のM大に推薦入学した。無理をしたくないのである。鹿沼工場では総務部に配属になった。悠介は文系であるが、工場の現場勤務でも良いと思っていたが、文系から現場は無理だったようである。人事部が隣りであった。由美子の件で呼び出された人事部長も座っていた。総務部で自己紹介をした後、人事部長の前に行った。「その節はお世話になりました。大阪の大内人事課長のお陰で今の所上手く納まりました。」「話は聞いている。しかし、まだ安心は出来ないぞ。彼女が立ち直らねば万事解決とはならない。給料も差し引かれるし大変だろうが、仕事優先で女性の事は忘れて、一心不乱に頑張ってくれ。」「はい、ありがとうございます。今回は本当に懲りました。仕事に頑張ります。」総務部の人達が、人事部長と悠介の会話に聞き耳を立てていた。総務部と言えども人事部長と会話を交わす事は稀である。それが新入社員で自己紹介したばかりの悠介が人事部長と話しているのである。何だろう?と気になるに違いない。彼女が立ち直る、とか、給料が差し引かれるとの言葉が聞こえていた。席を与えられそこに座った。勿論末席に近い方だ。さて何をすれば良いのだと思っていたら、総務課長の吉成に呼ばれた。色の白いインテリ眼鏡をかけている40歳代前半と思われる風貌である。応接室に来るように、との事である。「君には、備品の発注管理、施設の管理の仕事をして貰う。藤原君と成田さんが担当しているので、詳細は藤原君に聞いてほしい。」彼を呼んであるので、ここで仕事の内容を聞くようにと言って立ち去った。暫く待つと今度は課長と違って色の黒いスポーツマンタイプの青年が入って来た。「こんにちわ。藤原です。入社5年の27歳です。5年間、備品管理や、施設管理を行って来て、少し飽きて来た所です。君が入ってくれて助かるよ。君が一人前になれば俺も仕事が代わると思う。」「寺本悠介です。何も分からないのでよろしくお願いします。」「実務は、女性の成田さんと言う可愛い人が行っている。入社3年の高卒で、21歳になるかなー? 備品の発注管理の実務は何でも出来る。彼女に教えて貰うと良いね。施設管理は彼女には無理だ。色んな調整があるからね。そちらの方は俺と一緒にやって行こう。」「はい、分かりました。」それから、備品の発注管理と、施設管理に関して、資料も準備してくれて、詳細を1時間ほど説明してくれた。すんなりと仕事の内容は頭に入った。難しい事はないと思った。簡単であるとも思った。それから総務部の座席に戻り、成田さんを紹介してくれた。悠介の隣の席である。「成田京子です。よろしくお願いします。」「こちらこそよろしくお願いします。新人ですから何でも教えて下さい。「教える何て出来ませんが、一緒に仕事をして行きましょう。歳は寺本さんの方が先輩ですから。」そうか、高卒の3年だから、俺より1歳年下か、と悠介は思った。それなりの美人で可愛さもあるのでモテるだろうな、俺の好みの範囲だとも思った。しかし、絶対に付き合いとかはしないぞ、と自分の心に言い聞かせた。由美子の失敗が悠介を必要以上に慎重にしている。成田京子が悠介を何とも思っていないかも知れないし、既に彼氏がいるかも知れないのに、余分な心配までしている。「今夜は、居酒屋で一杯やろう。寺本君の非公式な歓迎会だ。正式な歓迎会は藤原君、君が幹事で頼むよ。」吉成課長が言った。「分かりました。しかし今夜は野暮用があります。すいません。」「私は参加出来ます。」成田京子が言った。総務部は、総勢12名である。部長、課長、藤原担当の仕事以外に、車内行事関係の仕事や契約関係に従事している社員が3名、受付が2名、社有車の運転手が2名である。皆さん、当日なので都合が悪く、受付の2名が参加してくれる事になった。これで、課長、成田、受付2名、そして悠介の5名の即席歓迎会となった。===================================
2023.09.29
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて大慌てである。写真はネットより借用===================================翌日は、由美子の父親が、喫茶店の個室を予約してくれた。このような状況で、本人同士を合わせない方が良いと良識的な判断をしてくれたのである。「住石電機工業の大内です。この度は娘さんに大変な事をしてしまいお詫びのしようもございません。誠に申し訳ない事であります。」大内が立ったまま深々と頭を下げた。当然ながら、悠介も頭を下げる。「まぁまぁ、座って下さい。」父親は怒りも見せず冷静にそう言ってくれた。悠介はドキドキしていたが、初めて会う父親に、どこか由美子の面影を見ていた。「それで、悠介君だったね、どうなんだ? 由美子と結婚すると約束をしたと聞いているが、手紙ではそうではないと書いてあった。それを由美子は裏切りだと言って自殺未遂してしまった。」悠介が話そうとすると、その前に人事課長が話し出した。「本人に聞いて見ましたが、結婚の約束はしていないと言うのです。この辺りは本人同士しか真相は分からないですが、本人に結婚する意志がないと言うので、全く申し訳ないのですが、解決のしようもなく、本当に申し訳ありません。」その後、由美子の父親と大内人事課長と諸々の話がされたが、若い者同士失敗もあろうと言う事になり、父親も理解してくれた。問題は由美子の気持である。又、自殺を試みるようでは問題が片付いた事にならない。その点は、父親と母親で何とかすると言う事になった。結婚しない悠介には何の手助けにもならない。「本日は、面会のお詫びの機会を与えて頂きましてありがとうございました。付いては大変失礼ではありますが、慰謝料と言いますか、お見舞いと申しましょうか、その辺りについて、ご相談申し上げたいのですが?」人事課長が悠介が考えもしなかった事を話し出した。そうか解決としてはそのような問題があったか、と悠介は思った。「まぁ、二人の恋愛に片方が一方的に悪いと言う事もないかと思います。そのような事は考えなくても良いですよ。」「いや、しかし、ご迷惑をかけた事は間違いないです。その気持ちとして30万円ほどお見舞い金を準備しましたが、これを納めて頂けますでしょうか?」いつの間に準備したのか、封筒を大内人事課長が差し出した。「彼はまだ入社早々で給料も渡していません。しかし、この金額は彼の給料から差し引いて支払いさせます。それだけの事をしたのですから。」事態は30万円のお見舞金で収束した。まだ由美子自体の問題は残っているが、それは家族に任せるしか他に方法がない。これを持ってこの場での問題解決とした。帰りの新幹線で、人事課長が言った。「物わかりの良い父親で良かったな。もっと修羅場を覚悟して来たが、全く問題はなかった。」「はい、ありがとうございます。私一人では絶対に上手く行かなかったです。」悠介は本心でそう思った通り礼を言った。「見舞い金は、君の給料から差し引くから良いね。」「はい、勿論です。本当にありがとうございました。」「女性関係のトラブルは、今後気をつけるのだね。」「本当に一言もありません。彼女の事で、就職前からずっと悩んでいました。彼女が一日も早く、この事は忘れて元気になって欲しいと思います。」===================================
2023.09.13
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。写真はネットより借用===================================手紙には完結に、「会社に入社したばかりで忙しく手紙も書けなくて申し訳ない。娘さんからどのような話を聞いたか分からないが、娘さんと婚約の話もしたことがなければ、結婚の約束もしたことがない。大変申し訳ないが、今後のお付き合いは出来ないので、ご容赦願いたい」、との内容を記した。この手紙で納得してくれるか否か分からないが、悠介としては区切りをつけたと言う思いが強かった。自分の気持ちをはっきり告げて清々した気持ちであった。大阪に移動した。大阪は本社であり、大阪方面から入社した新入社員が多い。関東から30名、関西から70名、総勢100名の新入社員である。悠介は由美子との間がすっきりした事もあり、講義に実習に張り切って参加した。大阪工場の実習を終えて、伊丹工場での実習を行っている時、至急大阪本社に来るようにとの伝達があった。驚いて実習中であったが、直ぐに本社へ出かけた。本社の会議室に本社の人事部長と他数名が座っている。悠介は由美子の事で何かあったのではないかと緊張した。それ以外に呼び出しは考えられない。「君、大変な事をしでかしてくれたな!」人事部長と思しき大柄な人物が大きな声で言った。悠介には何が何やら分からないので、怪訝な顔で人事部長を見つめた。「君と付き合いのある女性が、自殺未遂をしたと言う事だ。」「え? そんな・・・」悠介は驚いた。まさか、自殺をするほど由美子が考えていたとは分からなかった。「それで、命は? 体調は?」震える声で、悠介は聞いた。「一命は取り留めたようで、それは幸いであるが、一大事だ。我が社の社員のせいで自殺未遂が起きたと世間に知れたら、我が社の信頼を損ねる。」「一体、どうしたのだ?」人事部長の隣の席に座った人物が訪ねた。悠介は、鹿沼工場の人事部長から由美子の父親の手紙を見せられ、交際はしたくない旨、手紙を出した、と事実をそのまま説明した。「君にとっては、そうせざるを得ないのであろうが、自殺未遂はよろしくない。対応が悪いと言わざるを得ない。実習は中止して人事課長と一緒にすぐに唐橋さんの所へ謝罪に行きなさい。」人事部長が言った。「はい、分かりました。」「こう言う状況では本人が行っても自体は悪くなる一方であるかも知れない。しかし、父親から我が社の社員のせいで自殺未遂が起きたと言われては何もしない訳には行かない。今後、又自殺をする事のないように丸く収めねばならない。人事課長に一切を任せるが、君は黙って下を向いて謝るだけにしなさい。」着替えと財布だけ持って、人事課長とその日に東京に向かった。明日由美子の父親と面会の調整を付けたようである。「君もこんな事になる前に、何とかならなかったのか?」新幹線の中で人事課長の大内が言った。「すいません。まさか自殺までしようとしたなんて・・・。」「結婚を考え直す事は出来ないのかね?」「すみません。結婚は考えられないのです。」「彼女を弄んだと言う事か?」「弄ぶ気持ちはなかったです。始めは自然とそうなってしまい、その後は別れる事ばかり考えていました。何度も本人には結婚しないと言いました。ですが、ズルズルと。」「そうか。明日は難しい面会だな。君が結婚しないと言うからには、謝るしか方法はない。謝って謝りぬくんだな。」「申し訳ありません。課長に出張までして頂き、一言もありません。」===================================
2023.09.06
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。写真はネットより借用===================================「それから、大阪本社に行きます。大阪には2ヶ月ほど滞在となります。ですので、荷物は大阪に送って貰います。実習の最終段階で配属が決まり、各職場に行って貰います。従って、実習は凡そ3ヶ月です。座学や実習があり、各工場へも行くので、会社の内容は全て分かると思います。その間、私がずっと同行します。」担当の方は人事部所属で、入社3年目の先輩である。大北と名乗った。入社3年目で滔々と話す大北と言う先輩を尊敬の眼差しで見た。自分が3年目となった時、このようにすらすらと話し、事を運べるだろうか? と思うのである。翌日は、寮から全員で赤坂の本社に向かった。この日は、入社手続きで1日が終わった。明日から、会社概要などの講義となるとの事であった。座学は順調に進んだ。大学の講義よりも身近な話題なので、集中して聞くことが出来た。次が各工場での実習である。横浜工場、日立工場、鹿沼工場と廻った。鹿沼工場で実習中、鹿沼工場の人事部長から呼び出しがあった。人事部長から何の呼び出しなのか、不安な気持ちで指定された応接室に向かった。人事部長は既に座っていた。「君が寺本君か?」「はい、寺本悠介です。」「まぁそこに座ってくれ。」人事部長の前に座ると、一通の手紙を悠介の前に置いた。「それを読んでくれ。」何なのか怪訝な気持ちでその手紙を持った。裏には、唐橋と書いてあった。ドキッとした。由美子からではないか? しかし由美子の筆跡とは異なる。中を開けてみた。人事部長が前に座っているのも忘れて読んだ。手紙の内容は、唐橋由美子の父親からで、貴社に寺本悠介と言う新入社員がいるはずである。娘由美子の婚約者であるが、貴社に入社してから連絡が途絶えている。本人に連絡するように、伝えてほしい。と言うような内容である。悠介は震える手を出来るだけ分からないように手紙を机の上に置いた。「君には婚約者がいたのか?」人事部長が聞いて来た。「いえ、婚約者はいません。この手紙はおかしいです。」「え? どう言うこと?」「婚約した覚えもないし、この方ともお会いした事もありません。」「この娘さんとは付き合いがなかったと言う事なのか?」悠介は、事実を話さないと分かって貰えないと思い、出会いから、その付き合いも話した。別れてくれとは言えないので、結婚は出来ないと言う事は伝えたとも話した。しかし彼女は何年でも待つと言う事で説得出来なかった、とも話した。「それでは、婚約者でもないし、結婚する気もないと言うんだな?」「はい、彼女には申し訳ありませんが、結婚する気持ちはありません。」「それでは、その辺りの状況まで会社が踏み込む訳にはいかない。君の方から今話した内容を誠意を込めて話し合ってくれ。男と女、恋愛はいつでも生じる。しかし別れ方が一番難しい。その辺りは上手くやってくれ。君の将来にも影響する事項だ。」心に重い宿題を貰った。そう言えば、入社して講義に実習で由美子の事はさっぱり忘れていた。思い出しもしなかった。連絡してくれと言われてはいたが、連絡が途絶えて上手く別れられた、と思った事があった程度であった。まさか由美子の父親が会社へ連絡してくるとは全く予想もしなかった。この問題を上手く処理しないと自分の将来への影響もあると人事部長は仄めかした。講義も実習も順調に進んでおり、心配はなかった所へとんでもない問題が現れてしまった。明後日から、本社へ戻りその足ですぐに大阪に移動する。電話連絡ではうまく説明が出来ないだろうから、手紙を書くことにした。本日中に書かねばならない。===================================
2023.09.02
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。写真はネットより借用===================================「じゃー、行くよ。」トラックの助手席に乗った悠介は由美子に言った。由美子が手を差し出して来た。その手を硬く握った。由美子は薄っすらと涙を浮かべていた。悠介もじ~んとなった。もう会えないと思うと愛していないと言いながら身体を合わせた親しさはあり寂しさと由美子が可哀そうだと思う気持ちが湧いている。会社の社員寮は代々木八幡にあった。お茶の水から近かった。車で20分程走りすぐに着いた。「寺本悠介です。よろしくお願い致します。」迎えに出た寮の管理人に丁寧に挨拶した。もう60歳に近い落ち着いた風貌の方であった。親切に部屋に案内してくれて、寮の規則などを説明してくれた。朝食と夕食付きなので便利である。食べないときは欠食と前日までに記載してくれと言われた。部屋は6帖一間であるが、一人には十分な広さだ。しかし何もない。机もないので、書き物をするには不自由である。布団などの荷物は引っ越し業者が部屋まで運んでくれた。布団や着替えなどを押入れに入れるとやる事がなくなった。近くを散歩する事にした。管理人さんに聞くと、代々木公園まで歩いて20分少々で着けるそうである。小田急小田原線の代々木八幡駅、東京メトロ千代田線の代々木公園駅も見て置く必要がある。そこは代々木公園の入り口らしいので散歩には丁度良かった。道が分からないので、人に聞きながら歩いた。帰り道が分からなくなるといけないので後ろを振り返りながら、目印になるような看板や建物を覚えて歩いた。管理人さんの言う通り、20分少々で代々木公園駅に着いた。代々木公園は広い。東京ドーム11個分もあるとの事である。何の目的もないのでプラプラと歩く。暫く歩くと噴水があった。広場になっている。ベンチも置いてあるのでそこに座り歩いている人達を眺める。明日からいよいよ社会人となると思うと緊張する。どんな同期生が入社するのかと気になる。説明会の時に会っているがどんな奴がいたか全く覚えていない。30数名がいたはずである。春の陽射しが柔らかい。少し風もあり気持ち良く居眠りが出そうである。又、歩くことにした。入口と反対方向へ歩いて行くと原宿駅方面と案内があった。原宿は歩いた事がない。行って見る事にした。悠介より若いと思われる若者でごった返している。休日でもないのにどうして多いのか不思議である。まだこの頃は竹の子族が出現する前である。しかし派手な服装の若者は多い。彼らを見ていると、自分も大人になったと自覚出来る。悠介には派手な服装で歩く趣味はなかった。原宿通りを真っ直ぐ歩いて、そのまま戻って来た。特に買うものもないし、興味を引くような売り物もなかった。昼食を食べて寮に戻った。新入社員が続々と入寮しているようである。悠介は朝早く来たので悠々と荷物を運びこめたが、今は数人が来ているので、引っ越し業者同士が調整しながら荷物を運び入れている。夕食である。新入社員全員が食堂に集まった。20名ほどいるであろうか? 説明会では30名余りいた。残りの10名ほどは寮に入らず、自宅から通うのかもしれない。「ここ座って良い?」悠介の目の前の席に体格の良い寮生が聞いて来た。勿論嫌も応もない。誰がどこに座っても良いのである。「僕は横浜から来た、横沢です。よろしく。」「僕は、長野から来た寺本です。よろしく。長野からと言っても東京に4年住んだので全く東京を知らない訳ではないです。」「じゃー、東京の大学?」「そうM大学。」「僕は、K大学。」彼は体格も良いが、頭も良さそうである。廻りを見回すと優秀そうな人達が多い。彼らが悠介のライバルになるのである。気後れしそうである。夕食はトンカツであった。美味しいと思って食べた。こんな夕食が毎日食べられるならば幸せだなー、と思う。会社から来た人が説明を始めた。「皆さん、こんばんわ。食べながら聞いて下さい。明日詳しい説明はしますが、ここには1ヶ月ほど滞在して貰います。本社で10日間ほど座学があります。その後は、関東にある3ヵ所の工場を一週間づつ実習します。その後大阪へ行って貰います。」===================================
2023.08.14
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職の為、神田川辺のアパートから引っ越しする。写真はネットより借用===================================「こんばんわ。待った?」「いや、丁度料理が出来上がった所だよ、」「ありがとう、料理作ってくれたの?」「これが最後の夜だからね、手料理を食べて貰おうと思ってね。」「やだー、最後の夜なんて言わないで。」「さぁ、座って、ビールを飲もう!」「乾杯!」「乾杯!」二人は其々の思惑は異なるが、表面上は幸せな恋人同士のようにコップを合わせた。そして美味しそうにビールを飲んだ、「そうそう、これ就職祝い、どうぞ。」「え? 悪いなー、そんなに気を使わなくても良いのに。」開けて見ると濃紺に良く見ると細かい図柄の入ったものである。裏を見たらグッチと刺繍されている。悠介も聞いた事のある有名なブランドである。相当高いはずだ。「こんな高い物貰えないよ。」「何言っているの? 一生に一度の就職祝いでしょう? 私も頑張るわよ。」「申し訳ないなー。」悠介は別れるつもりの由美子から高級なネクタイを貰って気持ちが割り切れない。もう一つ袋があった。開けると靴下が3足入っていた。これも高級そうな品物であった。何とお礼を言って良いか分からない。このまま何も言わないで別れて欲しいと願う。揉めるのは好きではない。悠介は行き所のない気持ちでビールをがぶ飲みした。由美子は機嫌が良い。悠介が喜ぶ姿を見て嬉しいのであろう。そう言う気持ちが良く分かるので悠介には心苦しいのである。就職先の話をしながら食事は進んだ。2~3ヶ月は試用期間で実習となる。本社や全国の工場を廻るのでどこへ行くか分からない、と説明した。それはその通りであるのだ。実習の本拠地は東京であるが、本社が大阪にあるので大阪には行くはずであった。悠介たちは、幹部候補生として入社している。それで配属はどこになるかは不明であるが、本社や支社、工場は一応全て廻る事になっている。忙しい数ヶ月になりそうであった。それをそのまま由美子に説明した。「忙しいと言っても手紙を書く位の時間はあるでしょう?」「どうかなー?」「そんなに忙しいの?」「3交替勤務もするらしい。」「連絡がないと寂しいよ。」連絡しないとどうなってしまうのか、不安になる。由美子の気持ちを考えると後ろめたい。しかしどうしようもないのである。結婚したくないと思うのだ。親切に優しくされても考えは変わらない。そんな曖昧な気持ちを持ちながらも楽しい雰囲気を壊さないように気遣いながら食事は終わった。風呂の時間である。その前にテーブルを片づけて布団を敷いた。寝る準備をしてから悠介が先に風呂に入った。そして順番に由美子も風呂に入った。その後は、いつもの通り抱き合う。由美子は当分の間会えないと思っているので、初めから興奮度は大である。灯りが点いているのも構わず、全裸で布団に横たわった、悠介も習って全裸で由美子の横に並んだ。交互愛撫が始まった。「良かったー。素敵。とっても気持ち良かった。」終わった後、横たわって息を整えた後、由美子が言った。悠介も同様とても気持ちが良かった。結婚しないと思っていても、愛しているとも思えない気持ちであっても、身体を重ねれば気持ちが良い。そんな行為が不思議に思える悠介であった。酔いも手伝ってか、激しい交接と心地よい気持ちの中で、眠気が襲って来た。由美子も眠そうである。電気を消して寝る事にした。朝方早くすっきりした気持ちで目覚めた。由美子は当然と言う振る舞いで悠介の股間に手を伸ばして来た。泊まるときはいつも2度以上はしているのである。悠介は昨夜も2度している。それでも触れられたら硬度が増して来た。朝も激しい行為となった。「さぁ、起きるか? 今日は引っ越しだ。」「あら、又、寝てしまったの? 起きましょう。」もう8時に近い時間となってしまっている。9時に引っ越し業者のトラックが来るのだ。荷物を積み込み、悠介はそのトラックで一緒に会社の寮まで向かうのである。===================================
2023.03.11
コメント(0)
第145回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。=================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。披露宴で会った悦子と一夜を共にする。写真はネットより借用===================================悠介も悦子もシャワーを浴びてきた。激しい交接で汗を掻いたのである。「ねぇ、又、会ってよね?」「無理って言ったろう? 明日から就職してどこへ行くか分からないのだから。」「行き先が決まったら教えて?」悦子は身体を合わせた者同士の親しさで悠介に言った。悠介は教えるつもりはなかったが、悦子から住所と電話番号の書いたメモを渡された。「ねぇ、今日はどうするの?」「今日は午後から用事がある。人と会う約束があるんだ、」「そうなの、残念ね。」「チェックアウトして朝食食べて帰ろう。」「もっと一緒にいたいけど、仕方ないね。帰りましょうか?」夕方から唐橋由美子が部屋に来る。心の重荷になっている一件である。この夜で最後となるはずである。しかし由美子は最後と思っていないのが重荷なのであった。さよならの言葉は言わないで、遠く離れて自然解消にしたいのが悠介なのだ。雰囲気のあるカフェでサンドイッチとコーヒーの朝食とした。朝の光で悦子を見ると若々しく綺麗な肌をしているのが分かる。顔立ちも悪くない。悠介などと係わらなくとも男達が放って置かないであろう。きっとすぐに新しい男が出来るであろうと悠介は気が楽になった。新宿から部屋に戻った。もう10時を廻っていた。明日は引っ越しである。世話になったバイト先の社長や会社の人達に挨拶に行かねばならない。悠介の大学生活はバイトで始まりバイトで終わった感じである。休みはほぼ仕事に出かけた。勉強は平日で十分であった。予定通り成績優秀で卒業できた。貯めたお金は矢代由美子の宿代などで一旦はほぼゼロになったが、その後貯めたお金がある。お金には全く苦労はしなかった。バイトで稼ぐ他、親からの仕送りもあったからである。振り返って見れば学生生活は悪くなかった。勉強にバイト、そして女性にも不自由しなかった。小平由樹枝と別れねばならなかったのが唯一の心残りである。一時期は心に重く圧し掛かり苦しくて仕方なかったが、過ぎ去って見れば熱病に侵されたようなものであった。しかしもう一度あの時に戻れるのならば、小平由樹枝とは別れず、結婚したいと思う。それほど相性も良く愛していたのである。バイト先の事務所に行った。小柳社長は在席であった。そして一番世話になった長友もたまたま事務所に戻っており会えた。「色々とお世話になりました。明日引っ越しします。」「そうか、4年間頑張ったな。一人前になったのに居なくなると困るよ。」小柳社長が心より労ってくれた。悠介も大学生活で一番世話になった方なので、去り難い気持ちになった。もうここに来ることもないと思うと大きな寂しさが湧いて来た。「新しい生活に慣れて来たら、頼りでも出してくれ。」小柳社長から言われた。そうだ手紙を出そうと悠介も思った。親切にして貰って感謝の言葉も見つからない。丁寧にお礼を言って事務所を出た。丁度昼時である。ここでも世話になった満腹食堂で最後の昼食を食べる事にした。「こんにちわ。」「あらー、テラちゃん、いつ引っ越しするの?」店員の礼子さんが親しそうに声を掛けてくれた。知り合いは何人かいたが、夜飲みながら雑談をする人達はいなかった。夜も来たかったが、由美子がやって来る。放って置く訳には行かないし、由美子を連れて来ることも出来ない。最後の挨拶は出来ないが、礼子によろしく伝えて欲しいと頼む事にした。「明日引っ越しします。色々とお世話になりました。皆さんに挨拶出来ませんが、どうかよろしくお伝え下さい。」「分かったわ。皆さんも寂しくなるなー。って言ってましたよ。」悠介がいない間も悠介の話題は出ていたようだ。名残惜しいがカツ丼を食べてお店を後にした。夜は由美子の為に料理を作らねばならない。最後の晩餐である。煮物、炒め物、野菜サラダの材料を買い揃え刺身も買う事にした。引っ越しの準備は全て完了してある。、今夜寝る布団を除いて段ボールに入れてある。料理用具は置いて行く。持って行く物は少ない。まめまめしく働き、全て準備は完了した。由美子は時間通り、18時にやって来た。===================================
2023.02.20
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。写真はネットより借用===================================「さぁ、行こうか?」北村がロビーで待っていた。女性3人も一緒だった。遅れてしまったら帰ってしまおうと思っていたが、そう言う訳には行かなかった。披露宴の間、結構酒を飲んでしまったが自重しながらだったのでそれほど酔ってはいない。気分が良い程度である。「新宿へ行こう。」北村がそう言って歩き出した。悠介は付いて行くだけである。歩きだしたら先ほど声を掛けてきた女性が隣に来た。「私、悦子って言います。皆から悦ちゃんて呼ばれているの。」「悦ちゃんね、良い名前だ。」「そうですか? 良い名前?」「うん、良い名前だと思うよ。」「あなたは?」「僕は寺本悠介。」「寺本悠介さん?」「そう。愛称はないなー? 親しい人は悠介って呼び捨てで言うけど。」「じゃ、悠介さんで良い?私は悦ちゃんと呼んで。」そんな会話をしながら歩いたら駅に着いた。「新宿まで切符を買って。」北村が皆に言った。5人は並んで切符を買った。電車はすぐに来た。座席は空いている所もあったが、5人共座らず立って輪になった。「自己紹介しとく? 後で良い?」北村が聞いた。「僕は寺本悠介です。よろしく。」悠介は恥ずかしそうに名前を言った。そして其々が名前のみ紹介し合った。特技がどうの趣味がどうの家族がどうのと言うには電車の中では憚られる。悠介は3人の名前を頭の中で復唱していた。忘れないようにである。酔ってはいたが頭は正常を保っているようである。5人で雑談をしていたら新宿に着いた。北村が先頭になって全員をカラオケ屋に案内する。こじんまりした部屋に入った。5人が座ると、カラオケの画面の前に少しスペースが出来る程度である。狭いので親近感が湧く。悠介の脇に悦子が座った。悦子は悠介に気があるようだ。皆がそれぞれ飲み物を頼んだ。悠介はウィスキーの水割りにした。悦子もアルコールが入った飲み物である。北村が乾杯の音頭を取った。「乾杯!」「乾杯!」「今日の披露宴は凄かったね?」「あの人数は凄い。私も初めてよ。」「それに花嫁の衣装も綺麗だった。」「衣装に負けず、矢代さんも綺麗だったね。」女性陣がそれぞれ本日の披露宴の話を始めた。女性にとって花嫁衣装は興味があるのであろう。悠介も確かに花嫁の衣装も花嫁も綺麗だったと思っている。カラオケが始まった。悠介は歌を歌うのは嫌いではないが好きでもなかった。好んでカラオケに行こうとは思わない。歌も上手くはないと自覚している。まぁ普通であろうと思っている。歌詞が回されて来た。自分が住んでいる神田川を選んだ。神田川の部屋ももう数日で引っ越しである。4年間色々とあった。想い出の詰まった部屋である。ただ離れ難いとは思わない。小平由樹枝、矢代美恵子、唐橋由美子と女性達との住処でもあった。感傷よりも新しい旅立ちの方に興味があった。「悠介さんの番よ。」悦子がマイクを悠介に渡した。「ありがとう。」悠介は静かに歌いだした。確かに上手くはないが悪くはない。感情を殺した歌い方で情緒がある。1番を唄い終えたら、皆から拍手が湧いた。拍手はカラオケの儀礼である。上手いから拍手がある訳ではない。北村は元気が良い歌だった。アクションたっぷりである。悦子は山口百恵の歌だった。上手である。悦子は唄い終わって悠介の隣に座った。そして小さな声で、「二人で3次会に行かない?」と悠介に言って来た。悠介が悦子の顔を見るとにっこりと笑った。「二人で?」「そう。今夜は泊っても良いのよ。」悠介はあまりに積極的な悦子に驚いた。しかし唐橋由美子の二の舞はご免である。「僕は結婚はしないよ。今晩だけの付き合いで良い? もう東京を離れるし。』「それは構わないわ。貴方を好きになったの。」「だったら良いよ。」「東口の交番の前で待つから来てね。」「分かった。」今夜悦子と出来ると思ったら、興奮してきた。棚から牡丹餅のようである。そうなったら早くカラオケは止めて行きたいと思った。しかし他の連中はカラオケで盛り上がっている。全員が3曲づつ歌ってカラオケはようやくお開きとなった。支払いは北村と悠介で精算した。北村は社会人、悠介はバイトの金があったからである。===================================
2023.02.06
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美恵子は玉の輿と言える結婚する事になった。写真はネットより借用=========================================披露宴には北村も来ていた。相変わらずがっしりした体格をしており風格も出たようである。しかし学生時代のように日焼けはしていない。サラリーマンらしくなっている。2年ぶりか3年ぶりである。彼には入学当初世話になった。バイトも同じ会社だったので最初の頃は教えて貰った事を覚えている。しかし最も強烈な事は本日の主役矢代美恵子とグルになって悠介を騙した事である。そのお陰で小平由樹枝と別れる羽目に陥ったのである。悠介に大きな打撃と精神面の変化を与えた二人が花嫁と北村であった。当初は恨んだが美恵子と暮らし心が安定した頃より北村への恨みも消えた。悠介は自分のせいと反省したのである。しかし悠介の心には大きな影響を与えた。小平由樹枝とは結婚しようと願い恋人としての楽しさを満喫していた。その後は誰とも結婚したいと思わないのである。小平由樹枝の存在が大きすぎたし、その出会いから恋人時代も含めて彼女以上の女性が見当たらない。披露宴はたけなわとなり盛り上がっている。主賓や来賓の挨拶も終わり、ご歓談の時間だ。花婿、花嫁はお色直しで席を外している。悠介は北村以外知っている人はいない。大学で見かけたと思われる女性は同じテーブルに数人いた。花嫁の友人であろう。北村がその女性たちに2次会に行こうと誘っている。悠介は興味ないのでひたすら飲んでいた。飲み過ぎには注意しているが飲む以外にやる事もない。聞くともなしに聞いていたが2次会の話が纏まったようである。「寺本、君も行くよな?男は俺一人だから寺本が行かないと困る。」「いや、俺は・・・。」「駄目だよ、行かなきゃー。」悠介はあまり行きたくなかった。又、女性と深い仲になりたくないからである。唐橋由美子で懲りている。それだけ悠介はモテると言う事であり、普通の男なら羨ましいと思うはずである。いつの間にか悠介は普通の若者と異なる性格になってしまったようである。「今日は、僕は遠慮します。体調も良くないし・・・。」「えー、それだけ飲んでいて体調が悪いはないだろう。」北村はしつっこい。女性が3名、北村が一人ではバランスが悪いのであろうか? 割り勘要員として悠介が必要なのであろうか? 北村は高圧的でしつっこいし断るのも面倒になって来た。「分かりました。でも遅くならないように帰りますけど、良いですか?」「あぁ、それは問題ない。」新郎側の親せきの方も酒を注ぎに来る。大体、隣の北村が対応しているので、悠介は出来るだけ出しゃばらないようにしている。そうでないと飲まされて意識を失うと困るからである。何度かの失敗を経て悠介も飲むのは慎重になっている。同じテーブルの女性も酒を注ぎに来た。「学校でお会いした事ありますよね?」「ええ、会った事あると思います。」「ハンサムな方だと遠くから見ていました。新婦さんと仲良かったですよね?」「いや、そんなに仲良くとも言えないです。普通の友人でした。」恵美子と同棲していたのがバレると不味いので、この話から遠ざかりたかった。「2次会に行くのでしょう?」「ええ、あまり気乗りしないのですが、北村さんから行こうって。」「そうなんですか? どうして気乗りしないのです?」「理由はないのですが・・・。」「私楽しみです。一緒に行って歌うたったり楽しみましょう?」「よろしく。」彼女の名前も知らないが、顔はしっかり覚えた。美人の部類に入る顔立ちと容姿をしている。きっとモテるに違いない。宴も終盤になった。両親代表の挨拶も終わり、花婿花嫁から両親への花束贈呈が行われた。純白のウエディングドレスを着た恵美子はとても綺麗だった。そして堂々としていて見ていて恰好良いな、と悠介は思った。彼女とは無理やりとは言え数ヶ月同棲させられた。その後アパート代を支払う約束で同棲を解消し部屋を出て行って貰ったがその後も会って身体の関係は続いていた。新郎と言う彼氏が出来てからも身体の関係を持っていたのである。そんな親しかった彼女が遠く離れて行ってしまったような感覚を得た。人妻であるから当然ではある。そんな事も遠い思い出になるのだろうなー、と幸せそうな新郎新婦を見ていてそう思った。司会者から新郎新婦は今夜は東京のホテルに泊まり明日から2週間余りのハワイ新婚旅行に出かけると紹介があった。2週間もハワイって凄いねー、と同じテーブルの女性が言った。当時の新婚旅行先は九州方面からハワイに移行しだした頃で若い女性の憧れであった。披露宴はお開きとなり引出物を持って参列者はぞろぞろと会場を出る。会場の出口に新郎新婦とご両親が待っていて全員に挨拶をしていた。悠介もお辞儀をしながら通り過ぎる。恵美子には小声で「幸せにね。」と声をかけた。恵美子はにっこり笑って微笑み返した。=========================================
2023.01.11
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。写真はネットより借用=============================================長姉・佳子の結婚式から東京へ戻った。神田川の辺のアパートも後2週間で引っ越しせねばならない。やる事もそう多くないので日程や時間的には問題ない。。引っ越しの準備を行えば良いだけである。まだ就職先の勤務先が決まっていない。取り敢えずは大阪本社で一ヶ月の新入社員教育がある。そこへは着替えと寝具を送ればいい。残った家具類はまだ決まっていないが次に入る下宿者に引き渡す事にしてある。下宿者が不要と言えば管理人さんが引き受けてくれる事になっているので心配は要らない。問題は唐橋由美子といつ会うかである。矢代美恵子の結婚式が3月28日(金)大安の日にある。出来ればその後で、布団を発送する前にしたい。以前から土曜に来て1泊して行く。それで、結婚式の翌日29日の土曜日にした。連絡すると由美子は大喜びしていた。25日(火)は東京支社への出勤を命じられた。大阪での新入社員教育とその後のスケジュールに関しての説明会である。東京支社は赤坂にあった。9時半集合の10分前に着いたが数人を残してほぼ全員が集まっていた。初日から遅れて行ったら大きな罰点を付けられるだろうと余裕を持って出発した。しかしながら場所がわからなくて聞きながらようやくたどり着いたので途中間に合うか心配していた。同期入社は30数名だった。もっと多いと思っていたが意外に小人数だったので気抜けした。皆、悠介同様着慣れないスーツである。だが中には様になっている奴もいる。大学時代からスーツを着こなしていたのであろうか。説明が始まった。大阪方面では東京よりもっと多く採用しているので、全体では100人近くになるそうである。やはり本社や工場が多い大阪方面での採用が多くなるのは当然であろう。関東方面での配属であれば東京支社、栃木工場、茨城工場の3ヵ所となる。東京採用者が全員関東地区を希望した場合、狭き門となる。悠介は必ずしも関東でなくても良いが出来れば実家にも近い関東地区で働きたかった。説明によれば今は東京支社であるが、近い将来東京支社を拡大し、大阪と東京の2本社体制にするらしい。栃木工場も生産量を現在の2倍にする計画もあるとの事である。東京は日本の中心地、他の多くの一流企業も東京に本社を置くので東京の仕事量が増えるようだ。それで東京地区の採用を増やしていると聞いた。説明会は午前中で終わった。知り合いは勿論誰もいないので解散後一人で外に出る。緊張する説明会ではないが集中して聞いていたので疲れたようである。腹も減った。食堂かレストランを探して赤坂の町を歩いた。色んなレストランがあるがどこに入って良いか分からない。涼し気な冷麺の看板があった。重い物を食べたくなかったのでその冷麺屋に入った。メニューを見ると盛岡冷麺とあった。赤坂なのにどうして盛岡?と思ったが別にどこでも構わない。盛岡の冷麺は美味しいとどこかで聞いた事があった。注文するとほどなく運ばれて来た。つるつるの舌触りだ。強いコシがある。麺は弾力が半端なくあり噛み切れない程である。しかし不味くはない。美味しい。盛岡冷麺は初めて食べたが岩手県へ行った時に食べたかったなーと思った。昨年の夏休み北上の農家に泊めて貰った。短大のお姉さんが親切にしてくれたのである。盛岡の文字を見てそんな事を思い起こしながら食べた。腹一杯になった。冷麺を食べた後も赤坂をブラブラと歩いた。若しかしたら東京支社に配属になるかも知れないし、配属されないまでも出張で来る機会はあるだろう。この辺りの地理を知っておいて損はない。そして歩き疲れて家に帰る事にした。新入社員として希望に燃えて張り切るはずである。勿論その気もあるし頑張りたいとも思っている。しかし気が重いのが唐橋由美子の事である。この事が頭から離れない。騙して別れねばならないからである。彼女とは絶対に結婚しないと思っている。それは彼女自身にも何度も伝えてある。しかしながら別れてくれない。いつまでも待つと言うのだ。会えば身体の関係を持ち、まるで愛し合っているようである。彼女はそのように思っている。出来るだけ理由を付けて会わないようにしていたが、少なくとも1ヶ月に1回、多い時は1ヶ月に2回会っていた。愛しているから会うのだろうと言われても反論出来ない。別れたいと言うのが面倒臭くなっていた。就職と共に別れると言う目標もあったので自分自身にはそのように言い聞かせていたのであった。3月28日である。大安のこの日、矢代美恵子の結婚式だ。結婚式は高橋の司会、長姉で経験した。今回は3回目である。特に出番もないので緊張する事もない。矢代美恵子の花嫁姿が楽しみであった。受付にてご祝儀を提出し座席表を貰った。開けて見て驚いた。物凄い人数の参加者である。丸テーブルが数十とある。一テーブル10名ちょっととしても300名近くの人数である。長姉の披露宴も人数が多いなーと思ったが全くその比ではない。大パーティである。悠介の席は一番前の右手側である。花嫁花婿の近くだ。座席に座りもう一度座席表を見た。参加者の肩書を見ると社長とか専務とか常務とか役員の人ばかりである。花婿側は得意先や下請けの会社を多数招待したようである。将来の社長であるから出来るだけ多く招待したのであろう。矢代美恵子側はたった2テーブルだ。その差は歴然としているがそれでも美恵子は頑張って招待したのであろう。悠介まで招待されたのであるから。=============================================
2022.10.30
コメント(0)
半年ぶりの寺本悠介の投稿となります。日本一周:東北・北海道車泊の旅に出てから、あまり書く気力も湧かず放っておいてありました。しかしながら、これではイカン、結末まで持って行けない。チェンマイに佇む男達は、まだ第3章の途中です。モデルは第10章までいます。このままでは死ぬまでに書き終わりません。心を入れ替え、週に1回は投稿するべく頑張ります。==========================================チェンマイに佇む男達 寺本悠介の場合 第141回 ~あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。別れたいが別れさせてくれないので困っている。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。写真はネットより借用===================================2月は何かと忙しかった。もう大学も卒業である。それから2ヶ月もしないで就職となる。気忙しい。忙しいので由美子とも会えないと1度断った。由美子からは就職すれば会える頻度が減るから出来るだけ会いたいと懇願されるが別れると決めているので心を鬼にして断っている。しかし、2月末、2週間に一度との約束を前回止めているので1か月振りとなる。断り切れずに会った。会えば楽しく1泊を過ごせる。このまま別れねばならないのか、と戸惑いの心が湧いてくる。しかしすぐに結婚は出来ないと言う気持ちに戻るのであった。3月はさらに忙しい。長姉の佳子の結婚式がある。矢代美恵子の結婚式もある。引っ越しもせねばならない。1日会社へ出勤もせねばならない。由美子と会っている暇はない、と言う口実は出来る。実際は大学にも行かないし、会社へも行かないので、かなり暇であった。暇があるので会社から送られてきた会社案内や詳細な資料にも目を通した。彼の勤める会社は、住石電機工業と言う自動車関連事業や通信関連事業を主たる産業としている会社であった。悠介がどの部門へ配属させられるかはまだ分かっていない。3月中旬、長姉、佳子の披露宴である。悠介の故郷の池田町、由緒ある旅館で遂行された。悠介は長姉・佳子と次女・路子に作って貰ったスーツを着て行った。就職祝いに二人が作ってくれたものである。スーツを着ると何故か大人になったような気がする。ネクタイも心を引き締めてくれるようである。スーツを着るのは高橋の結婚式以来2度目である。まだスーツ着用も板についていない。結婚式は厳かに神社で行われた。親族のみの出席である。神主が祝詞をあげる。神前式で唱えられる「祝詞」は神職が神様に結婚の報告と、その家族・親族の幸せが末永く続くよう祈る言葉だそうであるが、大和言葉という古い言葉を使うので意味は良く分からない。しかし厳かな気持ちにはなる。披露宴は沢山の参列者である。100数十名はいるであろうか? 悠介の知り合いも多い。近所の人や親族の人が多いからである。皆、声を掛けてくれる。大人になったなー、と言う声が多い。仲人の挨拶が終わり、来賓の方々の祝辞、友人達の祝辞が終わると、皆さん席を移動してお酒を注いで回っている。悠介も22歳であり堂々と酒を飲んでいる。次女の佳子の隣の席なので気楽である。彼女の婚約者も出席している。彼らは5月に結婚式をあげる。今が最も良い時期かも知れない。仲良く話をしている。悠介が高橋の司会をした披露宴では、ご歓談はなかった。新郎新婦が不在の間も誰かに余興をして貰った。しかしこの日の披露宴はご歓談の時間が長い。どちらが良いのか分からないが皆楽しそうで披露宴は良いなー、と悠介は思う。自分の結婚式は当面あり得ないと思う。それより唐橋由美子と別れる事の方が当面の大問題である。今月末、もう一度引っ越し前に会わねばならない。それが最後の日になるはずであるが会うのが気が重い。騙さねばならないからである。別れて欲しいと頼んでも別れてくれない。それで止むを得ず、就職して引っ越ししたら新住所を教えない事にしてあるからである。「おー、悠介か。元気にしているか? 久しぶりだなー!」「はい、お久しぶりです。伯父さんも元気そうですね?」顔を真っ赤にして上機嫌の遠くに住む伯父が席にやって来た。「伯父さん飲んで!」姉の路子が酒を薦める。「おー、路子も結婚するらしいな、おめでとう!」「ありがとう、でもまだ先ですよ、5月ですから。この人が旦那さんになる、康弘さん、長野市に住んでいるの。」「そうか、そうか、初めまして、よろしく、路子の伯父です。」路子の相手、康弘も笑顔を見せながら挨拶をした。如才なさそうな人である。悠介は人見知りするが康弘はもう以前から親戚のような親しさで話している。悪くはない事である。悠介としては羨ましい。披露宴も恙なく楽しく終わった。悠介もあちこちから酒を注がれ強かに酔った。しかし記憶を無くすほどでもない。限界点が自分でもある程度分かってきたようである。披露宴が終わり、親族も悠介の実家に移動した。まだ飲むようである。新郎新婦の次郎と佳子も普段着に着かえて皆さんのテーブルにやって来た。次郎は早速飲まされている。新郎席ではそれほど飲んでいなかったようである。彼らは実家に一泊して明日九州方面へ新婚旅行に出かける。次郎は婿養子のような形で旅行から帰ったらこの家に住む。正月全員が集まった時に決まった事である。実家に帰る度に悠介は次郎と会う事になる。実直そうで良かった。池田町役場に勤めているので職も安定している。同級生の山脇も役場に勤めているので、機会があればそのような話もしたい。悠介は珍しく眠くなった。朝から緊張していたのかも知れない。===================================
2022.10.13
コメント(0)
押入れの資料を整理していたら、ユーラシア旅行者のアフリカの旅のパンフレットが出て来ました。コロナにならなければ、3年前、西アフリカへ行っていたはずです。その中にマダガスカルのバオバブの写真がありました。懐かしいですねー!ここを歩いたのですよ。幻想的でした。素晴らしかったですね。昼食は午後から雨と言う天気予報だったので、早めにスーパーで買って来ました。チーズハンバーグ弁当です。壊れかけた洗濯機です。もう17年ほど使っています。役に立ちました。夜はオムレツです。おでんも買って来ました。食べ過ぎですね。のどごし生です。まだ買い置きがたっぷりあります。冷ややっこもあるのですよ。本日は暇だったので久しく書いていない小説を書きました。自分で書いても忘れてしまうので、思い出すのに時間がかかります。悠介はもう大学を卒業し新たな道に進みだす前です。速報房総半島一周車泊の旅は始まりました。今朝は犬吠埼の灯台の下で書いております。君ヶ浜はWiFiが圏外で書けません。昨夜は寒かったです。ある物を全て着て寝ました。今から九十九里浜の方へ向かって出発します。==================================チェンマイに佇む男達 寺本雄介の場合 第140回あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になり悠介は婚約者と顔合わせの為食事をする事になった。写真はネットより借用===================================翌日、由美子は昼食を食べて家に帰った。まだ帰りたくないと言っていたがやる事もあるからと、追い返したような形であった。由美子を送った帰り道、後悔の念が悠介を襲う。騙しているようなものなのでどうしても甘い気持ちでいられない。このまま3月まで付き合って良いものか? と自分自身に問うのであるが別れてくれないので止むを得ないと言う堂々巡りとなってしまう。第4土曜日も由美子は悠介の部屋を訪ねて来た。約束の日にちである。何をするでもなく性に溺れて過ごした。そして2月の初旬、矢代美恵子とその旦那になる金子義明との会食になった。元愛人の彼氏に会いたくないし、何を話したら良いのか分からない。しかし美恵子の結婚式に参加する人が少なく義明側とのバランスが極端に悪いので、披露宴には是非参加して欲しいと言われて止む無く了承した経緯がある。式の前に顔合わせをしたいと言う趣旨である。場所は都内の洒落たフランス料理店である。悠介はこのようなレストランは初めてであり緊張した。椅子のそばにいくとウェイターが椅子を引いて座りやすいようにしてくれた。テーブルにはフォークとスプーンそしてナイフが並べられている。どうやって食べたらいいのか益々緊張して来た。「初めまして、金子義明です。よろしく。」端正な顔立ちで背も高い義明が挨拶した。背の低い悠介は圧倒される思いである。義明が手を差し伸べて来たので、「寺本悠介です。美恵子さんにはお世話になりました。」と挨拶した。義明の手は大きく温かかった。美恵子は微笑みながら二人を見ている。椅子に座ったら、義明が飲み物は何にするか聞いて来た。悠介はビール位しか飲んでいないので、何を頼んで良いかさっぱり分からない。格好を付けても仕方ないので、こう言うレストランは初めてなので何を頼んで良いか分からない、と正直に告げた。「アルコールは大丈夫でしたね? それでは、食前酒はシャンパンにしましょう。アルコールは強くないし、飲み易いですよ。」「はい、お願いします。」ほどなくして、ウェイターが来てグラスにシャンパンを注いだ。義明がグラスを持ち上げたので悠介も真似た。「では、今後ともよろしく、乾杯!」「結婚おめでとうございます! 乾杯!」「結婚式はまだ先だけど、ありがとう。」「爽やかな味ですね?」「そうですか? これはシャルドネと言う白葡萄から作ったものなのですよ。」義明は酒類に関しても詳しそうである。シャンパンを飲みながらメニューを見て料理を注文している。悠介は全てお任せである。美恵子も頼り切ったように義明に任せている。ビーフと言っていたので牛肉も頼んだと分かった。前菜はすぐ運ばれて来た。前菜を食べながら義明が仕事の説明をしてくれた。海外からの仕入れを担当していて海外出張も多いそうである。英語も堪能である。何を比較しても悠介は敵いそうもない。家柄も教育もスマートさも、そしてお金持ちである。将来は大手スーパーの社長の座が約束されている。しかし、悠介は美恵子がセックスは悠介の方が断然良いと言われた事を思いだした。良い所だらけの義明であるがセックスでは悠介に負けているのである。その事を思い出して、負け犬のようにいじけている必要はないと思った。それにまだ就職もしていない。就職して経験を積めば義明のように話題も豊富になり物おじせず何でも対応出来るようになれるであろうと願った。今の悠介では全く対抗できない。対抗すべき相手でもないのであるが何故か心の底に対抗心があるのであった。自分の女性を取られたとの思いがあるからであろうか?美恵子は微笑みながら料理を楽しんでいる。本当にいい人と巡り合い、良い家に嫁入りするものだと今更ながらお祝いを言いたくなる。料理は次ぎ次と運ばれてくる。飲み物はワインに代わった。飲み易いのでついつい飲み過ぎているようだ。ビールより強い。飲み過ぎると記憶を失う過去があり自己警報がなり出している。聞かれるまま就職先も話した。会社名も知っていた。大企業ではないが業績は好調で将来性もあると言われ良い気分となった。酔って来たので緊張もほぐれ料理の美味しさを堪能している。こう言う所での食事も良いなー、と思った。デザートも出て食後のコーヒーも飲んだ。会計は義明が支払ってくれた。全てがスマートな義明であった。恵美子の幸せそうな姿に悠介も嬉しく思う。立場が変わっただけで美恵子に風格が出たように見える。もう既に若奧様然としている。女は凄いなーと思う。自分の身体の下で喜びの声をあげていた美恵子とは思えない。変わり身の早さには驚きである。これから結婚して子を産み社長夫人として幸せな一生が約束されているのでる。心も安定するであろう。悠介はその幸せを決して邪魔をしてはならないと思う。やりたくなるであろうがそれは我慢せねばならないと自分に言い聞かせているのであった。=============================================
2022.05.01
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用===================================「22歳で年貢の納め時はないだろう。まだまだ我々はこれからだろう?」「いや、結婚したい時が適齢期さ。22歳でも良いし、25歳でも良いし、場合によっては40歳だっていいさ。」三浦と福田がそれぞれ自分の考えを披露した。「ところで寺本はどうなんだい? 小平以降、付き合っている人もいるんだろう?」「一人付き合っていた人は、3月結婚するんだ。その後付き合っていると言うか、付き纏われている人がいるけど、結婚する気は全くない。」「全く結婚する気がないのに付き合っているのかい?」「付き合いを止めたいけど止めさせてくれないのさ。」「それは良くないな、何とか早い内に止めた方が良い。」「そう思っている。就職して引っ越したら連絡先を教えない。それでさよなら出来るのでは、と思っている。」「やれやれ、モテる奴は大変だな。」他の3人は口々に言いたいことを言っている。しかし、言っている事は正しいと悠介は思う。悠介が一番別れたいと願っているのである。美味しい刺身や寿司を食べながら幼馴染とビールを飲む。これほど気楽で楽しい会食はないなー、と悠介は思う。高校時代の友人とは没交渉である。長野市には仲々出かけないので会う機会もない。大学時代の友人は極めて少ない。既に結婚した高橋位が友人と呼べる人である。そう考えると自分は付き合いが悪いなー、と感じる。最も大学時代はバイトバイトで日々が明け暮れしていた。仕事の仲間の方がずっと多いはずである。中学時代の友人を大切にしたいと願った。一頻り旧友たちの近況を3人から聞いた。女性陣は何人も結婚したらしい。男は一人しか結婚していない。山脇が二人目である。悠介は今の所全く結婚は考えていない。小平由樹枝に振られて以来、結婚願望は無くなった。今後そう言う相手が出て来るのかも考えていない。今はどんな仕事になるか分からないが、早く仕事に慣れて一人前のサラリーマンになりたいと言う気持ちだけである。気楽な仲間との会食もお開きとなった。又、帰省する時は声をかけてくれ、その時に皆で会おうと言われ、心が熱くなった。故郷の友人は良いなーと又もや思ったのである。楽しくも懐かしい故郷での滞在は終わった。もう東京へ戻らねばならない。もうこれから長い休みがあって故郷で過ごす可能性が低くなるので、心残りである。そして東京に戻ったら由美子に会わねばならないのでそれが心の重荷である。別れると決まった女性が部屋に来て食事を共にして、そして当たり前のように抱き合う。後何回会わねばならないのか、心に重くのしかかって来る。東京に戻った後の第二土曜日の夕方、由美子が部屋にやって来た。12月は忙しいからと約束の2週間に1回が月に1回しか会っていない。それでほぼ1ヶ月振りの逢瀬となった。「久しぶりね、寂しかったよ。クリスマスも正月も会えなかったから。」「そうだね、久しぶりだ。元気そうじゃーないか?」「あんまり元気でなかったけど、悠介さんに会えるので元気が出た。故郷はどうだった?」「今年はもう就職する、そうすると長い休暇は無理だろうから、今回が最後の長逗留になった。家族とも話が出来たし友人達にも会えた。良い休みだったよ。」「そう、それは良かったね。」二人で会って話をしてみるとあの心の重さはない。相性は悪くないのかも知れない。食事をしながら彼女のクリスマスやお正月の出来事を聞いた。極ありふれた日常生活である。そんなありふれた話でも飽きない。親密さが増すようだ。その後はいつも通りお風呂に交互に入りベッド時間になった。期待して待っていたのであろう、抱いただけで頬は熱く興奮しているのが分かる。いつにも増して濃厚な時間が始まった。早く始めたのでじっくりと愛し合って終わってもまだ21時半である。喉も乾いたので起き出してお茶を飲んだ。気持ち良さの余韻が残っている。お茶を飲みながら話している内に、由美子が凭れ掛かって来た。又、愛撫が始まった。由美子の手が悠介の股間に伸びて来た。それを掴むとむくむくと起き上がってくる。「大きい」と由美子が感嘆の声をあげる。「好きだなー」と悠介が言うと由美子はさらに強く握って来る。ゆっくりとした快感が湧く。お返しに悠介は由美子の股間に手を差し伸べる。由美子は触れやすいように足を開く。まだ終わって間もないのに濃厚な相互愛撫が始まってしまった。又二人は濃厚に交わり、ぐっすり眠って起きた朝方にも交わった。疲れを知らぬ由美子である。悠介は些か疲れた。由美子はセックスをする為に来るようなものである。若い二人でありそれが普通なのであろうか? 別れると思っている悠介もセイ行為の最中はそれさえ忘れていた。===================================
2022.02.03
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用===================================路子はさらに言った。「お金はあった方が良い。親の財産は、兄弟姉妹で平等に分けるのが法律の趣旨でしょう? お姉さんだけ、家や土地を貰うのは不公平よ。そう思わないの悠介?」「俺は貰わなくて問題ない。だって佳子姉さんと次郎さんでお父さんやお母さんを面倒見てくれるって事でしょう? であれば親の財産は全て佳子姉さん達にあげたら良いと思うよ。」「悠介は欲がないのね。私だけがめついみたいだな。」「じゃー、こうしよう、結婚式、新婚旅行費用は私が出す。その代わり家と土地、幾らもないが財産は全て佳子達に渡す、これでいいな。」「そう? まぁ、康弘さんも家はあるし、お金も要らないって言うから、それでいいわ。康弘さん、それで良いわね?」「あぁ、それで全く問題ない。君は僕の家に嫁に来るんだから。」「これで話は決まった。目出度い元旦だ。もう少し飲もう。」父親の言葉に皆、盃に酒を注いだ。悠介は思わぬ展開の結末にホッとしていた。就職が決まって希望と不安を抱えていたが最も気がかりは両親の事であった。長男であるし親の面倒を見なければならないと言う責任感があった。いずれ両親を呼び寄せて一緒に暮らす事も頭の片隅にあったのである。その問題は、一挙に解決した。親の財産を貰おうとは全く考えてもいなかったのでそれも問題はない。自分の事を自分で対処すればいいだけになった。大きな肩の荷が降りた気持ちである。元旦の夜、山脇から電話があった。彼は中学の同級生だ。「もしもし、寺本か? 家に帰って来ていると噂を聞いたので電話した。」「あぁ、長い帰郷は今回が最後かなと思ってゆっくりしているよ。」「ところで、3日は空いているか? 明後日だけど?」「何にも予定はないよ。」「じゃー、皆に声をかけて同級会をやろう。数人は集まるはずだ。」「Ok、有難いよ、皆に会いたいと思っていた所さ。」そんな電話があった翌日、山脇から再び電話があり、三浦と福田が空いていて4人で食事する事になった。当日の3日になった。三浦が働いている寿司屋に集まった。「いやー、久しぶりだなー、寺本、大学卒業だな。就職はどこ?」少し小太りし立派な寿司職人に見える三浦が言った。「就職して見ないと分からないけど、たぶん東京にはいない。どこか地方の都市だね。希望は栃木県にしようと決めている。」「そうか、長野には帰って来ないのだな?」「そうだね、丁度良い会社がなくてさ。」三浦は親方から同級会の時間は仕事をせず同級生との旧交を温めよ、と言われているようで、どっかりと食卓の前に座っている。「俺たち3人は、年に何回も会っているけど、寺本は久しぶりだ。2年ぶりかな? 確か2年生の時に一度、会ったよな?」「そうそう、あの時は死ぬそうな顔してたよ。」銀行員の福田と役所勤務の山脇がそれぞれ言った。山脇には小平由樹枝の件で世話になっている。振られてから由樹枝に会いたさに一度、池田町に帰った事があった。「あの時は、山脇には世話になった。」「あれからどうした?」「どうしたもこうしたもない。何の連絡もなくさよならだ。」「そう言えば、彼女の噂を聞いた事があるが、彼氏がいるようだぞ。」山脇の話にさもありなんと思った。あれだけの器量よしである。男が放っておくはずがない。それに彼女も異性との経験は悠介のせいで深い。男も欲しくなるに違いない。いまでも彼女の事を考えると胸が痛む。あのまま付き合っていたら、大学卒業と同時に結婚したかも知れないのである。3人を見回して皆大人になったものだと悠介は感心した。彼らはもう社会に出て4年が経つ。自分だけのうのうと学生生活を過ごしていたように思う。福田は着慣れたようにスーツを着こなしている。さすが銀行員である。三浦はもう一端の寿司職人だ。見るからに貫禄がある。山脇は普段着で来たがやはり大人っぽい雰囲気である。「みんな大人っぽくなったなー!」悠介が思った通りの事を言った。「いやいや、寺本こそ、大人っぽくなったよ。さすが大学生だ。」言われて驚いた。自分も多少変わっているのであろうか、と鏡を見たい心境である。ビールも回ってきて、皆、一段と口が軽くなった。「山脇は結婚するんだって?」福田が聞いた。「そう、今年結婚するんだ。もう22歳だしな。年貢の納め時だろう?」===================================
2022.01.19
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用===================================年末年始は実家に帰る事にした。就職したら帰れるか帰れないか分からない。帰れるとしても長くは帰れないであろうから長期帰省はこれが最後であろうと思われる。由美子は年始に一緒にどこかへお参りしたいと言ったがそれは断った。由美子の申し出に断る事が多くて申し訳ないと思うが仕方ない。そんな事で由美子とは12月中に2度会わねばならない約束であるが一度会っただけで、晦日となった。姉二人も実家に暮らしている。上の姉は26歳、下の姉は24歳でこの頃の結婚年齢から言ったら遅い方である。聞くと二人とも来年には結婚するようである。下の姉はもっと早く結婚したかったらしいが、姉が結婚しない為に、順番があると両親から言われて待たされていたようだ。正月元旦は、朝から全員が揃った。姉の彼氏達も後で来ると言うから、7名の大所帯となる。「明けましておめでとう! お屠蘇だから皆で乾杯しよう。」父が上機嫌で言った。「そうね、今年は良い事が一杯あるから、楽しみだ。」母が皆のお猪口にお酒を注ぎながら言った。「それでは、おめでとう!」「おめでとう!」全員が声を揃えて唱和した。「姉さんたちは、正月以外にもおめでとうだね?」「そうなのよ、姉さんが結婚しないから、ずいぶん待たされたわ。」下の姉が文句を言った。「結婚式はいつ?」「私は3月で、妹は5月。」「親戚も2軒続けてのお祝いで大変よ。1年か2年離れてたら良かったけど。」母が親戚の心配をしている。「まさか、悠介も結婚するなんて事はないだろうね?」「俺? ないない。今から就職だからそんな時間ないよ。」「そう言えば、長野高校の可愛い娘はどうなったの?」「とっくの昔に振られたよ。」小平由樹枝の事である。あんまり思い出したくないが、故郷に帰るとどうしても彼女の事を思い出してしまう。どうしているかなー? と思い出す。その後の噂は全く聞いてない。最も長野の事は知らない東京生活である。噂は届かない。暫くして、姉の彼氏達も来た。悠介とは勿論初対面である。気恥ずかしい気はするが、きちんと挨拶した。上の姉の彼氏は池田町の役場に勤めている。悠介の同級生、山脇も役場に勤めているので彼の噂で話が合った。下の姉の彼氏は長野市である。悠介が3年間高校生活を送った所である。悠介は二人の嫁ぎ先がそんなに遠い所でないので安心した。悠介は長男である。両親の面倒を見る立場であるが大学を卒業後、故郷には戻って来ない。それが気になっていた。「悠介は就職したらどこに住むのだ?」父親が聞いた。「まだ分からない。本社か支社か、地方の工場か、どこに配属されるかによる。」「そうか、では、ここには戻って来ないのだな?」「悪いけど、長野に支社や工場はないから戻って来れない。」「それなら相談だけど、次郎くんは、次男なんだ。それで結婚すれば実家を出ねばならない。アパートを借りる事になるけど、この家は部屋数も多い。で、結婚したら、次郎くんにこの家に来て貰おうと思うのだよ。」次郎は、下を向いて頷いている。本人は了承しているようだ。「あぁ、良いんじゃーないの? 家を出た俺に相談する事もないよ。姉さん達が結婚して家を出たら、父さん、母さんの二人になってしまうので心配だった。一緒に住んでくれるなら、そんなに有難い事はないよ。」「住むだけとは違うから、相談しているんだ。」父親が言うのは、上の姉と結婚する役場に勤めている次郎を婿のような形で家に入れたいと言う事であった。名前を替えるかどうかはまだ相談していないが、要は、寺本家を長姉夫妻が継ぐことになる。家も住むので相続となるので、後で揉めないよう、悠介の了解を得ておきたいとの事であった。「俺は全然問題ないよ。お金を掛けて大学も出して貰ったし、池田町に帰る予定もないから、俺は俺でやって行く。」「申し訳ないね。俺は名前を寺本に替えても良いと思っている。婿養子だね。」次郎が言った。「そうそう、路子にも了解を得ないとな。路子は康弘くんの所へ嫁に行くから家は要らんよな? 康弘君も良いよね。」「私も家は要らない。その代わり現金を少し貰えると有難いけど。「いや、俺の所も大した事はないけど、家もあるし、お金は要らないよ。」お金が欲しいと言う路子に康弘が反論した。父親としてはこう言う争いがないように今の内からきっちり整理しておきたいのである。===================================
2022.01.11
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用===================================「もうこの話は止めよう。気持ちの問題なのでどうなるか分からない。」「そう、付き合いを続けてくれるのね? 嬉しい! ありがとう。」「だけど、そんなに頻繁には会えないよ。一週間に一回は無理だ。」「じゃー、良いわ。二週間に一回、この部屋に来て泊まるから。それで良いでしょう? 二週間も会えないなんて寂しいけど仕方ない。」悠介は、渋々ながら了承した。これで、来年の3月まで付き合いが続くのは確実になった。会えば必ず身体を合わせる事になる。そう言う付き合いを続けて自分の気持ちも変わって行くのか変わらないのか分からない。矢代美恵子の時は全く変わらなかった。結婚しようとは思わなかった。性付きの友人であった。由美子との関係もそうなれば問題はない。悠介にとっては都合が良いのである。心が重いのは、美恵子と異なり由美子は結婚を意識している事である。美恵子は身体の付き合いと割り切っていた。結婚の事に関して、一度冗談っぽく言われた事はあったが、現状の確認のようなもので単にそれだけであった。由美子とは今後、絶対に言質を取られるような事は言わないで置こうと思った。例えば「愛している。」この言葉も言わない。「愛している。」と言えば、結婚してくれると思われるかも知れない。食事が終わった。食器も片付けた。由美子に風呂に入るように言った。由美子もそのつもりで着替えを持って来たようである。由美子が風呂に入っている間、悠介はぼんやりとテレビを見るともなく見ていた。幸せなのかそうでないのか分からない。いずれ来年の3月には由美子を傷つけると思うとそれが可哀そうになる。由美子が風呂から上がった。交代で悠介が入った。悠介は夕方既に一度入ったが、料理をしたり準備したので入りたくなったのである。湯船に入り後ろめたい気分になっている。由美子を騙す事になるからである。今日、別れ話が成功すればそんな気分にはならなかったろうが説得出来ず、付き合いを続ける事になってしまった。我ながら別れ話が下手であるとガックリする。その夜も濃厚な夜となった。由美子は喜びの声をあげる。それに刺激されて悠介も興奮した。愛撫から本番、色んな体位も交えて時間をかけて愛し合った。愛している訳ではないが、愛し合うと言う行為の表現となるであろうか。疲れてぐっすり眠り、朝方、又交わった。飽くなき性欲である。朝食を食べてその後早い昼寝をしてテレビを見ながら時間を潰した。そんな時間でも由美子は満足してゆったりと過ごしている。そのままいると夕方か、もう一泊すると言い兼ねないので昼食がてら由美子を送る事にした。お茶の水駅前の小さな食堂に入った。カレーの匂いがして美味しそうだった。それでカレーを頼んだ。由美子もカレーにした。「1日は早いね。もう一泊出来ればゆっくり出来るんだけど・・・。」「そんなに泊まったらお母さんに心配をかけるよ。今までもそんなに外泊したの?」「してないよ、これでも家は厳しいの。特に泊りはね。悠介さん以外、外泊はした事ないのよ。」「そうか、前回も手慣れた外泊だったからしょっちゅう泊まり歩いているのかと思ったよ。」「違うよ。本当に泊まった事はないの。」「そうか、意外と真面目なんだね。元カレとセックスした時も泊らなかったの?」「嫌なこと、聞くわね。付き合った人はいるけど愛しているのは悠介さんだけよ。勿論泊った事はないわ。」悠介はホテルに行った事がなかった。所謂ラブホテルと言う所である。由樹枝とは宿に泊まったがそこは普通の旅館であった。美恵子とは必ず部屋だったので勿論、ラブホテルは利用しなかった。「ラブホテルに入った事あるでしょう?」「虐めるのね。良いわ言うけど嫌いにならないでね。行った事ある。」「どうだった?」「どうだったって、別に泊まる所よ。」「あぁ言うホテルはネオンが凄いけど、部屋の中もそうなの?」「旅館とは少し違うね。家族旅行で1年に1度は旅行に行くけど、そう言う旅館とは全く違う見たい。」「そうか、一度体験して見たいな。一人では行けないからね。」「でも悠介さんの部屋の方が落ち着くわ。誰にも邪魔されないし・・・。」「今度、行って見ようよ。一度行って見たい。」「良いけど、なんか変な感じ。」カレーも食べ終えて由美子を駅まで送った。ほっとした。肩の荷が降りたようである。由美子は元カレとの関係を直接的な言葉は使わなかったが認めた。他の男が由美子を抱く姿を想像すると興奮する。そう言う話をもっともっと聞いて悠介との関係が特別でないと思わせたらどうであろう、と思った。===================================
2021.12.30
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用=============================================人生って分からないなー、と悠介は思う。もし悠介が美恵子にアパート代を払ってあげなかったら、彼女は他の男の所に転がり込んで、勉強も出来ず、それで一流商社の角紅にも合格せず、今の彼氏とも出会わなかったはずである。11月第4土曜日がやって来た。悠介は約束通り夕食を準備して唐橋由美子を待っている。外は寒い。部屋を暖めるべくストーブにも火を点けた。野菜と肉のごった煮は作ってある。豚肉と野菜の炒め物は材料を準備し炒めれば良いようにしてある。刺身も買ってある。心を込めて料理を作り何とか別れて貰いたいと願うのであった。18時、約束の時間ぴったりにチャイムが鳴った。「こんばんわ!」明るい声である。「いらっしゃい。さぁ中に入って!」「暖か~い。外は寒いよ今日は。」元気な声で由美子は部屋に入って来た。当然のように悠介の胸に身体を預けて来た。キスを待ち望む態度であった。悠介は一瞬どうしようか迷ったがきつく身体を抱きしめ、そしてキスをした。由美子はこの時を待ち望んでいたように激しく反応した。「さぁ、座って、野菜炒めを作るから。」悠介は、鍋を暖め初め、刺身をテーブルに出した。暖め終わった鍋を下ろし、フライパンを火にかけた。素早く豚肉を炒め、野菜を炒め、味付けをした。料理をテーブルに並べた。そしてビールの栓を抜き、由美子のコップに注いだ。由美子はそのビール瓶を受け取って、悠介のコップに注いだ。「乾杯!」「乾杯!」「久しぶりだね。」「久しぶり過ぎよ。もっと早く会いたかったのに。まぁ、良いわ。今夜は泊まりでゆっくり出来るから。」悠介は心がざわついている。由美子は会えた喜びを全身で表している。そして言葉にも出している。今夜別れの言葉を言わねばと思うと冷静でいられない。「さぁ、食べようか?」「凄いご馳走ね。私より料理は上手みたい。」「大したことないよ。これしか作れない。」悠介は食べながら思った。彼女と話すことがないと。それに別れる事を早めに切り出さねばと思うと他に気が廻らない。由美子は楽しそうに食べている。「あの、話があるんだ。」「え? 何? 改まって話って?」「実は、俺、結婚出来ないよ。」「え? 私とは結婚出来ないってこと? どうして?」「いや、あなたと言う訳ではない、今は、当面、誰とも結婚出来ないって事なんだ。まだ就職もしてないし、将来が分からない。」「そんなの問題ないよ、私待っているから。」話が噛み合わなかった。由美子は全く別れる事は頭にないようである。結婚すると決めつけているのである。まだ1回会っただけで、まぁ、それは濃厚な1回ではあるが、たった1回しか会っていない。それで良く将来を決する結婚を決められるものだと悠介は思った。「待っていると言ってもいつ結婚すると言う気になるか分からない。若しかしたら一生独身かも知れない。だからもうお付き合いしない方が良いと思う。」由美子が諦めるようにはっきりと言った。由美子が聞いて来た。「私が嫌いなの?」「いや、嫌いとは・・・。」悠介は嫌いとは言えなかった。そこまで由美子を傷つけたくない。そして実際に嫌いではなかった。結婚はしないと思っているだけなのである。「嫌いじゃーないなら、大丈夫、私はいつまでも待つから。」「それは、困るよ。結婚もしないのに、身体の関係のあるお付き合いは。」「私はもう貴方を忘れられないわ。あんなに愛してくれたのだから。」「困るなー。」「一週間に一回位、デートしましょう。」「いや、これからも忙しい。卒論も終わっていないし、来年になったら就職先の勉強もしなければならない。」悠介は考えながら会えない理由をぼそぼそと伝えた。話ながら説得力がないな、と我ながら説明が下手であると思う。そして、思った。出来るだけ会わないようにして付き合いを続け、来年の3月、就職先の住所を告げず引越しをすると。そうすれば連絡が出来ないから自然に付き合いは消滅する事になる。説得しても理解してくれないから仕方ないのである。そう考えると、わざわざ嫌な話をするのが面倒になって来た。=============================================
2021.12.14
コメント(0)
第133回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。===================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用============================================「はい、どうぞ、お腹空いたでしょう? 昨夜も今朝も頑張ってくれたから。」「今まで何回やったか数えてないけど、昨夜と今朝が最高に気持ち良かった。もう出来ないと思うと心が燃えるね。」「私、腰が動かないよ。あそこが今も熱い。」美枝子はおしゃべりしながら悠介に装ったご飯を渡した。味噌汁に卵焼きもある。それに納豆の完全な和食の朝食である。朝から卑猥な会話であるが不思議と爽やかな気分であった。「もう会えないと思うと寂しいね。」「会えるでしょう? 結婚式に出て貰う約束よ。」「いや、そうやって会うのと、今回のように会うのでは全然違うでしょう?」「まぁそうだけど、人妻になるのだから仕方ないでしょう?」「そうだね。人妻になるんだ。何だか実感が湧かないな。どうしても会いたくなったらどうする?」「どうするって聞かれても困るわ。彼女いるのでしょう?」「彼女って訳ではないけど身体を合わす女性はいる。」「そうなの? 悠介はモテるからね。それならそちらで処理して。私じゃなくて。」「それが誰でも良いと言う訳にはいかないのさ。」悠介は唐橋由美子の事を思い出していた。出会いから濃厚な関係になり、恋人であると宣言されている。あまり会いたくない女性なのだ。出来れば、なかった事にして欲しい。積極的過ぎて且つ結婚相手と思われているのが重荷であるのだ。その点美恵子とは割り切った関係でドロドロした所は全くない。そう言う付き合いが悠介には好ましい。言って見れば自分に都合の良い女と付き合いたいのである。次回唐橋由美子と会うのは、今月の第4土曜日と決まっている。これを回避することは出来ない。自分で決めた日にちである。「どうするかなー?」自然と独り言が出た。「どうしたの? 何か悩み事?」悠介は美恵子に相談してみようと思った、女の気持ちは女の方がわかるはずである「実は、さっき話した女性だけど、出来れば付き合いたくないのだ。」「どうして? 身体を合わせたって言ったでしょう?」「身体の関係は素晴らしい。美恵子に次ぐ良さだよ。でも1回やっただけなのに、もう恋人気取りなんだ。それが重荷。結婚したいなんて言われたら困るよ」「そう言う子はしつっこいよ、結婚する気がないなら、深入りする前に止めた方が良いよ。」「やっぱり? でも、もう次に会う約束をしているんだ。約束をさせられてしまった。家に来るし泊まる事になる。」「そりゃー、拙いわね。じゃー、その1回だけにしなさいよ。はっきり結婚出来ないから、恋人にはなれないって言う事ね。言える?」「言えると言うより、言わねばならないよね。」美恵子に相談して、悠介の心は決まった。別れるには勿体ない身体であるが早く別れるに越した事はない。ずるずると長引けば、悪い方向に向かうだけである。別れると決めたら少し気分が晴れた。美枝子に相談して良かった。「それじゃー、結婚式の件は又連絡するね。式の前に彼氏にも紹介するわ。」「分かった。あんまり彼氏に会いたくないけど、会わないと不自然だよね。部屋には行きたくないから、喫茶店かどこかで会う?」「それも良いけど、飲みながらの方が気楽でしょう? どこかで軽く食べて飲みましょうよ。」「分かりました。そうしましょう。でも、来年だね?」「そう、来年の1月か2月ね。」そんな会話を交わして美恵子の部屋を後にした。何故か身体がふわふわしている。眩暈ではない。昨夜からやり過ぎなのである。ふわふわ感はあるが心は充実していた。充実と言うよりも満足感と言った方が良いであろうか? 女性との交わりは良いなー、と改めてそう思った。北海道で童貞を失ってから、4年が経ったが、その間、必ず性の相手はいた。小平由樹枝が最初である。あの頃は幸せであった。純粋な愛情を持っていた。将来結婚すると思っていた。性もする度に新しい発見があり喜びも倍増した。出来ればあの頃に戻りたいと願うが叶わぬ夢である。もう彼女にも彼氏が出来ているに違いない。あれだけの美貌と容姿である。男が放っておくはずがない。それにしても良く小平由樹枝を彼女に出来たと思う。憧れであった。それが恋人になれたのである。その次が矢代美恵子である。彼女の手に引っかからなかったら小平由樹枝は今でも恋人であった可能性は大きい。彼女とは別れる理由がないからである。大学を卒業したら結婚する事になっていたかも知れない。そう言う意味においては美恵子は恨んで良いはずである。自分だけ幸せになってずるいと思う。しかし、その幸せの大元を作ったのも悠介なのである。複雑な心境である。============================================
2021.12.02
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。一方、美枝子は結婚する事になったようである。写真はネットより借用===================================「彼の方は?」「彼の方は呼びたい人が多いらしいの。親族も多いし、高校、大学、職場の友人など諸々。それから彼の家は大きなスーパーを経営しているの。彼は将来、その後継者になる予定らしい。それで出入りの業者やお得意さんも多数呼びたいって言うのよ。」「それではバランスが悪いな。」「そう両家のバランスが悪いのよ。私って玉の輿ね。」話を聞くと美恵子は良い相手に恵まれたようである。男のアパートに転がり込んでいた頃とは雲泥の差である。悠介と会い生活の心配をしなくても済むようになった、それからは真面目に勉強に取り組み、良い会社に入社出来たのが良縁に恵まれるきっかけである。そうすると悠介もその一端のきっかけの持ち主と言う事になる。悠介は嬉しくなった。「良かったなー。ほんと玉の輿だよ。真面目に尽くさないといけないね。」「あの人のお父さん、お母さん、ご両親だけど気さくで良い人なのよ。だけど、良い嫁になれるか心配だわ。」「ご両親と同居するの?」「結婚式までに間に合わないけど敷地が広いから二人の家を作ってくれるって。だから始めは同居で家が出来たら別居。でも味噌汁が冷めない距離ね。」「そりゃー、最高だ。夢のような話だなー。」「ほんと、彼がそんな家の御曹司って知らないでお付き合いを始めたけど、色々と話しを聞いて驚いているのよ。」悠介は美恵子の結婚とその家族の状況を聞いて心の底より嬉しくなった。自分の関係した女性が幸せになるのは嬉しいものである。もし結婚したい女性であったなら別の感情が湧いたのであろうが、悠介は美恵子と結婚したいとは全く思わなかったのである。仲の良いセックスを伴う女性であった。アパートを出て行って貰ってからは心の負担は何もなかった。一流会社に就職が決まって共に喜んだのが1年前であった。それからたった1年、就職して働き出してからまだ8ヶ月である。それなのに、人生の変転は分からないものである。それにしても良い男性に巡り合えたものである。小説でもこんないい話は少ないのではないか、と考える。「ところで、結婚したら仕事は辞めるの?」「まだ彼とも話てないけど家へ行ってご両親と話した限り、辞める事を前提に話しているようなの。お金は問題ないからね。ご両親ともスーパーの仕事をしているの。家事はお手伝いさんが仕切っているわ。だから仕事を辞めて家に籠ってもやる事ないのよ。」「それなら、辞めなくても良いじゃないの?」「会社がね、結婚したら辞めるのが仕来たり見たい。」「そうなの?」「そうよ、既婚者で働いている人は一人もいないわ。みんな寿退社ね。」「贅沢な話だな。」「おかあさんが言っていたわ。早く孫の顔が見たいって。彼に早く事業を継いで貰って孫の世話でもしたいって事のようね。」「そしたら、あなたもスーパーの仕事をする事になるのかなー?」「どうかしら。まだ全然分からないわ。まだ結婚もしていないし、子供も出来ていないのだから、そう言った話は現実的でないわ。まだ先の話よ。」「そりゃー、そうだね。でも恵美子さんの人生の行く先はほぼ決まったね。」そんな話をしていたらビールも飲み終わり料理もほぼ空になっていた。悠介は泊まるつもりで来たが、美恵子の話を聞いていたら泊って良いものかどうか分からなくなって来た。「どうする? もっと飲む? ウィスキーならあるわよ。それとも風呂に入る?」「え? 泊っても良いの?」「泊まるつもりで来たのでしょう?」「そうなんだけど、泊まったらしたくなってしまうよ。」「今夜を最後にしましょう?」「そうか、じゃー、頑張っちゃうかなー。」「お風呂に入って。」恵美子から宿泊の許可が出たら下半身がうずうずし出した。悠介が風呂に入って出ると布団が敷かれていた。ここに美恵子の彼が寝たと思うと不思議な気がした。普段よりも興奮度が高いようである。他人の女を寝取ると言う行為が興奮を増大させるのかも知れない。布団に寝そべっていたら美恵子が風呂から上がって来た。悠介の隣に来たので早速愛撫を加える。パジャマの下にブラジャーは付けていなかった。直接ふくよかな胸が掌に伝わって来た。全裸を見たいと思った。見納めであると言う気持ちと、他の男に抱かれて何か変わった所があるのか見たくなったのである。===================================
2021.11.12
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、あまりに積極的な彼女に右往左往する悠介であった。写真はネットより借用===================================11月に入り涼しさを通り越して寒い位の気候に、熱い鍋料理は美味しかった。ビールもどんどん飲める。しかし、若しかしたら愛し合えるかも知れないと言う期待もあるので飲み過ぎないように気を付けた。「話って何?」ビールを飲んで色気も増した美恵子に聞いた。「彼との事よ。」「やっぱりな、そうだと思った。ずいぶん進んでいるの?」「進んでいる。来年の春、結婚する事になった。」「えー、そりゃー早いね。でも良かった。おめでとう!」「ありがとう。急転直下って言う奴ね。プロポーズされて家にも挨拶に行ったのよ。それで早い方が良いって事になって、来年の3月末に決まったの。」悠介は心より祝福したい気持ちである。悠介と会った頃、彼女はお金にも不自由して愛人志願のような形で悠介に取り入った。そのお陰で愛し合っていた小平由樹枝と別れる羽目に陥ってしまった悠介であった。しかし、その後の付き合いで彼女がそんなに淫らな女性ではなく、生活上、止むを得ずそうせざるを得ないことが分かった。3か月間の同棲中、喧嘩をした事もなく、言い争いもなく、終始平穏な生活であった。問題は小平由樹枝との仲を戻したいので同棲を解消して欲しい、その事だけだった。悠介は美恵子と結婚しようとは思わなかった。まだ学生であり自分の生活と将来が安定していないこともあるが、それは本質的な問題でなく、それよりも悠介の心の問題であった。小平由樹枝との間のように心から愛すると言う気持ちがなかった。身体の関係は申し分なく良好であった。悠介が望む事はその気持ちを察知してどんな事にも応じてくれた。ほぼ毎日のように交わった。美恵子は気持ち良さを素直に言葉と態度で表す。それも悠介の快さを倍増させたのである。女性が喜んでくれると男の自信に繋がるのである。悠介の部屋を出て行って貰ってからもそう言う親密な関係が美恵子が卒業するまで続いた。2年生から3年生の学期末までであるから2年近く続いた事になる。別の部屋に住んでからまだ8ヶ月も経っていない。わずかな月日の間で大きな変化が生じたのである。「箱根へ1泊旅行の時にやったの?」「違うよ。キスしかしないって言ったでしょう?」「あぁ、そうだったね。それでその後は部屋で?」「そう、私の部屋に来た時、拒み切れなくってやっちゃった。」「まぁ、そりゃー、当然だよ、結婚を前提だからね。それでどうだった?」「その事よ。まだ回数もしていないから当然かもしれないけど、悠介の時とは違うのよ。快感が得られない。気持ちは良いのだけれどその盛り上がりが違うのよ。」「そうなの? 誰でも気持ち良くなるのかと思っていたよ。」「悠介のは大きいからかなー? 一杯って感じ? 押し込まれているって感じかなー、そうすると凄く気持ち良いの。」そのように言われると悠介も悪い気はしない。悠介は誰としても気持ちが良い。心の満足度が多少異なる程度である。女性の気持ち良さに関しては分からない。その時の心の動きも分からない。女性のやる気がある時とそうでない時に、積極性が異なるな、と感じる程度である。「もう会えないのかな?」「そんな事はない。会えるわよ。彼には仲の良い後輩がいると言ってあるの。」「ええ? そうなの? じゃ、話を合わせないと拙いね。」「まぁ、一緒に住んだとか、セックスしたって言うような事は厳禁よ。当然の事だけど。学校で会ったり、お茶飲んだり、飲みに行ったりとかそう言う友達って事ね。」「まぁ、彼に会う事もないだろうから、そう言う心配は不要だね。」「それがね、そうでもないのよ。実は結婚式に出て欲しいの。」「え?結婚式に?」「そう、私って天涯孤独のようなものでしょう? 母一人子一人で近い親族もいないし、結婚式に出て貰えそうな人が極端に少ないの。」「学生時代の友人は?」「親友と呼べるような友人はいないわ。私、生きるだけで精いっぱいだったから友達付き合いもほとんどしていないし・・・。」「そうか。誰かいないの?」「強いて言えば、北村さん位かな? 女性は呼べる人がいない。」「それはバランスが悪いなー。」「でも職場の女性友達はいる。それでも、数人ね。そうすると私の方は、滅多に会わないけれど母の親戚の数人、貴方と北村さん、職場の女性数人で、10人にもならないの。あ、そうそう職場の上司も呼べるわね。」===================================
2021.10.14
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなった。写真はネットより借用===================================「次のデートはいつ?」由美子には悠介の心の惑いが通じてないようである。あくまで恋人として考えている。そう積極的になられても困る。「来週は大学の集まりがあるし、教授と面談もある。」「土曜も、日曜も?」「そうなんだ、来年の春には卒業だから色々とあるのだよ。」由美子は大学に行っていないから今頃が忙しいかどうかは知らない。かと言ってあまりいい加減な事は言えない。卒論を纏める作業はあるのでそれが会えない大きな口実と出来ると考えた。「卒論があるんだよ。これが大変なんだ。」「卒論? 大変なの?」「そう大変なんだ、それが最後の難関なんだ。」ではいつ会えるか? と問われて3週間後の11月第4土曜日とした。その位日にちを開ければ恋熱も冷めてくれるのではないかと期待したのである。「3週間も会えないの? そんなに待てないよ。短くても良いからもっと早く会えないの?」「ちょっと無理かなー?」「その替わり、僕が食事を作るから、17時半頃来てくれる?」悠介は、可哀そうになって由美子が喜ぶような事を言ってしまった。「うん、じゃ、その土曜日ね。泊っていいわよね?」昨夜も泊っているのにダメとも言えず、結局泊まる約束もさせられてしまった。由美子は帰った。悠介は部屋にいても居心地が悪かった。バイトに行くと言ったのに、部屋でゆったりしている気分になれないのである。それに由美子の親しい態度に対して今後、どのように接するべきか分からない。分からないのに、3週間後に又、泊まる約束までさせられた。それも心の重荷になっている。「少し、出かけるか?」一人ごとを言って悠介は立ち上がった。喫茶店へでも行って卒論の考えを纏めるとか、素案を書くとかその作業に集中しようと思った。喫茶店は御茶ノ水駅の近くにあった。3階のフロアが全部喫茶店になっているようである。大きなソファである。深々と腰を下ろした。書きものには合わない。物思いに耽ったり考え事には向いている。悠介はバッグよりノートを取り出した。もう既に概論は記載してある。それを読み返すことにした。これがしっかり出来ていれば、後は詳細を書くだけであり出来上がったも同然であるのだ。集中して読んだ。修正すべきヶ所もあった。それをメモする。1時間ほどノートに釘付けで読み、疲れたのでノートをテーブルに置いた。そうすると又しても由美子の事が思い浮かべて来る。「どうしたら良いか?」どうするも何ももう既に深い関係になってしまっている。由美子は恋人と思っているし、又会える事に喜びを表している。据え膳食わぬは男の恥と言うが、まさに据え膳であった。その後の事も深く考えず行動してしまったのである。今更悔やんでみても始まらない。始まらないが結婚はしたくない。まだ就職もしていないし、生活の基盤も出来ていない。それから問題は由美子を愛していない事である。結婚披露宴で初めて会って良いな、と思ったがそれだけの事である。愛し合って見てかなりの経験者である事も分かった。それも悠介の気に入らない一つである。すぐに身体を与えてしまう所もふしだらに思える。あまり考えたくないが、考えてしまう。自分ながら困ったものだと自嘲する。由美子との事でもやもやした1週間を過ごした頃、矢代美恵子から連絡があった。会って話したいことがあると言う。美恵子との関係はさばさばしているので、由美子との逢瀬とは全く異なる。美恵子は既に結婚相手を見つけている。部屋にも彼氏が頻繁に来ているのである。悠介は彼女からすれば過去の男である。もう会えないと言われるのかな? と感じたが彼女の部屋に行く事にした。彼氏は出張で大阪に行っていると言う夜であった。指定された日は平日であった。夕方6時に美恵子の部屋に行くと、いい匂いがしていた。美恵子も仕事帰りのはずであったが、料理を作る暇があったのであろうか? と不思議に感じた。「久しぶり。変わってないね。」「外見はね。しかし内面は大きく変わっているわよ。」料理は昨日から買い物などは準備しており、時間も手間もかからない鍋であった。既に鍋は沸騰しており肉や野菜も入っていた。その匂いが玄関まで届いていたのである。「食べよう。ビール飲むでしょう?」「ええ、飲みたいね。何を言われるのか心配で素面では居られないよ。」「あなたにとっては大した事ではないでしょう。 まぁ、取り合えず乾杯!」「何に乾杯か分からないけど、再会に乾杯!」===================================
2021.09.25
コメント(0)
第128回は、公序良俗に抵触する可能性がありますので、掲載を中止しました。このブログが削除されないようにしたいので、ご理解の上、ご了承願います。==========================================あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなった。写真はネットより借用==========================================暫くの間、二人は大きな快感の余韻に浸り横たわっていたが、由美子が悠介の方を向いて顔を寄せて来た。そして言った。「すごい。凄かった。私、初めて行ったみたい。」「そうかい、僕も気持ち良かったよ。」「もう私、別れられない。今日から恋人ね? 離さないでよ。」悠介は恋人は良いが、結婚はしたくない。なので言質を取られるような事は言うまいと思った。返事はしないで由美子を抱き寄せた。由美子はYesの返事を貰ったが如く嬉しそうに身体を押し付けて来た。その後パジャマを着て、二人は朝までぐっすりと眠った。快感の後の疲れに熟睡をもたらしたのである。朝方、悠介はもう一度、由美子を抱きたかったが、昨夜、今日から恋人ね、と言われた事が頭に残り、あまりするとその言葉を肯定した事になりはしないかと、欲望を抑え我慢する事にした。由美子は私が作ると言ったが、それを抑えて悠介が朝食を作った。ご飯を炊き味噌汁を作り、卵焼きを作って納豆も出した。簡単な朝食であるが悠介は若いのに、パンよりこのような和食を好んでいた。由美子も美味しいと言って食べている。悠介は無邪気だなー、と思う。しかしこれからどう付き合って行くか朝食を食べながら迷い中である。親しくして恋人と思われたら困るからである。由美子とセックスはしたい、しかし、結婚を前提とした恋人では困るのである。小平由樹枝の時は将来結婚するものと思って付き合っていた。それほど愛は強かったのである。心も体も繋がっていると思えて心から幸せであった。由樹枝とする前に、帯広で童貞をアイヌの娘さん達に奪い取られた。色んな体位を実地で教えて貰った。その経験はあったが由樹枝とは二人で性を開発したような感覚であった。由樹枝も悠介も初めはぎこちなく、身体を合わせる度に喜びの深さが増して来た。その分、心の繋がりも深まったようなのである。悠介も交渉する度に性技を覚え喜びの表現が増えていく由樹枝を愛おしくて堪らない気持ちになって行った。明らかに恋人関係であった。いつまでも一緒にいたいと願う間柄だったのである。矢代美恵子との関係は、どちらかと言うと身体の関係である。初めが初めであった。悠介の記憶のない所で交わったと美恵子に言われたのである。愛を語る暇もない。そして美恵子主導で身体の関係が深くなり、そして無理やり同棲させられた。美恵子が悠介の部屋に転がり込んで来たのである。美恵子に騙されたと分かった時には、由樹枝とも別れて自暴自棄の時期も過ぎていたので、どうでも良いと言う感覚であった。美恵子は結婚したい気持ちがあり、その旨悠介にも言ったが悠介に結婚するつもりは全くなかった。由樹枝に対する気持ちと全く異なる。身体の関係は良かったが心の繋がりが希薄であった。由美子との関係はどうなるのか? 美恵子と同じような関係になるのであろうか? と思う。違う点があるとすれば、美恵子は結婚とかに拘らず恋人と言った事もなく、身体の関係と割り切っていてくれた。由美子は始めから恋人と言う言葉を口に出し、離さないでね、と言った。この違いが大きいと思われる。悠介はそれを恐れた。恋人として振舞われたら困るのである。朝食を食べながら短い時間にそんな事が頭を掠めていた。食事が終わった。由美子が片づけを始めた。今日は日曜日である。黙っていたら由美子は夕方か夜まで居るかも知れない。そうすると又身体を合わせる可能性が高い。すると由美子の心が益々、恋人の方へ重心が傾く事になる。それで、何とか理由を付けて由美子を早く帰したい。 バイトがあると言う事にした。最近、就職が決まってからバイトはサボる事が多くなった。お金も必要でないし、バイトの仕事も覚えた。就職の仕事とバイトの仕事の関連性もない。それでバイトに対する熱意が薄れてしまったのである。「悪いけど、今日は10時からバイトがあるんだ。帰って貰わねば・・・。」「え? そうなの? ずっと夜まで一緒にいられるかと思ったのに。」「すまん、すまん。」「残念だなー。そうしたら、もう1時間もないわね。」「うん、もう少ししたら支度を始める。」「ねぇ、今度はいつ会える?」「え?」「もう会わないって事ないよね? あれだけ愛し合ったし、もう私達は恋人でしょう? 違うの?」「う~ん、その件については・・・」「その件についてって、私を抱いておいて恋人でないって言うの?」「そうじゃーないけど、何と言うか・・・」悠介はしどろもどろになった。相手を傷つけずに理解させようと思うと言葉が繋がらなくなる。自分の気持ちと言い訳をきちんと整理してから話した方が良いと思い、その件については、次回会った時に話をしようと言う事にした。由美子は不服そうであったが、しぶしぶ了承した。===================================
2021.08.28
コメント(0)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。写真はネットより借用========================================えー、泊るのですか?」「嫌なら、無理にとは言わないよ。」「嫌ではないですけど、お母さんに言わないと・・・。」「そうか、家族と住んでいると、そう言うのも面倒だね。僕は誰にも何の許可も不要で生きていられる。」「どうしようかなー? お部屋見せて欲しいし。」「どちらでも良いよ。」「お母さんに電話して来ます。」彼女はそう言うと立ち上がって、お店の電話を借りに行った。悠介は、部屋がきちんと片付けられているよな? とその辺りが気になった。いつも1週間に一度は、掃き掃除、そして拭き掃除もして清潔さを保っている。男にしてはこまめである。電話は長引いたが由美子が戻って来た。指で丸を作っている。「佳子の家に行くと言ってあったので佳子の家に泊まると言ったの。そしたら新婚家庭の家に泊まるのは止めなさいって、ずいぶんと言われてしまった。」「そう、大変だな。」「でも、泊るからって電話を切って来たから大丈夫。」悠介は男と女は違うなと思う。悠介は高校の頃から外泊しても特に意見されなかった。しかし、小平由樹枝と外泊するときは、由樹枝がいつも理由を考えて外泊の許可を貰っていたのであった。それを思い出した。親が厳しくても、年頃になれば嘘をついてでも男とくっつく。それが自然であるのだ。「それじゃー、これ飲んだら行く? まだ飲むなら部屋にもウィスキーあるよ。」「そうね、もっと飲みたい気もするし、飲めないような気もするし・・・。」新宿から御茶ノ水はかつての通学ルートである。いつもの景色であるが、隣に立つ人が違う。電車の中で唐橋由美子が言った。「実は、今日のご招待、私が佳子に頼んだの。」「え? そうなの?」「ほら、披露宴の2次会であまり話せなかったでしょう? 私、あなたに興味を持っていたので、もっと話したかった。」「あぁ、そうだったの。お互いに連絡先も知らないしね。」「2回目で、家に泊めて貰うなんて、ドキドキしちゃうわ。」「ほんとだね。親しくなれそうで嬉しいよ。」お互いに好意を持っていたのが分かって、親密な雰囲気になっている。悠介は内心、棚から牡丹餅だなー、と思った、矢代美恵子に彼氏が出来て、疎遠になりそうになっている。そんな時である。由美子は男一人の部屋に泊るのだからやらせて貰えるだろうと思った。そう思うと下半身が膨らんで来そうである。いいタイミングで由美子と知り合ったものだと幸運に感謝したいものである。「シャワー浴びる?」「私、着替えがない。」「そうか、じゃー、寝るだけだから男物でも良いよね。ちょっと待って。」悠介は、洗濯済のパンツと、トレーナー上下を持ち出した。「これで良いかな?」「ありがとう。大きいかな?」「僕は小柄だから、少し大きい位でしょう? 大丈夫よ。」由美子は、服を持って浴槽に行った。悠介は一緒に行って、お湯の出し方を教えてあげて、自分も後で入るから、お湯はそのままにしてくれと言って出て来た。悠介は、何もないがウィスキーの水割りを飲めるように準備した。由美子が風呂から上がったので、水割りでも飲んでいて、と交代した。風呂場に行くと由美子のパンティが干してあった。初めて同様な男の部屋に泊まりパンティまで洗っている。彼女は男の経験は豊富なんだろう、と悠介は推測した。その方が遊び相手として気楽である。結婚する訳ではない。風呂から上がり、悠介は由美子の隣に座った。いつでもキスしたり身体に触れるれるようにである。グラスにウィスキー、氷を入れて水を注いだ。「3度目の乾杯しよう。」「ほんと、今日は3度目だね。乾杯!」「自分の部屋は落ち着くなー。」「良いわね、一人でこんな良い部屋に住めて。だって、神田川の唄と全然違う。部屋も広いし、冷蔵庫もあるし、お風呂もある。銭湯に行かなくて良いもの。」「そうだね、学生にしては良い生活でしょう? 親が出してくれるからね。有難いよ。それにバイトもしているからお金には不自由していない。」「そうなのですか? 私は働いているけど、家にお金を入れるから、そんなに余裕はないのですよ。」「僕と会う時は、全部僕が出すから安心して良いよ。僕はあんまり金を使う事がないんだよ。毎月余って貯金している。」「へぇ~、羨ましいわねー。」「ちょっといい?」 と言って、悠介は由美子の方に手をかけた。由美子は嫌がらず、身体を悠介に預けて来た。悠介は由美子のあごに手をかけ、唇を合わせた。========================================
2021.08.11
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了した。写真はネットより借用===================================11月第一土曜日、高橋の新婚家庭に招待されている日である。結婚式からまだ3週間しか経っていない。新婚旅行は3泊と言っていたから旅行から帰って2週間ちょっとだ。まさに新婚ほやほやである。悠介は無難なウィスキーを土産に買って訪ねた。招待された18時、ぴったりに呼び鈴を鳴らした。すぐにドアは開いた。「こんばんわ。」「いらっしゃい。」奥さんの佳子が笑顔で出迎えてくれた。「入って来いよ。」高橋が奥から声をかけた。「お邪魔します。」部屋は鍋の湯気で暖かくなっている。その向こうに、何と、唐橋由美子が座っていた。「こんばんわ。」彼女が笑顔で挨拶する。まさか女性も招待しているとは知らなかったので、悠介は一瞬慌てた。「こんばんわ、久しぶり、って、結婚式以来だね。」「ええ、2次会以来です。」部屋は和室であった。炬燵のテーブルの上に鍋が乗っており湯気が出ている。もう準備万端であった。「簡単だから鍋にしたんだ。寒くなってきたし、温まるから良いかなと思って。」「良いねー、鍋好きだよ。」「じゃー、始めようか?」高橋が、野菜や具を入れている。「ビール、どうぞ。」新婚の奥さんがビールを注いでくれた。悠介も奥さんと唐橋由美子にビールを注いだ。「乾杯!」「新婚に乾杯!」全員で一斉にビールを飲む。グラスを置いて、悠介が聞いた。「箱根はどうだった?」「うん、仲々、いい部屋でゆったりしたよ。」「食事も豪華で美味しかったですよ。」二人が息の合った説明をしてくれる。結婚って良さそうだなー、と悠介は思った。暫く雑談した後、結婚式のビデオを見る事になった。悠介の司会で披露宴は始まった。気恥ずかしい思いで悠介は見ている。仲人さんの挨拶、主賓の挨拶、良い事を言うなー、と改めて思った。司会をしている時は、次の進行を考えており、挨拶の内容など頭に入らなかった。ビデオを見ながらなので、会話もビデオの関連である披露宴の話になる。途中関係ない人の所は早送りして見たが、2時間近く見た。鍋も食べ終わり、そろそろお暇しようと言う事になった。唐橋由美子と一緒に高橋の家を出る。「楽しかったねー。結婚っていいわね。」「うん、そうだね。」「披露宴のビデオ見ていたので、あんまり話し出来なかったわね。」「うん、そうだね。」悠介には気の利いた言葉が見つからない。雰囲気で唐橋由美子は、もう1軒行きたそうだな、と感じた。「もう少し飲んでいく?」「え、良いんですか? 大丈夫ですか?」悠介は高橋の家でそれほど飲んでいないので、記憶喪失するような状態ではない。問題なかった。新宿で降りて、行き付けの居酒屋に行った。アパートの近所の飲み屋を除けば悠介はそこしか知らなかった。「もう1回乾杯しようか? 二人では初めてだからね。」「二人では初めてですね。でも会うのが2回目ですから。」もう何度も会っているように感じていたが、披露宴の日と今日、2回しか会っていないのである。今日の1日で距離が近くなったと感じる。「何に乾杯する?」「う~ん、じゃー、二人の為に、で良いですか?」「そうしよう、じゃ、乾杯!」ビールは止めて、悠介はハイボールにした。由美子はレモンサワーである。店内は音楽がかかっている。飲み始めたら、昨年流行った、かぐや姫の神田川が流れて来た。「僕ねー、この神田川の近くに住んでいるんだ。」「えー、そうなんですか?」「でも、3畳一間なんて狭くないよ。」「へぇ~、良いなー、独り住まいなんて。憧れるわ。」「一人で住んだ事ないの?」「ええ、ずっと家です。家族と一緒。」「そうか、それも良いと思うけどね。」「今度、部屋見せて下さいよ。」「いいよ、善は急げだ、今夜、泊って行く?」悠介は、冗談っぽく、誘って見た。===================================
2021.07.18
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。写真はネットより借用===================================「そうね。自分が教え込んだと思うと独占感が湧いて嬉しいのじゃないかな?」悠介は、小平由樹枝を思い出してそう言った。彼女は間違いなく処女で悠介が始めてであった。その分、愛情も強いと感じられた。俺だけを愛していると思えるのだ。その点、性はぴったり合うが美恵子のように何人も経験した女性とは純粋な愛情を感じられない。悠介は男のエゴであると知りつつその考えを変えられない。「あたしさー、もう経験があるから、処女の振りは無理よね?」「どうなのかなー? 万が一怪しまれても、処女の振りした方が良いのじゃーないかな? 簡単に足を開かないとか、そうそう足を伸ばしっぱなしで力を入れて堪える、とか?」「そう? 面倒臭いなー、でもその方が良いならそうするかな?」「絶対にその方が良いと思うよ。処女か非処女かなんてやったって、分からないよ。入って来る時、あそこに力を入れて苦しそうにしていれば良いんじゃーないか? 気持ちよくても気持ち良い声をあげたら駄目だよ。少しづつ開発されたように、1回目より2回目、そして3回目と良くなった振りすれば良い。」「難しいね。」「でも、遊びじゃーなくて、結婚するつもりならば、それは重要かも知れないよ。俺の友人たち、そう多くないけど、みんな処女が良いと思っているから。」「男は自分で遊んでいても、結婚相手は処女が良いんだ。勝手だね。」「そう、勝手なんだけど、そう思っちゃうんだから仕方ない。聞いた話だけど、処女だと思って結婚したら、経験者だと分かって、新婚旅行から帰ったばかりで離婚したって言うカップルもいたんだって。」「ふ~ん、困ったもんね。」処女か非処女かで悠介は男性の気持ちを美恵子に詳しく説明した。誰しもが経験者を嫁さんに貰いたくない、と。他人に抱かれた女、と言う気持ちが強く全面的に愛する気持ちが薄れるのである。美恵子はもう既に性の喜びを知り尽くしているから、演技が通用するかどうか分からない。しかし、悠介は演技をしろと何度も強く要求した。「まだ、すぐにする訳じゃーないから、ドライブで1泊旅行に行くだけよ。」「そうだけど、どうなるか分からないから言っておくよ。」悠介はもう一度寝る前にしたかったが、そんな話をしたら、複雑な気持になり意欲を失ってしまった。美恵子も何か考えているようである。一寝入りした朝方、悠介は慌てて目を覚ました。もう出来ないかも知れないと思ったら、強い性欲を覚えたのである。まだ隣で眠っている美恵子を愛撫する。パンティの中に手を差し込んだら、美恵子は目を覚ましたようである。悠介を強く抱きしめて来た。それから濃厚な時間を二人で過ごした。窓からは朝の薄明かりが差し込んできている。朝食も食べ、出かける時間になった。「色々と世話になったね。」「そんな事、私の方が世話になった。それに彼女と別れさせてしまったし、悪い事をしてしまって反省しています。ごめんね。」「いや、もう過ぎた事だし、あの件は思い出したくない。その後の事を言っているのさ。泊めて貰い食事もご馳走になりセックスもさせて貰った。忘れないよ。」「私も悠介の事は忘れないわ。アパート代も出してくれて勉強に専念出来たお陰で就職試験にも受かったし。何しろお金の心配しなくても良かったのは、心の安定に大きな事だったわ。」「電話番号を教えておく。アパートの管理人さんが電話を入れたんだ。呼び出して貰えれば、話が出来る。何か急ぎの事や、話したい時は電話して。」「そうね、私も電話を入れるかも知れない。彼が連絡し難いから電話を入れろって言うの。お金は出すからって。」「へぇ、もう彼も恋人になった気持ちなのかな?」「電話入れたら、番号を連絡するね。」名残惜しいが出かける時間となった。きついハグをして玄関を出た。悠介はさっぱりした気持ちになれなかった。彼女が幸せを掴もうとしているのであり、心から祝福してうまく進行するように願わねばならない。しかし、俺の女、と言う気持ちが消えない。自分の腕の中で喜びの声をあげ、大きく足を広げて自分を向かえ入れた女が、他の男と同じことをするようになるのだ。割り切れない気持ちである。しかし、小平由樹枝に振られた時とは全く異なる。彼女の時は絶望の淵を歩いているようで完全に落ち込んでいた。今回の別れは、絶望はない。勿体ないと言う気持ちであろうか。大学に出ると、新婚旅行から帰り暫く経った高橋が待っていた。家に招待するから来てくれとの事、部屋も狭いし数人しか呼べないが、披露宴に出た人も招待するって事である。勿論、喜んで参加すると答えた。===================================
2021.07.05
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。写真はネットより借用===================================「だって、もう2ヶ月もしていないから、やりたくなったよ。」「そうなの? 連絡ないから彼女でも出来たのかと思っていたの。」「話って何?」「うん、食べながら話そう。」ビールを飲み、美恵子の作った手料理を食べながら美恵子の話を聞いた。案の定、男の話であった。会社の3年年上の男性から誘われて何度か食事をしたそうである。「好きなの?」「そうね、タイプではあるのよ。お互いに惹かれ合っていたかな?」「どこまで進んでいるの?」「いやだー、まだ手も繋いでいないよ。」「僕の時とはずいぶん違うね。僕の時は初めてなのに最後までやっちゃった。」「あの時はね、私も焦っていたから。今とは全然状況が違うわ。」悠介は、その男と美恵子は深い付き合いに進んでいくだろうと予感した。となると悠介との変則的な付き合いも終了となる。そう思うと急に勿体ないと思う。いつでも出来るのに、2ヶ月も来なかったことを後悔した。「それで、その人と付き合うようになったら、俺との関係は?」「今まで通りのお付き合いは無理よね。」「そうか、お別れか?」「お別れって私たち付き合っていないのだからお別れもないでしょう? 性付きの友達が、性なしの友達になるって事でしょう?」「性なしか・・・。」「だって彼氏が出来たら、二人とは無理よ。」「そりゃーそうだよね。悲しいなー、残念だなー。」「前に言ったけど、悠介のは大きいから快楽も大きいのよ。今度の彼がどんなセックスをするか分からないけど、満足出来ない可能性もある。」「その時は、俺としても良いの?」「う~ん。難しいわね、その時にどんな気持ちになっているか? やっぱり悠介とはしない方が良いと思う。でないと他の人と深く付き合えない。」悠介は、美恵子を手放すのはとても惜しいと思う。何とか引き留める事を考えたが、結婚して欲しいと言わない限り今の状態を保つことは難しい。結婚すると言う事は、相手が美恵子である、ないに関わらず、まだ結婚はしたくない。自分できちんと生活設計が出来てからの事であると思っている。「そうすると今夜が最後になるかも知れないって事だね?」「うん、そうなるかも。」食事が終わって、風呂にも入った。まだ寝るには早い。二人でテレビを見ている。悠介は美恵子の隣に移動した。心が早っている。肩を抱き寄せくちづけをする。美恵子も答えて来る。いつもの手順であるが、股間への愛撫をいつにも増して丁寧に行う。美恵子はもう眼を瞑り快楽の中に入っている。股間への愛撫を続けながらくちづけを行う。始めは静かに、そして徐々に激しく吸う。その時、股間への刺激も強くする、2面作戦である。美恵子はこれが好きなのである。美恵子の手が悠介の股間に伸びて来た。パンツ姿なので、簡単に逸物は美恵子の手の中にくるまれた。暫くはお互いの愛撫が続く。「もう、して。」美恵子の息も絶え絶えの催促に、悠介は寝ながら美恵子の下着を剝ぎ取った。自分でも器用に下着を脱ぎ去り、二人とも全裸になった。美恵子の足を大きく開き悠介はその間に腰を落とす。逸物を握り美恵子の中心に押し付けた。圧迫感を覚えたが、逸物はすんなりと美恵子の秘部に収まった。久しぶりの一体感である。こんなに気持ち良い事が世の中にあるのか、といつも不思議に思う。これだから子供が生まれるはずだ、と美恵子の秘部を逸物が感じながら思った。「あぁ、気持ち良かった。」数十分、抱き合ったであろうか? 息を整えながら、美恵子が言った。「俺も最高に気持ち良かった。もう出来なくなると思ったら、尚更気持ちが高まって早く出てしまったよ。」「そんなー、充分よ。」二人は全裸で抱き合いながら、快楽の後の気怠い気持ち良さに浸っている。「それで、彼氏とは、いつ会うの?」「それが、今度の土日、泊りで箱根に行こうと言うの。彼は車持っているし、車で迎えに来るからって。」「1泊の泊りかー。そりゃー、もう、やる気満々だな、その彼氏。」「簡単にやらせないよ。軽い女に見られたくないから。今回はキスまでね。」「そうか、計算高いな。処女の振りするの?」「どうかなー、でも積極的にはしないよ。その時にならないと分からないけど、彼に任せる。男の人は、自分が開発したって思いたいんでしょう?」===================================
2021.06.21
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。写真はネットより借用===================================悠介、人生初めての司会である。司会の原稿は完璧に覚えているし、万が一忘れてしまった時に備えて、原稿も持参してある。名前を間違えては失礼に当たるので、挨拶余興リストも作成し持参した。それでも、緊張する。披露宴は司会次第で印象が良くなったり歩くなったりするであろう。早めに会場に到着した。ちょっと早すぎたようであるが、受付を頼んだ人と思しき人達が既に来ていた。名前は知らないが大学で見かけた学生が礼服を着ていたので挨拶をした。「今日、司会を担当する寺本です。よろしく。」「受付の山本です。よろしく。」暫く雑談した後、受付の準備が出来た。受付は両家で4名である。お互いに挨拶が始まったので、悠介は、受付を去り会場の現場に移動した。披露宴は恙なく終了した。特にハプニングもなく順調であった。参列者の方々も披露宴を盛り上げるのに協力的であった。特に高橋の友人たちは座を盛り上げてくれた。M大の校歌を唄う時は、花婿の高橋も呼び、悠介も加わって盛大に歌った。花嫁の友人たちは、着物を着て華やかである。悠介の目を引いた女性もいた。披露宴が終了し、花婿花嫁とその友人たちで2次会をする事になった。高橋の友人が手配していたようである。花嫁花婿は、披露宴を行ったホテルに1泊し明日、新婚旅行に出発する。お金もないので行先は箱根で3泊して来ると聞いていた。2次会はホテルの隣の小さなスナックを貸し切りである。12名で満席と言う小さなスナックだ。悠介が良いな、と思った女性も来ていた。若者たちだけの2次会である。「2次会の司会をする山本です。どうぞよろしく。」受付を担当した山本が、この2次会を仕切るようである。全員が一斉に拍手した。ビールで乾杯した。男性陣はもう飲んでかなり酔っ払っている者もいる。悠介は司会で飲めなかったので、ごくりと飲んだビールは格別に美味しかった。大役を果たし終えた満足感もある。乾杯のあと、山本の指名で、自己紹介が始まった。酔っているので自己紹介の途中でヤジを入れたり質問したり、和気藹々とした2次会で悠介も楽しい気持ちになった。「司会、お疲れさまでした。」自己紹介が終わった後、悠介が良いと思っていた女性がビールを持って注ぎに来てくれた。「いえ、終わってほっとしています。初めてだったから。」「唐橋由美子です。新婦の高校の同級生なんです。」「あぁ、そうでしたね。じゃーまだ20歳ですね?」「ええ、でも成人式は過ぎましたから、飲めるのですよ。」悠介も彼女のコップにビールを注いだ。「結構、飲めますか? ビールで良いんですか?」「ビール以外、飲んだ事がないものですから。」人見知り気味の悠介も飲んだ勢いもあり、且つ、2次会の気楽な雰囲気も手伝って話がスムースである。女性とこのように話すのは久しぶりのような気がした。そう言えば矢代美恵子の部屋へも2ヶ月ほどご無沙汰である。夏休みの暑い時期に訪ねただけであった。唐橋由美子と親しく話す暇もなく、山本のリードでゲームが始まった。山本はこのような会には慣れているようで淀みなくしゃべる。悠介の比ではない。臨機応変に対応している。唄も歌ったり楽しい2次会であった。2次会は終了した。その後唐橋由美子と話す機会もなく、皆で新郎新婦をホテルまで送り、解散となった。出来れば唐橋由美子の連絡先でも知りたかったが、その機会もなく帰って来た。久しぶりに矢代美恵子に会いたくなった。しかし、もう20時過ぎである。いくら親しくても、いきなりこの時間に訪ねては失礼である。お互いに電話は持っていない。しかし、美恵子の会社の電話番号は聞いていた。明日、電話して訪ねる日を確認したいと思った。会いたいと思ったら気が急いて来た。翌日、電話した。早く会いたい旨を伝えたら、私も話したいことがあるから、明日来て欲しいとの返事であった。話したいことって何だろう? 彼氏でも出来たのかな? それしか考えられなかった。翌日、指定の19時、美恵子の部屋に着いた。「久しぶり! 元気だったの? 連絡もないしどうしているのかと思っていたのよ。」「実は、友人が結婚して、その司会を頼まれてさ、ちょっと忙しかった。」「そうなの? で結婚式はいつ?」「一昨日、終わった。責任は果たしてほっとしたら、急に会いたくなった。」「急に会いたくなったの?」===================================
2021.06.10
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。そして由樹枝との仲を戻すべく努力したが、完全に振られた。その後美恵子と変則的な付き合いを始めた。翌年、美恵子は卒業し就職してアパートを替わり引っ越していった。写真はネットより借用===================================夏休みになった。悠介も高橋も就職の内定は決まっていた。悠介は結局、住友系の会社に決まった。自動車関連事業や、情報通信関連事業なども行っており、将来性も良いのではないか、と応募した。本社は東京であるが、関東地区を始め工場や支店は全国にある。希望を聞いて貰えるのか分からないが、関東地区で働きたいと悠介は願っていた。高橋も東京に本社がある会社に決まった。彼は彼女との関係もあり、東京勤務に拘っている。東京採用であり東京勤務はほぼ決まっていると彼は言っている。二人とも希望通りの会社に決まり喜んでいた。高橋の結婚式、披露宴は、10月半ばの大安の日に決まった。高橋と悠介は、頻繁に打ち合わせを行わねばならない。まずは出席人数を決めるのが先決である。それは、高橋と彼女に任せた。8月中には、招待者リストが出来上がるとの事で進んでいる。悠介は、バイトの傍ら、披露宴の司会、という本を買って勉強している。悠介は、その本に従って、披露宴のスケジュールを作り始めた。新郎新婦入場、仲人挨拶、主賓の挨拶、来賓の挨拶、乾杯の音頭、友人代表挨拶、そして、出席者に応じて余興などもやって貰おうと、スケジュールに組み入れた。お色直しを何回行うかも式次第に影響してくるので、高橋と打ち合わせを行わねばならない。9月に入り、高橋と彼女と打ち合わせを持った。初めて高橋の彼女と会ったが、印象は清楚であるが、自分の意見ははっきりいう人だと分かった。どちらかと言うと、高橋を彼女がリードしている感じである。仲人は教授に頼んだとの事。披露宴の参加者も何人かはまだ参加出来るかどうか返事がないと言う事であるが、ほぼ決まっている。70名余りの披露宴になる。悠介の作ったスケジュールに出席者の中から、名前を埋めていく。主賓、来賓、乾杯の音頭、友人代表はすぐに決まった。その他、挨拶して欲しい人のリストも作った。余興をやってくれそうな人は、まだ分からないとの事でそこだけブランクにして後で書き込むことになった。9月半ば、悠介は、披露宴会場での打ち合わせに参加した。高橋たちは、既に何度か打ち合わせは行ったようである。この日は、司会者の悠介と披露宴会場の担当者との打ち合わせがメインである。披露宴会場から司会者の手引きと、予定表を受領した。その予定表に埋めてくれと担当者に言われたが、既に悠介が作ったスケジュール表に名前も記載されており、担当者にこんなに詳しく予定表を作って来る人は初めてだと褒められた。お色直しは1回行うとの事で、挨拶が済み乾杯が行われ、しばし歓談のあと新郎新婦とも席を外すことになる。和装から洋装に着替えるようである。それから当日の担当が必要との事で、誰に依頼するか高橋と相談する。受付である。これはお金を預かるので、友人と親戚がペアでそれぞれの親族・友人の受付を行った方が良いらしい。受付の人選は悠介には出来ない。高橋と彼女に任せる事にする。受付以外は全て式場の方で行ってくれるとの事である。悠介の作ったスケジュールに入っていなかったのが、新郎新婦によるケーキ入刀であった。そう言えば本にも書いてあったな、と、うっかり忘れてしまった事を反省した。披露宴会場との打ち合わせが完了し、悠介にも披露宴の全貌が分かったようで安心した。さすが披露宴のプロは凄いな、と悠介は思った。スケジュール表を修正追記し、悠介は司会の原稿作成に取り掛かった。披露宴まで1ヶ月、原稿を書いて、丸々覚える事にしたのである。原稿を書くのも楽しい。本に見本の文章も載っているので、難しい作業ではない。悠介は、ご歓談下さいと言って、何もしない時間を作る事が好ましく思えなかった。参加者の多くの方が挨拶したり、余興をやったり、楽しい思い出深い時間を作りたかった。問題は、新郎新婦が不在の時間である。挨拶にしろ、余興にしろ参列者は新郎新婦がいる時に行いたいはずである。これは、高橋と彼女に相談し、新郎新婦不在の間に余興をしてくれる人を探し、リストを作ってもらう事にした。多くは、友人の中から選ばれるであろうと悠介は考えた。この時間の使い方が一番難しくなるなと悠介は思った。しかし、学生たちは、コンパで余興など沢山こなしているので何とかなるであろうとも思った。悠介は結婚披露宴に着ていくようなスーツを持っていなかった。礼服を作るまでもないであろうと、就職しても着られるようなダークな色調のスーツを買った。予定外の出費である。スーツは就職祝いに二人の姉が買ってくれることになっていた。しかし、それを待ってはいられない。勤務先がどこになるか分からないが、本社勤務になったら最低、2着は必要である。悠介は工場勤務を希望するつもりであるが、どうなるかわ分からない。そんな準備に追われていたら、結婚式当日となった。準備は万端である。===================================
2021.05.28
コメント(2)
あらすじ悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。そして由樹枝との仲を戻すべく努力したが、完全に振られた。その後美恵子と変則的な付き合いを始めた。翌年、美恵子は卒業し就職してアパートを替わり引っ越していった。写真はネットより借用===================================就職活動で忙しくなった。多くの会社の就職試験の受けたくはない。出来るだけ行先を絞って集中したかった。どんな業種が良いか、それを絞るのが難しい。モノづくり会社と言っても、車から車関連、製薬会社、化学会社、その他電気関連の会社もあれば多岐に渡っている。これからどんな会社が伸びて行くのかも新聞や本を読んでも分からない。それで、求人案内が来たら、それを見ながら決めようと考えていた。そんな時、唯一の友人と言える高橋から、声がかかった。話があると言う。新宿の居酒屋で会う事になった。「久しぶりだな、ここで飲むの。」「そうだなー、久しぶりだ。ほとんど飲みに出かけないからな。」「その後、どうなの?」「その後って?」「長野の彼女?」「あれは、話さなかったっけ? もう2年も前の話よ。最後の手紙を出したのが1年半くらい前かな? 何の返事もなく、音信不通だ。」「そうか。そしたら、その揉めた彼女は? 例の押しかけられた人よ。」「あぁ、矢代さんね。彼女は卒業して引っ越して行った。」「その後は会ってないの?」「いや、新しいアパートに1回寄らして貰ったよ。溌溂としていた。」「付き合っているの?」「変な話だけど、付き合ってはいない。友人かな?」しばし、矢代美恵子の話になった。彼女は給料を貰い始めて、人生で初めて自立と言うか、誰にも頼らずに生活が出来るようになった。それで、心も軽くなったのか、以前よりも明るくなった。高橋は彼女の事を男の所に転がり込むような良くない女だと思っていた。「彼女、苦労して育ったのだよ。今は最高に居心地が良いと言っている。」「そうか、俺は、彼女の事を誤解していたかもな。」「元々、性格は悪くない人だったよ。それはそうと、話って何だい?」「そうそう、その事だ。俺、結婚することにしたんだ。」「えー! 学生の内に結婚するの?」「そう、まぁでも、就職を決めてからだから、秋になると思うけど。彼女が早く結婚したいって言うからね。」「驚いたなー。学生結婚か。就職希望は東京?」「そう彼女の実家も東京なら近いし、東京希望だね。秋には結婚するけど、着の身着のままだね。家具とかも最小限度にするつもり。一緒に住むだけだ。来年就職したら社宅になるのか、アパートになるのかその辺りがまだ分からない。本格的な新婚生活はそれからだ。」「そうか、じゃー、部屋探しもせねばならないね?」「そうそう。一応、結婚式や披露宴は、親の手前やらねばならない。それで寺本に頼みたいのは、披露宴の司会をやって欲しいのだ。」「え? 俺、そう言うの得意じゃーないよ。誰か他にいないの?」高橋の話によれば、悠介同様、親しい友人は少ないと言う。披露宴に参加して欲しい友人はいるが、司会を頼めるのは悠介だけだ、と真剣に頼まれた。悠介はまだ結婚式や披露宴に参加したこともない。どのようにすべきかさっぱり分からない。よって自信もない。しかし高橋の熱心な頼みに、うん、と言わざるを得ない立場に立ってしまった。悠介は秋ならば、自分も就職は決まっているし、時間はある。本に頼ってどんな風に司会をすべきか考えればよい。又、披露宴会場でもある程度教えてくれるだろうと、引き受ける事にした。「今の所、全く自信はないけど、色々と調べれば何とかなるだろう、高橋の頼みを断れないよ。何とかやって見よう。」「おー、ありがとう! 良かった、肩の荷が降りたよ、よろしく頼む。」結婚する彼女は、高橋がホームシックにかかり大学を止めて故郷に帰りたいと思っていた頃に出会った彼女である。だからもう既に3年のお付き合いをしている。高校3年の時に知り合い、翌年就職した。だから社会人になって2年経っている。と言う事はまだ20歳である。高橋が自信を取り戻し、学業に専念出来たのも彼女のお陰であると、高橋は彼女に感謝している。悠介は自分とはずいぶん違うなー、と思う。小平由樹枝とあのまま付き合っていれば、来年か再来年には結婚していたかも知れない。そう思うと、甘酸っぱい思いが胸の中に湧き上がってくる。本当に惜しい事をしたと残念に思う。一緒にいた頃は本当に楽しかった。特に彼女が大学に合格し、その春休みに悠介のアパートへ来た10日間余りの生活、あれほど楽しい生活があったろうか? と今でも、思い起こせば笑みが湧いてくる。そのわずか2週間後位に矢代美恵子に騙されたのである。美恵子を恨んではいたが、その後、変則的な付き合いが2年近く続き、今では、それも人生かと恨むこともなくなった。その後、飲み過ぎて記憶を無くしたことはない。酒を飲むのも慣れて来たようである。===================================
2021.05.23
コメント(0)
全243件 (243件中 1-50件目)