「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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滑稽な愛情のエゴイズム
フロムは多くの言語が所有を「私は持つ」と表現しない言語の方が多いことを指摘している。僕が教えているギリシア語では、「私はそれを持つ」とはいわずに「それは私にとってある」という表現をする。人についても同じである。「私は子どもを持っている」とはいわずに、「子どもが私にとってある」という表現をする。人は人を所有することはできない。近い関係であればせいぜい「あなたは私にとってある」というしかない。「私にとって」と試みに訳したが、「私のため」にという意味ではない。
このあたりのことがきちんと理解されていなければ、人が人を所有できると思ってしまうことになる。嫉妬は所有できないはずなのに所有できていないことに気づく時に起こる感情である。
ジョン・ベイリー『作家が過去を失うとき』(朝日新聞社)は、アルツハイマー病を発症したアイリス・マードックを夫である文芸評論家ジョン・ベイリーが介護の日々の中で、夫婦で過ごした四十数年を回想した本である。マードックは戦後英文学界を代表する作家であるが、僕には『善の至高性ープラトニズムの視点から』の著者、オックスフォード大学で教鞭を取った哲学者として親しい。
最初の章(「あのころ」)はアイリスと出会った頃のことが書かれている。ジョンは28歳、アイリスは34歳だった。ジョンは率直にアイリスへの嫉妬心を告白している。
「感情とは複雑なもので、愛情のエゴイズムにはどこか滑稽で、いじらしいところがある」
アイリスは他の人とは関わらずコレッジの狭い一室に尼僧のように暮らしている、とジョンは思い込んだ。「ほかの男と交際した過去もなければ、私がいない未来もない女性」と空想した。そんなはずもないだろうに。優越感を表明しているようにも見えるが、実際は自信のなさの表明である。
アイリスには性的魅力という「陳腐な要素」は皆無だった、とジョンはいう。そのことで恋心はますます燃え上がった。なぜか。
「彼女には性的な魅力がないから、ほかの男たちの関心を惹かないだろうと思ったのだ」ひどい話だが気持ちはわからないわけではない。
魅力がないとは他の誰も思っていなかった。
「私のナイーブさと、彼女の関心を惹くのは私だけだという説明しようのない思い込みのせいで、彼女がほかの人たちにどれほど魅力的に映るか、その不安と恐怖を直視するのをやめてしまったのだ」
ライバルの存在(可能的なものであれ)は不安と恐怖を引き起こす。
ある日、アイリスはジョンに小説を書いていて近く出版される予定であることを打ち明けた。内容をたずねるとアイリスはいった。
「だれにもいってはだめよ。ほかの人には知られたくないの」
ジョンはアイリスが秘密を自分に打ち明けたのは自分に恋しているからだろう、と思った。
「私が恋しているのを知り、哲学者の良識でもって自分もまた私に恋していると認めたのではあるまいか」
しかしそうではなかった。「特別の存在」でありたいと思っていたのに、アイリスが小説のことを打ち明けたのはジョンだけではなかった。
ほかの人には知られなくない、といったアイリスが同じことをほかの人にも話すというのもひどい話だと思うが、ジョンの方もアイリスが自分だけに関心を向けていると勝手に思い込んでいたわけであるから同じようなものである。
こうしてジョンはアイリスに翻弄されることになるが、恋している人について傍らの人が見て時に滑稽と思えることは相手を自分のものにしたいという所有欲に起因する。当の本人にとっては笑うどころではないのだが。
もしも自信があれば離れている時も平安でいられるだろうが、自信のない人にとっては自分以外の(相手にとっての)異性はすべて脅威である。
アイリスとジョンはその後どうなったか。ジョンは朝早くアイリスが隣で眠っているベッドでタイプライターを打つ。タイプの音がうるさくないようにと彼女のセーターをひざに一枚敷きその上にオリベッテイを置いて打っているのだ。今はアルツハイマーになっているアイリスだが、そこにいる彼女は昔と同じで今後もずっと変わらないと思いながら来し方をジョンは振り返る。
若い二人は夢中で話し続けた。哲学者のアイリスが子どものようにしゃべった。抱き合いキスをし鼻をこすりつけあいながら。
親密な恋人同士は「またね」といって別れたその瞬間からまたすぐに会いたいと思うだろう。しかしいつまでもこの感覚を持ち続けることはできない。僕はそのような感覚を持ち続けることが重要であるという話をよくするのだが、ジョンは、二人の関係についてこんなふうにいっている。
「すでに私たちは、オーストラリアの詩人A・D・ホープがいったように、夫婦は「親密になればなるほど離れていく」という、奇妙だがありがたい過程に入りつつあった」
「結婚で私が享受している孤独は、アイリスもそうだと思うが、明日は相手といっしょに散歩できると知りながら一人で散歩に出かけるようなものだ。外の世界を締め出したり、外部の人や物事にたいする感覚を鈍らせ鈍らせるような孤独ではない」
このように離れている孤独を「享受」できなければ不安になり、あらぬ妄想も浮かぶことだろう。
結婚したからこんなふうに離れていられるというわけでは必ずしもないが、一種の安心感のようなものはあるということだろう。
問題は、結婚してもなお相手を所有しようとする人もある一方で、「親密になればなるほど離れていく」とここでいわれているのとは違う意味で、相手への関心を急速になくしてしまう人もいるということである。これについてはまた別の機会に。
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