そして今日も日は過ぎる

2004/03/18
XML
テーマ: 社会問題一般(4)
カテゴリ: 司法関係覚書
 週刊文春に対する差し止めの仮処分が話題になっていますね。表現の自由とプライバシー権の調整は難しい問題で、TVの識者の意見も割れているようです。

 今回は事前差し止めがケースですので、これに絞って考えて見ます。この事前差し止めの問題中で最も問題になるのが憲法21条2項に禁止されている『検閲』です。
 そもそもこの『検閲』とは何かが問題になりますが、多数説に従えば「行政が、ある表現の全部または一部の禁止を目的として、事前に表現内容を審査し、不適当と認めたときにその表現行為を禁止する事」であり、21条2項はこれを絶対的に禁止していると考えます。
 すると、裁判所の事前差し止めは『検閲』には当たらないことになりますね。
 しかし、例え『検閲』にあたらないとしても表現の事前抑制は原則的に禁止されています。何故原則禁止なのか?それは、表現が人目に触れる前に差し止められてしまうと、表現が市場に現れないことになる為、表現に関する制約が強く、これを恐れた表現者が萎縮してしまうという萎縮的効果が発生するからです。
 しかし、一切事前抑制できないとすると、被害者に重大な損害を生ずる場合もあります。そこで、行政ではない司法(裁判所)の事前差し止めが例外的に認められると考えるわけですね。
 では、いかなる要件の許においてなら事前差し止めは認められるのでしょうか?
 この点、名誉権に関する北方ジャーナル事件判決が参考になると思います。名誉権とプライバシー権では表現の真実性との関係が異なります(*)ので、あの判例の要件を流用するにしても真実性の要件は外す事になります。

 今回の事件については、この例外要件が満たされるかが問題になるわけですね。
 今回の事件は、政治家の問題ではなくその娘さんの話ですから、はっきり言って、公益を図る目的があるとは思えないのですが、どうでしょう?
 しかし、結局高裁では仮処分解除の決定が下されました。
 表現の自由は最大限の尊重すべきである、今回の被害者の受ける損害は著しい損害ではないと判断されました。
 なるほど、やはり事前抑制を認める要件への当てはめはかなり厳格に捉えるという事ですね。まだまだ私は事実認定が甘いようです(苦笑)。
 ただし、事前抑制は認められないとしても、損害賠償請求に関してはどうなるかはまだ分かりませんね。事前と事後の救済手段では前掲のように、判断基準が異なるわけですから。

*名誉権とプライバシー権
 名誉権とプライバシー権は、法学上別物と考えられています。もちろん、重なり合う部分もあるわけですが、名誉権とプライバシー権では、それを侵害する表現が真実であった場合に相違を生じるのです。つまり、名誉権の場合は表現が真実であればその名誉を侵害されにくいのに対し、プライバシー権の場合は、表現が真実であればよりプライバシーを侵害される危険が大きいという相違があるのです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004/03/18 10:42:09 AM
コメント(2) | コメントを書く
[司法関係覚書] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

聖書預言@ Re:8番出口(05/01) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
剣竜 @ パク・チャヌク監督作品 ocobaさんへ その2つの映画,評価高いよ…
ocoba@ Re:殺人の追憶(03/04) 韓国映画では、パク・チャヌク監督の「オ…
剣竜 @ Re[3]:投票義務制の問題点(11/10) サムスさんへ いえいえあまりお役に立てず…
サムス@ Re[2]:投票義務制の問題点(11/10) 剣竜さんへ ありがとうございます!

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: