良書普及会


 買ったのは本だけじゃない。この前、ベイサイドマリーナで、花柄のすてきなシャツ、靴、バッグ等を購入、スーツまで買いそうになったけど、危ういところでやめた。
 それにしても、出版社の状況はかなり深刻なんだな。『民法案内』も『民法概論』も手に入らなくなったら、法学徒はいったいなにを読んで勉強すればよいのか。ホッブスの『対話』?冗談きついですよ、神様。

 電話してお取り置きにしてもらった本屋に行って、とりあえず、一巻と二巻を買った。三巻と四巻はインターネットで買えたはず。たぶん。ついでに本屋で本を見た。こうして見ると、かなり新刊書出てるな。買うに値するような本はあるだろうか?値するかどうか分からないけど、二冊レジに持って行った。一冊はぼくが好きな浦部法穂という憲法学者の演習本の改訂版。こんなの出ていたのか、知らなかった。前のは持っているんだけどな。浦部法穂はかなり過激なリベラリストだ。もう一冊は戸松秀典と初宿正典の憲法判例集。読みやすそうだ。判例百選は読みにくいし、変な解説があったりするからな。
 さっそく喫茶店に行って、『民法概論』のはしがきを読んだ。
「今日のわが民法解釈学者の仕事は、我妻博士の理論・体型を目標に、これにぶつかり、これを批判し、崩して、新しいものを打ち立てることにある」、我妻民法学の代表作である『民法講義』は「そのすぐれた内容によってわが学会・実務界に大きな影響を与え、『通説』を形成してきた。一人の著作でこれを凌駕するどころか、これに匹敵するだけの体系書はいまだに出ていない有様である(このことを、後進としてまことに不甲斐なく思う)。しかし、とにかくこれの一つ一つの部分に挑戦してその部分において我妻理論の上に出ることが民法解釈学者の関心であり、個別的に優れた業績が次々と現れ、かつ現れつつある。この中で、我妻民法学は、かなりの部分が崩れ落ちながらも(もちろん、多くの部分はそのままに残っている)、なおその基礎と骨組みとががっちりと建っている建物にも比せられる、といえようか。」
 熱い、熱すぎる。ぼくが魅せられるのはこういう理知的でいて、なおかつ情熱的な人だ。たとえば、スタンダールのように、デカルトのように、ヘーゲルのように、大岡昇平のように、団藤重光のように、我妻榮のように。かれらは理知的で、情熱的で、しかも、根気強い。ぼくが憧れるのはそういった人々だ。

 東京砂漠。なにそれ?友人が言った。なかむらっちに捨てられて、おまえは焼け野原にいるようなものだなって。いや、「そう言えば」って言ったんだ。だから、ぼくは言う。ぼくは焼夷弾で焼き尽くされた東京の街をひとりふらふらと歩いているようなものだ。ぼくの憧憬の人、かのじょはどこかへ行ってしまった。ぼくはひとり、これから歩いていかなくてはならない。ふらふらと、時には地面にしっかりと足をつけて、でもやはり、ふらふらと。ふらふらだらーん。家々はこなごなだ。道には人々が倒れている。その中を空虚に歩く。ぼくのこころは東京砂漠。『法学者のこころ』は星野英一著。『ふらふらだらーんのこころ』はぼく著。未刊。頭の中にはあるんだけどね。あとはすらすらすらっと書くだけ(モーツァルトのまね)。


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