猫記 【大事な猫】


「お前、まだ名前が無いな。」
俺は、年代モノの辞書を開いた。そして、マンションから落ちてきた出会いを表し、
「今日からお前、ドロップだ!」
と、無いネーミングセンスで名付けた。
猫は、居心地のいい場所に戻った、というような表情をしている。

バイトは給料が低いながらも、売り上げは安定してきていた。
そんな穏やかな日常が続いていたが、それはある日でふと途切れた。

いつもはバイト帰りには自宅に居るはずのドロップが、今日はいないのだ。こんなこと、初めてだ。俺は家中を探してみたが、ドロップの姿は無かった。
「ドロップ!」
俺はたまらず外に出た。もしもの事があったら。なんで、いつもいるはずのドロップがいないんだ。
「ドロップは・・・いや、小さな三毛猫を見ませんでしたか?」
マンション中の人に尋ねた。しかし、反応は薄かった。
俺はマンションの階段を駆け降り、車通りの激しい路地に出た。すると、
「ドロップ!!」
車道の反対側に、見覚えのある小さな三毛猫がいた。横断歩道の信号は赤になったが、構わずに、俺はドロップ目がけて走り出した。
それに合わせるかのように、ドロップも走り出した。クラクションが鳴り、ブレーキの音が行き交った。
二人は・・・いや、一人と一匹は無事だった。
きっとあの時の一人と一匹には、クラクションの音も運転手が怒鳴る声も聞こえていなかっただろう。

俺たちは、自宅に帰った。俺は、腹を空かしているだろうと思い、いつもより多くご飯を与えた。ドロップは、おいしそうに幸せそうにそれを食べた。
それを見ている俺は、癒された。

ペットって、こういうものなんだな、と感じた。
俺の目の前に彼が落ちてきたのも、全ては運命なのかも。ありがちな言葉だが、本当にそう思った。

その後も、ドロップは毎日失踪した。俺は、何かあるな、と感づき、次の日はドロップを尾行した。そう、その影には、彼が心を惹かれたメスの猫がいた。
(ははん、ドロップは毎日、あの猫目当てで出かけていたんだな。)
そう思いながら、その様子を眺めていた。
少し経つと、メス猫の後ろに、美しい女性が現れた。
(まさか・・・あの猫の飼い主!!?)
そんな思いも束の間に、美しい女性は、そこを通り過ぎた。
(なぁんだぁ・・・)
独身の俺は、少しばかりガッカリした。
「ドロップ!」
俺はもう、ドロップを連れ帰ろうとした。が、その時だった!
はいどうも。ちょっと更新遅れました。今回はここまでです。

次回【導かれた運命】

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: