リキッドの奮闘記

リキッドの奮闘記

下書き・2


<<先を越されたようですね。隊長>>
ジークフリート2が後ろに飛んでいる。ここまでの乱戦なのに、幸運な事に彼は隊長を見つけられたらしい。他の部下は散開しているので見当たらない。
「ダーティーか?敵の正体は分かったか?」
<<ハッキリとはしていませんが、エンブレムはバルメシアの物に良く似ています>>
バルメシア?フォーバットの隣の国だ。
あの国を怒らせた覚えは無い。
「バルメシア・・・・・・まあ、後でハッキリするだろう。今は敵を落とすぞ」
<<了解>>
再び乱戦の中へと入ると、さっきよりも地上からの硝煙が増えた気がする。目の錯覚だとは思うが。黒い煙のせいでたまに視界が遮られた。
何処からともなくさっき飛んだばかりのマクロードの声が聞こえる。耳に良く通る声だ。彼は時代を経ても変わらない男だった。
<<三機ロックした!見てろハーマン!>>
<<こっからじゃ見えませんよ!>>
<<フェニックス発射ぁぁあ!――――――二機撃墜!>>
<<絶対聞いてないでしょう!>>
友軍機の奮戦のお陰で敵の襲撃は収まりがちになって来た。もうすこし頑張ればいい。アンダーソンはそう自分に言い聞かせた。
するとまたAWACSからの通信が来る。
しかし、内容はさっきに比べればずっと過激とも言えた。
<<こちらAWACS!先ほど首都から入電が入った。バルメシア公国が我が国に宣戦布告した!繰り返す、バルメシア公国が我が国に宣戦布告した!>>
そして敵機が奇妙な行動に出た。
突然飛行場と友軍機への攻撃をやめ、レーダーの円から出て行き始めた。
<<こちらジークフリート3、敵は撤退していきます>>
「こちらでも確認した・・・・・・みんな生きてるか?」
隊員達の返事が聞こえる。ちゃんと四人分。
突然の事態と安心感で心が動揺していたが、それよりも久しぶりの戦闘で体が硬くなっていた。胃も何だか変にうごめいている。
それでも生き残れた。
それを今は喜ぶだけだ。


アルシムの基地も襲われてはいやしないかと思ったが、幸い枯れ木に囲まれた飛行場は何事もなく平然としている。雪はもう降り止み、白い雲の隙間から、だいぶ地平線に傾いた太陽が顔を出している。
ヒューボット飛行場はかなりの打撃を受けた。しかし、思ったほど友軍機の被害は少なく、防衛任務はある程度の成功を成し遂げたと言えた。
それでも滑走路はほとんどが潰されてしまい、離着陸がままならない状態だった。仕方が無くヒューボットから飛び立った機体は、幾つかの基地に分散して一時的にそこに駐留する事になった。元々アルシムにいた部隊は被害を受けなかったが、ヒューボットに取り残された。そして変わりにマクロードがアルシムに向かわされた。
<<アンダーソン、しばらくお世話になるぞ>>
そう言ってF-14は滑走路に降り立った。
アンダーソンは何も言わない。帰って来たと言う安心感と同時に複雑な気分に襲われていたのだ。
戦争は幾つか体験して来たが、まだアネア大陸の戦争が終わってから五年も満たないうちに戦争が起きるとは。今度の戦争がそこまで大規模になるとは、まだ決まっていない。バルメシア公国の出方次第である。
軍の規模はほとんど互角――――――いや、向こうの方が多少は上だ。しかし、向こうが一方的な侵攻を行えばオーシアなどが黙ってはいないだろう。そうは言っても、オーシアはベルカ戦争―――1995年に起きたベルカ公国とオーシア、サピン、ウスティオなどの連合国軍との戦争―――の時に比べれば大分軍縮を行っている。それにまず、あの国は和平を望むだろう。内乱時代もそうだった。
自分もそれは正しいと思うが、いきなり宣戦布告を行ったどころか、布告前に攻撃を仕掛けて来た国が和平に応じるはずもない。
それ以前に、バルメシアの“自信”が気になる。もしあの国が他の国にも宣戦布告を行っているとすれば、まるでベルカ戦争そっくりだ。しかし、あの国はそこまでの力は持っていないはずだった。
あまり考えてもきりが無いので、アンダーソンの機体も、バルクホルム機に続いて滑走路にゆっくりと着地した。
これはまだ始まりにしか過ぎない。
いつでもそうだが、戦争の行方は予想出来ないのだ。
暖房の聞いた兵舎に入ると、サンタクロース・・・・・・ではなく、ディックマン大佐と副官のリチャード・アラン少佐がの目の前にいた。アラン少佐はディックマンに比べるとずっと背が大きい中年の男だ。
白鬚の大佐はアンダーソンが一番最初に兵舎に入ってくるなり彼に言った。
「ご苦労じゃったな。今日は休め」
ディックマンはアンダーソンが何か何だか良く分からないうちに立ち去ってしまった。変わりにアラン少佐が後ろからマクロード達が話しながらぞろぞろと入ってくるのが終わり、全員がそこに立ち止まっているのを見ると話し出す。
「バルメシアの事は知ってるな?不運な事に連中はこっちよりも軍備が強大だった。既に国境防衛部隊は全滅した」
宣戦布告からまだほとんど経っていないのに、国境線が突破された。
これは戦争が激しいものになる事を意味していた。


第一章 完

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