しましま日和

しましま日和

夏刹那-ナツセツナ-






 夏刹那-ナツセツナ-





「こんにちは」

「ああ、こんちは」




季節は夏。

熱い日差しが刺すように照りつける。

透明なはねを振るわせて飛んできた姿は、跳び付いた木で見つけた仲間に挨拶をかけた。




「いい天気ですね、暖かいし」

「ああ。昨日よりも良い感じの日差しだな」

「もう何日に?」

「オレ?オレは3日目。お前さんは今日出てきたばっかり、ってとこかな?」

「 ! よくわかりましたね。ボクが今日出てきたって」

「まあね」

「どうしてわかったんですか?」




『ボク』からの問い掛けに『オレ』は、いやあね…と少し笑って、目で回りを見渡した。

「出てきて何日も経ったヤツってのはみんな必死になっちまって、お前さんみたいに挨拶するような奇特なやつはいなくなっちまうんだよ」

「そうなんですか…」

そう言われて『ボク』も小さく回りを見渡してみた。




「で、どうだい。上の様子は」

「あ、はい。いろいろわかりましたよ。あれだったんですね下にいた時うるさかったの。あのいろんな色の四角いやつ…」

「あの走ってるヤツな。クルマって言うらしいぜ」

「クルマ…あれも全部ヒトが乗ってるんですよね?」

「だな。ここら辺にあるもの全部ヒトのためにあるようなもんだろ。3日見ててそう思ったよ」

「なんかすごいですねヒトって…」

「そうかぁ?オレから言わせりゃただの野蛮なヤツらとしか思えないけどな」

『オレ』は少し呆れたような声でそう言った。

「…そうですかね」

「そうだよ」




その時突然辺りが騒がしくなった。


「なんだか小さいヒトがたくさん出てきましたね」

「ああ。朝はそこにたくさん入っていったからな」

「…ボクらがとまってる木なんか揺れてませんか…?」

「どうせあの小さいヒトの誰かが蹴ったりとかしてるんだろ…。これだから野蛮って言うんだよヒトってヤツは…」




ふぅ、と小さくため息をついた『オレ』に、あははっと小さく『ボク』が笑った。

「それじゃあ、オレはもう行くわ。お前さんと話ができて楽しかったぜ」

「はい。じゃあボクはもうちょっと粘ってみます。こちらこそありがとうございました。ボクもとっても楽しかったです」




にかっと笑った『オレ』に『ボク』もにっこりと笑顔を向けた。

「それじゃ、お互い良い夏を」

「いい夏を」




そう言ってバタバタと羽音を立てて飛び去った『オレ』に、「あー、飛んだーっ」と小さいヒトたちが歓喜の声を上げて追いかけて行く。

「さーて揺れもおさまったことだし」

木に残った『ボク』はそうつぶやいて声を震わせた。





  刹那


  刹那


  夏の一瞬を生きるものよ





  END





   ――――――――――

    夏にいる、とある生き物を思って書いたものです。



  2006.08.05










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