bach


 なぜバッハはこれほど人を惹きつけてやまないのか?どこに行ってもたいていバッハ好きはいる。
 しばらく日記を書かなかった。どうといって理由もないんだけど。
 一時期、『響きと怒り』のクエンティンのものまねで、よく、独白をしていた。意識の流れ。今日、シャワーに入っているときに、また独白した。もちろん、声には出さない。それで思ったんだけど、人の意識はあんな風なんだろうか?

そこで、ぼくは言ったんだ、それは妹のせいじゃないって、悪いのはぼくなんだ、お父さん、それは違うよ、風呂がきれいだった、誰が掃除したんだろう、お父さんみたいにまめだな、さっき、みんなで書類を探していた、無い、父が管理していたんだから、みんなどこにしまってあるのか分からない、ハイドンはつまらない、父はなんでハイドンなんて聴いていたんだろう、風呂がきれいだ、ぴかぴかだ、だいすけが掃除したに違いない、お母さんは掃除嫌いだからな、だいすけはお父さんのことをいろいろと意識して、よくまねっこしてるな、ぼくは言った、お父さん、このままじゃ死んじゃうよ、お父さんに電話しなよってお母さんに言った、書類どこにあるのかって聞きなよ、お父さんだから、死ぬまねして、まだどっかで酒飲んでんじゃないの、こんなきれいに掃除するの結構大変だろうな、だいすけもよくやんな、みんなで父の部屋に行った、書類を探した、ぼくはいやだった、お父さん本当に死んじゃうよ、火曜日病院に行こうね、それで先生に見てもらおう、三日も寝てないなんて気のせいだよ、さっき寝てたよ、どんな幻覚見るの、先生にいい薬をもらおう、ぼくの薬は強いからだめだよ

 なぜ、バッハが無性に聴きたくなったのか。そういえば、ぼくはあのとき父に薬の代わりにバッハを聴かせたんだった。いま思いだした。 


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