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2013年09月16日
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カテゴリ: 邦画(12~)
県労会議機関紙に連載している映画評の今月の原稿を転載します。



「夢売るふたり」
昨年度の邦画の中ではマイベストワンです。もっとも、巷の評価はあまり高くありませんでした。もしかしたら、結論部分を明快に終わらせていないこと、善悪がはっきりしていない事が影響しているのかもしれません。しかし、それこそが西川美和監督作品の特徴であって、魅力でもあるのです。

話は結婚詐欺をする夫婦の物語です。貫也(阿部サダヲ)の妻の里子(松たか子)は言います。「何もウソをつく必要はないのよ。彼女たちに夢をほんの少しだけ見せてあげればいいの」

やっている事は立派な詐欺でも、火事で開業資金が足りないこと、妻もいることも隠さない、借用書も作成し借金のつもりでお金を貰っているから貫也は自然体のままで「ウソ」をつく。女性も多くは、夢見た自分を信じたいから、自分に言い訳して彼を許すのです。

「ウソ」と「ホント」の境界は曖昧です。「ゆれる」「ディアドクター」以来のテーマを、西川美和監督は俳優の見事な演技とスタッフ陣に支えられて、絶妙な作品に仕上げました。
一つひとつのカットにきちんと意味を持たせているので、一瞬たりとも油断出来ません。状況説明的なセリフは一切なく、映像と短いセリフだけで、彼らの置かれている状況、展開、時間経過、心理を読み取らなければなりません。この緊張感は映画館でこそ体感できると思うのですが、DVDではもう一度見ることも可能なので、よくわからなかった方にはお勧めします。こういう濃密な作品を見ることが、私は映画の醍醐味だと思うのです。

貫也と里子の始めた「夢」を売る商売はおそらくどこかで「人間性」をも売っていたのでしょう。貫也よりも参謀役の里子の人間が壊れて行く様がこの映画の見どころのひとつです。清純派が多かった松たか子が鬼気迫る演技をしています。食パンを齧りながら、人付き合いのいい夫が浮気をして同情心で金を貰った悔しさを押し込めて、結婚詐欺を思いつくまでの表情の変化。金のためとは言え、次々と女と寝る夫に対して割り切りと、淋しさと、恨みと、哀しさに揺れてゆく後半の里子の心の変化は、松たか子の表情だけではなく、街の木枯らしなどの映像からも表現されるのです。

物語は意外な結末を迎えます。ふたりはどうなったのか。別れたのか、別れないのか。詐欺行為で捕まったのか、捕まらなかったのか。お金は全て返したのか、返さなかったのか。セリフが一切ないだけにわからないという人もいるかもしれませんが、私には明快なラストに思えました。(2012年作品、レンタル可能)





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最終更新日  2013年09月16日 21時25分48秒
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