♭Day Break♭

♭Day Break♭

第8話「歌」



あなたのそばにいたかったから。

紅の瞳をもった少年は優しく笑った。





第8話「歌」




レッド達が戦闘態勢に入るとデビナールもミュラーも体制を整えた。

彼らはまだ無傷に近いために、そんなに無理はできない。

それに、シルバーの実力はわかってはいるがメイプルの実力はわからない。

あまり最善には出したくないのが本音だが……。

「あんたたち、絶対たおしてやるわ!」

「うるさい女だ。盗賊のくせにでしゃばりやがって。」

ちっと舌打ちをするデビナール。

それに、ミュラーもうんうんと頷く。

「盗賊のくせにでしゃばりやがって、か。…後悔してもしらないからな。」

ふっとシルバーは笑うと、目にもとまらぬ速さでデビナールとミュラーに接近。

そして二人の腕を切り刻んだ。

赤い血しぶきが、再び宙に舞った。

「な…!」

「さすが俊足の銀(ぎん)。」

「ありがとうございます。赤さん。」

血を軽く振り払うと、もう一度構えた。

メイプルは先ほどシルバーから強奪(!?)したナイフで間接攻撃をくらわす。

ナイフが太ももや二の腕に刺さるデビナールにたいしてミュラーは身軽な動きで回避をしていた。

ちょこまかと…!!とメイプルの怒りのボルテージが上がっていると、後方から……。

「紅葉っ!!銀!さがって!」

「「??」」

と叫んだのはオレンジだった。

オレンジはカプセルを構えていた。

自分が戦えない、ならば彼に任せよう。

そういうまなざしで一同を見た。

一同はそれに納得。先ほどはけがされたくないとは言っていたが、汚されるまえに、彼の持っているカプセルにいる…ルギア…ルー様はまず彼らを近くに接近させることができないであろう。

何せ、ポケモンたちの神様なのだから。

「…朱!本気なの!?」

「あぁ!ルー様もお怒りだ。頼んだぞ、ルー様!」




ボムッ!!




カプセルからは、全長5mはあるルー様が姿を現した。

そしてデビナールとミュラーをにらんだ。

「…!!伝説のルギア!?なぜだっ!なぜおまえが伝説を…!!」

デビナールはオレンジにどなった。

オレンジはそれも聞かずにルー様の背に乗った。

ルー様が背を低くし、オレンジを背に乗せると語りだす。

『私が自ら朱についたのさ。……お前たちが伝説を探し回っているのを察知したのは私だからな。友…ホウオウも誰かをパートナーとしているだろう…。お前たちは、私の仲間を傷つけすぎた……。ここで、私の裁きが下るのを嬉しく思え。』

よし、はばたけ!とオレンジが命令するとゆっくりルー様はうなずいた。

ルー様が羽ばたくと、大きな嵐が起きた。

彼が羽ばたくと、40日間嵐が止まらないという言い伝えを聞いているデビナール達は後ずさった。

それに、彼は莫大な力を秘めていることも上司から知らされている。

「…さ、さすがルギアね。」

「まぁな。おれにはなぜあいつを主に選んだのかが不思議だ。」

メイプルとシルバーが会話をしていると、ルー様はサイコキネシスを相手に浴びせ、遠くの方まで飛ばすことに成功した。

神ならば、超能力で遠くに飛ばすことも可能だ。


ことは、一瞬として終わった。

一同の力は一気に抜け、その場にへたり込んでしまった。

「おわったんすねっ!!」

「あぁ。…ありがとう。ルー様。」

『いや。私も我慢ならなかったんだ。仲間なら当然だろう?それよりも、緑と紅を手当てしてやれ。お前たちより深い傷を負っている。』







―――あの事件から一週間が経過した。






あのあと、グリーンはすぐに目を覚ましたが、ルビーはいまだに意識は戻ってはいなかった。

昏睡状態、とでもいうのだろうか。

屋敷の中を、ポケモンたちが楽しそうに掛けている中…グリーンはルビーの看病をしつつも自分自身を責めていた。




―――あの時、俺が健全であれば…。あいつはこんなことにならなかったのか…?

あの時、俺があいつを助けなければこんなことには……。


ルビーを見つけたあの日。

助けた当初はかなり拒絶されていた。だが、ひょんなことで弟子入りをしてきた。

『あなたの力になりたい。この、救われた命…貴方のためにあるようなものです。』

『俺のため?違うな、お前自身のためだ。』

『ですが、僕が絶望の淵に立っているのを、あなたは光となって手を差し伸べてくれた。それが何よりの…僕の人生を大きく変えた出来事です。』

ルビー自身を、俺という呪縛で縛っているだけだ。

グリーンはあの時の悔しさをパートナーたちにも打ち明けることができずに一人で一週間も悩んでいた。



このまま…ルビーが目覚めなかったら、間違いなく……俺のせいだ。



ずっと頭を抱えて悩むグリーンに、彼のパートナーたちは必死に慰めていた。

それを見たルビーのパーティ…RURUはあわててある人物を探すことになった。






「イエロー!!これ見てくれよ!!」

そんな声が、部屋に響いた。

そちらにRURUが足を進めると、探していた人物が仲間たちに囲まれて笑っていた。

この前の怪我もすっかり感知している。

彼が持っていたのは、珍しい木の実だった。

「わぁ!!おいしそうですね!!どうしたんですか?」

「ん?いやぁ、ルビーが目を覚まさないからさ。目を覚ましたらプレゼントしようかなって。それか、マフィンをこれで作ろうか?」

「いいですねっ!!マフィンはポケモンたちも好きですし。どうです?ブルーさん!!」

作業をしていたブルーは、いいわね。作りましょvvとウィンクしてみた。

たくさんの木の実があるのだ。その数だけできるであろう。

ただ、RURUはオレンジをじっと見ていた。

彼女は、恥ずかしがり屋でなかなか自分から話そうとはしないのだ。

それを見た、オレンジのキーぼうとレッドのブイがRURUに話しかけた。

『どうした?』

「フィィ?」(どうしたの?)

「!!フォ、フォォオウ……。」(グリーンさんを慰めたいんです。私じゃ、言葉通じないので…オレンジさんの力を借りたいのです。)

もじもじとしながら、RURUは必死に説明した。

それにうなずくキーぼう。ブイはいい考え!とでもいうように鳴いた。

『俺が呼ぶ。だから用件だけは自分でいうんだぞ?』

「!!フォ、フォォオオウ!」(いぇ!!おかまいなく!!私でいいますから!)

『え?自分で呼ぶ?…大丈夫か?』

コクコク!とうなずくRURUはすぐにかけてオレンジのところへ向かった。

その様子を、二階のバルコニーからみていたフローゼルのゼル君と、メイプルのパーティシャワーズ、そしてイエローのパーティオムすけは不思議そうに首をかしげた。

『RURUちゃんだ。』

「キュィ?」(どうしたのかしら。)

「キーキー……。」(主人のことじゃないかな。)





ぐい。



RURUは静かにオレンジのマントを引っ張った。

それにびっくりして振り返るオレンジ。

彼の慎重よりもはるかに背の高いRURUに驚きを隠せない。

「どうしたの?」

「フォ、フォォオウ…。」

「……オレンジに、手伝ってほしいことがあるみたいですよ。お菓子作りはぼくらに任せて、RURUについていってあげなよ。」

「わ、わかった。」

イエローの通訳でうなずくと、RURUに手を引っ張られながら、オレンジはその場を退室した。








RURUのお願いは、オレンジに触れている間喋られる。

グリーンに贈りたいものがある。

だから、手を貸してほしい。そういうことだった。

オレンジはもちろんOKした。

彼自身も、ルビーがすごく心配で、彼が喜ぶ木の実をたくさん一週間でとってきたのだ。

気持ちが一緒なら、仲間なら手を貸す。それが彼のモットーだった。

「グリーンさん!」

「…オレンジ…?それに…RURU。」

ゆっくり顔をあげるグリーン。RURUはゆっくりと口を開いた。

ぎゅっとオレンジの手を握ったまま。

『私、あなたが自分を責めているの…知ってます…。でも!!ルビーは、あなたに助けてもらったこと…うれしいって思ってくれています。……だから、私が…あの時、あなたとルビーが出会った時の…ルビーの気持ちを…歌って……ルビーの気持ちを伝えます…。』

グリーンの表情がこわばった。

オレンジはじっとRURUを見ていた。

がんばれ、がんばれとほほ笑んで見せた。RURUも、オレンジに微笑んだ。

そしてゆっくり歌いだす



――♪

遠い日の約束 ずっと忘れない

心に差した 一つの光 だれかじゃなくて きっとあなただったから

大切だった


守ると決めたから そばにいる

そばにいたいから 守りたい


あなたと出会ってから心は温かくて

いつも安らぎのある場所

探していた大切な絆

だからこの手は 離さない

離しちゃいけない

ずっとずっと大切なもの

一つの温かな絆  ---♪



歌い終わると、恥ずかしくなったのか、RURUはオレンジの背に隠れた。

オレンジはいい歌だー!!と笑う。

その歌声は、屋敷のみんなにも聞こえた。

RURUの歌声は、女神の歌声。そう思うかのような癒しの唄。

「…ルビー…。」

グリーンはつぶやくと、うつむいた。

涙をこらえているのだ。…悔し涙。いや、うれし涙か。



その涙が、ルビーの手の上に落ちた。



それに反応するかのように…ルビーは目を覚ました。




「……グ、リーン…さん…?」

「…!」

「約束…ですから………、僕は、平気ですから…。」

その声が、グリーンには安心感を与える。

一週間も聞かなかった、……聞きなれた声。

それがとどめとでもいうように、グリーンは優しくルビーを抱くと、その肩で涙を流した。

「…よかったなぁ。RURU。」

『はぃ…。よかった…。』

それを聞きつけた仲間たちが、ルビーの部屋に集結した。

「ルビー!!やっと目がさめたとね!?」

「うん。心配かけてごめんなさい。」

「よかったったぃ~!!うわぁあああん!!」

「サ、サファイア泣かないでよ…!!あぁ!!みんなまで…!!」

サファイアが泣き、ゴールドが男泣きをする。

イエローは微笑みながら涙をため、レッドに寄り添った。

クリスもイエローと同じ、微笑みながら涙をためる。エメラルドはよかったよかったとオレンジとともに笑い合っていた。

「ちょうどよかったわ。いまマフィンができたの。みんなで食べましょvあ、グリーン。ルビーを運んであげてね。まだ無理はできないんだから。」

「…わかっている。」

「あらー?泣いてるの?グリーン。…あなたが泣くなんてよっぽどのことねぇ。」

「うるさい。」





また、いつもの日常が戻ってくる。





ルビーは、皆が去った後に、小さくつぶやいた。


「一緒にいたいと願ったのは僕だけど…、生きててよかった。」




―――END--- 




ほのぼのエンドー。


次回から、また新キャラが出ます!


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