仙燐眼

仙燐眼

自殺当日



私は当時、婚姻中でした。
実家から遠く離れた地方に住んでいながら、当日化粧品のセールスの方と話をしていました。
いつも来るその化粧品の営業の方とは話もはずみ、
笑いながらのリラックスした時を自宅の玄関ですわり込んで話していました。
丁度お昼前後だったかと覚えています。

なぜか、胸騒ぎ、めまいがクラクラ
全身の血の毛が下がるような思い。
そして、手のひらがピリピリとしびれて胸の動悸・・。
冷や汗も出てくる。

これは、何なんだ?

とにかく話を終えて、家の片付けをしたりしてた。
それから、2時間後、実家の母からの連絡。

父が自宅で飛び降り自殺をしてしまった、今危篤状態だと。

あの私が感じた動揺の瞬間に父は飛び降りたのだ、
結局父は助からなかった、

いや、生き伸びるよりも命を絶つほうが彼には楽だったろう、と
回りは植物人間にするのを拒んだ。

父が深く傷つき、相当疲れていながら、なおも頑張ろうとしていたのは
回りもよく理解していた、
それでもどうにも手立てがなく
どうしたらいいのか回りも思案していた。

あの時に自己破産の道を歩むべきだった。
しかし、父はあくまでも債務に関して詳しい事を語ろうとしなかった。
聞くと、
いつも「いい方向に向かっている」
と言っていた。

亡くなる3ヶ月前に、一度実家に訪れ、
私が
「今に私が全部お父さんの借金は返してあげるから、大物になるから
それまで、待っててよ」と言ったことがある。
そのとき
父は何も言わずに
初めて私の前で涙を浮かべていた。

あれが、今思い出せば父の真実の姿だったのだ。

もう7年も前のことなのに、
こうカキコしているうちに又私も泣いてしまう。

可哀想な人だった。

頑固で、柔軟性がなく
人との交わりをうまくできないから警備員の仕事でも結構いじめられていたらしい。
家族とのコミュニケーションも同じだった。
常に人の居る場所は避けていたようだった。

商売をしていても、
父の顔見ていたら、まずくなる、なんて言う人もいた。
でも、
とにかく味がいいから、って根強く通うリピーターの多い店だった。
腕は確かだ、ってこれが、父の自慢だった。

本当は学生時代は成績優秀で、将来は弁護士になるのが夢だったらしい。

それを諦めて、次男だからと
早くに職人として修行をして自立した彼だった。

彼の人生を振り返り
まだ、彼の人生は終わったとは思えない。
次を担う私がリベンジをし、復活してあげる。

待っててね。

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