ココ の ブログ

冬枯れの頃(5)

冬枯れの頃(5)

 世の中が嘘でまみれ、それでも人々が平気で暮らしている現実を大人の社会と言うのなら、ボクなんかは良い歳をした子供という事になるのだろう。それは生きるのが下手な人間という方に属するのかも知れない。嘘も方便、適当な嘘は人々を幸せにするという軽い気持ちで世渡りをすれば変な事で拘る事も無いのだ。そう言えば、仕事では小さな嘘は幾らでもある。社交辞令で言う嘘を嘘と言うなら世の中には真実が本当に在るのかという事にも成り兼ねない。政治家や役人が嘘を言うのは今更珍しくも無いが、医者も患者を騙し、マスコミも一般市民を騙し、商売人が客を騙す構図等は古今東西当たり前の様に行われて来ているではないか。勿論それにも程度問題があるだろう。裁判で嘘がバレれば偽証罪に問われる。しかし嘘がバレずに整合性や論理的に通れば真実としてまかり通る。

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 冤罪で死んで行ったり長年の投獄に耐えた人々について、それを晴らす事が出来るのは針の穴に象を通す様なものだ。正義が何処にあるのか分からなくなった時代は不幸であり未来は観えない。我々は今まさにその時代に生きているのである。しかし、誰かが真実を明かしてくれるだろうという気持ちを捨てずに生きるのも人生である。蟻の一穴が大きな穴に変わる事も時としてあるからだ。今朝、ココに早く起こされてベットでまどろんで居ると来し方の想い出が走馬灯の様に浮かんでは消えて行くのを覚えた。特に仕事関係で接した多くの経営者のプロフィールのような記憶がまざまざと蘇えって来て、嘘八百を並べ立てていた連中の顔が次から次へと浮かんでは消えて行くのだ。それを見抜いて仕事関係を絶った連中の事だから、どうでも良い相手なのに想い出すには何か理由があるのだろう。

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 多分、時代が悪いから、そういう相手が今まともに生きて居るのかどうか気にかかるのだろうが、彼等に共通するのは思想が無いという事だから世の中がどう変わろうと我武者羅に生きているのだろう。つまり目先の事しか頭に無く、哲学や人間性の片鱗なぞ全く感じられない相手なのだ。金が総てで如何に人を騙し利用する事ばかりを考える相手だけに、そういう連中は何時の世にも居るもので、このところそういう連中とはトンと御無沙汰だから動向も情報も入って来ないだけの事なのだ。尤も、そういう連中との交際なぞ長続きはせず、直ぐに縁が切れてしまうだけに相手も薄々感じて何時離れても良いような付き合い方しかして来なかった。仕事は縁を切れば即座に終える。建築の設計・監理は工事が始まらなければ何も始まらないし進みもしないからだ。サラリーマン時代に社長命令で政界のフィクサーと右翼の大物と呼ばれる二人の男と付き合った事があった。

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 どちらも見掛けは一流企業の重役然としていたが、その世界では有名な人物だそうで、国会に近い赤坂に業界紙の会社と事務所を構え、裏では政財界の裏話で生業をしているのだった。ボクなんかその方面には全くの素人だったから彼等に言われるまま出張の形で一緒に行動しただけだったが、企画する話がまとまれば会社に相当額の設計・監理が舞い込む算段になっていた。言わば影の営業活動をさせられたのだ。だから会社ではボクが一体何をしているのか社長と一部の幹部しか知らず、タイムカードは在って無いのと同じだった。ボクのデスクは在るものの何時も出張と宴会と夜の付き合いばかりだった。相手の都合に合わせた時間調整で新幹線と飛行機とを交互に使っていたから常に乗り物に乗っている感じがし非常に疲れる仕事だった。設計内容は世界的な精密機械部品メーカーの工場建設だった。

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 その為の用地交渉の技術顧問としてボクは約三か月、その仕事に掛かりっきりだった。が、結論として失敗に終ってしまった。原因は、建設用地の地主達との交渉が難航した事と東南アジアからの女性就労者受け入れが当時の法律では未だ時期尚早で政府の法整備が整わなかった事だった。しかし、就労者はメーカーの研修生として受け入れる秘策があったし用地は価格さえ合えば直ぐにでも契約出来る筈だった。だから本当の失敗原因はフィクサーとメーカー社長との思惑違いだった様でボクには無関係だったが、手足となって動いていた右翼の大物も関係していた。彼は全く暴力団には見えない紳士だったが、何度目かの用地交渉中の宴会の席でボクにそっと冗談の様に「何か困った事があれば、全国から街宣車を10台や20台は直ぐに廻しますから言って下さい」と囁いたのだった。

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 それは表面的には政治結社と言いながら実は暴力団が街宣車や構成員を使って威圧で相手を抑えるやり方を示唆しているのと変わり無かった。それを聞いて内心穏やかでなくなったボクは、会社が隠密行動としてボクをフィクサーに付けた理由を初めて知った。そして途端に嫌になってしまったのだった。サラリーマンとは言え建築家として馬鹿にされたと想った。それ以来、ボクは以後の出張を何かと理由を付けては断って行かなかった。やがてボクが行かなくなったのと同調するかの様に用地交渉は決裂し、東南アジアの女性就労の件も流れてしまった。だから工場建設工事も流れてしまった。後日、社長が苦笑いしながら、フィクサーが右翼の大物に言ったという裏話をボクにしてくれた。「君に見限られてしまって、地主との交渉が二進も三進も行かなくなったそうだ。君に舐められた事がショックだったのだろう」(つづく)

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