童画家 武井武雄
2007/7/10
先日紹介した、 初山滋
に続いて、同時代のもう一人の童画家とその絵本を紹介します。
これも、好きで好きでたまらなかった本。絵も物語も、です。
大人になってびっくり。サマセット・モームの作です。
『 九月姫とウグイス 』
作: サマセット・モーム 絵: 武井武雄 岩波子どもの本

私は妙に几帳面な子供で、物を数えるとか、並べるとか、分類するとか、が大好きでした。
この物語はその性癖に実にぴったりと嵌りました。
シャムの王様は、最初に2人のお姫様ができた時、2人に ” 昼 ” と ” 夜 ” と名付けます。
もう2人生まれて4人になった時、最初の2人の名前を変えて、” 春 ”” 夏 ”” 秋 ”” 冬 ” と。
7人になった時、” 月曜 ”” 火曜 ”” 水曜 ”” 木曜 ”” 金曜 ”” 土曜 ”” 日曜 ”。
8人目が生まれた時に王様は、”1月 ””2月”・・・・ と名付け、12月姫が生まれたらお后様の首をちょん切らなければならないと考えて
さめざめと泣きます。幸いにして9月姫が最後になります。
あとは王子様ばかり生まれて、 ” A ”” B ”” C ” ・・・と名付けられます。幸い、
王子様は” J ” まででした。
物語のこの設定が最初のツボです。
私自身、「 もちろん、数にぴったりの名前を付けなければならないわ 」 と考えたものです。
そして王様が9人のお姫様たちにプレゼントする9個の鳥かごが、みんな違った何とも綺麗な形で、ひとつひとつに名前が書いてあって、
リボンの色もみんな違って、この絵を眺めるのが、楽しくてたまりませんでした。
自分ならどの鳥かごを貰ったら一番嬉しいかな、などと飽かず考えたものでした。
結末。
ウグイスが自由に出入りできるようにといつも窓を開け放して寝たために、美しくなった9月姫は白いゾウに乗って隣の国カンボジアの
王様にお輿入れ、
一度も窓を開けて寝たことがなかったために醜くなった姉姫様たちは、紅茶を1ポンドとシャム猫だけを持って、王様の家来の元へ
やられてしまいます。
物語の設定があまりにすとんと腑に落ちたので、幼心に、ここに書いてある道理はみんな真実だと信じていました。
名前を何度も変えられた者は心がひねくれてしまう、とか( これには幾分かの真実はありますが )、
窓を開けて寝ると美しくなり、閉めて寝ると醜くなってしまう、とか、
美しい者は立派なところにお嫁に行けて、醜いと行けないのだ、とか。
大人になって読むと、寓話的であるか否かという問題以前に、このシュールさがまた、たまらないのですが、子供の頃は
マジで納得していました。
窓を開けて寝ようと考えたことは、言うまでもありません。
しかし悲しいかな住んでいる土地がそれを許しませんでした。