「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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JUNK ISLAND
第3話
第3話
私は孤独だ。
10年前のあの日から、私はずっと孤独だった。
そしてこれからも・・・孤独なはず。
それなのに私は期待している。
いやしい自分。
私の全てを見透かすようなあの青年の澄んだ緑色の目に嫌気がさす。
いや、それを見て安心する自分に嫌気がさすのか・・・。
「へぇ、こっから目的地に一気に飛べるのか?」
ミッションを達成するための準備を終えたヴェイス達は
フライトベースに集まっていた。
原生生物が現れるといっても、それは街からはほど遠い。
そして、大型のモンスターや、大量のモンスターが
確認された場所へすばやく行くためにフライトベースという設備が完成した。
フライトベースとは小型飛行機場のようなものだ。
「あぁ。だが、もちろんいきなりディ・ラガンの巣に行くことは不可能だがな。」
ガースは鼻歌まじりにナックルを振り、シャドーボクシングを始めていた。
おそらく久しぶりのミッションなのだろう。
「ぇ?どうしていきなり巣の近くに飛べないんだ?」
ヴェイスは不思議そうにガースに尋ねる。
そこに間髪いれずに淋があきれたような声で指摘した。
「お前は馬鹿か?そんなことをしてディ・ラガンに見つかり
打ち落とされたらどうなる?
自殺願望でもあるのなら止めはしないがな。」
あぁ、そうか・・・。と思わずヴェイスはうなずいてしまった。
馬鹿と言われるのはあまり気になっていなかった。
不思議と、淋に嫌味を言われるのは気にならない。
彼女の独特な寂しい雰囲気がそうさせているのだろう、と思う。
「それじゃまず何処に行くんだ?」
ヴェイスは新たな質問を淋に投げかける。
淋はそっけなく答えた。
「それは知らん。」
何だそれは・・・。ヴェイスはそう思ったが敢えて口に出さないことにした。
そう言えばまた嵐のような罵声が飛んでくるだろうから。
「まずは中継基地に行くための森の入り口だな。
そこらへんはあまり凶暴な原生生物はいないだろう。さっさといくぞー。」
淋の代わりにガースが飛行機の中から答える。
ヴェイスと淋も飛行機の中に乗り込むことにした。
一日で二回も飛行機に乗るなんてな・・・。
そんなくだらないことを考えながら、ヴェイスは揺れに身を任せた。
辺り一面に薄い緑が広がる。そこは解放的な平野のようなところだった。
いくつかの道があり、それは全て広めの部屋のような平地につながっている。
長い一本道はないので、挟み撃ちにされることはないだろう。
そんなことを考えながら、ヴェイスは道を進んでいた。
「ところで、最近は何でこんなに原生生物が暴れたりするんだ?」
自分の上官であるガースに質問を投げかける。
この質問の答えが知りたいのか、淋もガースを見る。
ガースは今思い出したような顔をしてヴェイスたちに振り返った。
「あぁ、そうだったな。新入りは知らねぇのか。
俺もよくは理解してねーんだが、最近になって宇宙から
種のようなものが降り始めたらしいんだ。
科学者たちはそれをシードと呼んで研究してるようだが
まだ詳しいことは分かっちゃいねぇ。
ただわかるのは、その種の近くに寄って、その種子を吸い込んだ、
分かりやすく言やぁ感染しちまった生物は全て凶暴化しちまうっつぅだけだ。
だから最近はコルトバなんかも人を襲うようになったっつーわけだな。
分かったか?」
そういってガースは後ろめたいことがあるように、背を向けた。
「なんだって!?なんでそんなことが公にされてないんだ!
確かに知らせると民衆は混乱に陥るだろう。
だけど、それじゃぁ民衆は対策も何も立てれないじゃないか!」
「あぁ、そうだな。対策も何もたてれたもんじゃない。
だが、一般人がそれに対してどんな対策が打てる?
原生生物の近くには近寄らない、ぐらいのもんだろう?
それだったらいたずらに情報を公開するよりも
今までどおり生活していたほうが断然犠牲者は少ない。
そういった理由なんだよ。」
自然とガースのトーンが下がる。おそらくガースも納得はしていないのだろう。
ガースの背中しか見えなかったが
彼がどんな表情をしているかは何となくわかった。
「おぃ、さっきお前はシードは最近降ってきたといったな。
それは10年前には確認されてすらいなかったものなのか?」
「あぁそうだ。俺が聞いたのは2ヶ月前。
そして確認されたのは1年前だと聞いている。それがどうかしたか?」
淋はどこかひっかかっていた。
あの日の原生生物も普段では考えられないような興奮の仕方だった。
普段は人間をおびえるような生物もいた。
それがシードの仕業というのなら納得もできる。
だがガースは何といった?つい最近?
それならばあの日の出来事は一体なんだったのか・・・。
「まぁお前らが深く考えても仕方がねぇ。
一つ一つ排除していくしかねーんだよ。」
そういって彼は歩きだす。
彼はシードの話を知り合いの科学者から聞いたとき、どんな思いをしたのだろう。
きっと、ヴェイスのように一度は口論もしただろう。
しかし彼はその感情を抑え自分が考えうる最良の選択をした。
それが本当に最良の選択なのかは別として・・・。
その背中はどこか不安を感じているようでもあった・・・。
しばらく歩くと広い部屋に出て何かを見たガースがつぶやいた。
「こりゃ熱烈歓迎だな。」
そこには大きな爪が自慢の二足歩行の原生生物「ヴァーラ」が3匹。
その目は興奮したように赤みがかっている。
左右の爪をガチガチと鳴らし彼らはゆっくりと、着実に近づいてくる。
「そういやお前ら、オレ様の実力を疑ってたよな?ちょうどいい機会だ。
お手本と同時にオレ様の実力見せてやるよ。そこで見てな。」
ガースは右腕を回しながら無防備にヴァーラに近づく。
それをヴァーラは挑発だと受け取ったのか、チャンスだと思ったのか、
そんなことはわからないがたちまち3匹同時にガースに襲い掛かる。
自慢の爪を空高くかかげ、頭めがけて振り下ろす。
岩ぐらいなら爪あとぐらいつくだろう。
しかしそんな自慢の爪はいつまでたっても当たった感覚は無く、
むなしく空を裂く。
ガースは後ろに飛んでそれをかわしていて、
勢いづいた右フックを右端のヴァーラの顎に放つ。
脳がぐるんと回るような感覚が凶暴化した原生生物を襲う。
しかし、その感覚は一瞬で、ヴァーラの記憶は頭の外に吹き飛んだ。
そのままの勢いでガースは左アッパーを左端のヴァーラに放つ。
ヴァーラの顎は跳ね上がり、1,7メーターほどはあろう体が宙に舞う。
そのヴァーラが地面につく前に右ストレートが中央のヴァーラを襲い、
4,5メートルほど吹き飛んだ。
きっとヴァーラ達には何だかわからない内に倒されただろう。
それほど見事なコンビネーションだった。
ガースはいつものにやけた表情に戻り、振り返った。
「どんなもんよ?」
賞賛の言葉しか出てこない自分に腹が立つ。
こんなときダメだし出来るぐらいの実力は、まだない。
素直に認めよう。彼は戦闘においても、
ガーディアンズとしても一流だということを。
その時不意に淋が言葉を発した。
「あぁ、すまない。見てなかった。」
その手があったか・・・。
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