女子高生真帆ちゃん(仮名)3




「あーっもう! むかつくー!!」
真帆ちゃんはカラオケルームに入るやいなやマイクを引っつかんで大音量で叫びました。
美紀ちゃんは耳をふさいでいた手を離すと
「荒れてるねえ……まあ無理も無いけど。いいよ、最初の30分一人で連続歌わせたげる」
「え、それはいい……ノド嗄れちゃうもん」
真帆ちゃんはつつしんでお断りしました。
「ですので15分までにさせていただきます」
「……ちゃっかりしてるわあんた」


「いやー、すっきりした♪」
「そりゃあんだけ歌えばすっきりもするよ」
美紀ちゃんは呆れ顔です。
「2時間だから一人200円ね」
「了解しました隊長!」
お金を払って店を出ます。
たなびく雲に夕日が映えて薄紫―水色―オレンジ―赤のコントラストがとても綺麗でした。
二人並んで歩く影も、行きより随分背が伸びました。
「ね、聞いていい?」
真帆ちゃんは美紀ちゃんに言いました。
「何?」
「あのお店って、いつから持ち込みOKになったの」
「え、なってないよ。持ち込みは見つかったら即罰金だって」
「やっぱりそう? じゃあの人たち……」
真帆ちゃんは下を向いて黙ってしまいました。
「どしたの?」
「うん……あのさ、途中でトイレに抜けたじゃん?」
「ああ、よりによってあたしの十八番のサビの時ね」
「う、ごめん……悪い」
「いーよ別に。ぜーんぜん気にしてませんから。で?」
やっぱ怒ってんじゃん、と思いましたが口には出さずに真帆ちゃんは続けました。
「マック持ち込んでる人たちがいた。あとペット」
「ばっかだね、ペットより紙パックのやつのほうが量同じで安いのに」
「そういう問題じゃないだろ」
真帆ちゃんつっこみ。
「ジョーダンだって。でもその人たち、真帆が気づいたって事は従業員も気づいたってことだろね」
「うん、見つかってたよ。だってあたし注意されてるとこを見たんだもん」
「ふーん。ならいいじゃん。悪いのそいつらなんだし」
「見つかって罰金、だけなら良かったんだけどさ」
真帆ちゃんはその光景を思い出しました。

「お客様、ですから当店は食べ物の持ち込みは……」
「えー? んだよそれ。そんなの知らねーっつーの」
「ちゃんと入り口に注意書きが貼って」
「んなもん見てないよ。ほんとに貼ってあんの?」
「きちんと書いてありますから」
「あたしらが悪いって? だいたいそんなんなら最初に言っとけよ」
「知らなかったんだからしょうがないじゃん」
「でも、規則ですから」
「金とんの? ふざけんなよ、悪いのは教えなかったそっちだろって」

回想終了。
「……何それ」
話を聞いた美紀ちゃんは心底あきれた顔をしました。
「うん、何それって感じだよね。従業員のあんちゃん可哀想だった」
「そういうのがいるからうちらまで厳しくチェックされるようになっちゃうんだよ。めーわくな話ー」
「ああいう人って絶対自分が悪いと思わないんだろうね」
「どんだけ傍目から見て情けないかわかんないんだろうね」

そうして二人は角のローソンでパックの果汁ジュースを買いました。


続く。
この小説はフィクションです。
実在の人物・団体・出来事等には一切関係ありません。

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