我流乱舞!

我流乱舞!

非情な日常・天空神の力・2


そこは、劉也の親友である亮、彩子が殺害された場所でもあった。
劉也は近くにバイクを止め、廃ホテルの前に立った。

「ここで、黒服の男達が何やら白い粉のようなもので取引をしていた・・・。調べれば何か分るかも・・・な・・・。」

康太はその廃ホテルの壁の所まで行くと、手を当て目をつぶった。

「そうっすか・・・。ちょっと静かにしててくださいっす。」

劉也は疑問を抱いた。

「・・・?何をする気だ?」

「・・・・静かに。」

真剣な表情から、劉也はそれを承諾し、黙って康太を見守る事にした。
暫くの沈黙の後、康太が口を開いた。

「・・・・。このホテルの裏が何か怪しいっす・・・。美穂さんに来てもらいましょう・・・。」

劉也は驚いた。

「・・・?手を添えただけで分るのか?」

康太は自慢気にこたえた。

「俺の能力っすよ!物の構成や構造が分るっす。・・・このホテルには問題は無いっすね・・・。でもその裏が何やら怪しげな構造をしてたっす。階段のような・・・。」

康太はそう言いながら携帯を取り出し美穂と連絡を取った。
暫くすると、セルフィの車で美穂がやってきた。

「お待たせ~!ありがとう、セルフィ・・・。終わったらまた呼ぶね?」

美穂はセルフィに礼を言った。

「はい、分りました。では、頑張ってくださいね・・・。私はコレで失礼します。」

セルフィは劉也と康太を見て微笑むと、再び車に戻り、言ってしまった。
美穂はホテルの中に入り、周囲を見渡し、小さな機械のようなものを取り出した。

「・・・。不安定な磁気が発生してるね・・・。心霊スポットだったりする?」

劉也はまた驚いた。

「・・・ご名答・・・。良く分ったな。」

美穂は自慢気に答えた。

「この磁気によって、人は幻聴・幻覚を見たり聞いたりするんだよ・・・。だからこういった場所は心霊スポットになりやすいの。」

美穂は続けた。

「それにしてもこの数値・・・68,000ntは異常ね・・・。確かに何かあるかも・・・。康太、分る?」

康太が前に出た。

「壁素材は鉄筋コンクリっすね・・・。大地に関して地震の影響や地盤のズレは見られないっす・・・。この建物の構造的に磁気を溜め込み安いとは思えないっすね。」

劉也は不覚にも康太がカッコよく思えてしまった。

康太は続けた。

「裏に行って見ましょう。俺が思うに、そこが一番怪しいっす。」

3人はホテルから一旦出ると、回り込んで裏に向かった。
草木がボウボウと生茂っており、特に何も無い。

「・・・何も無いな。」

劉也の発言に康太は反応し、しゃがみ込んだ。

「・・・もう少し念入りに調べるっす。時間を下さいっす。」

暫くすると美穂が突然騒ぎ出した。

「お、おお!?何だコレ!?磁気が乱れまくってる!!」

劉也は美穂の方を向いた。

「はぁ?一体どうしたんだ・・・?」

すると上の方から声が聞こえた。

「それは私のせいであろう。」

ゼウスがホテルの屋上から飛び降り、地面にぶつかる寸前にふわりと浮きあがり、着地した。
その姿に3人は驚きを隠せなかった。

「な、な!?何処から降ってきたんだよオッサ・・・いやゼウス!!」

ゼウスはその発言を無視した。

「私は体内で電気を発生させられる・・・。磁気もだ・・・。恐らくその磁気の乱れは私が屋上に飛び移った時のであろう・・・。」

美穂は返答した。

「な、何だ・・・。それより・・・初めまして!私、桜木 美穂だよ!」

ゼウスは微笑んだ。

「ふ・・・ふははははっ!・・・コレほどまともに自己紹介されたのは初めてだ。私はオリュンポス十二神の一人、ゼウスだ。別名は天空神である。」

美穂も釣られて微笑んだ。

「あ~!それって確かギリシャ神話の十二柱の・・・!!」

ゼウスは手を組み返答した。

「ふむ・・・。存じて居るのか・・・。私のコードネームはそこから来ている・・・。話は聞いているのだろう?」

「はい!聞いてますよ~?似たもの同士、頑張りましょう!」

そんな他愛のない会話のなか、康太が口を開いた。

「・・・分ったっす!!ゼウスさん・・・。ここ・・・。」

康太が指を刺した場所は、二本の木の間の1メートル足らずの隙間。

「ふむ・・・。そこか・・・。よし、少し下がっていろ。」

そう言うと、ゼウスは肩から大剣を抜き、構えると天にかざした。

「・・・ふっ!」

ゼウスは大剣に念を篭めはじめた。すると刀身がパリパリと音を立て青白く点滅し始めた。

「・・・どりゃああ!!」

ゼウスは大剣を二本の木の間につき刺した。

すると乾いた爆発音が鳴り響き、突き刺した場所の土が大きく抉れ、二本の木をなぎ倒し地下へ続く階段のような道が現れた。

劉也は息をのんだ。

「す、すげぇ・・・。」

康太はすぐにその階段のようなところに近づいた。

「・・・結構浅い所にあったようっすね。ゼウスさんの一撃で階段の扉も吹っ飛んだようっす。」

美穂は「おぉ~!」と関心し、拍手をしていた。
4人は懐中電灯を手に、奥に進んだ。
岩を掘ったような長いトンネルを暫く進むと、急に景色が変った。
床には白いタイルが敷き詰められ、前には扉が見える。
ゼウスは立ち止まった。

「・・・大当たりだな。・・・見つかったら不味い。一旦引き返そう・・・。」

ゼウスの発言を美穂は制止した。

「・・・その必要は無いよ?空間の過去を覗いて見たけれどここ3ヶ月以上、誰も出入りしてないよ。」

劉也も美穂に賛成した。

「確かに・・・入り口の状態といい、人がいる可能性は殆どないな。」

ゼウスは承諾した。

「・・・分った。だが、気を抜くなよ?」

そう言うと、康太が扉の鍵を外し、中に進入した。
辺りはただただ広い広場のような構造になっていた。
時々、テーブルのようなものが見える。
康太が警戒しながら周りを見回した。

「・・・真っ暗っすね・・・。構造は・・・。奥にもう一つ部屋があるだけっす。」

そのまま、広場の中心辺りに行くと、劉也が突然叫んだ。

「待て!!何かいる・・・。何かいるぞ・・・!!」

それを聞くと、ゼウスは頭上に雷球を作り、辺りを照らした。
すると、4人は見たことも無い無数の生物に辺りを囲まれていることに気づいた。
黒い体、長い触角、尖った牙に、細長い足。爬虫類だろうが、胴体からして脊椎動物とも覗える。

ゼウスが下打ちした。

「ちぃ・・・出来そこないのキメラだな。恐らく・・・。失敗して無用と判断し、放棄した研究所だろう・・・。」

ゼウスは雷球を消すと、剣を構えた。

「獰猛な奴らだ!いくぞっ!!!」

ゼウスはそう叫ぶと剣を抜き、正面に居たキメラを上段から剣を振り下ろし切り裂き、そのまま下段から横に薙ぎ払い、もう一匹切り裂いた。

康太は懐から銃を二丁取り出した。

「・・・改造ガスガン・・・。試し撃ちするっすよ!!」

パスパスッ!

軽い銃声と共に、康太は目の前にいるキメラに二発撃ち込んだ。
着弾したキメラに電流が流れた。

『ギュウウウウッ!!』

不快な悲鳴をあげ、身体を痙攣させながらキメラは倒れた。
劉也はキメラ達を飛び越え、奥へ走って行った。
美穂はそれに気づいた。

「劉也!?・・・うわぁ!?気持ち悪い!!!」

美穂は飛びかかって来たキメラを蹴落とすと、劉也の後を追った。

キメラを二匹同時に切り裂いたゼウスは下打ちし、意識を集中させた。

「きりが無い・・・!!康太!!暫く盾になれ!!!」

康太は飛びかかって来たキメラを振り払い、改造ガスガンの弾を撃ち込むと返答した。

「・・・分かったっす!!さっきの爆発があれば、一気に数がへるっすからね!!」

一方、劉也は奥へ進みテーブルの上に飛び乗った。

「牙突!!」

圧縮した空気の槍作り出し、キメラ目掛けて、放った。
放たれた槍は二匹のキメラを貫いた。
後ろから飛びかかって来たキメラを左肘打ちで跳ね返し、追いかけてきた美穂を確認した。

「美穂か!?少し時間を稼いでくれ!!」

美穂は劉也の元へ行くと返答した。

「・・・うん!分かったやってみる!!」

劉也が念を篭めている間、美穂は二人を囲んでいるキメラの相手をした。

「はぁっ!!」

目の前にいるキメラ達を念動力で弾き飛ばした。
劉也は両腕に意識を集中させながら、横目で美穂を見ると励ました。

「その調子だ!!もう少し頑張ってくれ!!」


一方ゼウスは念を溜め追え、剣を槍のように持ち替えた。

「・・・はああああっ!!!」

剣を再び持ち変えると前に突き出した。

「コレが・・・天空神の力だ!!!」

剣が小刻みに振動し、やがて音速を遥かに超える速度でキメラ達を貫いた。
剣の通り道には落雷のような現象が起こり、広範囲に渡って、キメラやその他のものを含め、全て焼き払った。
康太はその殺傷能力に戦慄を覚えた。

「・・・な、これは・・・。」

ゼウスは高笑いしはじめた。

「はーっはっはっは!!我が力・・・まだまだこんなものではないぞ!!」

劉也は両手に空気を圧縮させ、2メートル程の刀身を作り上げた。

「美穂・・・!待たせたな!!」

劉也はテーブルを飛び降り、両手の巨大な二本の刀身つかい、前方にいる無数のキメラを一気に横に切り裂いた。
美穂はその姿に少し関心した。

「おぉ~・・・。長い!やるねぇ~!!」

劉也は確認できるキメラを全て切り裂くと、刀身を消滅させ一息ついた。

「ふぅ~・・・。疲れたぁ~・・・。」

煙草を取り出し、火をつけ一服しはじめると、
後ろからゼウス達がやってきた。

康太は劉也の元へ駆け寄った。

「劉也さん!こっちは一通り片付いたっすよ!!ゼウスさんって凄いんっすよ!!」

劉也は適当に返事をした。

「あ~・・・。そうだな・・・俺はもう疲れたよ・・・。みんなは・・・怪我はないのか?」

美穂が言った。

「うん!私は大丈夫だよー!」

続けて康太も返答した。

「俺も、無傷っすよ!」

しかし、ゼウスは腕を組み、何やら考えていた。

「・・・妙だな・・・こいつ等殺傷能力が低すぎると思わないか?それとこの数・・・。繁殖能力があるのか・・・。それと何の為に開発されたんだ・・・?」

康太はキメラの残骸の前にしゃがみ込み、調べはじめた。

「・・・生殖器らしきものは・・・見当たらないっすね・・・。こいつ等に繁殖能力があるとは思えないっすね。」

ゼウスは続けた。

「・・・・ふむ。奥にもう一つ部屋があると言ったな。そこに母体となる何かがあるはずだ。」

劉也は暫く考え込み、頷いた。

「俺もそう思うが・・・でも・・・こいつ等の殺傷能力といい・・・その母体にも攻撃手段があるとは思えないが・・・でも、一度引き返した方がいいと思う。体制を立て直してもう一度出直そう・・・・。護身用の武器も無いからな、危険だと思う。」

美穂はその考えに賛成した。

「確かに、こんな気持ち悪い生物が居たってだけで、驚きなのにね・・・。まだまだ予想外の出来事が起きそうだから、一度引き返そうよ!」

しかし、ゼウスは反対した。

「・・・そうしたい所だが、出入り口を塞いでいた扉も破壊してしまった。こいつ等が外に出たら、街に危険が及ぶ可能性がある・・・。開けてしまった以上・・・後始末もせねばならないな。」

康太もゼウスに賛成した。

「・・・確かに、キメラ達が外に出たら騒ぎになるのは間違いないっすね・・・。それに、扉一枚でこの量を抑えきれるとは思えないっす・・・。・・・でも妙っすね・・・。この部屋の扉に開けようとした痕跡は無かったっすよ?」

頭を掻きながら劉也は返答した。

「なんか、良く分からないが~・・・。よし、じゃぁ行こうか・・・。でも、みんな怪我しないようにな?」

美穂は嬉々として答えた。

「あ~!劉也やっさしぃ~!」

その発言に劉也は戸惑った。

「・・・るせぇ!!行くぞ・・・もう・・・。」

4人は更に奥へと進んだ。
ゼウスは劉也と美穂のやり取りをみて笑みを浮かべた

「若さはいいものだ・・・。」

そう呟くと、3人の後を追った。

暫く歩くと、もう一つの部屋への扉の前にたどり着いた。
康太はその辺りを調べはじめた。

「・・・母体があるとしたら、部屋と部屋を繋ぐ穴のようなものがある筈っす。でなければこの部屋にあの量のキメラがいる筈ないっすからね・・・。」

美穂は部屋と部屋を仕切る壁を見渡すと、隅っこに穴を見つけ、指差した。

「あった!あれじゃないの?」

ゼウスがその穴に近寄った。

「間違いないな・・・。母体は向こうの部屋にいる。」

康太はその発言を聞くと、扉の鍵を外しはじめた。
ゼウスは剣を構え、扉の前へ向かった。

「一番に私が入ろう、武器もあるからな。」

3人はそれを承諾した。
鍵を解除すると、ゼウスは警戒態勢を取りながら、ゆっくりと扉を開けた。

半歩、部屋に足を踏み入れると雷球を作り出し、辺りを照らしだし、見回した。

「・・・・。・・・・?あれは・・・。」

中を覗くと無数の80cmほどの大きさのカプセルがひたすら並べられていた。
殆どのカプセルが割れていた、隅っこのカプセルの中に、さっきのキメラの姿があったので、コレが母体代わりである、と確認できた。
3人は中に入り、それぞれ調べはじめた。
康太は中身の入っているカプセルを手に取った。

「・・・妙っすね・・・。コレが母体なら3ヶ月以上、栄養を取らずに生存していたって事になるっすね・・・。共食いしてたなら、もっと数は減っていたはずっす。」

美穂は近くにあったデスクを調べはじめた。

「う~ん・・・。書類もメモも見つからないな~・・・。分からず終いだよコレは・・・。」

一方、ゼウスと劉也はカプセルが並べられている、一番端っこを調べた。

「コレだな・・・。」

「ああ、後は私に任せたまえ。」

ゼウスはカプセルを固定していた、土台に手を添えた。
劉也が康太と美穂に警告した。

「おーい、カプセル壊すってよー。」

康太は急いでカプセルから離れた。

「ちょっ・・・!何する気っすか!?」

ゼウスはニヤリと笑って、手に力を込めた。

「ふんっ!!」

カプセル全部に電流が行き渡り、やがてガラスの割れる音が何重にも重なり、鳴り響いた。

劉也は割れていくカプセルを見ていた。

「コレで・・・ようやく帰れるな。」

美穂が劉也の元へ近づいた。

「それにしても、ホテル裏にこんなのがあったなんて・・・。」

「ああ・・・。一体何の為に・・・。」












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