喜久蔵blog

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薔薇とベロニカ  最終話「薔薇と雨」









「彼女、喜久島がどうたらとかチャットに書いてたな。。。」

今も彼女が住んでるとしたら、午後のフェリーに間に合う。


彼女の言うとおり、喜久島行きのフェリーは午前・午後の二便だけのはずだ。

なぜか僕は喜久島のことをいろいろと知っていた。


僕は彼女にベロニカは記憶喪失である自分のことではないかと伝えるべきか悩んだ。


僕は"ふぅ"とため息をつき、ゲームセンターの脇に植えてある大きな木を見上げる。





その大きな木からはひらひらと木の葉が舞い落ち、僕の額にかかった___


























「・・・行こう。彼女に伝えなきゃ何も始まらない。」











僕はタクシーへ乗り込みフェリーへ向かった。













途中、彼女の名前でもある薔薇の花束を買った。












どんな理由であれ僕が彼女を悲しませたことに変わりはないのだ。











花束には





"今日はすいませんでした。      朱弐"








と手紙を添えた。









再びタクシーに乗りフェリーへと急いだ。








外はこの時期に珍しく豪雨。








薔薇の花束をぎゅっと握り締めた僕はタクシーの窓に打ち付けられ垂れ流れる雨を呆然と眺めた。

















僕はあることが引っかかっていた。

















アーケード街で見た幻影。















キミハボクジャナイ







とはなんだったのか。












チャットにいたのが僕じゃないとしたら?










あそこにいたのは蒼壱兄さんということ?












わからなかった。


















タクシーを走らせていると、堤防沿いの道をを激しく打ち付ける雨を歩く彼女が見えてきた。












「停めてください」










ドアが開くとすごい轟音と痛いほどの雨が僕を迎えていた。








タクシーを降り彼女に声をかける。












「__まって__。薔薇の十字架さん!」














彼女は歩く速度を落としただけでこちらを向かなかった。










「あなたが探していたベロニカは僕の兄貴かもしれないんだ!」













彼女の足がぴたりと止まった。











「僕は弟の朱弐です。」










僕は止まった彼女に追いついた。





彼女の小さくか弱い背中に容赦なく鋭い雨。




「兄は・・・・。兄は・・・もうこの世にはいないんです・・・」









うつむいた彼女は"きっ"と顔を上げこちらを見る。








「ベロニカ・・・。死ん・・だ・の・・?」








僕は二年前死んだ兄の死因を聞いていない。





彼女は困惑の表情でこちらを見た。





顔は強張り引きつっている。




僕はただ、彼女を納得させたくなって"兄はあなたに会いにいく途中、海で死んだ"と言った。




彼女は「はは。」と突然笑い出した。




「それじゃ私が殺したのと同じじゃない」






彼女は顔を上げて笑ったまま雨の中を舞った。
















「あなたは何も悪くないよ。」









彼女に嫌われたくなかった。












小さなフェリー乗り場のある港で二人の僕と彼女は海を眺めていた。







「ホント、海のバカヤロウ。だよね」





「この花は兄貴にささげるよ。いいね?」




彼女ははうつむいたままコクと頷いた。泣いているようだ。










僕は海に花束を放り投げた。
























"この女、本当にかわいいなぁ"

























「__それより、僕んちにおいしいお菓子があるんだ。来るよね?」










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