伝説のジャズメン
『 バード 』
1988米
監督 クリント・イーストウッド
出演 フォレスト・ウィテカー ダイアン・ヴェノーラ
伝説のジャズ・アルトサックス奏者、 チャーリー・パーカー
、通称 “ ヤードバード
” の半生。
1954年自殺未遂により収容された精神病院で、チャーリーと妻チャンは、それぞれ過去に思いを馳せる。
故郷カンザスでヘロイン中毒死した父親、それを見せて「 お前の未来だ 」 と言った医師。
クラブのコンテストでサックスを吹き、投げつけられたシンバル。
8年後の43年、NY52番街のクラブでデイジー・ガレスピーとの演奏に熱狂する観客。
ダンサーだったチャンとの出会い、結婚。深刻化する麻薬中毒。
ロスへの進出と異端視されての失敗。失意とアルコール中毒。パリでの大成功。
白人トランペッター、レッド・ロドニーを引き入れての南部演奏旅行での成功。幼い娘の病死 ・・・。
55年、回復したチャーリーは一家でウェストチェスターの田舎に移り住むが、仕事でNYに出た彼は5番街の変貌に驚き、
“ 新しい音楽 ” ロックンロールのあまりのコードの稚拙さにショックを受ける ・・・・・。
チャーリー・パーカーは、 デイジー・ガレスピーと共に “ ビー・バップ
” を創始、モダンジャズの基を築きました。
先天的絶対音感を持っていたと言われます。
映画の中では、独自の奏法を始めたエピソードを語るのが非常に興味深かったです。
「 駆け出しの頃、ある女性歌手の伴奏をした。曲はfavoriteだったが、メロディーの中だけで演奏しなければならないのが退屈だった。
アレンジを入れると歌手は、「 あたしが歌っている時に変な音を出さないで 」 と言ったよ 」
「 それからまた別のクラブで、同じ曲を千回も演奏することにうんざりしていたとき、ふと、コードを変えるやり方を発見した。
まるで新しい歌になった。それでもメロディに合う。コンテストでシンバルを投げつけられた時からやっている 」
映画は、ライブシーンが多くて音楽が最高だし、クラブや52番街の雰囲気も良いです。
ただ、振り返る形で語っていて、戻って更に先へ進む、という時間軸が分かり難い上に、そうする理由 ( 効果 ? ) がないように思えて、少々不可解です。
そして実は、音楽自体も、最後チャーリーが愕然とするロックンロールの方が好きだったりして ・・・・・。
『 ラウンド・ミッドナイト 』
1986米
監督 ベルトラン・タヴェルニエ
出演 デクスター・ゴードン フランソワ・クリュゼ マーティン・ソコセッシ ハービー・ハンコック
伝説の天才ジャズ・ピアニスト、 バド・パウエル
がモデル。映画ではサックス奏者として描かれている。
50年代末のパリ。NYからやって来た初老のサックス奏者デイル・ターナーは、酒浸りながらも ジャズクラブ “ ブルーノート ” で毎夜演奏し、
健在振りを見せている。
ある夜デイルは、古くからのファンだが、クラブに入る金もない貧しいフランス人男性フランシスと出会い、意気投合し行動を共にするようになる。
デイルは店や仲間からの禁を破ってしばしば酒を飲んでは、病院に収容される。
身を案じたフランシスは別れた妻から借金までしてデイルのために部屋を借り、献身的に世話をする。
デイルは心身ともに回復し、NYでの活動を再開するため帰国するが ・・・・・。
本物のジャズメンたち ( 主役デクスター・ゴードン始め、ハービー・ハンコック、ビリー・ヒギンズ、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズ、
フレディ・ハーバード等 ) によるライブシーンが圧巻です。
パリの裏町やアパート、ナイトクラブのそれらしい雰囲気も渋く、カッコいいです。
そして大柄なデイルに対して、小柄でみすぼらしく情けない感じの中年男フランソワの友情と献身が泣かせます。
音楽しかできない、子供のようなデイルへの、フランソワの無条件の優しさ、フランソワの幼い娘の子供らしい優しさが、ゆっくりと淡々と
描かれていて胸をうちます。
に対してラスト、NYシーン。タクシー車中でまくし立てるプローモーター ( スコセッシ演じる ) の姿が、フランスとアメリカとの、テンポと価値観の
違いのようなものを表現していて面白いです。
バド・パウエル
は、 チャーリー・パーカー
、 デイジー・ガレスピー
らによって確立された ビーバップスタイル
のジャズを、ジャズ・ピアノの分野に
定着させたことで 「 モダンジャズ・ピアノの祖 」 と称され、
また現代のピアノ、ベース、ドラムによる “ ピアノ・トリオ
“ 形式を創始した、とのことです。
アメリカでのジャズ不況は 『 バード 』 でも描かれており、どちらもフランスでは暖かく迎えられています。
また重度の麻薬中毒、アルコール中毒であったこと、精神障害のため電気ショック療法を受けたことなども同じです。
ミュージシャンであること、またはニューヨーカーであること、または黒人であることはかくも苦しいことなのでしょうか。
アメリカというのは不思議な国です。
今まで映画レヴューに何度か書いていますが、人種差別、性差別、障害者差別、それから経済、芸術、文化 ・・・・。
どうも アメリカ=自由、欧州=封建 という図式は逆に思えてならない今日この頃です。