マイペース70代

マイペース70代

悪夢の思い出

「悪夢の思い出」

私は、毎日のように夢を見ている。
30代くらいまでは、その夢を目が覚めても覚えていることが多かった。
いつの頃からか、目覚めても夢の内容を忘れるようになったのは、
年齢による記憶力低下のせいなのか、別の生理的変化なのか・・。
いずれにせよ、私はあまり楽しい夢を見ないほうなので、
忘れてしまってもちっとも淋しくはない。

さて、幼い頃、繰り返し見る悪夢が二つあった。
一つは、 太くて長~い縄を背負って、暗闇の中を必死に歩いている夢。
肩に食い込むような縄の重さに耐えかねて、
それを投げ捨てようとしてもどうにもならない。
後ろを振り返ると、長い縄の先は暗闇の中に続いている。
私は仕方なく、またそれを背負って必死に一歩一歩歩こうとしているのだ。
この夢は、かなり幼い頃から小学生くらいまでの間、よく見ていたように思う。
目覚めた時は、「あー、疲れた!」という感じだったように思う。
しかし、あまりにも昔のことなので、正確ではないかもしれない。
それでも、夢の光景だけは、今でも思い出せる。
年齢を重ねるうちに次第に見なくなったのだが、
大人になっても忘れた頃に時々見て、
夢の中で「あ、これはあの夢だ」と思いながらも、
やっぱり縄を下ろすことはできなかった。

もう一つは、 「焼け跡をさまよい死体処理をする夢」 である。
こんな夢を、小学生の頃から20代までしょっちゅう見ていた。
いつも同じ夢であり、さらにとてもイヤな夢なので、
これもはっきりと覚えている。
「輪廻転生」という言葉を知ってから、
私の前世は戦争で死んだに違いないと思ったりもした。
この夢の内容は、
最初は、(多分戦争による)焼け跡の、
まだ煙がくすぶる中を歩いている光景から始まる。
時々、道端に転がっている死体を踏んでしまって、
その「グニャッ」とした感触に、
「腐ったトマトを踏んだ感じだな」と思う。
(我家は農家だったので、病気などで腐って落ちたトマトが捨てられていて、
 それを踏み潰す感触と似ていたのだ)
焼け跡特有なのか、あるいは亡くなった人の腐臭なのか、
嫌な臭いまでも感じていた。
やがて私は、他の人たちと力をあわせて、死体を始末する作業をしていた。
しかし、「気持ち悪い」などとは全く感じず、
早くしないと死体がどんどん腐っていくと、とても焦っているのだ。
この日記ではちょっと書けないようなこともしたりする。
断っておくが、あくまでも「しなくてはならない」という思いでの行為なのだ。
気持ち悪いとは思ってはいないが、夢の中の気分は最悪である。
そんな気分の時に、夕焼けを見るのだ。
それは本当に美しい夕焼けで、
「こんな時にも、夕焼けがこんなに美しいなんて・・」と思っている。
たいてい、そのあたりで目が覚める。

この夢を見たときの目覚めは、いつも最悪であった。
寝汗をかき、寝起きとは思えない疲れにグッタリしているのが常だった。
体調が悪いから悪夢をみるという感じではなく、
悪夢をみるから体調も悪くなるという感じだった。

子どもの私が、なぜあんな夢をみていたのか、今でも不思議だ。
しかし、この夢も30代くらいまでに見なくなったような気がする。
先日の「東京大空襲」の日、テレビの映像を見ていて、この夢を思い出した。
しかし私の夢には、爆撃に逃げ回っているような夢はない。
そんな夢なら、もっともっと怖かっただろう。
ましてや、夢ではなくて現実にその体験をした人たちの思いは
いかばかりであったか。

悪夢のような現実を生きている人達が、世界にはたくさんいる。
戦争体験者がいなくなってしまった日本の未来が、とても心配である。

(2005年03月12日)

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