マイペース70代

マイペース70代

青春や若さって、そんなにいいもの?


「青春時代に戻りたい」と思う人は、きっと素敵な青春時代だったんだろう。
私は残念ながら、青春時代に戻りたいなどとは、一度も思ったことがない。
他人から見たら、それなりにキラキラと見えていたのかもしれないが、
私の内部ではいつもどす黒い思いが渦巻いていて、
最後には強烈な挫折感で青春時代にピリオドを打ったような感じだ。
あの日々は、毎日が永遠に思えるほどに長かった。
このように毎日を過ごし、老年期まで生きなくてはならないのかと思うと、
本当にうんざりする気持ちだった。
できることなら、サッサと適当にこの世からおさらばしたいと本当に思っていた。

長く生きることをとても恐怖に感じた原因の一つが、
大多数の大人たちが「若いってすばらしい」とか、
「青春時代が一番」のように言っていたからだろう。
当時の私は中年期も老年期も体験していないから、
きっとそうなのだろうと思うと同時に、
「これからドンドン人生が暗くなるんだ」と思うと、
大人が「いい時代だ」というその時に既にシンドイ私は、
未来に希望なんて持てるはずがないと感じていた。

しかし、「それでも、命がある限りは生きなくてはならない」というところから、
私は大人としての人生を歩き始めた。
だから結婚した時も、必要以上の夢や憧れはなかったと思う。
「こんな私でも結婚できたぞ、頑張ろう」という気持ちはあったが、
「これからどんな苦労が待ち受けているのか」という気持ちも同時にあった。
まだ、日々の生活の中にささやかな喜びを見出そうなんてゆとりもなかった。

そんなこんなでやがて30代に入り、
私はある時「おや?」と思った。
若い頃よりも、ずっと楽しいではないかと。
共働きで子育てをしていたら、そりゃ悩みや苦労だってある。
だけど、気付けば自分の場所がちゃんとあって、
私を必要としている人(特に子ども達)がいて、
失敗したって結構何とか取り返しも付いて、
私は青春時代よりずっと楽しく生きていた。

そして40代。仕事に対する挫折もあったし、
自分の能力の限界も感じていた。
体力だってもちろん低下していただろう。
それでも、青春時代には見えていなかった「やりたいこと」が、
私には見え始めていた。
そして、何と40代で大学の通信課程に入学し、
思いがけず卒業まで出来た。
若い頃にはほとんど味わうことのなかった「達成感」を、
初めて味わうことが出来た。

その上に、40代から今までの間に、
かけがえのない友達も得ることが出来た。
実はこれも、大人たちに脅されていた。
「若い頃の友達は格別」「大人になってからは、なかなか友達はできない」と。
友達を作らなくちゃと無理していた頃には、自分の本音も出せなかった。
だから、いつもどこかで無理して友人関係を保っていた。
しかしこれも、真っ赤な嘘だった。
中年期になって出会った人が、今はとても大切な友だ。

あの「あれ? 若い頃より楽しいぞ」と思ったときから、
私は「今が一番幸せだなあ」と思うことがよくある。
今が一番幸せだから、過去に戻りたいなんてサラサラ思わない。
もちろん、年相応の悩みや苦労は次々と生じてはくる。
祖母の介護から看取りの時まで、あるいは親たちや親戚などとの関係、そして自分の子ども達との関係。
そうそう、共に老いの道を歩いている夫との関係など、
若い頃にはないであろう悩み事だってもちろんある。
だけど、それでも私はやっぱり思う。
「青春の頃より、よっぽどマシだ」と。

自分なりにイメージしていたのよりは、50代はとても若い。
これからどんなことが起きてくるのか、
自分の体の変化も含めて、私は結構面白がっている。
もともとさほど「物質欲、金銭欲」には淡白だったようで、
あまり欲しいものもない。
異性にワクワクしなくては生きてる楽しみがないという人もいるが、
私はそちらもさほど欲求が強くはないようだ。
以前にそんな話をしていた時、
「あなたは何が楽しみで生きているの?」と、あきれたように聞かれたことがある。
そのような人には理解してもらえないかもしれないが、
私はこれで結構楽しく毎日を送っている。
家族や地域の中で自分が果たせる役割があり、
誰かが喜んでもらえることにつながったらとても嬉しい。
新聞や本、ビデオや映画、そしてインターネットなどでは、
私は一生かかってもこの世界を知ることはできないと、
未知なる世界に好奇心をくすぐられる。
また、見知らぬ人との交流だって、結構スリリングで面白い。
自分の内部に次々と湧き上がる思いを、このように書き連ねることも楽しい。

「青春」や「若さ」には素晴らしいことももちろんある。
でも、年を重ねることも捨てたものではない。
少なくてもこの私は、今の方がよっぽど楽しいし幸せだ。

若い人で、とても辛い思いをしている人に言いたい。
「今が一番良い時期のはずなのに」と、今を絶望しないで欲しいと。
今がとっても苦しかったなら、これから良くなる可能性が高いのだと。
人生なんて、生きてみなきゃわからないところがある。
社会を見るとあまり希望的な観測はできにくいけれど、
「個人の人生の質」は、環境に支配されるばかりではない。

最後にもう一度、若い人には「大人の脅しに怯えるな!」。
大人たちには「若い人達を脅しで思い通りにしようとするな!」

≪2005年02月01日≫



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