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2013年12月15日
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テーマ: 本日の1冊(3697)
今年読み終わった本は今のところ101冊です。少し早いですが、今年の本マイベスト5を発表したいと思います。それぞれの本の私のノートを全部コピーすると、字数制限に引っかかるので、半分ぐらい削りました(それでも長いですが)。題名だけを紹介すると、「ことり」「古代日本の超技術 改定新版」「大地の子エイラ」シリーズ、「ある哲学者の軌跡 古在由重と仲間たち」「渡辺治の政治学入門」です。


「ことり」小川洋子 朝日新聞出版社

次の水曜日、食卓の上にボーボーはなかった。
「小鳥のブローチは愛の歌を歌えなかった」
と、お兄さんは言った。誰に向かってというのでもなく、ただ言葉を宙に浮かべるようにして、小声で言った。
「そういう小鳥もいる。小屋の片隅で、いつまでも歌えないままでいる小鳥」(70p)


小鳥の小屋の小声をずっと聴き続けているかの様な読者である私には、お兄さんの「失恋」は哀しい。私は遠い日の終わった「片想い」を思い出す。

人は独りで生きていける。それは誰の力も借りないで、ということじゃない。そうではなくて、誰の目にも止まらない処で鳴くことはできるのである。けれども、その密かな鳴き声をじっと聞いてくれる人がいることはなんて嬉しいことなのだろう。

でも、出来ることならば、小鳥の叔父さんの様に、生涯一羽でいいから「ことり」を救いたいな。
2013年2月14日読了


「古代日本の超技術 改定新版」志村史夫 講談社ブルーバックス

著者は「自然を活かし、自然に活かされていた古代日本の技術がねじ曲げられ始めたのは、室町時代のようである」と言っている。「それはまた、日本に「成金文化」が栄え始めた時代でもあった」。「効率」と「経済性」の執拗な追求、それが貴重な技術を失くす元凶になったのである。

私は、中国や韓国博物館を渡り歩いて古代に関して云えば海外の方が遥かに文明度が高かったと思っていたが、少し認識を修正しなくてはならないかもしれない。モンスーン気候で木々が豊富にあり、細やかな自然の変化がある日本列島には其れなりに世界の最先端をゆく技術があったのである。伊達に縄紋弥生で2600年を過ごしたわけじゃない。
2013年4月17日読了


「大地の子エイラ(上)」ジーン・アウル 中村妙子訳 評論社

ときは紀元前三万年ごろ、黒海に突き出ているクリミア半島山腹の洞穴と周辺の草原が舞台。約20人のネアンデルタール人の部族と地震のために1人になったクロマニヨン人の女の子が登場人物である。



素晴らしい本に出会った。ドキドキしながら、読み進めている。
2013年7月20日読了


「ある哲学者の軌跡 古在由重と仲間たち」岩倉博 花伝社

力作である。森鴎外「渋江抽斎」に匹敵すると言っても、みんなイメージが湧きにくいかもしれない。

作者は 「この書は、表題・副題にみるようにいわゆる「評伝」ではなく、まして古在由重の哲学を体系的に語るものではない。筆者の関心は、哲学者古在由重がひとりの同時代人として、戦争に突き進み拡大する戦中、そして平和と民主主義を希求する戦後の中で、何を学び、考え、仲間たちとどう交遊・談話し、どう生き闘ったかということ、やや堅苦しく言えば、哲学者古在由重という人物とその仲間たちの実践と思想を、その時代と歴史のなかに位置づけて見ることにあった」 と書く。

まさにその通りであり、だからこそ、日本史伝のなかでの最高傑作と言われる「渋江抽斎」と比べることがこの作品の紹介で最も適当だろうと思ったのである。学術書ではない。思想書でも、歴史書でも、小説でもない。しかし小説のように、古在由重と吉野源三郎の出会いを細かな日常描写と共に書いていた。

もちろん想像は一切加えない。全て日記や関係者聞き取りからの叙述なのである。

現代、図らずも脱原発を巡って日本の「連帯」「統一戦線」が大きな「課題」となろうとしている。

古在由重は遂に統一戦線についてはまとまった論文を書いてはいない。それは古在由重が時代と格闘し、常に最良の答えを求めていたという証拠でもある。

脱原発と改憲問題、この二つに我々も最良の答えを求めていかねばならない。
2013年8月30日読了


「渡辺治の政治学入門」(新日本出版社)


この本で最も腹落ちしたのは、「現代日本のマスコミ論」だった。著者は講演で必ず「マスコミはどうしてこんなに悪いんですか」と質問されるという。少し長いが、その答えをここに書き写したい。

私は、マスコミが結託して悪い企みの下、世論を誘導しているという「陰謀論」にはくみしません。しかし、マスコミに世論の形成や誘導の意図があることは事実ですし、大きな力を発揮していることは否定しようもありません。とくにマスコミが足並みをそろえたとき、その効果は抜群です。

強固な常識とは二つ。日本の発展のためには日米同盟の強化と構造改革が必要だという常識です。冷戦終焉により、世界は自由な市場で統一され、中国の市場開放をはじめグローバル企業には大きなビジネスチャンスが到来しましたが、進出先の市場秩序維持のためには「世界の警察官」としての軍事力が必要となった。日本も世界の自由な市場秩序での恩恵を受けて発展している限り、日本も世界の秩序維持のために貢献すべきであり、そのためには日米軍事同盟は強化されねばならず、既存の防衛政策は変更されなければならない。米軍のせか的プレゼンスを擁護し協力することこそ国益にかなうという常識です。
他方、構造改革推進についても強固な合意が存在しています。それは、大企業の世界競争激化のもと、日本企業の競争力強化のための構造改革は不可避だ。もちろん改革の痛みは緩和しなければならないが、
それも改革の遂行、経済成長により克服すべきであり、痛みの緩和のために利益誘導や福祉支出に走り、大企業負担を増加する財政肥大を招くようなことがあってはならない、という常識です。
そうはいっても、その大枠の中で、メディアには無視しがたい色彩の違いがありましたが、昨年(2009年)の政権交代あたりから、各メディアの論調が急速に収斂しはじめたのです。マスコミ陰謀論台頭の理由もここにあります。
昨年の政権交代、民主党政権成立からの一年は、国民にとってだけでなく、マスコミ人にとっても大きな未知の経験でした。なにしろ戦後日本の政治の中では初といってよい、本格的な政権交代だったからです。当初は、マスコミも、産経をのぞいて、熱に浮かされたように、鳩山政権に熱い期待をかけるところが多く、「常識」も脇に追いやられること、しばしばでした。ところが、鳩山政権が国民の期待に背中を押され普天間基地のグアム移転に固執し、福祉のマニフェスト実現にこだわって保守の不動の枠組みから逸脱を見せる頃から、マスコミは俄然「常識」に目覚め、鳩山政権に危惧を表明し始めたのです。財界・アメリカ政府の危惧も、政権交代熱病からの覚醒を助けました。今年(2010年)に入り鳩山政権が、普天間で迷走を繰り返し、日米同盟の強化どころか危機に陥りかねない状態が生まれました。構造改革問題でも大きく後退、
ジグザグを繰り返したものの最後まで消費税引き上げを肯んじない。ここに、マスコミの強力な常識バネが発動したのです。鳩山政権はジグザグを繰り返したあげく5月28日、日米合意に至りましたが、もう遅い。もはや鳩山政権では沈没する、鳩山降ろしで新聞各紙、メディアは一致したのです。(75p)


このマスコミ「常識」は、強弱はあるが、ここ10数年のマスコミの我々に対する「裏切り」の基調だったと思う。朝日が消費税引き上げに賛成したのも、その時から裏切ったのではなく、構造改革路線に同調した時から始まっていたのである。最近の新聞各紙の秘密保護法反対の論調は、このふたつの常識から外れる可能性(日米同盟にヒビが入る可能性)があるだけでなく、自らの情報獲得機能の崩壊に繋がるからに他ならない。

2013年11月18日読了

今回の秘密保護法をめぐる報道では、NHKを除く民間メディアは一定頑張ったと言っていいかもしれない。それは何故か。変わったのか。いや違う。彼らは彼らの価値観で動いていて、それは少しも動じていないし、これからも絶えず警戒しなければならない。ということを、これを読んで強く思うのです。





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最終更新日  2013年12月15日 14時55分17秒
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