かすみのスピリチュアル・ジャーニー

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7.自然とつながる




【つながりの回復 (うつからの回復が始まる)】


 うつにより、自分の周りの世界との関係が、失われてしまった。
 私は、孤独を常に感じていた。

 うつからの回復の過程は、そのまま、自分が失っていった、
自分を取り囲む世界との、つながりを取り戻す作業になった。

 堅くなっていた心が溶け始め、外からの光がさしこみ
始めたのは、本当に小さなことからだった。 



7.自然とつながる



 薬のせいで落ち着いてきた私は、ある日、仕事の帰りに
ガーデニングショップに寄ってみた。

 いろんな色のパンジーを買ってきて、流木で作られた器に植えてみた。

 素手で土をさわったり、スコップで土を掘るなんて、久しぶりだった。

 自分なりに配色を考えて寄せ植えをしたら、思ったより、
きれいに仕上がって、うれしかった。

 私は、毎日水をやり、つぼみが花開くのを見るのが楽しみになっていった。

 そうしているうちに、私は、花を見ている間、心が安らいでいることに
気づいた。



 その後も、何度も花に助けられることになった。

 職場でも、患者さんと花を植え始め、その花を患者さんも
とても喜んでくれた。

 普段外に出ない患者さんも、自分の植えた花を見たり、
水をまくために外に出るようになるなど、仕事の面でも
花は私を助けてくれたのだ。

 私自身も、家だけでなく、職場でも花を見ることができ
心を落ち着かせることができた。

 時間があると、花壇へ行っては、じっと座り込んで花を見ていた。

 なぜ、小さな黒い種から、こんなに、いろんな形の、いろんな色の花が
咲くのか、なぜ、つぼみから花に変わるのか、その不思議さに、
私は、魅了された。



 また、レコード店で、今まで聴いたこともなかった、ヒーリング音楽と
呼ばれる自然の音(海の音や、川の音、鳥の声など)のCDを買ってきた。

 ヘッドホンをして、そうした音楽を聴いていると、
一時でも、現実を忘れることができた。

 まるで、その自然の中に、自分が入り込んでいるかのような気がするのだ。

苦しいときなどは、横になって、そうした音楽を聴きながら
じっとしているときもあった。

 調子のいいときは、大きなレコード店に行っては、試聴コーナーで、
いろんな音楽を聴いた。

 自然音を含め、音楽を聴いていると、心が潤ってくる感覚があった。



 しだいに、お昼休みや、仕事のあとなど、近くの公園などに
出かけるようなった。

 それまでは、仕事から帰ると、疲れて布団に倒れ込んでいたのだが、
外に出られるようになっていった。

 そして、季節の花を眺めたり、木の幹に触ったり、風を感じたり
することが楽しみになっていった。

 木の幹にさわると、なぜだか、とてもあたたかい気がした。

 何か伝わってくるものがあったのだ。まるで、動物や人の体に
さわっているかのようだった。

 私は、命のぬくもりを感じていた。

 風も同じだった。風が体にまとわりつく感じがとても
優しかったのを覚えている。まさに肌をなでていく感じだった。

 時に、涙が出そうになることもあった。



 その頃は、人の言葉を何でも悪くとるので、人としゃべるのが
嫌だった。

 私は、人の優しさを求めながらも、「誰にも分かってもらえない」と
いう気持ちを抱いていた。

 そんなとき、物言わぬ、自然の風や、色とりどりのお花、
川や海の水の音などが、優しく私の孤独を癒してくれたように思う。



 自然がこんなに美しいということは、うつになる前は、
気づかなかった。

 季節の変化にも、あまり興味がなかった。

 病気の人、苦しんでいる人、哀しみの中にある人、寂しい人、
たぶん、そういう人たちは、自然の美しさや優しさを感じる感受性が、
強くなるのかも知れない。



 木々や花に限らず、野菜作り、魚、亀、昆虫、ウサギ、鳥、犬や猫は
もちろん、そうした、何かの命にふれることで、心が癒されていくことは
あると思う。

 空や雲、星、太陽の日差し、夕日、月、風、鳥の声、
一歩外に出れば、いろんな自然があふれている。

 外に出られなくても、窓から、庭や空を眺めるだけでもいい。

 カーテン、窓を開けて、外の風を入れるだけでもいい。

 雨が降っているなら、雨音を聞くだけでもいい。

 自分が心惹かれる自然、自分と波長のあった自然が、
回復を助けてくることがあるのだ。

 今思えば、あのとき、ふっとガーデニングショップに寄り、
花を買い求めたのは、花に呼ばれたように思っている。

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