kokuma@の徒然日記

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その3-14

その14

「反対側からなら パンツ見えそう・・・ 」

突然 頭上から声を掛けられて 慌ててがばっと起き上がる

―そして 少し開いた状態だった足を閉じる

―そして 短めのスカートの裾を押さえる

―そして 今までの感傷的な気分は ちょっと吹っ飛ぶ

聞きなれた声

聞き間違えるはずの無い声

ずっと ずっと 聞きたかった声

待ち望んでた声

「はなざわっ るいっ! 」

ふわぁっと 大きく欠伸をしながら

首をコキコキ ―気だるそうに 眠たそうに 

あたしの隣り ―今までの定位置に 当たり前のように 腰を下ろす

彼にとっては 何気ない 何の意味もない行動だったかもしれない

でも 自然と あたしの横に座ってくれるのが嬉しくて

まるで 今までと 何も変わってないんだと・・・

都合のいいように錯覚してしまいそうになる

彼には トクベツな人が ちゃんと存在するのに・・・

あたしがいくら手を伸ばしても 届くはずの無いトコにいる人・・・

小さく溜息をつく

少し前までは 彼の隣りは 少しドキドキするけど

心地よくて 胸がわくわくして キュンとして 甘くて

辺りの空気がピンク色に染まっているような 幸せ空間だった

なのに

今、 彼の隣りの空間は 切なくて 苦しくて

伝えたい想いが 胸の中でグルグルに渦巻いて

下を向いて 唇を噛み締めておかないと

ふ、とした拍子に 涙が零れそうで

「おとなしいね? 」

後ろに手を付いて 長い足を放り出し膝を立てて座ってる花沢類が

俯いたままのあたしの顔を下から覗き込むように

ちょこんと 小首を傾げて  どうしたの と、問い掛ける

何をどう答えても

何をどう尋ねても

どう話しても

上手く話すコトはできない そんな気がして

そのまま グッと 気合を入れて 顔を上げて

「えへへ・・・ そう? そそそそそんなコト無いよっ

げげげ元気! 花沢類は? げんき? あはは 久しぶりだよね

そうだっ 静さんは? 元気だった? ・・・。」

動揺すると よく喋る・・・

花沢類には突っ込まれなかったけど

自分で突っ込んでやりたい

地雷を踏んでしまった・・・

一番聞きたくない 

一番知りたくない

そんな話を そんな言葉を 自分から投げかけてしまうなんて

花沢類の口から 静さんの話なんて聞きたくないよ

ふんわり温かい笑顔で 静さんのコトを話す 花沢類なんて見たくない

なのに・・・

自分から ネタ振りしちゃうんだから。

あたしって相当バカだ

「帰ったよ・・・」

真っ青に広がる 空を仰ぎながら 花沢類が ボソッと呟いた

「そっか・・・ ごごご、ゴメンね。寂しい事思い出させちゃって

でも 世の中には 遠距離の恋愛なんてしてる人は5万といるしさ

フランス。。。なんて そう遠くないトコじゃん・・・

そりゃ、行ったコトは無いけど 多分・・・ 

飛行機に乗ったら すぐ着いちゃうんじゃない きっと・・・」

「遠距離恋愛? 」

「・・・そそそう・・だよ。 またすぐ 逢えるよ・・・

ふたりの絆は そそそんな 簡単には 切れない・・・」

あ、やばい・・・

涙が零れちゃいそう

そう気付いた時には 止めるコトは もう不可能で

瞬きせずに 唇噛んで 堪えていたけど

溢れ出る涙は 意地悪で

次から次へと 湧き上がり

ポタっと 音も立てずに 手の甲に 落ちた

止まってよ 涙

お願いだから

隣に座る 彼に気付かれる前に

どうかお願い 涙が枯れて晴れますように

「牧野? ・・・泣いてるの? 」

お願い そんな優しく声を掛けないで・・・

お願い そんな優しい色の瞳で あたしを見ないで・・・

あたしは 濡れた頬を見られたくなくて スクっとその場で立ち上がり

スカートの裾を翻し 彼に背中を向けたまま パパパッと裾を払って

小さく深呼吸をして ―発する声が 涙声にならないように・・・

精一杯無邪気ぶって 大きく笑った

「あははは 何で・・・? 何であたしが泣くの? 

泣いてないよ・・・。 そだっ! 次の授業でなきゃ や、やばいんだっ

じゃね・・・ 花沢類・・・ また・・ね・・・。」

後ろを向いたまま 

精一杯の強がりで 明るく振舞って あたしの任務は完了。

あたしの小さな初恋も終了

彼を想う あたしの気持ちも 今まで彼と過ごした時間も

全部 全部 おしまい・・・

胸が痛くて 苦しくて 呼吸が上手く出来なくて

ただ早く この場を去りたい

彼の姿を一度も見ないまま ガラス戸に手を掛けた瞬間

グッと引き戻される感覚が全身を襲って

振り向いた時には 目の前に広がるのは 花沢類のシャツ一面

高そうなコロンの香り・・・

規則正しく音を刻む鼓動・・・

伝わる温もり・・・

締め付けられる強さ・・・

全てに眩暈を起してしまいそう


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