理事長夫人がやってきた...

夏祭りとクリスマスのサンタさん訪問は、楽しく参加させてもらった理事会の企画だったが。
つい先日、マンションの管理組合総会が開催されるまでがまた一悶着だった。
総会の議事は、
■新理事の選出
■前年度決算と今年度予算の承認
■その他話し合って決めるべきことがら
が挙げられていたが、各々について事前に理事会である程度の準備がされていなければ、総会はぐちゃぐちゃのまま時間ばかりかかることになる。
理事の方々の事前のご苦労には本当に頭が下がるが、中でも大変だったのは新理事の選出案のようだ。

面倒なことは避けて通りたいという人情があるけれど、うちのマンションくらい様々な問題が噴出してくると、仕切りたくなる人だって中にはいる。
が、今回は管理会社の起こした訴訟と、当マンションが立ったせいでTVの視聴状況が悪くなったと苦情を申し立てている近所の人たちとの対立という二つのやっかいな問題があるため、引き受けたいと望む人はそうそういない。

入居当初は「(面倒な)理事は順番に持ち回りで...」という管理会社の提案に従って、マンション内に作られたブロック内で一番若い部屋番号の世帯主が理事になっていた。この順番で行くと、今回は我が家のお隣の方が当番にあたる。オットとは「うちは来年か~。どうしようか...」と話していた。
が、総会まで二週間を切ったある夜10時過ぎに玄関のチャイムが鳴った。
ちょうどKentuckyを寝かせようとしていた私は「今頃なんだろう...」といぶかしく思いながらインターフォンを取った。
「理事会のものですが!」
なになに??文句言われるようなことしてないつもりなんだけど...
ドアを開けると例の理事長夫人と理事の方一人が立っていた。
Kentuckyはお客さんが大好きなので寝かせようという努力も虚しく飛び出してくる。
「ご存知だと思いますが来週末には総会が開催されるんですよね!」
はい、などの返事をする間もなく畳み掛けてくる理事長夫人。
「で、総会を実施するには事前に新理事を決めておく必要があるんです。
今はご存知のように裁判だとか、TVの視聴の問題だとか色々ありますが、これを承知で理事を引き受けていただこうとお願いに来たんです!!」
"ご存知"という言葉を連発して、上から叩きつけるように話す彼女は政治運動をしているおばさんという雰囲気だ。なるべく近寄りたくないんだけど。
「あのー、確か、去年は理事長さんが片付いていない問題が色々あるから継続してやって下さったんですよね。今年は持ち回りの順番に戻すんですか?でもそれだとお隣の...」と言いかけるとピシャっとさえぎられた。
「持ち回りなんてことはどこにも書いてないんです!そんなルールはありません。」
「管理会社がそういう風にしましょうと入居時に言っただけですから!!」
いちいち語尾にエクスクラメーションマークのつくしゃべり方をする人なのだ。
「お隣には声をかけましたけど、辞退されたので。」- 「???」一応持ち回りにあたる人にも聞いてはいるわけね。でも辞退してもいいのね。 「色々問題がありますけど、だいぶ自主管理のやり方も整理されてきているし、きちんと引き継いでできるように整えてありますから、受けてもらえませんか?」
「自主管理ってだいたい総会で決めたことでしたっけ?」と私はようやく切り返した。仕事をしていると議論をすることも多いし、かつ議論を有利に展開するための教育を受けたりもするのだが、この人は目があっただけで後ろを向いて逃げ出したくなる相手だし、一応目上の人への礼を尽くそうと思うと言葉をはさむどころか満足に相槌すら打つことができないのだ。
「みなさんに契約する候補の管理会社を募ったけれど、一向にいいところがないんですから、自分たちでやるしかないじゃないですか!!それに管理会社にまかせていると莫大なお金がかかるところを自主管理にしたおかげで500万円も節約できているから、駐車料金だって値下げできるんです。
お宅は今40代でしょ!まだまだ働くからと思ってるでしょうが年金暮らしの人だっているんです!そういう人たちは管理費が安い方が暮らしやすいし、これから先大規模修繕が発生した時に積立金が足りないからいくら負担して下さいと言われたら困るんです!!」ここぞとばかり機関銃のようにまくし立てる彼女。
お宅は40代...あたりで私の顔色が変わったらしい。(だって30代前半だもの。)理事の方が理事長夫人を押さえてようやく口をはさむ。
「まだ、お若いわよ。40代だなんて...」別に何歳だと思われたっていいけれど(他の人にそんなに年より上に見られることはないし)、そうやって人の属性や考え方まで決め付けて、言葉を撒き散らすの、やめて欲しいわ!と言いたい気持ちをぐっとこらえて、
「でも、自主管理なんて言われたって、仕事をしていたらマンションのためにばかり時間を割くわけにはいかないんです。休みの日にだってやることはあるし、子供だって見ていなくてはいけない年ですから。だから、お金を払って発注なり委託なりできることは、私はお金で解決したいんです。そういう人がどのくらいいるか、話し合ってから決めるべきなんじゃないですか。」
「じゃ、いい管理会社があるんですか!」
喧嘩するつもりなんて全然ないんだけど...すでに彼女たちがやって来てから、40分が経過している。いい加減Kentuckyを寝かせたい。でもオットはまだ残業中なので、自分ひとりの考えで返事をしてしまうのも...と思う。
「昼間家にいない人は設備を担当してもらえるんです。これなら休みの日にできるし!小さい子供がいても大丈夫でしょう!」
とりあえず、夫と相談してからお返事させて下さいとお引取り願う。
「ま、昼間家にいる人で小さい子供のいない人になるべく受けていただきたいとは思ってるんです。それに今年度はまだ残っている問題があるっていうのも引き受けにくいですよね。みなさん辞退されるので...」
「は?辞退するっていうのは...?」と聞くと、 「お隣の方には《あんたと一緒には絶対やらないよ!》って断られました。」

ははーん。と私は思った。【節約】の美徳が自主管理の柱なのだが、実はこれらの中にはマンションの住人に【ご奉仕】させるっていうやり方も含まれているのだ。                 【....次回につづく】


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