ある日兄と大喧嘩した夜遅く、S君は一人出て行ってしまってそれっきりになった。
母のオーストリッチのバッグと皮のコートとともに・・・。
(これを持っていかれたことを母は死までくやしがっていたっけ^^;)
後に兄が普通に結婚することになった時、私は
『てめぇ、余計なこといったらぶっ殺すからな』と脅され、
母はものすごくホッとしていて、
父は
『相手がどんなおかめでも相撲取りみたいな人でもいい。女なら・・・。』としみじみ言って
私を笑わせてくれた。
その後、S君から一度だけウチに連絡があった。
兄が結婚してしばらくした頃だったと思う。
たまたま実家にいた私が電話を受けた。
兄がもう結婚した事実を告げるとS君は
『知ってる・・・』と言ったあと、
『○○が死んだから・・・。それだけ言っておきたくて』と続けた。
二人が判れた時、S君は一番かわいがっていた猫を一匹だけ連れて出ていた。
その猫が死んだということらしい。
私がわかったというとすぐに電話は切れた。
なんとなく切なかった・・・。
で、今、いろいろあって、兄はまた失踪中なのだが、
私はどうもまたS君と暮らしているんじゃないだろうかと思うのだ。
何年間か普通の堅気ふうを装って続けた兄の結婚生活は私が何をばらさなくても、
やはり勝手になるべくして破綻したわけで。
あの兄の行状や性格や、そんなものを全部知った上で尚一緒にくらしていけるのはS君しかいないように思うから。
両親や私が持て余した兄を
『ほんとうは優しい人なの』と言い切っていたS君だから・・・。
今もどこかで二人して借金重ねて生きている気がする。
時折私の元に闇金らしきところから電話がくるから。
「居所知らんかね?」と・・・・・。
終わり。