「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Chapter:1
Chapter:01
纏わり付くような臭いが鼻をつく......
目の前には朱い水溜まりと、さっきまで...ほんのさっきまでヒトとして活動していた『物』があった。
そのもはやなんだったのかわからなくなってしまった『物』をめんどくさそうに見つめながら
問い掛ける。
――――これはをやったのはアナタ?
答えは返ってこない。
そんな問い掛けを何度か繰り返したあとに、いつもの答えにたどりつく。
「そうよね...どちらにしたって......」
―――結局は自分がやったことなんだから
**********
七月の末、うだるような暑さの中で蝉だけが騒がしく鳴いている。
久我透は変わらない日常の繰り返しに少々嫌気がさしながらも仕方なく学校にむかっていた。
「こりゃ...間に合わないな...」
進学校という名義上、一応は課外授業があり、実質的な休みは他校より一周間ほどみじかい。
――やっぱりな
学校についたものの校門は無情にも閉じられていた。
―――最近、近所で殺人が頻繁に起こっているらしく、学校側も対応をとることにした――と
ダメ校長が集会で話していたのを思い出しながら、校門を攀じ登る。
「ん?」
校門の前に同じ学校の制服を着た女の子が立っている。リボンの色からすると同じ学年なのだろうがあまり見かけた記憶がない。
「君、転校生?」
振り向いた彼女は少々目付きが鋭いが、文句なしに美しい顔立ちをしており腰の上まで伸びた
髪がよく似合っている。
「............」
彼女は無言で向き直り、悠々と校門を越えて校内に入っていった。
「なんだあの子...」
気になるところだが、遅刻してはまずいので透は教室へむかうことにした。
********
「お...早いな透」
そうやって話しかけてきたのは葛山 満。 小学校からの親友であり志望校からいくと、大学
まで一緒になってしまいそうなくされ縁である。
「どうした。しけた面して。」
別にしけた面をしているつもりはなかったんだが......
「なんか朝、普段見かけない子がいたんだけどさ――――」
朝あった子のことを満に説明する。
「いや――知らないな。第一、そんな子がいたら俺が気付かない筈がないだろう。」
そういや、こいつ...学校の可愛い子の名前はもちろん、性格やら好きな物まで調べてやがったな...
――始まりを告げる学校のベルが鳴り響き、皆が一斉に席に着く。
「さぁて、突然だが今日は新しい友達が来ている」
担任である田之上の想定外の発言にクラスがどよめく。 こちらとしては、あまりに予想通りの展開と『新しい友達』という言い回しに苦笑しか漏れないのだが。
「うぉ、マジか。男だ?女だ?」
満...君もそっちの人間か...。
「彼女が今期から入学してきた冴鳥菖蒲君だ...以後、仲良くするように」
ありきたりな紹介を終え、田之上が教室を見回す。
「久我の後ろが空いているな」
............どっきりか?
「よろしくね♪」
朝とは別人のようなテンションで初めましてをされてしまった。
「あ、よろしく」
思わず顔がにやけてしまったんだが、気付かれなかっただろうか。
...............で、ここから先は言うまでもないだろうが、転校してきた彼女の席は僕の席の後ろに固定されることになる。
この後、彼女を遊びに誘ってうまくかわされて玉砕した者が多数いたことも一応追記しておく。
――――これが、冴鳥菖蒲との出会い。そして――――――――――――――
********
夏のあいだは夜中に散歩に行くのを日課にしている。夜風が気持ちいいし、健康にもいい。まぁ、実際そんなことは気にしてない、ただなんとなく気にいったからなんだけど。
「大分歩いたな」
近所の住宅街を横断してみたものの、さすがに深夜をすぎるとほとんど人とすれ違うことがない。いつも通りいえばいつも通りか。
来た道とは違う道で帰る。これもただなんとなく景色に少しでも代わり映えがあったほうがいくらかは多く楽しめるのではないか、という単純な理由。
見上げた夏の夜空は高く、星を掴めるのではないか、という妄想さえ許してくれそうになかった。
*******
十字路に人の気配があった。とっさに屏に隠れたみたい。
数十メートル置きにある電灯の光はたよりなく、男なのか女なのかすらよく見えなかった。
「見られちゃったわね」
足元にはばらばらになった『物』が散乱している。
「そこにいなさい...殺してあげるから」
こちらからは見えないが、電灯の下にいる私の姿は向こうからはまる見え。
「逃げるの?どうせ死ぬのに...」
結果は同じなのに...。
獲物がいた場所にはしる。
少女の目がそれを捕らえた途端、獲物の足から鮮血がほとばしる。
「ぐあぁぁ、だれか...」
かはっと空気が抜け、喉から血が吹き出る。
「ごめんなさい...あんまり、大きな声だされて人に見られたら迷惑なのよ」
少女は笑っている。
男は叫ぶことすら出来ずにもがく。
「あ...逃げるからよ。一発で終わらせてあげるつもりだったんだけどね。」
指・手首・腕・腰...血が舞う、電灯の光に照らされたそれは或いは散ってゆく花のように見えた。
最後に首を切断してから少女はめんどくさそうに息をついて言った。
「もう一人誰かいたわね......」
*********
走る。息の続く限り。
見てしまった。その光景はあまりにも魔的で...血に笑うその子はあまりにも美しかった。
魅入ってしまった。
或いは見られたのかもしれない。
逃げて来た男は自分に助けを求めていたのだろうか...
たしか、「『誰か』助けて 」と言ったはずだ。不特定多数に対しての望み...自分に責任はない。
仮に僕に対するものだったとしてもできることはなかった。
いや...そんなことはどうてもいい。今は逃げる事だけをかんがえる。連続殺人の唯一の目撃者--殺されるには十分すぎる理由だ。
見てしまった......殺していた......。
********
空間を切る...斬る...断絶する。
腹いせに猫をやろうとしたけど逃げられた。
見えない場所は空間を認識できない。
......逃げられた。早く殺さないと.........
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