こまた☆たまこのジュネーヴ通信

冬のコマタ・前編



Okuboodori20041022



ある日の午後

部長)「たまこくん、ちょっと話しがあるんだが、来てくれたまえ。」


たまこ係長)ランチに食べたビビンバのもやしのヒゲがどうやら歯に挟まっているらしく、さっきから気分が落ち着かない私は、いそいそと部長の前に傅いた。


部長)「君は、ハングル語が出来るらしいな、いや~すばらしい!我が社も随分と国際的になったものだ。これからは、アジアの時代だよっ!いや~、ウチの嫁もヨン様の大ファンじゃよ。ワッハッハッ!」


たまこ係長)わたしは、典型的B型と思われる部長のイマイチ先の読めないその行動パターン&部長の前歯に挟まっているもやしのヒゲを発見し、いや~な予感がし始めていた。


部長)「いや~ね。先日の取締役会で我が社も韓国株の取引を本格的に開始しようという事になってだな!何名か現地の証券会社で研修してもらう事になったのだ。そこで、今日、人事部で自己申告書を見とったら、なんとっ!灯台元暗しじゃ、我が部の君の特技欄にハングル語と書いてあるじゃないかっ!ワッハッハッ!っで、君に行ってもらうことになったのだ。」


たまこ係長)冷や汗タラ~ッリ。「あっ、あの…、部長、それ実は…」わたしは、単に、冬のソナタ・フリークというだけでありまして…決してハングル語が出来るというレベルであるはずもなく…。しかも、ただのぺ・ヨンジュン&ウオン・ビン・ファン、つまり単なる韓流ミーハーなだけであって――――、嗚呼…っ、新年の誓いのつもりで調子に乗って特技欄にあらぬことを記入してしまった自分がニクイ、もーっ!パカ・パカ・じぶんっ!


部長)「っで、研修は、サ来週の月曜日から一ヶ月間。お土産は、韓国海苔とキムチでいーから。ワッハッハッ!」


部長の高笑いに背中を押されて(岸壁から付き落とされた感覚で)、たまこの冬のコマタ、怒涛のソウル修行時代がこうして幕を開けたのだった。



極寒のニンチョン空港にて

時は2月。こんな時期にソウルで研修だなんて、単なる嫌がらせ以外の何物でもないわいっ!っと、ソウル到着早々悪態を着きまくるたまこ係長、若干3十ウン歳。「さみーよー」吐く息が白いよ~ん。研修出張決定後、2週間でなんとか挨拶・日常会話をビビンパのごとく詰め込み(下痢寸前)、後は野となれ、山となれ、私は誰?「さんまさんと行きたかったよ♪」のユンソナ精神で、なかばヤケクソぎみでソウルに乗り込んだわたくし。まずは両替。そして、しつこい白タク・アジョッシ・ドライバーをけちらし、10,000ウオン払いリムジンバスに乗り込みいざソウルの街へ。



未知との遭遇

「ヨボセヨ、タマコ ラゴ ハヌンデヨ。ナムスシ ジョムパックオジュセヨ。」通じてるんだろーか?私の完璧なまでのボウヨミ・カタカナ・ハングルゴ。かなり、不安ではあったが、チェ・ジウ似の整形美人受付嬢は、私用と思われる電話を保留にしながら、顔色ひとつ変えずに、しっかり仕事をこなしていた。ここは韓国、そう、口に出したもん勝ちの韓国である。「謙虚」という文字は、もはや私のテハンミンゴ辞書には無い。そこに、颯爽とわたしの前に現れたナムスシ。


ナムスシ:「アンニョハセヨ、オソオセヨ。」


たまこ:「アンニョハセヨ。チョヌン たまこ イミュニダ。パンガブスムニダ。」出来てるやんっ!ここまでは、完璧だ。ビバ、NHKラジオ・ハングル講座!ところで、このナムスシ、誰かに似ている。そう、1年に1度国民的お約束歌手のあの方。このフルメイク…。こっ、小林幸子だーっ!この方が、わたしの研修中のお目付け役――もとい――お世話役となる総務課のアジュンマ社員・ナムスシであった。



研修初日

っと、早速研修部署となる営業部へ通されるわたくし。それにしても、韓国男子の上から下までなめまわすようなこの遠慮の無い視線、どーにかならんもんだろーか?まさか、わたしが「よろこび組」に所属するような美人であるはずも無く、哀しい現実を確認しただけのその視線達は、そそくさと各々の仕事へと戻っていった。ほっ。私は、松嶋奈々子風のナチュラル派なのよっ、ナチュラル派!


っと、背後からなにやらニンニクの匂いが…「お~、貴方がたまこシですか~?ようこそいらっしゃいました。」なんとっ!教育テレビから流れるような正統派にほんご。「わたしは、キム・ウジュンです。貴方のトレーニーです。これから一ヶ月間宜しくお願いします。」なっ、なんて…韓国美男子お約束通りの美しいお顔立ち。しかも、たまこの理想にピッタリなまでのその歯並び、そしてサムゲタンのような白い肌。こうして、わたしは、オッパとの運命の対面を無事果たしたのであった。しばし彼のニンニク・コロンに幸せな気分で包まれていたのであった…。


はてさて(?)想像はしていたものの、いやはや(!)大韓民国民は総じて声がデカイ。しかも、親しさに関係無く、顔面の約15cmの距離で話しかけるものだから、研修初日のわたしの耳は、夕方には既に一日の許容範囲デシベルを遥かに超える数値を示し、耳鳴りさえしてきた。そして、わたしは、まるで借りてきた猫のようにおとなしく、(犬だとここ韓国では食われちゃう可能性があるから、あくまでも可愛らしい猫のフリ)愛しのダーリン・キムシの横に座り、(本当は、ヒザに座りかかった←アホかっ!)書類の整理などのお手伝いをしていた。


そこに、退社時間だというのに、一偏のお化粧くずれさえ見えない例のナムスシ登場。「お疲れさまでした。プサン出張から午後にお戻りになったパク部長がたまこ氏の歓迎会をしようとおっしゃってます。」へっ!?このアジュンマの悪魔っ!日本語しゃべっとるやんっけっ!しかも、流暢やないかいっ?一体どないなっとんの?そして、身内に対する敬語使用。むっむっむ?オヌシ、只者ではないなっ?などという、私の疑問などお構い無しに、その2分後には、わたしはスペースマウンテン真っ青のソウル・タクシー車上の人となっていたのであった。



後編につづく




© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: