「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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過去の切り売り とりあえず完成
初めてかのじょに会ったとき(かのじょは新入生だった)、かのじょはぼくのことを「先輩」と呼び、ぼくは「先輩」と呼ばれることが面白く(ふつう後輩はみな「***さん」と名前で呼ぶ)、いろいろな話をして、ぼくたちは大いに笑った。そういうことがぼく以外の人にはよくあるのか、やはりほとんどないのか、ぼくは知らないけど、ぼくとかのじょは初めて会った、そのときにお互いに興味を持った。ぼくだけのことを言えば、興味以上の「関心」をかのじょに抱いた。それを恋愛感情というのかどうなのか分からないけど、ぼくは彼女のことを好きになった(好きといってもいろいろなものがあるから)。ぼくはそのときの彼女の明るい笑い声をいまでも覚えている。とても印象的だった。
ぼくたち3人は(もう一人やはり新入生の男の子がいた、かれとは初対面ではなかった)、文学部の前にあるサイゼリアに行った。ワインを頼んで、よく飲んだ。そのとき、ぼくは現金をあまり持っていなかった。もっと飲みたかったから、ぼくたちは大学の近くのぼくのマンションに行くことにした。酒の在庫ならたくさんあったから。かのじょはぼくの部屋にたくさんの本があることに感嘆していた。たくさんの本というか、ぼくの部屋は、たくさんの本の山と洋服で占領されていて、ぼくの居場所といえばベッドの上くらいしかなかった(かのじょはまだ新入生で、早稲田の男にありがちな、そういった部屋の光景をはじめて見たのだった)。それらをかき分けて、ぼくたちはゆかに座り、そしてぼくたちは大いに笑って、ぼくだけがウィスキーをストレートで飲み、ぼくは酔いつぶれて、明け方に寝た。次の日は誰も授業に行こうとしなかった。ぼくは激しい二日酔いだった。トイレで吐いても、頭が痛くてどうしようもなかったけど、その子と一緒で、うれしかった。
後輩の男の子に胃薬を買いにいってもらった。ぼくたちは二人きりだった。かのじょは窓際で、毛布にくるまって寝ていた。ぼくは頭が痛いのに、ベッドからかのじょをちょくちょく見ていた。本当に寝ていたのかな?たぶん寝たふりをしていたんだろう。かのじょもぼくのことが気になっていたに違いない。甘美な時間だった。昼過ぎ、だいぶ具合がよくなって、ぼくたちはトランプをした。その間、ぼくはぼくの好きな作家や、音楽家の講釈をしていた。かれらはそんな下らない話も熱心に聞いていた。ぼくの部屋の窓から中央図書館の時計塔が見えた。時計塔に夕方の黄色い日が差すまで、トランプは終わらなかった。
かのじょはぼくの部屋に女のものが、たとえば、クレンジングオイルだとかの化粧類、女物の服があるのを見て、ぼくに付き合っている人がいることを知った。それでも、レポートを印刷しなければいけないということで(かのじょが言うには、かのじょの家のプリンターは壊れている)、かのじょは次の日一人でぼくの部屋に来た。
かのじょはフロッピーを持ってやってきた。文章を印刷してみると、なんだか、へんてこな、見たこともないような文章の羅列が出てきた。ところどころ、隙間が空いている。かのじょは図書館からコピーして切り抜いた江戸時代の絵(ほとんどが人物で、出雲の阿国みたいな女性、行商人等々、一番面白かったのは、男の髪型の一覧だった。当時のはやりの髪型のカタログみたいなものだろう)をその隙間に張った。なんのレポートなのか聞いたけど、忘れた。何しろかなり前の話だから。そういえば当時ぼくはマックを使っていた。いまほど、マイクロソフトの一人勝ちのような状況ではなかった。ぼくの周りでも、マックを使っている人は結構いた。いまはほとんどいないけど。当時大学にもマックがおいてあって、マックのほうが人気だったな。サークルのビラや冊子を作るのにはマックのほうが断然便利だったから。インターネットなんてやってる人はほとんどいなかった。インターネットをやるほどの性能は一般のパソコンにはなかったし、第一ごくごく限られていたプロバイダーの料金は学生が払えるような料金ではなかった。まだパソコン通信の時代だった。ぼくもニフティに加入していた。文字だけの画面。メールをやるっていっても、パソコン通信なんてやってるのは、理系のやつか、マニアか、ぼくみたいな物好きくらいしかいなかったから、相手もたいしていなかった。
かのじょのへんてこなレポートを見てぼくはかのじょにますます関心を抱いた。ぼくはからかったんじゃないかな。かのじょもそのへんてこなレポートをぼくに見せることができて喜んでいるようだった。ぼくたちは昨日出会ったばかりなのに、とても仲良しだった。かのじょは明らかにぼくのことが好きだった。ぼくたちは池袋までご飯を食べに行った。歩いた。歩きながら、いろいろなことを話した。行こうと思っていたお店は閉店して、違うお店になっていた。刺身がおいしい店だったんだけどな。それで、どこに行ったんだろう?よく覚えていないけど。どこかで、食べて、軽く飲んだ。それから、ぼくたちはぼくの部屋へ戻った。どういういきさつだったのか、やはり覚えていないんだけど、しぜんにかのじょはぼくの部屋に泊まることになった。そのとき、かのじょはとても恥ずかしそうで、だけどうれしそうだった。一緒にベッドで寝た。かのじょはやはり恥ずかしそうだったけど、ぼくはキスをした。かのじょの唇は薄かったような気がする。かのじょは意外にも処女だった。ぼくはうまくやれることができなかった。それでも、ぼくたちは幸せだった。その夜はひどい雨だった。
目が覚めると、彼女がいた。彼女がベッドの横に立っていた。ぼくはなにが起きたのか分からなかった。彼女は「生きてたの、よかった」と叫んで、泣いた。ぼくは電話線を抜いていた。彼女から電話がかかってきたら、こまると思って。彼女とぼくは毎日電話で話していた。短いときもあれば、一時間も二時間も話すこともあった。時間はともかく、ぼくと彼女は毎日電話していた。その日もなにか連絡しておけばよかったのかもしれない。だが、ぼくと連絡が取れないので、彼女はぼくが死んでしまったのではないかと思って、始発で三軒茶屋から早稲田のぼくの部屋まで来たのだった。どういう訳か、ぼくと付き合う人は、みなぼくがすぐに死んでしまうのではないかと思う。病弱だと思う。ぼくじしんと友達は誰もそんなことは思わないのに。
なにが起きたのか分からなかった。彼女も。ぼくが知らない女と、彼女のものでもあるはずのベッドで寝ている。普段裸で寝ないぼくはなぜかそのとき裸で寝ていた。なにが起きているのか分からないのに、ぼくは冷静だった。頭は混乱しているのに、冷静だった。病的なまでに潔癖な彼女はぼくのことを決して許さないだろう。ぼくのすべてはきみのものだ、とぼくがぼくじしんと彼女に信じ込ませようとしていた呪文のような言葉を深く信じていた彼女はこんな光景を見て、きっともう、ぼくの夢の人ではなくなるだろう。いま、3年以上つながっていた彼女との絆が切れたのだと思った。ぼくは服を着て彼女を廊下に出した。彼女はやっと事情が飲み込めたようだった。責めないから、あの女を帰らせて、と泣きながら言った。だがぼくは「責めないから」という言葉を信じなかった。彼女はそれまでも病的な嫉妬でぼくを悩ませていた。彼女はぼくが童貞でないことをなじった。彼女はぼくに彼女にとって大切だった処女を与えたのに、ぼくが童貞ではなかったから責めた。彼女はぼくの昔付き合っていた人のことをしきりに知りたがった。ぼくは最初得意になって話していた。彼女はおもしろがって聞いていたけど、彼女は本当はぼくが「きれい」かどうかが知りたかったのだった。ぼくは昔の女のことで、責められた。生傷は絶えなかった。心も体も。もう無理だと前から思っていた。このままでは、ぼくも彼女もぼろぼろだ。つきあい始めの頃、ぼくは彼女にぼくの抱えていたおぞましい悩みを生まれて初めて人に話し、彼女はぼくとともに泣いた。だが、そういう深い関係というのは、どっちかに転ぶものだ。
ぼくは廊下に彼女を出し、彼女に帰るように言った。外は激しい雨だった。彼女はまた言った。絶対に責めないから、あの女を帰して、わたしを中に入れてと。ぼくはなんて言ったのだろう。覚えていない。彼女は激しい雨の中を帰っていった。ぼくはその姿を見たくなかったから、オートロックの玄関まで送っていかなかった。あとから彼女が言うには、あのあと、びしょぬれになりながら、神田川の近くで、ぼくが迎えに来るのを待っていたということだ。
ぼくは部屋に帰り、その子がびっくりして、ちぢこまっているのを、抱いて安心させてあげた。心配しなくても平気だよ、だとか何とか言ったんだろう。そして、寝た。
かのじょが帰ってから、ぼくは熱を出した。一週間以上高熱が続いた。血尿が出た。早稲田の診療所に行くと、具合は芳しくなかった。すぐに東京女子医大に行くように言われた。女子医大の外来の受付は終わっていたが、紹介状を見せると、医者が診てくれた。入院を勧められたが、ぼくは断った。風邪のウィルスが腎臓に入り、危険な状態だと告げられたのだが、ぼくは断った。どういう訳で、そうなったのか覚えていないが、彼女がずっとぼくの看病をしてくれた。
もしかしたら、この辺の時系列は間違っているかもしれない。人はいやな記憶は曖昧してしまうものだ。
ぼくは彼女のマンションで療養していた。ずっと寝て、薬を飲んで、味のしないものだけを食べた。そんなものを食べても、食べた気がしないから、夜こっそりと部屋を抜け出して、おなかはちっともすいていないのに、松屋で、焼き肉定食かなにかを食べた。
彼女はぼくを一人でほっておけないと言う。ぼくは彼女のマンションに引っ越すことになった。その生活は息苦しかった。平凡な言い回しで使いたくないが、まあ、監獄にでもいるようだった。具合がだいぶよくなってからも、ぼくの行動は逐一彼女に監視され、ぼくは彼女に報告する義務を負っていた。
あれからだいぶしばらくして、ぼくはかのじょに電話をした。かのじょはどこかの医大の図書館の受付の面接を受けた後だった。ぼくたちは会う約束をした。ぼくはかのじょのことが好きだった。
会う約束をする前も、ぼくはたばこを買いに行くと言って、よく外に出て、かのじょに電話をしていた。三軒茶屋の街を歩きながら。ある晩、かのじょは泣いていた。電話口の後ろは、なんだか、とてもうるさかった。ものがひっくり返る音やら、叫び声やらで。かのじょの家は荒れていた。ぼくは人ごとに思えなかった。なぜなら、ぼくの家は崩壊してたから。ぼくは子供の頃を思い出した。父が暴れる。母が殴られる。ぼくは必死に止めたが、なにもできなかった。なによりも、妹たちがかわいそうだった。妹たちは部屋の隅でおびえて泣いていた。ぼくは妹たちを助けてあげたかったけど、なにもすることができなかった。妹たちにはいまでもすまないことをしたと思っている。妹たちを助けてあげることができなかった後悔がぼくのかのじょにたいする思いをいや増した。ぼくはかのじょを助けてあげたいと切に願った。こういう言い回しはごくごく平凡で、やはり使いたくない。これでは、ぼくは三文文士だ。でも、そう思ったんだ。ぼくはかのじょのことで、胸が痛くなったし、かのじょの屈託のない笑顔の裏に、悲しい側面を見て、かのじょを抱きしめたかった。
睡眠薬が効いてきた。のどが渇く。意識が分裂する。
分裂すると言えば、当時のぼくの意識も分裂していた。彼女と別れることはとてもつらいことだった。だが、それにもまして、ぼくにはかのじょが大切だった。
ぼくは三軒茶屋のマンションを出ることにした。高田馬場に部屋を探した。いままでぼくはマンションにしか住んだことがなかったから、ぼろいアパートに住んでみたかった。そろそろ大学生活を終えるにつけ、早稲田の学生らしい、貧乏生活を送ってみたかった。いまは知らないけど、ぼくが通っていた頃は、早稲田はまだかろうじて、よい校風を残していた。時代錯誤の学生運動家が、我が物顔に闊歩していた。ぼくが入学した頃、ぼくよりだいぶ先輩の運動家はぼくが大学6年生の頃、まだ学生運動家をやっていた。その中に知り合いが何人かいたが、かれらは学生だったのか(入試を何度も受けていたのか)、卒業してもまだ大学にいすわっていたのか、素性を明らかにしなかった。当局批判、アメリカ批判、自称正統派マルクス主義者。ぼくはマルクスは好きだが、かれらのことは軽蔑していた。しかし、とくに文学部には、活気があった。自称小説家、自称思想家、自称演劇家、そんな人たちがうようよいたし、ぼくもかれらから多少なり啓発された。
探したアパートは名前がすばらしかった。「薔薇ハウス」。いったいどんな感性でぼろアパートにそんな名前を付けたのか。隣はだだっ広いお墓で、場所もよかった。名前でぼくはそこに住むことに決めた。おかげで「薔薇」という漢字を書けるようになった。
いろいろなことがあって、そのあと、ぼくはかのじょを部屋に呼んだ。「合宿をやるよ」って言って。かのじょは山登りに行っていたが、山から帰ってくるとすぐに、アパートに来た。かのじょとの暮らしが始まった。ぼくの人生で、あのときほど、幸せな時間があっただろうか?ぼくたちはいろいろなことをして、すべてが楽しかった。夜、ぼくがパソコンをやっていたり、本を読んでいると、かのじょは切り絵を作っていた。あの切り絵はなんの模作だったかな。江戸時代の滑稽本の主人公。二人で読んだけど、面白い本だった。かのじょが図書館から借りてきたのだった。切り絵を作るかと思えば、勉強をしていた。なにを読んでいたのかな?よく覚えていないけど。アーレントだったかな。ビゼーの『カルメン』を見せた。かのじょはフラメンコをやっていたから。フラメンコの場面を興味深く見ていた。何度も見せてくれとせがまれた。
二人でよくチーズケーキを食べた。あと、餃子。二人で、軽い山登りに行く前の日、ぼくは餃子を8人前くらい食べた。山登りの日、ぼくはものすごいおならをした。一日中おならが止まらなかった。とてもくさかったけど、二人で笑った。
いつの頃からか、かのじょはぼくのことを「王子」と呼ぶようになった。ぼくのどこが王子なのか、かのじょに聞いたら、かのじょは全部だと言った。かのじょは人前でもはばかることなく、ぼくのことを「王子」と呼んだ。みんなはさぞ、おかしかっただろう。誰も、そんなことを思わないし、ぼくじしんもそんなことを思ってもみなかったから。
かのじょと別れたことはいまでも後悔している。ひどい別れ方だった。ぼくはやはり酷いことをした。一緒にいたら、いまでも、とても楽しい日々を送れただろうに。なにも「楽しい」だけが、いいことではない。でも「苦しい」よりはいいだろう。
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