我流乱舞!

我流乱舞!

非情な日常・能力者・5


まるで鼠を見るような目で見下ろしていた。

梓は俺が何か言おうとした瞬間に叫んだ

「ま、待って!!りゅ・・・劉也は必ず私が殺すから・・・!!!だからお母さんとお父さんを・・・」

男は答えた。

「お前は負けた。もう必要は無い。」

梓は再び大声で叫んだ。

「だ、大丈夫!!!私出来るから・・・お願い・・・!!!」

「いや、お前は役立たずだ、ここで死ね・・・!そうだ、冥土の土産にいい情報を教えてあげよう・・・。坂本 渚と雅史はな、もうとっくにこの世には存在してない!!!!お前は劉也を殺せない!!!そんな事は見え透いていたからなぁ!!!ふははははははっ!!!」

男は甲高く声を張り上げ、笑い始めた
同時に、梓の瞳は絶望に変り、虚ろに染まり、涙を流し始めた

「う、嘘・・・。」

劉也は、一連の会話と自分の過去を比べていた。
黒い服、非情な手口・・・。

男は笑いながら言った。

「まぁ、死ねよ!!両親に会えるぜ?・・・矢崎劉也ぁ!!てめぇもだぁ~~い好きな友達にまた会えるぜぇ??喜びなぁ!!!」

劉也は確信した。

 俺 の 親 友 を 殺 し た の は こ い つ だ 。

「て・・・てめぇかあああああああああああああ!!!!!!!」

劉也はそう叫び、男目掛けて、怒りに身を任せ、跳び上がった。
空中に気体を凝縮した踏み場を作り、空中を階段を登るように男に接近した。
男は微笑を浮かべた。

「ほぉ・・・。殺すには惜しい存在だ・・・。流石は・・・・。」

劉也はある程度接近すると、再び跳び上がった。

「死ねよ。」

男は拳銃を構え、劉也に向けて発砲した。
音速を超えた弾丸は劉也の脚目掛けて、飛んだが、弾丸と身体が接触する寸前で止まった。劉也は無意識下で空絶を身に纏っていたのだ。
劉也は2階の廊下に着地した。

「くらええええ!!!牙突!!!!!!」

劉也は瞬時に空気の槍を作り出し、男の頭部目掛けて放った。
男はその瞬間に出来た、空絶が薄くなったのを見逃さなかった。

「甘いんだよ・・・」

男は牙突を避け、劉也の心臓目掛けて至近距離で発砲した。
弾丸は空絶を破り、肉を裂き、劉也の身体を貫いた。

「ぐ・・・あ・・・。ち、畜生・・・・」

劉也は衝撃で吹っ飛んだ。

「ふん。雑魚が・・・そんな能力で銃に勝てると思ったのかよ?矢崎劉也君?あーっはっはっは!!」

男は再び甲高く笑った。

しかし、心臓を貫かれたはずの劉也には息があった。
『憎い。憎い。全てを奪ったアイツが憎い。』
劉也は目が充血し始め、毛細血管が弾けはじめた。
『憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。』
能力を急激に使ったダメージなのか、血涙まで流れた。
やがて、眼球は朱に染まった。

「お、お前だけは・・・」

男はその劉也の発言に気づいた

「ほう・・・未だ息があったのか・・・。しぶとい奴だ・・・。」

男は劉也に近づき、拳銃を劉也の頭に突き付けた。

「トドメ・・・さしとくかぁ~・・・」

男が引き金を引こうとした瞬間、劉也は動き出した。

「お前だけは絶対に許さねええええええ!!!!!!!!!!!」

叫んだ瞬間、劉也の周囲、一m程の物が吹き飛んだ。
無論男も。
劉也はゆっくりと立ち上がった

「ぐああっ!!な、なんだコイツ・・・なんで動けるんだよ!!!化け物かよ!!」

男は戦慄を覚えた。心臓を貫いた筈の劉也が動いているのだ。

「うぉおおおあああああああああああああああああああ!!!!!!」

劉也の叫びは超高音域までに達し、様々な音を掻き消し最早聞き取れない。
男は鼓膜が破れ、耳からドス黒い血を流し始めた。
異変に気づいた男は、急いで耳を塞いだが最早手遅れ。

劉也は自我を保てなくなっていた。
憎しみだけが彼の肉体を動かしていたのだ。
全ての身体に宿る力を解放し、劉也は耳を塞いでる男に、音速を超えた速度で接近し、投げ飛ばした。

投げ飛ばされて、宙を舞った男を劉也は空中で捕らえ、空中で足場を作り出し首を締め上げた。

「祈る神ぁ・・・・いねぇか・・・?」

男は劉也の表情を見て、恐怖に脚を震わせ、しまいには失禁した。

「ひ、ひいぃぃいいい」

血で濁った赤い目。鬼のような形相、人間離れした殺気。人間離れした力。絞められた首
男を失神させるには十分過ぎた。

「クタバレやああああああああああああ!!!!」

劉也は失神した男を、片手で1階の階段へ投げ飛ばした。

「まだ終わらねぇぞぉ!!!!!!!!!」

投げ飛ばして宙を舞った男に劉也は凄まじい速度で接近し、更に男の脚を蹴り上げた。
男の脚の骨は砕け、衝撃で上方に回転しながら浮き上がった。

「ト ド メ だあああああああああああああ!!!!!!」

宙を舞った男の首を掴み、そのまま一階の床に叩き付ける体制を取った、しかし、後数メートルで男の頭部が床に激突すると思われたその刹那。
何故か美穂が現れた。

「おやめなさい!」

美穂は劉也の首に手刀を打ち込み、気絶させた。
緩んだ劉也の手から男を奪うと、階段に飛び移り、男に息がある事を確認すると、気絶した劉也を空中で受け止め、着地した。

「ふぅ~・・・、間に合ったよ~」

梓はガクガクと震える脚で無理やり立ち上がり、美穂に接近した

「な・・・何なのよコイツ・・・。ア、貴方・・・何者なのよ・・・!!!」

震える梓に美穂は答えた。

「私は桜木美穂・・・。只の探偵だよ・・・。」

「た、探偵・・・嘘でしょ・・・?」

「嘘じゃないよ・・・。ただ劉也は背負った憎しみに負けて・・・力が暴走しただけ。」

梓は問い詰めた

「ど、どどういう事・・・?」

「劉也は・・・小さい頃に両親を亡くして・・・。生涯孤独だったんだけど、その孤独を救ってくれた二人の親友を目の前で惨殺されたんだよ・・・。そこに寝ている男にね・・・。」

「そ・・・でも・・・普通の能力者じゃ・・・あんな人間離れした事・・・出来ないよ・・・?能力者の能力にも限度が・・・。」

美穂は小さく頷いて、答えた。

「・・・太極図って知ってるよね?白と黒の・・・。アレは世界の二種類の成り立ちを示す図・・・。即ち世界は光と闇で成り立っている・・・。劉也は・・・。闇の能力者だよ。まだ・・・あの程度じゃない・・・。」

梓はまた座りこんでしまった。
あの劉也の姿を見た、梓は最早美穂の発言を聞き入れる事しかできなかった。

「なによ・・・とんだ核爆弾じゃない・・・。私・・・そんな奴と戦ってたの・・・?」

美穂はニコリと笑って答えた。

「大丈夫!爆発させないよ!!私が居るし・・・。劉也は根は優しいし・・・。よほど無理させない限り、爆発なんてしないから!」

「そ・・・そうなんだ・・・。」

「うん!抱え込んだ孤独・・・。深く心に残った傷跡・・・。それらを少しずつ・・・少しずつ・・・癒して行けば・・・。劉也も普通の人に戻れるから」

「孤独・・・・か・・・。」






その日、劉也は美穂が連れ帰り、梓達と別れた。
梓は深く考えすぎないように努力した。
世界の成り立ち。矢崎劉也の人間離れした驚異的身体能力。心臓を撃ち抜かれたのに動ける生命力。

それらを全て、忘れるようにした。













数日後・・・・。






梓は両親の事実を知り、[私も孤独になってしまった]と感じた
[も]が付くのは、孤独を背負った人間は他にも居るからだ。

「さて・・・どうしよっかなぁ~・・・?取り敢えずコンビニでご飯を・・・。」

そう呟き、コンビニに向かった。

「よっ。坂本梓!」

「うぇっ!?」

後ろから急に声を掛けられ、少しびっくりした。
後ろを振り向くと、数日前の映像がフラッシュバックした。

「・・・!!劉也!!!・・・アンタ何しに・・・!!」

思いだしただけで脚が震えだした・・・。

「いや・・・。お前・・・帰る場所が無いのなら、俺の家の部屋一つ貸してもいいぜ?8畳もあるぞ。」

「え・・・?」

「俺も、両親を亡くした身だからな。それにそんな孤独なときに考え付く事は自殺だの何だのだしな・・・。お前ほどの剣の腕の持ち主、放ってはおけないしな。」

梓は美穂の言葉を思いだした
『劉也は根は優しいし・・・。』
本来敵として戦った私に・・・。何も支えが無くなった私に・・・。
大好きな両親を亡くした私に・・・。癒しの救いの手を差し伸べてくれる・・・。

孤独なんかじゃない。と伝えてくれる・・・。

梓は思わず涙を一粒、二粒ポロポロと零した。

「あ、ああ・・・ありがとう・・・。私が居ても・・・平気なら・・・」

劉也は笑顔で答えた

「おう!もちろんだ!歓迎するぜ?・・・・・・・・・・・その代わり」

「・・・・その代わり?」

「家賃一ヶ月3万8千円でどーよ?手ごろだろう?」

「・・・え?」

梓が前言撤回したい。と本気で望んだ瞬間だ。
ほんの少しでも心を許した自分を恨んだ。

「・・・・・・・・・・ア、ア、アンタそれでも男!?そう言うときは無償で傷ついたレディーを慰めるのが紳士ってもんでしょ!!!」

「はーっはっは!!世の中そんなに甘くない!!!!」

劉也は微笑を浮かべながら、親指を立てた。

「んがぁ―!!!アンタムカつく!!!!」

「おお!凄いな!さっきまで死んだ面してたってのに。もうイキイキとしてらぁ!」

「・・・あっ・・・。」

劉也は背を向け、歩き始めた。

「俺も人の事言えないけれど・・・。まぁ・・・あれだ。必要としてくれる人を探すのも人間としての仕事なのかもな。俺もお前の剣術を見込んでの事だ。」

梓は劉也の背中を見て思った。
―何故この人は私より辛い目に合っているのに、コンナに前向きなのだろう?―

―何故この人の背中は・・・こんなにも広いのか・・・―



「ふふ・・・。家賃・・・3万8千円かぁ・・・。確かに・・・手ごろ・・・かもね・・・」

梓は再び雫を零した。
劉也は震えた梓の言葉を確かに聞き取った。

「そうだろう?」
(よし・・・これで修理費稼げた・・・!!!!)







果たして、劉也は何処までが優しさなのか・・・。ソレを知るものは未だ居ない。






















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