05/春≪2≫



ブック
2005年・春 絵本&おはなし覚え書き≪2≫




のぼっちゃう
   『 のぼっちゃう
   八木田宜子・さく/太田大八・絵(文化出版局)

   想像力は
   どこまでも膨らんで・・・。

   ぼくのうちにある大きな木。
   今に、絶対登っちゃう!!
   おうちより高く・・・
   ビルより高く・・・
   東京タワーより、富士山より・・・
   じぇっときに出合って・・・
   木のてっぺんでゆっくりやすむ。
   そして、ロケットにのって戻ってくる。
   この木が、そんなに高かったらいいなぁ・・・。

   なんて、気持ちのいいお話なんだろう。
   心は自由。心は広い。
   想像力は、どこまでも・・・どこまでも・・・。


   『 のえんどうと100にんのこどもたち
      甲斐信枝・さく (福音館書店)

   のえんどうって道端でよく見かけますよね。
   緑のさやから豆をとって、くちびるではさんで、
   ビービー鳴らしてた子どもの頃。
   ビービー豆って呼んでたな。

   のえんどうのお母さんは、春の日に100にんの子どもを生みました。
   ちいさなちいさな豆つぶです。
   おかあさんは、太陽にこどもたちを暖めてくれるように頼みます。
   みんなが、早く大きくなるように・・・。
   子どもたちは、お部屋の外の世界に興味しんしん・・・。
   「早く外へ出て、いろんなものが見たい」
   まもなく夏がやって来るころ、お母さんは子どもたちに新しい服をつくって
   着替えさせます。
   「きたなくて、こんな堅くて、かちかち」と子どもは文句をいいますが・・。
     (でも後で、それが役に立つんだよ)
   旅の仕度が整った夏のある日、
   パパーンと音がして、部屋が真っ二つに裂け、
   子どもたちは、はじき飛ばされ空を飛びました。
   お母さんのようなのえんどうになるために・・・。
   お母さんは、お日様に後を頼み静かに横になりました。
     *     *     *     *     *
   植物にも、私たちと同じように、命の営みがあるんだなぁ・・・と感
   じました。


   『 ねずの木 -そのまわりにも グリムのお話いろいろー
   L・シーガル/M・センダック 選
     モーリス・センダック 画
     矢川 澄子 訳  ( 福音館書店 )

   画家のモーリス・センダックがグリム200編の中から、
   これはと思うお話を27選び、1話にひとつづつ絵をつけて
   このような形に仕立て上げたと書かれています。
   「 センダックのグリム 」とよばれるにふさわしい決定版。
   10年がかりで生まれたそうです。
   ちょっと、びっくり!の怖いお話も・・・。
   センダックの絵が、とても雰囲気をつくっているなぁ・・・
   なんて思いながら、読んでいます。


だめだめネコはこまったゾウ
   『 だめだめネコはこまったゾウ
     はらだゆうこ/さく・え (旺文社)

   なんでもかんでも「ダメダメ・・・」
   そんな事、言ってる人は、だ~れ?

   動物たちが仲良く輪になって、踊ってる。
   だけど、その時、1ぴきのネコが言い出した。
   「みんなの形がバラバラで輪がきれいに見えない」
   「だめだめ・・・」
   ひとり抜け、ふたり抜け・・・・・。
   最後には、どうなっちゃうの?
   シンプルですっきりとした、色鮮やかな絵です。
   動物たちの表情が、なんとも楽しい。

   子ども同士のなかでも、良くありそうなことが、
   さらっと描かれているような気がします。


へびくんのおさんぽ
   『 へびくんのおさんぽ
     いとうひろし/作・絵 (すずき出版)

   雨上がり、へびくんはおさんぽにでかけました。
   へびくんがおさんぽしていると、
   道の真ん中に水たまりがありました。
   でも、へびくんは、身体が長いからこんなのへっちゃら・・・。
   向こう岸までとどきます。
   またいで渡ろうとすると、背中を渡らせてもらえませんかと
   ねずみやトカゲたち。
   ヘビくんは、おやすいごようと答えます。やさしいね。
   「もう渡ってみる人いませんか」
   この一言から、大変なことに・・・。
   途中でマンガのようなコマわりがでてきて、
   へびくんの心の声を良く表しています。
   頑張ったへびくんをほめてあげたくなります。
   ほのぼのした、い~気分になれそうな絵本です。


さんねん峠(フォア文庫)



さんねん峠
   『 さんねん峠
   季錦玉・作/朴民宣・絵(岩崎書店)

   児童クラブで読んだ絵本。
   朝鮮のむかしばなしです。
   読んでいくうちに、子どもたちが真剣になるのが
   よ~く分かりました。
   むかしばなしには、やっぱり”力”があるなぁ・・・
   と感じました。

   さんねん峠は、なだらかな峠。
   春も秋も誰だってため息がでるほどの
   美しい眺めの峠です。
   このさんねん峠には、昔から言い伝えがあります。
   「さんねん峠で ころぶでない
    さんねん峠で ころんだならば
    三ねんきりしか いきられぬ
    ながいきしたけりゃ ころぶでないぞ 
    さんねん峠で ころんだならば
    ながいきしたくも いきられぬ」
   だから、みんなころばないように
   おそるおそる歩きました。
   でもでも石につまずいて、ころんでしまったおじいさん。
   まっさおになって、がたがたふるえました。
   さぁ・・・どうなる?
   最後は、とっても楽しい結末。
   良かったら読んで見てくださいね。
   小学校3年生の教科書に、
   全文ではありませんが、紹介されていたお話です。


へらない稲たば
   『 へらない稲たば 』 
   季錦玉・作/朴民宜・絵 (岩崎書店)

   ちょっと前にフォア文庫の『 さんねん峠 』を紹介しました。
   その中の「 へらない稲たば 」というお話の絵本があるという情報を耳にしたので、早速図書館で借りてきました。

   兄のチョルと弟のトルは、仲の良い兄弟。
   お日様の光をいっぱい浴びて、かけまわり、元気良く、大きくなりました。
   兄はお嫁さんをむかえ赤ちゃんが生まれました。
   ところがふたりのお父さんが病気になり
   「お父さんがいなくなってもケンカなんかするんじゃないぞ」
   と言って目をつぶりました。
   ふたりは、互いに助け合い一生懸命働いたので、
   秋にはたくさんの米が取れました。
   兄のチョルは「まだまだ足りない物だらけだろう」
   と弟を思いやり
   弟のトルは「兄さんちは家族が多い、うちは半分もあれば足りる」
   と兄を思いやり
   お互い自分のうちの稲たばを相手の家の稲むらに積み上げて
   帰ってくるのでした。
   しかし、「へんだなぁ。稲が減ってない」
   ふたりは不思議でなりませんでした。
   ある月夜の晩、稲たばを担いだふたりが道で出会ったのです。
   なんだそうだったのかぁ・・・。
   兄の胸には、弟の優しい気持ちが、弟の胸には、兄の気持ちが、
   春の雨のようにしみとおりました。
      *    *    *   *   *   *   *
   このおはなしを読んで本当に優しい気持ちになりました。
   こんな風に、相手を思いやる事ができたらどんなに素敵でしょう。




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