その12
その次の日から花沢類は非常階段に姿を現さなくなった
今更ながらに気付いたコトはあたしたちの接点は非常階段だけで
それ以外で会うなんてコトは無かったから
どちらかが非常階段に足を運ぶ事がないと逢うことさえない
花沢類と逢えなくなって1週間以上経った・・・
それでも毎日、懲りずに期待して重い足をひきづって
ほんの少しの期待を胸に
前よりも更に長く感じる階段を駆け上がってる自分が
ケナゲで底抜けにバカでかわいそう・・・なんて力なく笑う
笑ってるはずなのに少し目頭が熱くなってじんわりと何かが滲んで
あたしの周りの世界だけが歪んでくる
ズズっと涙を啜って肩で大きく息をして太陽を見上げる
あんまりにもいいお天気でそのままゴロンっと後ろに寝転がる
寝転がって見る太陽は
すごく大きくて
すごく眩しくて
少し目を逸らしたくなる
目を瞑ると花沢類が隣に居た日々を思い出し
軽く頭を振って違う事を考えようとすると
花沢類と静さんが仲睦まじく微笑み合ってる姿を想像してしまって
慌てて飛び起きて髪の毛をクシャクシャっと掻き毟る
花沢類が幸せになってくれるんならいいじゃない
花沢類の想いが叶ったんだからいいじゃない
どうして・・・ どうして・・・ なんで・・・ なんで・・・
素直に喜んで上げられないのよ
あたしはただの片思いだったんだから・・・
こんな思いするのはあたしだけでいいじゃない
花沢類は片思いを卒業して静さんと気持ちが繋がったんだから
あたしの大切な想い人が幸せを掴んだんだから
あの人の笑顔を見ていたいと思ってた
あの人の笑顔を守りたいと思ってた
傷ついてる花沢類を抱きしめたかった
傷を癒すのがあたしでありたかった
あたしのために笑顔を向けて欲しかった
あたしのためだけに笑っていて欲しかった
「 はあぁ・・・ 」
大きな溜息をひとつついて腕を頭の後ろにおいて
もう一度後ろにゴロンと寝っ転がって肝心な事に気がついた
あたし・・・花沢類に自分の気持ちさえ伝える事が出来なかったんだ
傷心に漬け込むように想いを伝えるのはイヤだったから
心の傷が癒えて花沢類がココロから笑えたら
自分の気持ちを伝えたい
溢れ出そうなほどの 零れ落ちそうなほどの
この想いをあなたに伝えたかった
叶うはずの無い想いを 今
この胸の中に収めておくしかない

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