リキッドの奮闘記

リキッドの奮闘記

下書き・9


<<こちら駆逐艦<ウォーリアー>、直撃を食らった!退艦する!>>
ジークフリート隊はまたしても二手に分かれた。
今回はアンダーソンとヒルタッブルが組み、残りの三人は違う方向へ飛び去った。
二人は三機のA-7に弾丸を浴びせ、細い煙を吹かせて追い払う。しかし、一機はそのまま攻撃を続行し、味方艦の弾幕に突っ込んだ。A-7は炎を吹き上げる前に持っていた武装を可能な限り放つ。ミサイルが先導を切っている<リヴァイアサン>めがけて直進する。イージス艦は対処しようとしたが、運悪く他の対艦ミサイルも襲って来た為に、防ぎきれ無かった。火柱が「盾」の後部で上がる。
<<こちら<リヴァイアサン>。一発食らったが、まだ大丈――――――うわぁぁぁぁぁ!>>
イージス艦から悲鳴が上がった。火の玉と化したA-7がそのまま<リヴァイアサン>の艦橋に激突したのである。
あれではもう駄目かもしれない。証拠にイージス艦からの通信が途絶えた。神の盾が黒い煙を上げている。その隙を突いてまたしても数機のA-7が来た。今度は輸送船を狙っている。
間に合わないのは分かっていたが、アンダーソンらは機体を滑らせた。
同時に一機のJ35がコルセアの後ろに現れ、機銃を浴びせた。不意を突かれた敵機は攻撃を断念したらしく、旋回してその場から離脱した。
<<やっぱ慣れないね、ドラケンは。分かるだろアンダーソン君?>>
マクロードだ。
「マックか?何処行ってたんだ?」
<<陸軍の連中にこっちまで乗せて来てもらったんだよ。飛行場にあったF-4を貰ったのさ>>
ハーマンの声がすぐに飛んで来た。
<<隊長ですか!?やっと戻りましたか>>
<<あたぼーよ!ずっと地面に足を乗せてられる男じゃないんだぞ俺は>>
<<と、言う訳で指揮をお任せします。岸にまだ停まってる輸送船の上にいますから>>
クルト・ハーマンもこれで肩の荷が降りたらしい。マクロードは馴染めない戦闘機の中で返す。
<<はいよ!すぐに行くからな!>>
彼が帰ったのは良かったものの、バルメシア軍は攻撃を緩める様子が無い。一発の長距離ミサイルが硝煙を残しながら一番後ろの輸送船の後部甲板を吹き飛ばした。
<<こちら五番輸送船!弾を食らった!>>
護衛艦部隊もさらに対空砲火を激しくする。
<<三時方向に攻撃機!撃て!>>
<<イージス艦<リヴァイアサン>が大破。行動不能!>>
<<追い払ってもどんどん来やがる!バルメシアはどれだけの軍備を持っているんだ?>>
海の仲間達が必死になって輸送船を守っている。岸に停まっていた輸送船も次第に出航して行く。後はガードケルクから離れるまで守るしか無かった。
轟音と爆風に海が揺れ、この世も揺れているようだ。水柱と火柱が絡み合い、花火があちこちで生まれる。沈んだ船がその巨体を悲しげに沈めていた。
敵機を追い散らしていると、警報が鳴った。ロックオンされたのだ。ヒルもといブリットも同じだった。すぐにミサイルアラートが鳴り響いた。二機ともすぐに行動し、アンダーソンはGによってシートに押し付けられる。胃が変形する様な気分になった。彼のイーグルは急上昇し、機体が激しく揺れ、そしてロールとピッチアップを駆使してF-15がらせんを描く。その後操縦桿を引いた。その頃にはアラートは鳴り止んでいた。Gから体が解き放たれ、胃の位置も元に戻ったらしい。
「ブリット、生きてるか?」
<<回避しました。撃った相手を落とします>>
AAMを放ったMig-29は回避されたのを見ると、機銃で後ろから攻撃して来た。すぐに弾を避け、アンダーソンは少し機体を傾けてまた手に持っているレバーを引く。敵機も後ろに着かせまいと左に旋回する。旋回中にアンダーソンは動きを変え、見事にHUDに敵を捕らえた。
「ジークフリート1、FOX2」
一本のAAMがイーグルから放たれた。ファルクラムはスロットルを開いて逃げようとしたが、オーシア軍のイージス艦の対空ミサイルの餌食となった。まず正面からミサイルを受け、次に後部をバラバラにされたミグは海に少ない破片を落として散った。
<<こちらブリット。一機撃墜>>
ヒルタッブルも相手を落としたらしい。すぐにアンダーソンのイーグルの後ろに着いて来る。
彼は大陸戦争時、まだ十七歳だった。彼の父親もISAFのパイロットで、戦争の初期に行われたロスカナスからの第一次ストーンヘンジ砲―――小惑星「1994XF04ユリシーズを破壊する為にFCUを中心としたユージア大陸の国々が建造した120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲―――攻撃時にF-15Eに搭乗していた。そして空で儚く果ててしまったのだ。
既にユリシーズの破片落下によって母親を失っていたヒルタッブルは孤児となってしまったが、挫ける事も無くISAFに入隊し、父親と同じパイロットとなる。
たった十七歳で。戦争とは年齢を問わず人を巻き込む。
なかなかドラケンの操縦に慣れないマクロードだったが、何とか全ての輸送船が岸を離れるのを見届けていた。やたらに小さな船も何隻が見える。船が不足しているのだろうか。
最初の頃に比べて攻撃機は減っていた。弾を撃ち尽くして帰ったのもいるだろうが。
<<前方に敵機を視認。やっぱF-14の方がいいですか?>>
二番機がマクロードより前に出た。
「当たり前だ!何年も乗っているんだぞ!」
そう言っているうちに射程範囲内に四機のファルクラムが飛び込んで来た。体の反応はいつもと同じだったが、やはり機体が合ってない。この機体はもっさりしている気がしてならなかった。
擦れ違いざまに放たれた機銃を回避し、敵機が後ろへ飛ぶ。レーダーでも同じ事が起こる。
「一機はドラケンだ。まず奴を落とせ」
「こちらスパイク3、了解」
双方とも反転を行い、また擦れ違う形となったが、その動作が終わる頃にはジン少尉が一機のMig-29に煙を吹かせていた。しかし、他の敵機はそれに構わずドラケンの後ろに着く。
「俺が牽き付けるから何とか落としてくれ」
マクロードは高度を落として水面に可能な限り近づいて変則的に飛んだ。バルメシア軍パイロットの機体のHUDの四角形の枠が揺れ動く。その間に敵機の攻撃を縫ってローエングリン隊の他の機が敵機にバルカン砲を浴びせた。
「よしいいぞ!」
言い終わらないうちにレーダーに敵の反応が増える。マクロードは一隻の輸送船の船首が吹き飛ばされるのと、駆逐艦が轟沈されるのを見て判断を下す。
「戦闘機は俺一人で何とかするから船を守れ!」
<<そうは行きませんよ。ただでさえドラケンの操縦に慣れていないのに!>>
「何とか生きていてやるから!」
マクロードはそう言って、見ていると気分が悪くなる様な機動を行い、相手を混乱させて隊員達から引き離す。それでも何機か着いて来た。引き離す手間をかける前に四機のF-16が飛来し、横方向から綺麗なまでにミグにAAMを叩き込んで炎上させた。
<<こちらホルス1。大丈夫か?>>
「助かったよ。戦闘機をお願い出来るか?」
<<勿論だ。各機、二機ずつで行動せよ。リー、来い>>
F-16の下には炎を放ちながら落ちていくMig-29が見えた。その近くには駆逐艦が艦体の大部分を水に浸からせて沈黙している。救助船らしき船が砲火を掻い潜ってその駆逐艦の乗員を助けていた。
大国の戦闘機部隊だけあってホルス隊は華麗に宙を舞っていた。ホルス隊は東戦争―――四年前のオーシア大陸東部の戦争の名称―――以前からの歴戦隊で、隊長のエリメット・バリオリー大尉はバートン同様軍人の血筋の生まれである。
それを見たローエングリン隊の隊長は早く元の機体に乗りたいと思った。ドラケンが別に悪い、と言う訳では無い。しかし、自分にはどうも合ってないのである。理由は良く分からないが、やはり慣れたF-14Dの座席じゃないと体が上手く動かないらしい。
気を取り直してマクロードは言った。
「ホルス隊に負けんなよ!全部落とすぞ!」
その後、彼は水面にぶつかりそうになって思いっきり肝を冷やす羽目になった。


孤独に戦うSu-27。低空飛行による素早い機動が敵機を寄せ付けず、孤独を守っている。
その間、フランカーの中でヴォレンは憎悪と敵と戦っていた。オーレンから陸軍が撤退する時に新米だった部下は全員死んだ。その時の映像が蘇ってくる。一人は撃墜され、残りの二人は互いに空中接触して死んだ。
ひよっこの部下が死ぬのはこれが始めてじゃない!
何で国は俺に新米を任せる?
面倒見が上手いからか?何かと教えるのが上手いから?
面倒を見るこっちの身にもなってみろ!
怒りをほとんど敵にぶつけ、30mm機関砲の弾が残り少ない事も気にしていなかった。だが今までに使った分はほとんど敵に命中している。
「いい加減に諦めろ!」
数が少なくなって来た攻撃機に向かって彼は吼えた。
そうしている間にバルメシア軍は撤退を始めたらしく、輸送船団から遠ざかっていく。それでもヴォレンは逃げる敵機を追う。
<<こちらAWACS。ヴォレン大尉!敵は撤退している。もう攻撃を中止しろ!>>
ヴォレンは聞こうともしないで、一人で敵を追い駆けた。大口径のバルカン砲が唸る。
が、唸りがすぐに止まった。
弾が切れたのだ。彼は操縦桿を離して計器を叩く。やがて諦めて引き返した。
「ヴォレン・・・・・・」
通信を聞いていたアンダーソンは呟いた。
怒りに駆られると、人間の行動は読めない。
あいつはいつ限界に達するだろうか・・・・・・よく分からない。
<<敵機の撤退を確認。輸送船団は何とか無事だ。各機、帰還せよ>>
アンダーソンは操縦桿を回してアルシムの方向へ機首を向けた。


撤退作戦は予想よりも被害が少なかったが、それでもイージス艦や駆逐艦を数隻失い、アンダーソンらの目が届かない所で輸送船が何隻も撃沈されている。この日の後の数日間で、バルメシア公国軍は抵抗の激しいディルハイマーと側面を守っていた第25装甲師団を迂回し、ラティオへと侵攻。ラティオ国防軍は抵抗するも、バルメシア軍は脅威的な航空支援で前進。ラティオの軍はサピンのすぐ近くまで撤退する羽目になる。
一方、フォーバットは押されてはいるもののまだ負けは遠い。それでもじりじりと敵は内陸を進んで行った。


第四章 完

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: