杏子のKIMAGURE缶

その2


 手術時間は思ったとおり、午後1時過ぎから(正確には1:30)だった。なので、それまでの間、何も飲み食いできない。食べるほうはそれほどでもなかったが、咽喉が渇いてつらかった。口のなかがカサカサになって・・・
 ダンナは11時過ぎくらいにきた。今日は会社を休んだのだ。買ってきたコンビニ弁当やらおにぎりやらカップラーメンやらを遠慮会釈なく、すぐ隣りで食べているのでちょっとムシャクシャした。こっちは何も食べられないのに! なのに、無愛想だのなんだのともう何事!? 
 ・・・と前日、ここで食べればといったのをひそかに後悔してた。
 手術中のことは、なにやら夢のようだった。背中に麻酔打つのは超こわかったけど、なんとか1回ですんだ。人によっては入らなくて何回もさすと、あとから看護婦さんに聞いた。(ゾーッ!!)
 だんだん足先からポカポカしてきて、女医さんが、ここ冷たい?と脱脂綿をつけて確認している。メスを入れる時は痛くはないのだが、一瞬チクリとして怖かった。何か上からぐいぐい押されるような感じで、それがとてもいやだった。ちょっと頭がふら~っとしてきた感じだったので、気持ち悪い・・・と訴えたら、酸素を吸って・・・と言われ、吸入器みたいなのを口もとにあてられた。このとき、ずっと手を握ってくれてた人がいて(女の助手さんみたいな人)それがとても心強かった。
 そのうち赤ん坊がでてきた。またお腹を思い切り、ぐいーっとおされて何かひっぱられるような感触がつたわってきて、このときが一番心身ともにつらかった。
 羊水だかなんだかを吸引してるような音がしてたり、執刀医の先生や看護婦さんの声がしたりと夢うつつ状態。
 けど、ついに赤ん坊がでてきて、オンギャー!!という力強い泣き声!!
 「男の子ですよ」という声も聞こえた。
 すぐ小児科の先生にわたされてチェックしてもらって、それから顔を見せてくれた。
 ホコホコと湯気がたっているみたいな真っ赤な顔した、ふっくらとした男の子! おでことほっぺをくっつけてもらって。一瞬のタッチ!
 その後は笑気ガス吸わされて、ほんとの夢うつつ状態になった。
 先生の、「ほう、きれいだね。癒着もない・・・」とかいう声も聞こえて、フーン?て感じ。でも一瞬、先生とナースさんの「プッ」とかいう笑い声が聞こえたように思ったのだが、あれはいったいなんだったのだろう?
 お腹を縫合しているときには、世間話じゃないが余裕ある会話も聞こえてきたので、オペってこんなもんなのかなって思った。いやたぶん手術にしては簡単なもんなんだろう。お医者さんたちにとっては日常茶飯事なのかも!?
 じっさい「エーンガチョ!!」なんていう声も聞こえてたんだからね、私は。なにをやってたんだろう、と興味津々(^^; きっと私も半分は起きてたんだろうなぁ・・・
 (赤ちゃんの体重は3222g、B型、男児。H13.11.5 13:52生)
 術後は部屋に戻って、ベッドで朦朧としていた。そういえばオペ室を出る際、ダンナの顔が見えた。変な顔してたかな、私(^^;?
 帝王切開の人は、術後に足のマッサージをするそうで、靴下履かされて両足に機械をつけられた。空気が送られてきてパコパコ交互に足が動くというやつだ。歩いている状態になるってこと。
 麻酔はまだ効いていたけど、しくしくとお腹が痛いので、痛み止めをもらった。ずっとベッドに釘付けなのがつらかった。
 夕方頃、義父母と義妹にともなわれ、息子がやってきた。息子はあちこち線でつながった(ように見えたらしい、点滴やら血圧計やらで)私を見てショックを受けたらしい。
 こっちへおいでといっても、いいといって顔をあさってのほうへ向けてしまうし、お菓子をやるといっても、家にあるからいい、と普段の彼にあるまじき反応。(しかし好物の?チョコ菓子「ポルテ」は食べてった)
 そんですぐに帰ってしまった。よっぽど、怖かったのかな?
 そんなこんなだったが、それでもその夜は眠れてよかった。前日の寝不足がたたったのかも?
 夜、ちょっとだけ赤ちゃんがきて、お乳をやってみた。力強く吸ってくれた、うれしかった・・・

  読書(午前中のみ)  「死にぞこないの青」(乙一)幻冬舎文庫

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